総電力量35.5kWhの駆動用バッテリーを搭載し、AER(一充電での走行距離)はWLTPで220km(EPA換算推定約196km)。1モーター(パナソニック製。現行CR-Vのハイブリッド用モーターと同じもの)でリアを駆動する。最高出力154ps、最大トルク315Nm。欧州を中心に大容量バッテリーを搭載し、長いAERを誇るBEVが次々と登場するなかで、35.5kWh、220kmという割り切った性能がホンダeの最大の特徴と言える。
スモールカーとして一度に走行できる距離は220kmあればよい
ある種の潔さを感じさせるこの割り切りについて、開発責任者の人見康平LPL(ラージプロジェクトリーダー)は「”CASEとMaaS時代を見据えた次世代のスモールカーを開発せよ”という課題に対し、当初からパワートレーンをBEVに絞ったわけではありません。さまざまなパワートレーンを考慮した結果、将来性などからBEVが最適という結論に達した。バッテリー容量を定める段になって、スモールカーとして一度に走行できる距離は220kmあればよいと定めました。それを150kmという人もいれば300kmという人もいるでしょうが、我々は220kmあれば十分と考えました。それ以上の距離を必要とする人はHVやICEをどうぞという考えです。そのために必要なのが35.5kWhの容量でした」と話す。
人見LPLは「逆に220kmの走行可能距離を確保しさえすれば、言い換えれば220km走行可能な容量のバッテリーさえ搭載すれば、あとは遊んでよいと考えました」と続ける。35.5kWhを超える容量のバッテリーを搭載できないわけはないが、それ以上を搭載する重量およびコストを他の部分に使おうと考えたわけだ。
走りの楽しさ重視でRWDを採用
人見LPLはその一例として、回生に不利なRWDの採用を挙げた。将来、ホンダは派生モデルを想定していないわけではないだろうが(実際東京モーターショー2017ではホンダeのコンポーネンツを用いたと思われるよりロー&ワイドなスポーツEVコンセプトを出展している)、このクルマ自体はスポーツカーとして開発されたわけではない。とはいえ、BEVならではの低重心や力強さからくる走りの楽しさをより活かせるRWDを採用したというのだ。ちなみに前後重量配分は50:50。街中でのキビキビとした走りが期待できる。
100kWの急速充電器で充電した場合、約30分で80%まで充電可能。50kWの充電でも同じ状態まで約36分とそう変わらないという。総電力量が小さいコミューター型EVのために超急速充電は想定しておらず、外出先での充電速度の理想は70kW前後だそうだ。中長期的に性能を維持することがユーザーのメリットになるとして、バッテリーはクーラーとヒーターで温度管理される。充電ポートは日産リーフと同じ車両正面にある。
インテリアに目をやると、12.3インチのタッチスクリーンを左右に2枚並べたインパネが目を引く。その両脇にスマホライクなデジタル表示のスイッチ(アイコン)が並び、さらにその両脇となるインパネ両端に、ドラミラー代わりのカメラが映した後方の映像を表示するモニターも並ぶため、ステアリングホイール奥のデジタルメーターを含め、インパネに横一列デジタル表示がずらりと並ぶ格好。また充電時間が発生するBEVは車内で過ごす時間が長いことから、発売までに仕向地ごとに最適化した各種コネクテッド機能を盛り込む予定だという。
ヒットメーカーが手がけた意欲作!
人見LPLは2代目フィットや初代N-WGNなどの開発責任者を務めたヒットメーカーであり、今回の Honda e もかなりの意欲作だと感じた。ただし価格が欧州で3万ユーロを切ったといっても単純計算すれば日本円で350万円程度にはなってしまうわけで、安くて室内も広く便利な軽自動車やコンパクトカーが充実した日本市場でベストセラーを狙える存在にはなり得ず、都市部での活用を想定した次世代スモールカーという実験的な存在となるはずだ。
けれども過去のホンダ車へのオマージュが見える魅力的なスタイリング(独創的なスタイリングのクラリティを手掛けた佐原健氏の作品)や、コンパクトなボディに大人4人が快適に過ごせるだけのスペースとトランクを確保したMM(マンマキシマム・メカミニマム)思想が感じられるパッケージングなど、久々にワクワクする要素が詰まったホンダ車に触れた気がする。数十年後、ホンダのスモールカー史を振り返る際「このクルマを起点に変わった」と言われるクルマになるのではないか。試乗の機会が待ち遠しい。
(塩見 智)
【関連記事】
電気自動車『HONDA E』日本発売の全貌は? 期待を込めて広報部に聞いてみましたhttps://blog.evsmart.net/ev-news/honda-e/
電動の自動車が増えて行く速度に対し、充電ポイントの不足、とりわけ高速道路のPA/SAであったり、街中でも自動車店や一部商業施設やそれらの駐車場にしか充電場所が無く、バッテリーでな装甲には不安が沢山あります。
また、車両同士の事故で相手方から出火した場合、消化の際にバッテリーと水が反応して爆発などの危険はいかがお考えでしょうか。
595様、コメントありがとうございます。
>バッテリーでな走行には不安が沢山
