電気自動車『Honda e』日本発売の全貌は? 期待を込めて広報部に聞いてみました

2019年3月、ジュネーブモーターショーで、ホンダが新型電気自動車『Honda e』プロトタイプを発表しました。この車両は2017年の東京モーターショーで日本初公開されたコンセプトモデル「Honda Urban EV Concept」をベースに、市販に向けて進化させたモデルということで、ほぼ完成形に近いと思われます。はたして、日本発売についての現状はどうなのか。ホンダ広報部に質問してみました。

ホンダ公式ウェブサイト(ニュースリリース)
『「Honda e」プロトタイプを2019年ジュネーブモーターショーで世界初公開』

電池容量はどのくらいになりますか?

ジュネーブでの発表によると『Honda e』の一充電航続距離は「EV走行距離は200km以上(WLTPモード)を達成。30分で80%まで充電が可能な急速充電にも対応」(プレスリリース)とされています。200km以上といっても、どのくらい「以上」なのかは示されていません。200kmと280kmでは随分と印象が変わります。

WLTP(WLTCとほぼ同義)モードはJC08より実情に近いとはいえ、実際の高速道路走行時などはカタログスペックの7~8割程度の航続距離と考えておくことがEVユーザーの常識です。つまり、カタログスペックがWLTP200kmだとすれば実用的な航続距離はその70〜80%としておおむね140〜160km程度、280kmなら実用は196〜224km程度ということになります。いかに都市型EVを標榜するとはいえ、実質150kmでは市場の支持はまだ得られにくい気がします。実質200kmをクリアするためには、WLTCモードで270km程度のカタログスペックが必要です。

日産リーフには62kWhのe+が追加され、BMW i3 も33kWhから42kWhに電池が増量されました。大容量化は最近登場する市販電気自動車の潮流です。『Honda e』では実際の市場投入に向けてどのくらいの電池容量を想定しているのでしょうか?

【広報部コメント】
「詳細な電池容量は、まだ申し上げられません。200km以上と発表した航続距離は、90%以上の人の生活には対応できます。『Honda e』では、後輪駆動の運動性能やコンパクトなボディを活かして、都市での使い勝手や取り回しの良さを重視しています。また、30分の急速充電で80%にできることも都市での使い勝手には重要と考えています」

航続距離よりも運動性能と急速充電などの使い勝手を重視している、とのこと。私自身、中古30kWhリーフユーザーとしてこの方針には賛成です。高速道路で200kmを安心して走りきることができて、充電インフラが適切に整備されていれば一般的なカーライフに不便はありません。大容量電池=高価格ということでもあるので、みんなのEVとなるためには、「適切な電池容量」を提案することが必要だと思います。

明確な容量は発表段階にないようですが、ヒントはあります。「30分の急速充電で80%」は、欧州でもそれなりに普及(2018年6月で約6300基)している現状のチャデモ規格(最大出力50kW、最大電流125A)を想定したものと思われます。欧州が主導して提唱しているCombo2(Combined Charging System=CSS)は最大200kW出力での整備がすでに進行中ですが、電池側の受け入れ性能を考えても「50kWで30分」が現実的。残量20%から80%までに30分ということは、搭載電池の電圧にもよりますが、30分で充電できる約25kWhが搭載電池容量のおよそ60%となり、そこから推定される最大の電池容量は約42kWhです。

【参考記事】
『EV急速充電器メーカー一覧と選び方』

搭載するリチウムイオン二次電池の仕様など詳細もまだ明らかではありません。また、コンパクトさが特徴の『Honda e』ですが、BMW i3 もコンパクトな車体は変えぬまま、電池性能の向上などでデビュー当時の22kWhから42kWhに容量が増加しています。実用200km以上がターゲットだとすると、『Honda e』の搭載電池は新型リーフなども搭載する「NMC622」(もしかするとさらに性能が向上した「NMC811」?)、容量35kWh程度になるのではないかと予想(希望的憶測)できます。

日本発売の時期をもう少し明確に教えてください。

『Honda e』プロトタイプをベースにした電気自動車は「2019年後半に生産開始」(プレスリリース)され、まず欧州から発売されます。市販車の製造はホンダ埼玉製作所(寄居工場)で行われる計画であることも伝えられています。気になる日本発売は2020年と報道されていますが、たとえば東京オリンピックに間に合うのかどうか、もう少しはっきり教えていただけませんか?

