フランスの石油大手トタルが電気自動車用超高速充電器を300ステーションに設置

見慣れたガソリンスタンドに比べ、電気自動車用充電器がどこにあるのか分かりにくいと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。石油会社大手のトタルが超急速充電器を自社のガソリンスタンド内に設置する計画を発表しました。CleanTechnicaから全文翻訳でお届けします。

フランスの石油大手トタルが電気自動車用超高速充電器を300ステーションに設置

元記事:Total Adding Ultrafast EV Chargers To 300 Stations In France By Zachary Shahan on 『CleanTechnica

2022年末までに超高速EV充電器300台を設置

昨日フランスでの電気自動車に関する新しいレポートを出したところですが、その後すぐに充電についての不平コメントがいくつか寄せられました(この国で何度かロードトリップに行った経験から、私達も把握している事柄ではあります)。さて数時間前、フランスでのこの問題に関する素晴らしい最新ニュースを、Pitounet氏がコメントで知らせてくれました。

これを読んでいる方はタイトルをすでにご覧になっていますし、そのニュースが何かはご存知かと思いますが……石油会社大手で欧州に広くガソリン/ディーゼルスタンドを展開するトタルが、超高速EV充電器をフランス国内にある300のスタンドに設置する計画を立てています。

計画では2022年末までに300の超高速充電ステーションすべてを完成させるとしており、各ステーションの(最大)出力は175kWとなります。

Pitounet氏はこの計画について、卓見に富むコメントをしています。「これは大きなニュースです。ゲームチェンジャーになるでしょう。トタルはどこにでもあるし、スタンドはいつも立地の良い所にあります。トタルのプロジェクトのタイムスケールに関してはどの程度信じて良いのか分かりませんが、食料などを売っている高速道路上のステーションに来る顧客をキープするためには充電器が必要であると、社は分かっていると思います」。フランスにおける最近のプラグイン車両売上を鑑みると、確かにガソリンスタンドには危機が迫っています。

トタルは現在5つの国(フランス、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダ、ドイツ)で2万台の充電器を設置していますが、基本的には普通充電器です。社は2025年までにこの数値を15万にまで引き上げようとしています。

将来を見据えた充電器計画

トタルのマーケティング事業部広報戦略担当ディレクターのStéphane Chambon氏は「目的は長距離を走るユーザーのニーズに応えるため、150km間隔で存在するトタルネットワークを完璧に補完する(充電)ネットワークを持つことです。高速道路や私達が充電ハブを開発する郊外を含め、国道上の300カ所に充電器を設置します」と話しています。

また充電ステーションは将来を見据えた際、私が以前に見たいくつかよりも適切なものになっています。今は1カ所に6~8台の充電ポートが設置されているのですが、社は需要が増えるにつれ数を増やせるように動いています。生粋のガソリンスタンド業者に、他に期待できることは何でしょうか。

別のPRエグゼクティブのXavier Bourat氏は「これらはすべてヨーロッパ流のアプローチを使った単一のプラットフォームに統合・運用されるようになります。ネットワーク全体を精査し、設置可能なステーションは洗い出してあります。私達は現在、2022年までの増産計画を立てるフェーズに入っています」と話しました。

支払いは簡単にQRコードを使ってできます。規制側がそう求めているため、今は分毎に支払う仕組み(時間課金)になっていますが、最終的にはkWh毎に払えるように(従量課金)するのが目標です。

トタルは石油ガス会社ですが太陽光事業にも長く関わっており、CleanTechnicaにも度々登場しています。最も有名なところではSunPower(サンパワー)を所有していますが、それだけではありません。2020年後半にはロンドンで最も大きなEV充電ネットワークを買収しています。 Source Londonというこのネットワークには、1,600以上の充電スポットがあります。トタル上層部は、ソーラーパネルや充電ステーションなどのゼロエミッション技術が未来に繋がるという事実を最も理解し、柔軟に対応している会社の一つです。Exxon(Exxon Mobil)がニューヨークやサンフランシスコで最大のEV充電ネットワークを買収するのを想像してみてください、そういうことです。

トタルは完璧な全体図を示しており、充電ステーションを再生可能エネルギーで動かすことにも熱心でいます。CTは2020年10月の記事で「トタルのグループ会社であるTotal Gas & Power Limitedは、Source Londonネットワークに100%再生可能エネルギーで発電する充電ステーションを供給します。伝えられるところによると、少なくとも始めのうちは、ユーザーにはサービスの違いが分からないと言われています」とレポートしました。

