イタリアの小さな人気者〜新「フィアット500」が電気自動車になって世界初公開!【吉田由美】

日本でも大人気のフィアット「500(チンクエチェント)」が、FCA初の電気自動車に生まれ変わってワールドプレミア。カーライフエッセイストの吉田由美さんが、日本時間深夜に配信された動画で感じたインプレッションなどをレポートしてくれました。

イタリアの小さな人気者〜新「フィアット500」が電気自動車になって世界初公開!【吉田由美】

※冒頭写真はジョルジオ・アルマーニによるワンオフカー。

ジュネーブモーターショー中止で動画プレゼンテーション実施

楽しみにしていた今年のジュネーブモーターショーは、新型コロナウイルスの影響を受けて直前に中止。私たち以上にこの日を心待ちにしていたと思われるのが、この時に大々的に発表される予定だった車の開発に携わった人たちや関係者の方々ですが、本当に残念だったに違いありません。

今回、おそらく中止を受けてなのか、もともと企画されていたかはわかりませんが、プレスデーの時に行われるプレスコンファレンスのかわりに、「バーチャル・プレスデー」という形でインターネット配信されました。しかもプレスコンファレンスと同じように順番で。

しかしその中で、なぜかぽつんと日本時間深夜に動画配信されたFIAT。FCA(ファット・クライスラー・オートモービル)グループ初となる本格的電気自動車、新「FIAT500」(フィアット・チンクエチェント)のプレゼンテーションですが、この動画がお洒落~!
(編集注※この時の動画は限定配信のため現在日本からは視聴できませんが、YouTubeのFIATチャンネルで社長であるOlivier Francois氏のオフィシャルプレスカンファレンス動画などが配信されています)

New Fiat 500 | Official Fiat Press Conference ft. Olivier Francois(YouTube)

New Fiat 500 “la Prima” | The third generation of an icon(YouTube)

「本格的電気自動車」とあえて加えたのは、実はFIATは現行型の2世代目FIAT500に24kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載したアメリカ限定販売の「FIAT500e(チンクエチェント・イー)」を2013年より販売していたから。これはカリフォルニアZEV規制に対応するもので、1回の充電での航続距離は最大で約140㎞というものでした。

FIAT500自体は2007年の発売以来これまで、ほとんど販売台数が変わらない超ロングセラーカーではありますが、さすがに今から世界戦略車としてデビューさせるEVにするにはちょっと……、というのは私の想像ですが、新しいスタイル、テクノロジーを搭載した新しい電気自動車として新「FIAT500」として登場。日本語訳でも「新型FIAT500」ではなく「新FIAT500」と謳っているのがポイントで、FIAT500のフルモデルチェンジではなく、新設計、新しいデザインを纏いながらもFIAT500の追加モデルという位置づけのようです。

はたして、どんな電気自動車なのか?

ローンチエディションの名は「FIAT500 La Prima(ラ・プリマ)」。

42kWhのバッテリーを搭載していて、1回の充電での航続距離は、WLTPサイクルで最大320㎞(欧州仕様車 ※EPA推計値=約285km)。充電時間を短縮するために85kWの急速充電に対応しているので、大出力の急速充電器を使えば50㎞走行分の電力をわずか5分で充電可能。また35分でバッテリー容量の80%まで充電できるとしています。今回発表されたのは欧州仕様なので、充電口は「コンボ2」規格で、同じ充電口でAC(交流)とDC(直流)のどちらにも対応しています。

また、このローンチエディションの価格には家庭用チャージングシステムである「Easy Wallbox」(最大7.4kWに対応予定)も含まれているそうです。ただし、この充電システムは欧州仕様で残念ながら日本市場はまだ対象外とのこと。

ドライブモードは3つ。「Nomal(ノーマル)」「Range(レンジ)」「Sherpa(シェルパ)」から選択できます。

「シェルパ」は、電力消費量を最適化するモードで、ナビゲーションでセットした目的地に最も近い充電ステーションまでできるよう案内してくれるモード。最高速度は80㎞/h、アクセルレスポンスを調整し、空調をコントロール、シートヒーターをオフにしてエネルギー消費量を抑制します。

「ノーマル」モードは内燃エンジン搭載車に近い設定。

「レンジ」モードではワンペダルドライブが可能で、ほぼアクセルぺダル操作で走行できます。モーターの出力は87kW、最高速度は150㎞/h、0-100㎞/hは9.0秒とアナウンスされています。

FCAグループ初の自動運転「レベル2」を実現する運転支援がされているのもポイント。車の周囲を360度センシングする「インテリジェント・アダプティブクルーズコントロール」(iACC)は車、自転車、歩行者を検出してアクセルやブレーキを操作。レーンセンタリングでは、レーンの中央をキープして走行します。

「Uconnect5インフォテイメントシステム」はユーザーのスマートフォンと連携し、10.25インチの高解像度タッチスクリーンに表示。また、テレマティックボックスモジュールとエマージェンシーコール機能を組み合わせ、故障の際にアシスタントに連絡して支援を要請したり、スマートフォン経由でバッテリー充電のレベル確認、低コストで充電できる時間帯の設定などを行うことができます。

また、車の正確な位置の把握、ドアのロックと解除、照明のオンオフの切り替え、エアコンディショナーシステムのプログラム、タイヤの空気圧チェックから車両のコンディションをチェック、ナビゲーションで目的地をセットすると目的地の天候を確認などを行います。

さらに、最大8台のデバイスをインターネットに接続でき、Amazon Alexaの音声アシスタンス技術を活用して車とのやり取りも可能。ドアが開くとスマートフォンはわずか5秒で車と接続され、充電ケーブル無しで充電できます。また「La Prima」は音声認識機能を備え、パラメーターの調整、空調コントロール、音楽の設定が可能です。

チコちゃんのような目の表情が個性的!