【広報部コメント】
「厳格な二酸化炭素排出規制が実施される欧州がメインの市場ではありますが、2020年の発売を予定している日本でも都市部のお客様を中心に十分に受け入れられると考えています。現在は生産立ち上げに向けて詳細を詰めているところです」
「電動化のラインアップは各地域と市場に応じて対応していく必要があると考えています。EVだけでなく、ハイブリッド・PHEVやFCV(燃料電池車)などをバランス良く組み合わせて展開していくことが大切だと考えています」

来年(2020年)中であることは決まっているものの、時期はまだ明言できないという回答でした。ヨーロッパや中国市場が中心なんだろうなと想定はしていましたが、広報部の方から直接「欧州がメイン」とはっきり断言されたのは、ホンダが好きな(いや、自分ではスクーターしか買ったことないですが、F1は海外まで応援に行きました)日本人として、日本で製造された魅力的なEVがしばらくは目の前を通り過ぎるだけという状況に、ちょっとじれったい気分を感じます。

ちなみに、2018年11月に開催された広州モーターショーでは、ホンダは中国専用EVとしてコンパクトSUVであるVEZELベースの『理念VE-1』(電池容量は53.6kWh)を発表。すでに生産を開始していることが伝えられています。

今まではモーターショーのコンセプトモデル止まりがほとんどだった各メーカーの電気自動車ですが、ここに来てホンダのみならず、フォルクワーゲンやメルセデス・ベンツ、ポルシェ、さらにはアメリカのGMまでが「本気宣言」しているのは、やはりEUのCO2排出規制や、アメリカのZEV規制、中国のNEV規制など、世界各国市場での規制強化が強く影響していることが伺えます。

【参考記事】
『EUが「2030年には2021年比で37.5%のCO2削減」の規制案を決定』

EVシフトが「規制ありき」でしか進まないのは、一人のEVファンとして少しばかり残念です。先日『Eマガジン』という電気自動車専門誌の企画(3月30日発売の Vol.02 に掲載)で、電気自動車オーナー192人にアンケートを行いました。結果、オーナーのみなさんが「EVを買ってよかった」と思っている理由は、「環境にいい」をぶっちぎって、「(エンジン車より)気持ちいいから!」が最多回答でした。

自動車メーカーが環境規制への対応だけではなく、ユーザーの「気持ちいいクルマを!」ニーズに向き合ってくれるようになるには、もう少し電気自動車市場が成熟する時間が必要なんでしょうね。

車両価格はいくらくらいになりそうですか?

「エクステリアは、Hondaのスモールカーが作り上げてきた走りの楽しさと愛着を感じる親しみやすさをシンプル・クリーンに表現」(プレスリリース)したそうです。詳細な車体サイズなども未公表ですが、全長は4m以下で、軽自動車枠には収まらないものの『FIT』よりひと回りコンパクトなサイズになることが明かされています。

はたして、車両価格はどの程度を想定しているのでしょうか。電池容量が30〜40kWh程度(予測)のコンパクトカー。とすると、新型リーフ40kWhの価格である約320~400万円程度がベンチマークとなるのでしょうか?

【広報部コメント】
「HondaとしてはEVを求める人は新しいものを買いたい、いいものを買いたいという人が多く、そこに走りやデザインを求める人が多いと考えています。今回の内外装のデザインやヘッドライトの光り方などは、人に近いといいますか、ユーザーのみなさんの『相棒』、パートナーになることを目指して開発されたものです。大画面モニターやカメラモニタリングシステム等、サムシングニューの価値を提供することが大切だと考えています。したがって、たとえば他社のEVとは目指すところが異なり、新しい価値に見合った価格設定になるかと思っています」

あ、そうなんですね。たしかに、新型リーフ40kWhの新車価格、最安の約320万円の電池容量単価を計算すると約8万円/kWh。ただの蓄電池価格としても驚くほどのコストパフォーマンスです。

一方、42kWhのBMW i3は543万円~。電池容量単価は約13万円/kWhです。i3 の場合、カーボンシャシーや瞬発力、製造から廃棄までサスティナビリティを徹底するといった付加価値が「サムシングニュー」になっているということですね。

『Honda e』がサムシングニューとして提案しているのは、プロトタイプを見る限り都市での走りの良さや、個性的で「サイドカメラミラーシステム」に象徴される先進的なデザイン&機能への愛着など。市販モデルにどの程度踏襲されるかは未知数ですが、たしかに、コックピットの印象をがらりと変える横長の大型ディスプレイや、インテリアの質感などはかなり魅力的です。カーボンシャシーほどの原価はかからないでしょうが、電池単価換算8万円はちょっと厳しい。とすると、リーフとi3の中間あたり、10万円/kWhで、電池容量が35kWhとして、約350万円~ってくらいになるのかな、と予想できます。