航続距離が短い、充電に時間がかかる、というだけで、ガソリン車オーナーの方にはハードルが高いと思います。これらは現実の数字ですし、本当のことですから、電気自動車に乗り換える場合には充分に理解したうえでないと、後で後悔することになってしまうと思います。ただそれでも電気自動車に乗り換える方がどんどん増えている理由は、車両の性能(まさに人馬一体的な)もありますが、実際の航続距離の問題は、長距離の旅行時にしか課題にならないという点もあります。普段通勤などで走行する場合には、毎朝80%まで充電しておけばウィークデイの充電不足はあり得ません。月~金で充電スタンドに寄ることはゼロになるわけです。土日もしくは休日のロングドライブも、金曜の夜は100%充電するようにしておけば、車の航続距離までは無充電で行けますし、例えば航続300kmの車であれば、行き帰りに15分間ずつの充電で航続距離は400km以上に延ばすことができます。これで、多くの場合は十分になると考えています。
>消化の際にバッテリーと水が反応して爆発
今まで電気自動車の火災は日本では1件、海外では複数件起きていますが、そもそも火災の件数が少なく、充分な量のデータが集まっていないのが現状です。
実際に最もシビアな事故事例を見てみましょう。
https://www.autoblog.com/2018/06/07/ntsb-report-tesla-model-x-crash/
これは有名な事件ですが、運転手はこの場所でオートパイロットがうまく動作しないことを知っていたうえでよそ見運転をして、112km/h前後で分岐点に衝突して車が真っ二つに分解された事例です。この分岐点には日本で良くあるような衝撃を緩和するための水のタンクではなく、バネのような再利用可能な衝撃緩衝システムが導入されていましたが、実際に数日までにこれが作動してしまっており、縮んだ状態で緩衝機能が損なわれた状態で衝突が起こりました。この火災の消火には10分かかっていることがリンク先でも確認できます。これはNTSBという日本でいうなら国土交通省のようなお役所のレポートなのである程度信頼性はあります。
このように、爆発は起こらないものの、激しい衝突では電気自動車も炎上します。そしてそれの消火には水が使われますし、その水によるショートも発生します。そのため、大量の水を使って消化する必要があります。しかし、ガソリン車と異なり、炎上までにドライバーを救援できており(結果その方は病院で亡くなりましたが)、車両の損傷もガソリン車ほどはひどくないことがお分かりだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=V3BNBKDMEhQ
こちらは160km/hでロサンゼルス市内を暴走した挙句に街灯などに衝突して真ん中から真っ二つに割れ、後部車体が宙を飛んで壁に刺さった事例です。左手の黒っぽい車両が事故車両の前半分、後ろ半分は左手の壁に突き刺さっています(動画にもあとのほうで出てきます)。真ん中の白っぽい車のさらに右後ろ、パトカーに隠れている場所で花火みたいに燃えているのが車体後半にあった、ちぎれたバッテリーです。爆発!と言っていますが、この程度とお考えいただければお分かりかと思います。このドライバーもいったんは生きたまま救出され、病院で亡くなりました。
60年代〜80年代の旧者フリークの私から見ても、ホンダeのデザインは素晴らしいと思う。
このクルマはカッコだけでも買いのクルマである。
もしかしたら過去の大ヒットしたヴィンテージカーのように、初期ロットモデルだからこその価値が見出せるクルマになるかも知れない。
この「素」の良さを、のちのマイナーチェンジでゴチャゴチャ整形してしまったら、その価値は半減してしまうだろう。
とにかく私は、その『たたずまい』が美しいと思う
きっとホンダeと一緒に意味もなくウキウキお出掛けしたくなる。
ホンダeは、街の景観をもポップに変えてしまう可能性のあるクルマ。
そう、、ホンダeには、初代シビック(cvcc)やシティカブリオレと同じにおいを感じるのだ。
メーカーに私の希望を言えば、カラーバリエーション12色展開なら新時代の乗り物、シティコミューターとして『大ヒット商品』になる可能性があると述べよう。
クルマのデザインと言う観点から褒めちぎってしまったが、ホンダeがEV車を一気に街に広め、エポックメイキングになる素質を秘めていることだけは確かである。
とにかくポップに12色展開、それだけで売り上げUPに貢献することだろう。
ルームミラー含めてミラーレスにして、フロント上面の一面をワイドスクリーンにして左右も見れると顔を左右に振るだけで後方が一望できるようにして欲しいな
分かりやすく纏められている記事に感謝♪
街乗りにフォーカスした小さなEVコンセプトには大賛成なので、売れると良いな~思いますし、これで何とかHONDAの新しい領域を開拓して欲しいのですが・・・
ただ、このコンセプトではパイオニアであるi3と比べると、出遅れ感が気になってしまいます。ちょっと可愛らしいデザイン、新しいインターフェース、それに思い切った価格設定を武器にして、どれ位、新しい顧客を開拓できるか注目したい所です。