そして何と言っても個性的なのがエクステリアデザイン。クリーンなヘッドライトが印象的でユニークな表情を持ち、「チコちゃんに叱られる」のチコちゃんのような目つき。フロントのセンターにある「500」のロゴもチャームポイントで、最後の「0」が「E」にも見えるようにデザインされているのがニクイ。

サイズは全長と全幅がそれぞれ+6㎝拡大。ホイールベースも2㎝延長。しかし全長は4m以下に抑えられています。

シートには海洋から回収したプラスチック素材をリサイクルして作ったシートが採用され、トリムにはエコレザーを使用。

そしてなにより世界初のオープン4シーターというスタイルにしたのも特徴的で、20㎞/h以下で走行する際はエンジン音や電子音の代わりにニーノ・ロータが映画「フェリーニのアマルコルド」のために作った「甘い生活」が流れるという。確かに動画でもこのシーン、登場していました!

「ラ・プリマ」のボディカラーは大地を連想させる「ミネラルグレイ」、海を表現する「オーシャングリーン」、空へのオマージュ「セレスティアルブルー」の3色。加えてフルLED 、エコレザーシート、17インチのダイアモンドカット・ホイール・ウインドウとサイドパネルをクローム仕上げ。

ソフトトップにはモノグラム柄が採用され、主要国ではシリアルナンバーを併記したバッジが付けられるとのこと。

そしてオーダーはオンラインで購入可能ですが、各市場500台。しかし、残念ながら日本導入、そして導入時期は未定とのことです。

さて、動画の話に戻りますが、舞台はイタリア・ミラノ。まるで映画のように始まった新EV「フィアット500ラ・プリマ」のお披露目は、世界的スター、レオナルド・ディカプリオの登場によってより印象強いものになっていました。

レオ様は気候変動防止に約20年前から取り組み、活動を行っていますが、そういえば以前、ご自身の愛車が「トヨタ プリウス」で、映画の祭典「アカデミー賞」のレッドカーペットにも通常はリムジンで乗り付けるのに、レオ様は燃費が良く地球にやさしい「プリウス」で登場したことがありましたよね。

そのレオ様が地球環境の保全のための新フィアット500プロジェクトに賛同して送ってくれたメッセージが「All-Inビデオキャンペーン」(日本からは視聴できません)。それと共にイタリアが世界に誇る3ブランド「ジョルジオ・アルマーニ」「ブルガリ」「カルテル」がそれぞれ自然素材やリサイクル素材などを使用してワンオフカーを製作。チャリティオークションお行い、全収益をレオ様が設立した地球環境と生物の多様性を守るNPO「Earth Alliance」に寄付されるとのことでした。

FCAジャパンからも発表されたプレスリリースのタイトルは「新500が登場:より良い未来のために行動する」でした。フィアット500は「イタリアのアイコン」とも称されています。今回の発表では、500が電気自動車になったというだけでなく、新しい500が、フィアット、そしてFCAグループの持続可能なモビリティに関するビジョンである「より良い未来のために行動する」を象徴する「アイコン」にもなっていることが印象的でした。

これからもさまざまな話題を振りまいてくれそうな新「フィアット500」。日本導入が待ち遠しいですね。

(文/吉田 由美)

この記事のコメント(新着順)4件

  1. デザインがいい。角度によって睨み目にも見えるところが秀逸。車高の高さに対して横の流れを強調して緩和する意識が明確に感じられる。欲しい!

  2. チンク乗りとして気になりますね。中古車マニアとしては、うちのチンクがEV化されるまで何年掛かるかなー。

  3. 非常に興味深く、
    そして日本にも(早く)導入してほしいと思います。

    ルノーはトゥインゴZ.E.
    プジョーはe-208
    等々
    海外メーカーの活発さを見てる限り
    国内メーカーは少し残念な感じです。

    狭い路地にも丁度いい大きさに好感が持てます。

    あとは乗る人の(充電)マナー次第かなぁ~。

  4. FIAT500といえばミニクーパと並んでルパン三世シリーズに出てきたおなじみの西欧コンパクトカーの雄ですよね。自宅近くにもFIAT500専門店があり旧車ファンの絶大な支持を思い知らされますが!(笑)
    それが時代の変化を受けて電気自動車として生き残るのだから個人的には歓迎です。
    さてスペックを見ると5ナンバーサイズに収めつつ日産リーフ40kWhに近い電気的スペックだからWLTCモード数値から一泊二日程度の旅行でも使えそう。CHAdeMO充電ポートがつけば欲しくなりますねw
    あの丸みを帯びたスタイルはスバル360に近いですが、そのスバルがR1eを試作していながら電動化に失敗しており(プラグインステラも航続距離で三菱i-MiEVに負けた)軽撤退となったからFIAT500にはアニメ漫画からの支持者(オタク層)を取り込んで日本でもうまく売っていただきたいと思います。僭越ながら。

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この記事の著者


					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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