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ヒョンデが「カスタマーエクスペリエンスセンター大阪」をオープン/化石燃料から電気(EV)へ転換の象徴に

ヒョンデが「カスタマーエクスペリエンスセンター大阪」をオープン/化石燃料から電気(EV)へ転換の象徴に

ヒョンデ・モビリティ・ジャパンが自社EVなどの販売拠点となる「Hyundai Customer Experience Center 大阪」をオープンしました。日本で2番目、西日本初のCXCは、心斎橋駅近くにあったガソリンスタンドを転用しています。CXC横浜とはひと味違う都市型CXCを紹介します。

目次

日本国内で2カ所目のCXCがオープン

2025年5月14日、ヒョンデ・モビリティ・ジャパン(HMJ)の直営ショールーム『Hyundai Customer Experience Center 大阪』(ヒョンデ カスタマーエクスペリエンスセンター大阪=CXC大阪)が、大阪の地下鉄御堂筋線、心斎橋駅近くにオープンしました。日本では2か所目、西日本では初のCXCになります。

オープニングセレモニーには、HMJの親会社、Hyundai Motor Group(HMG)の張在勲(チャン・ジェフン)副会長も来日し、新規オープンへの意気込みを語りました。

HMGのチャン・ジェフン副会長。

「(CXCは)サービスについて最初から最後までお客様が体験できる、ヒョンデの、お客様第一という哲学を盛り込んだ空間になっています。このようなスペースを使ってお客様との接点を増やすとともに、文化的な多様性と活力が共存する大阪で、ヒョンデの価値を伝えることに取り組み、ブランドがお客様の日常の中に自然に溶け込むことを目指します」

●Hyundai Customer Experience Center ⼤阪
⼤阪市中央区南船場3-4-26 THE PEAK SHINSAIBASHI
営業時間:10時〜18時(⽉曜⽇、第2⽕曜⽇定休)
TEL:06-6926-8324

ガソリンから電気への転換の象徴

CXC大阪の最大の特徴は、ガソリンスタンドをショールームに転用したことです。建物の構造はそのまま生かしつつ、車を展示するショールーム部分に別の構造体を入れ込んでいます。

言葉で説明するのは少し難しいのですが、ショールーム2階に設置されたカフェからは、1階のショールームの作りがよく見えます。とても不思議な形状ですが、一体感があり、思わず「おぉ〜」と声が出てしまいました。

HMJの七五三木(しめぎ)敏幸社長はCXC大阪のデザインについて、「歴史ある建築に新たな構造体を取り込んだほか、内外のコントラストを楽しめる空間設計もぜひ注目してほしい」と強調しました。

またガソリンスタンドを転用したことについて、七五三木社長はこう表現しました。

「長年、地域の皆様に親しまれてきたガソリンスタンドに、EV(電気自動車)のショールームとして新たな命を吹き込んだ施設になります。 かつて化石燃料を支えていた場所が、次なる時代のモビリティの発信拠点へと生まれ変わった。これは持続可能なモビリティー社会を目指す私たちの思いを象徴的に表していると言えます」

HMJ七五三木敏幸社長。

土壌汚染や地下タンクの撤去、建物の利用制限などで跡地利用が難しいこともあるガソリンスタンドが、雰囲気の良い次世代車のショールームになるのは、七五三木社長の言葉通り時代の象徴に思えました。しかも、だいぶカッコイイです。

CXC大阪は車の展示のほか、カフェスペース、商談室を備えている他、ヒョンデのグッズ類の販売、カラーバリエーションの展示などもあります。また、整備ができる設備とともに、2口のガンを備えた最大出力120kW(1口使用時※最大1000V×200A)の急速充電器もあります。

韓国のEVSIS(イーブイシス)製急速充電器。

マイカーのチェックや新型車を見に行くだけでなく、ちょっと通りがかりに足を休めるために立ち寄るのもアリな、気持ちのいい空間になっています。

輸入車激戦区に都市型CXCを展開

カフェスペース。

ヒョンデのCXC第1号店のCXC横浜は繁華街から少し離れた郊外に位置しています。広い土地を利用してゆったりしたサービス工場を設置したり、余裕のある空間での車の展示から、購入相談、試乗、納車、整備などまで、車に関するサービスを一気通貫で提供できるのが特徴です。