もちろん一般的には、欧州石油ガス大手はクリーンテクノロジーへのシフトが進んでいることを認識しており、ゲームに参加しようとしています。10月にトタルの買収を私が書いている間にも「石油その他エネルギー大手がEV充電会社を買収、投資するパターンが見えています。数年前、ShellがNewMotionを買収し、2018年にBPは英国最大の充電ネットワークであるChargemasterを買収、さらにEngieはEVBoxを買収しており、これらはセクター内で最も有名な投資になります(10月の記事より引用)」。

石油ガス会社から出てくる、次のEV充電に関する発表は何になるでしょうか? あなたはトタルのEV充電スペースの次の計画は何になると思いますか?

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)6件

  1. 電気管理技術者(電気主任技術者有資格者+実務経験5年以上)です。
    ※理工系電気技術の話をふんだんに含みますので判らない方も大勢居られるでしょう、しかも極めて辛辣なので苦手な方は回れ右推奨です!!(爆)

    一般人が考える電気自動車普及の壁は電気事業法の規定にある低圧受電49kWの壁。特にエンジン車と同じ感覚であることが最大の問題であります!充電器の効率を90%とすれば日産急速充電器の44kWが最高といわざるを得ません!!(爆)
    1.高圧受電設備設置を避けたい設置者側の意向
    2.燃料補給の感覚を変えられないユーザーの意識
    これらがアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にあるキャズム(崖)の2大真相。別の記事でも書いた外国車EVのチャデモ仕様が50kW止まりになった最大の理由です。おそらく世界のトヨタもこの電気事業法の壁を見て日本国内での電気自動車販売をためらっているとも考えられますよ!?(実はトヨタも被害者なんです!!)
    仮に100kWクラスの充電を本気で考えてるなら行政は以下のいずれかを実施せねばなりません!
    1.低圧受電の上限を99kWまでに引き上げる(電気事業法の改正)
    2.急速充電器設置への蓄電池設置補助(災害対策としてJFEタイプの充電器を奨励)
    3.電力効率化の面からDC400V系直流給電の実施
    もっとも1.については電気主任技術者不足の実態から変わる可能性もあり、電柱上の変圧器も87kVAあれば80kW急速充電器への供給は可能。
    2.は近年頻発する自然災害停電への備え、3.はデータセンターの動向もあり可能性はゼロではありません…特にデータセンターはサーバールームの発熱問題から交流⇒直流への電源装置を屋外へ出して空調消費電力をなくし全消費電力を三割減させたケースもあるもので。停電厳禁の世界だから太陽光発電+蓄電池+EV+V2Hで万全を期しているのです!!
    そう考えると急速充電器の設置が以下に難しいか考えさせられませんか!?いずれも高コスト体質に変わりはないのですが。

    インフラ業務に従事した電気技術者的いわく、理想はあくまで自宅での基礎充電。一戸建に住み屋根にソーラー発電があればEV+V2Hで家庭電力も移動エネルギーも万全ですよ!?電気を知らない人にはわからないでしょうけどそれは事実。
    ショッピングセンターも停電への供えが欲しいなら電気自動車ユーザー向けにV2Hサービスと万一の停電時電源供給協定を結ぶなど何らかのパートナーシップ作戦を講じるべきかもしれませんよ?
    ガソリンスタンドなんざ屋根にソーラーパネル/駐車場にV2Hなどを設置して停電時も動ける体制を作るのは比較的たやすいはず。シェルグループにソーラーフロンティアがあるくらいだから石油会社もポストエンジン車対策は行って然るべき!

    こういうことは諦めたらそこで試合終了です!そして俺を論破するつもりなら死ぬ気で勉強してこい!と言っときます。(出典はスラムダンクの名台詞より)

  2. うらやましい限りの話です。最近思うのですが、EVの長距離移動のためにバッテリー容量を大きくすることがよく言われますし、もちろんそれも大切ですが、それと同等以上に重要なのが急速充電器の能力なんじゃないかなと感じます。逆に言えば、急速充電の能力が高ければ、電池容量はそこそこでも問題ないんじゃないかという気もしてきます。日本で多く普及している50kWの急速充電器だと、30分の充電で獲得できる充電量では100㎞ちょっとしか走れない。これでは高速道路だと1時間ちょっと走っては30分充電の繰り返し。これではあまりに非効率で、とてもEVで長旅しようとは思えない。やっぱり30分の充電でせめて2時間分の200㎞以上走れないと、EVでの長旅は現実的ではないと思う。