ただ、少数株主の私としては、四輪でコスト競争力の弱いHONDAには、プレミアムで勝負して、健全な利益を出してぇ~と言いたいんですが・・・(笑)
現在、中古のsmart fortwoEV(リヤドライブ)に乗って3年目になります。
「Honda e」、無性に気になります。私のsmartのEVは1充電エアコンなしで夏場max140km走行、これで(シートが私に合わない点を除けば)チャデモ急速充電が出来ていれば「Honda e」に目移りなどしないんですが。
「Honda e」スペックのバッテリー33.5kWh、1充電航続距離220km、80%急速充電50 kWで36分、その上バッテリーが温度管理で連続充電にも期待が持てるなんて、smart EVからみると夢のようで十分過ぎる快適さに期待が膨らみます。
ただ現状の反動でドライバー席は座面角度調節が出来る電動シートがマストが持論です。実際BMW i3に試乗しても手動上下平行移動しか出来ないシートには納得できません。ホンダさんには国内発表後でもユーザーの希望聞いてくれる体制を期待したいですね。
macaron1984さん急速充電一回の充電時間は1人30分と決まってますよ。
自動で止まります。
りく様、コメントありがとうございます。横からすみません。急速充電の時間を30分と決めている施設は多いですが、そうでない施設もあります。例えばNCS提携充電器では、充電時間を施設側で自由に決められますし、NCSでない一般の充電器では、時間無制限のところもあります。
来年買い替えを考えています。
サイズを教えてください。
よろしくお願い致します。
梅原様、記事をお読みいただきありがとうございます。サイズですが現時点では未発表と認識しています。しかし以前の取材で、ホンダフィットより少し小さめのサイズになる、との情報をいただいておりますので、3955 x 1695 x 1550mm程度以下だと思っておけばいいのではないでしょうか。幅が5ナンバーサイズに収まっているとすればありがたいですが、逆に欧州車の常識からはちょっと考えづらい部分もありますので、そのあたりがクリティカルでしたら、私見ですが、詳細な諸元が出るまで待たれたほうがいいように思います。
バッテリーの温度がヒーターとクーラーで管理されるなら、長距離移動時の複数回の(仮に3回目以降の)充電もそれなりに入りそうですね。
ホンダe興味深いです。個人的に1充電200km以上あれば御の字ですよ。そもそも遠出なんて年一回あるかないかですし、自宅に充電コンセントがあれば30kWh程度が妥当ですから。
それに多くのドライバーは道の駅で休憩するはずですからその時間内に充電できればよし。充電渋滞も社交場として活用すればいいのです(i-MiEV・リーフユーザーの多くが心得ている)下手に大容量電池を積んで居眠り事故をするよりはマシ
ただ幾つか懸念もあり、特に2019年問題でFIT終了となるソーラー発電家庭だとV2H(ビークルトゥホーム)対応の可否が焦点になります…僕はそれでi-MiEV乗りになった。
日本の台風停電災害は熱波(地球温暖化どころじゃない!!)により今後激化する一方、それで冷蔵庫の中のものが腐ったり体調に悪影響が出たりする前に電力防衛する必要があるはずだから日本向けはしっかりCHAdeMO/V2Hに対応して欲しいですね!
そう考えると容量35kWhなら狭い自宅でも何とかなると思います…個人的には25kWh程度のEV軽自動車が出てくれるともっと有難いですが。
後輪駆動は電気自動車の美点です!何しろハンドリングが軽快ですので。
三菱アイが後輪駆動実現のためにエンジン排熱対策などで苦労したことを考えるとi-MiEVはそれらから解放されて理想の一台に仕上がってますよ。
EV乗りになるには各自の意識を変えないといけません…ガソリン車とは別物と考え身の丈に合ったクルマを選ぶべきじゃないでしょうか!?もっとも駐車場充電設備の有無で大きく差が出るのは承知ですが。
出張なんかで引っ越しをしなきゃいけなくなった場合どうするのさ⁉️
例えば東京から九州へ、とか220キロしか走行出来ない車だと、一気に行けないじゃんか。
吉田晋併様、コメントありがとうございます。遠くに行く場合、途中で充電すればいいのです。途中で何回かに分けて充電する必要はありますね。そういう意味で、めったにそういうことがない方は短距離の電気自動車で充分だし、しょっちゅう何百キロも走行する、という方は、もっとバッテリーの大きな(目安としては55kWh以上)長距離電気自動車か、ガソリンを使う車両にされたほうが良いでしょう。
新しいe-up!と競合するでしょうけど、値段的にホンダeの方が厳しそうですね。
https://s.response.jp/article/2019/09/17/326587.html
dc42様、はい。おっしゃる通り来年出す車両としてはスペック的に厳しいと思われるので、それを割り切った使い方をメーカーも提案していますね。いまドイツはかなり電気自動車優遇策を施行していますので、それに乗って、というところではないでしょうか。
例えばこれを会社員の方がドイツで社用車として使う場合、従業員さんの負担は同等価格のガソリン車の半額になってしまいます。最高の通勤専用車、なわけですね。