CXC大阪も同じく、車の検討から納車、整備などのサービスを提供できる機能を備えています。

でもそれより気になるのが、CXC横浜とは対照的に、人通りの多い商業エリアの真ん中に位置していることです。心斎橋駅から続く地下道を通れば、北8番出口を出て目の前という好立地です。

心斎橋駅周辺は高級ブランドショップが数多く出店している商業エリアで、テスラ、プジョー、マセラティなどの輸入車メーカーもショールームを展開しています。CXC大阪の隣には、GPSデバイスなどで知られるガーミンの直営ショップがあります。多数の飲食店もあり、海外からの観光客が多いのも特徴です。

このような、CXC横浜とはまったく違う商業エリアを西日本への足がかりに選んだ狙いはどこにあるのでしょうか。七五三木社長が合同取材に答えました。

まず七五三木社長はCXC大阪のオープンについて「西日本、関西攻略のスタートが切れたと思う」と述べ、今後についてこう話しました。

「京都のヒョンデ・モビリティ・ラウンジ京都四条も素晴らしい実績を上げていますが、やはり大阪市の中心、それも心斎橋に拠点を構えるのは私の宿願でした。(CXC大阪のオープンで)関西地区、西日本の皆さまに、ヒョンデを経験し、楽しんでいただけるスポットができたと感じています。一方で、非常に身が引き締まる思いです」

大阪随一の商業エリアで認知度向上を目指す

そして心斎橋に出店した理由について七五三木社長は、「ランドマークとして認知度の向上を狙っている」と説明しました。

「日本ではショールームに来場する人たちの半分近くが、通りすがりに(立ち寄った)という方が多い。だから良い場所に拠点を構えるのはもちろんですが、アイキャッチを増やしていきたいという思いがあります。それが大きな理由です」

ヒョンデは日本再進出にあたり、ディーラーを介さないオンライン販売方式をとっていますが、より多くの人たちに直接、ヒョンデというブランドを伝えるため、CXC大阪をその拠点にするということです。

輸入車メーカーはブランドの認知度向上のため、カフェを併設したショールームを商業エリアに設置することも多いのですが、ヒョンデもその手法を取り入れたと言えるかもしれません。

とはいえ、同様のショールーム(CXC)を次々に増やすということではないそうです。七五三木社長は、「街中というよりはもっとカジュアルに、ショッピングセンターや、あるいは(先日まで実施していた)ファミリーマートといったコンビニエンスストアなどで、気軽に、乗りたいと思ったらすぐに乗ることができるような拠点を増やしていきたいと思っています」と、今後の展開について話しました。

ヒョンデは、CXC以外に、自動車販売店などと提携した「Hyundai Mobility Lounge」や、あまり規模が大きくない都市型ショールームの「Hyundai Citystore」を展開しています。Hyundai Citystoreは最近まで、福岡のイオンモールにも出店していました(現在は移転、リニューアルオープンの準備中)。

またインスターの日本発売に合わせて、ファミリーマートでの試乗会も実施しました。小規模でも、ヒョンデの車を身近に体験できる機会を増やし、日本での販売拡大を目指すということでしょう。

日本の自動車市場は、世界的に見ても極端に国産車のシェアが高い保守的な市場です。そこに新規参入のメーカーが、しかもEVという新しいジャンルの車で参入するのは容易ではありません。

でも、インスターといい『KONA』といい『IONIQ 5』といい、乗れば良さがわかる電気自動車だと思います。

手前がインスター。

CXC大阪のオープニングセレモニーの翌日、大阪から東京までインスターを試乗することができたのですが、サイズといい性能といい、室内の質感に使い勝手といい、上質で、日本の道路事情にぴったりのパッケージになっていると感じました。試乗記は後日、お伝えしたいと思います。

七五三木社長は、日本のユーザーは「評価が厳しく、ブランドが鍛えられる」ため、「より良い車になっていく」という考えを示しました。インスターのようなEVがあれば、そんな厳しい市場にも割って入ることができるかもしれません。CXC大阪がその足がかりになることを期待したいと思います。

取材・文/木野 龍逸

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この記事を書いた人

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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