    そういう観点で考えると、現在の高速道路のSAやPAの多くには充電器があるけれど、だからといってそれによってEVで長旅しようという動機付けにはなりにくいし、やっぱり役不足感が否めない。かといって、これまで設置した50kWクラスの充電器が100kW以上のクラスに置き換わるのなんていつのことやら。。。現状、充電器の設置個所の数だけアピールして「安心です!」みたいな宣伝文句が多いけど、実情を知れば知るほど幻滅します。

    1. 全くもってその通りで、2時間走って30分の休憩というのが最低ラインで、出来れば3時間走り続ける能力が欲しいです。
      そうなると急速充電器も車両も150kWで充電出来る能力が要りますね。バッテリー容量も60kWhから100kWhでしょうか。
      テスラは最初からその位の能力を充電器と車両に持たせていたところが、利用者目線で大したものでした。
      国内では他のEVも標準でそのレベルの環境になるまでは、マジョリティ層はHEVとPHEVまでが妥協ラインとなりそうです。
      SAやPAの手前でドキドキしながら到着時にも充電器が空いていることを願い、後ろからBEVやPHEVが追いかけてきていないかを気にしたりすることからは、いい加減卒業したいですよね。

    2. シーザー・ミラン さん、いつもコメントありがとうございます。

      > 3時間走り続ける能力が欲しい

      これ、私自身ここのところしばしば思案しているポイントです。たとえばテスラ(モデル3でも)や、ことによってはリーフe+でも、充電については自分が電気自動車に乗っているということを忘れていてもへっちゃらだったりします。20数年前から不自由な改造EVに関わってきた感覚からすると、少しくらい不自由でも「これでいいじゃん」という気付きをもたらしてくれるのが電気自動車の魅力のひとつだと感じており。「へっちゃら」なEVばかりが増えていくのであれば、化石燃料時代の自動車が置き換わるだけで、ライフスタイル変換には繋がっていかないよなぁ、でも、みんなライフスタイルは1ミリも変えたくないんだろうなぁ、などと堂々巡りしています。

      とはいえ、容量50kWh以下で2時間しか走り続けられないEVをあえて選択するためには、値段はもとより、大容量電池搭載のEVとは違うサムシングが必要でもあり。

      このあたり「パッケージング」という言葉にするのが便利で、最近、飲みの席などではそのようなことを語ったりしてますが。現状、日産以外の日本メーカーにEVの「パッケージング」提案を求めるのはまだ時期尚早の印象が強く、いつになったら「時は来た!」となるのか、蝶野さんにどやしつけて欲しいくらいです。

      まずは、IMkが待ち遠しいところです。

      あと、EVの航続距離や電池容量はさておき、高速道路SAPAのQC基数増設は、激しく希望したいと思っています。

      【追記】
      管理画面で返信を投稿してから、スレッドであることに気が付きました。

      むつお さま、コメントありがとうございます。
      ご指摘の点、その通りだと思います。

    3. テスラモデル3を買ってから1日400km以上の旅をしていますが充電に関してはあまり痛痒を感ぜずに済んでいます。電費をある程度意識して運転すれば現状40〜50kWの充電器は何とか必要条件をクリアしているのではないでしょうか?
      EVの特性上むしろ必要なことは目的地に普通充電器がある事だと思います。
      高出力の急速充電器は複数台充電のためには是非必要で、この点は現在のSA/PAの状態は時代遅れになりつつあります。
      今後、大容量の業務用車両をどう受け入れか?課金法をどうするか?など将来を見据えた柔軟な方策が考えられないといけませんね・・

  3. 日本国も菅総理が[脱炭素社会の形成及び構築]という極めて重大なテーマを掲げたので,この実際の行動では何をしなければならないか❓極めて残念なのはテーマに対する実行動が皆無に等しい事である.大きな項目としてEV化や再生エネルギー源現今17%から2030年までに50%を目指す目標がない事である.EV化で言えばフランスの様に2030年までに日本国の全土に合計100万カ所EV充電器や超EV充電器を設置する等経済産業相や環境省が率先して計画的行動を起こすべきであるがこの政策手法の姿勢がまるで見えない.また日本国のカーメーカーが製造する各年度の10%は2021年度分として純粋EVを製造することを義務化する.さらに2022年度は20%...2030年度では全て100%純粋EV化を目的とする.日本国の脱炭素社会の形成のこの現状では今年の11月に英国で主催されるCOP26 では先進諸国から脱炭素社会の形成への努力目標に欠けていると見られることは間違いない.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

執筆した記事