とはいえ、テスラ『モデル3』スタンダード・レンジは、3万5000ドル(約390万円)で航続距離220マイル=約353km(EPA)ですから、電気自動車の車両価格のハードルは上がって(価格は下がって)います。もちろん、モデル3スタンダード・レンジも、テスラ車の魅力であるオートパイロットなどをオプション設定すると500万円近いクルマになるんですけどね。コンパクトカーでもあるし、電池は30kWhでいいですから、なんとか本体価格300万円を切って買えるEVになると個人的に興味津々なのですが。。。

ちなみに、国内ディーラーへの急速充電器設置も「クラリティPHEVの発売を契機に着々と設置を進めているところで、今後も引き続き進めていきます」(広報部コメント)とのことでした。

今回のジュネーブモーターショーでホンダは「2025年までに欧州で販売する四輪車のすべてを電動車両にする」という新たな目標も発表しました。広報部コメントにもあったように、ここでいう「電動化」はEVだけのことではなく、ハイブリッド、PHEV、FCVなどを含んだもので、2019年に欧州でも発売された『CR-V』にも搭載されている2モーターの「SPORT HYBRID i-MMD(Intelligent Multi-Mode Drive)」【ホンダウェブサイトの技術解説ページ】が中心と考えられているようです。

ともあれ、日産&三菱が孤独に走り続けていた日本メーカーのEV事情。ホンダもかつて FIT EV を自治体などにリース販売していたことはありますが、クラリティPHEVやEV(アメリカでリース販売)に続き、本格的な新開発市販BEVの登場は大歓迎したいニュースです。ホンダ広報部さま、ぶしつけな質問に回答いただきありがとうございました。来年、日本での発売を楽しみにしています!

2017年の東京モーターショーで発表されたコンセプトモデル「Honda Urban EV Concept」。『Honda e』は5ドアハッチバックになるなど市販化に向けてのアップデートが行われた。
東京モーターショーでは「Honda Sports EV Concept」も発表されていた。コンパクトな電気スポーツカー。これもぜひ商品化してほしい。

(寄本好則)


4 thoughts on “電気自動車『Honda e』日本発売の全貌は? 期待を込めて広報部に聞いてみました”

  1. >国内ディーラーへの急速充電器設置も「クラリティPHEVの発売を契機に着々と設置を進めているところで、今後も引き続き進めていきます」(広報部コメント)

    確かに設置は進んでいますが、設置されているお店のほとんどで充電出来るのが店舗営業時間だけで定休日や営業時間以外は充電出来ません。
    24時間充電出来る所となると関西では大阪府内に4店舗だけです。
     
    電気自動車はお店の営業時間中しか使わない乗り物ではありません。
    普段使いするからこそ24時間365日使います。
    Honda e発売前の予約開始時までに既設分を含めてCHAdeMO充電設備は点検中以外の24時間365日使えるように変更しないと三菱の失敗を繰り返すと思います。

    1. よこよこ様、コメントありがとうございます。おっしゃる通り、充電設備の24時間化は、ある程度義務付ける必要があると思います。ガソリンと違って電気は24時間365日止まることなく供給されているのですから、蛇口をひねっても出てこない時があります、というのはおかしいですよね(笑)

  2. ホンダeは三菱i-MiEVによく似たコンセプトですよね!
    後輪駆動のコンパクトカーという意味では同じですし。

    ホンダディーラーの急速充電器(QC)、容量50kWは立派ですがやはり設置位置に難有りだと思います。
    QC用電源が低圧受電なら引込口付近にないと効率悪いですし、24時間対応にもしにくくなります。
    三菱ディーラーも初期のQCは店舗建物近くにあり夜間閉鎖されることに不安を感じました…これでは定休日も充電できず、航続距離の短いEV乗りにはもどかしい存在です。
    中期以降は三菱も考えて道路に面した一角にQC設置するようになりましたが。
    ホンダもそこは分かってほしいです。
    トヨタも他人事ではなく、普通充電器を店舗奥に設置して夜間閉鎖するのはやめてほしいですね…今後問題になりかねませんよ?(プリウスPHV乗りも苦言を呈しているかもしれませんが)

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