電気を簡単に取り出せる『KONA』を無償貸与
2024年9月26日、Hyundai Mobility Japan株式会社(ヒョンデ)が神奈川県横浜市に電気自動車の『KONA』を無償貸与することを発表し、横浜市からヒョンデへの感謝状贈呈式が行われました。
2022年2月にEVの『IONIQ 5』、FCEV(水素燃料電池自動車)『NEXO(ネッソ)』とZEVだけを携えて日本市場再進出を果たしたヒョンデ。無償貸与されるのは、3車種目として昨年日本発売された100%BEVのコンパクトSUVであるKONA(Lounge)で、バッテリー容量は64.8kWh(WLTCの一充電航続距離は541km)です。
無償貸与の期間は3年間。横浜市では「公用車の1台として、さまざまな機会で活用していく」予定です。ヒョンデでは「車両の無償貸与のみならず、さらに幅広い提携関係構築」を進めていく予定で、年内に発売予定のEVバス『ELEC CITY TOWN』を、災害発生時における移動式電源として提供したり、横浜市港北区にあるショールーム(カスタマーエクスペリエンスセンター横浜)を災害時における帰宅困難者の受入施設とする協定締結に向けた協議を進めているとのこと。
自治体と電気自動車メーカーでは、日産の「ブルー・スイッチ」や三菱の「DENDOコミュニティサポートプログラム」といった災害時の電源供給を中心とした協力を想定した協定を締結するケースが多くなっています。KONAは急速充電口から給電する「V2H」や「V2L」に対応しているほか、車内にAC100Vのコンセントを備え、普通充電口から手軽に電気を取り出せる「室外V2Lコネクター」を標準装備しています。
高価で重い外部機器を使わずとも手軽に電気を取り出せる機能は、災害などの非常時にこそ便利。また、横浜市が関わる屋外イベントで、このKONAが電源車として活躍する姿を見せてくれるのではないかと思います。
横浜市ではすべての公用車をEVなどの次世代車に
式典では、横浜市の平原敏英副市長がヒョンデの七五三木(しめぎ)敏幸氏(登壇予定だった趙源祥社長が体調不良のため交替)に感謝状を贈呈。
平原副市長は挨拶のなかで「横浜市役所は市内におけるCO2排出量の5%も出しており、市内最大級の排出事業者となっていて、率先して脱炭素社会実現への取組を進めなければならない」との覚悟を明示。「横浜市が保有する約1400台の公用車を、2030年までにEVをはじめとする次世代自動車にする」ことや、「現在200口ほど設置されている市内の急速充電器を400口まで倍増させる」計画を進めていることを紹介しました。
贈呈式の司会を担当した横浜市のカーボンニュートラル事業推進課の山本恵幸担当課長によると、現状の公用車1400台のうちEVは92台。リーフやアリアなど市内に本社がある日産の車種のほか、軽バンである三菱のミニキャブMiEV(現行車種はミニキャブEV)が多いとのことでした。
横浜市役所の公共用EV充電器は今のところ急速充電器(最大50kW)1口だけですが、公用車の駐車場には35口ほどのEV充電用コンセントが設置されているそうです。92台のEV(しかも多くはバッテリーが小さい軽バン)に35口の普通充電設備があれば、さほどの実用的な不便はないでしょう。あとは、再エネ電力の導入や、複数台同時充電時のデマンドコントロールあたりが課題でしょうか。今回は詳しく取材できなかったので、機会があれば改めて紹介したいところです。
ちなみに、約1400台の公用車のうちBEVは92台ですが、PHEVやHVを含む次世代車はすでに557台(約40%)導入されているとのこと。2030年100%を視野に入れ着実に前進中といったところでしょう。山本氏は「EVだけということではなく、幅広く脱炭素化に向けて前進したい」とのことでした。
もうすぐ、バッテリー容量30kWhの軽バンであるホンダ『N-VAN e:』の納車が始まります。発売開始は遅れているものの、トヨタ・スズキ・ダイハツ連合の軽バンEVもおそらくは30kWhくらいのスペックで出てくるはず。HVもいいですが、脱炭素化をより効果的に前進し、社会変革を進めるポテンシャルはやっぱりBEVが抜き出ています。横浜市にはぜひ「進化した軽バンEV」もどしどし導入していただきたいと思ったのでした。
EVsmartブログではいろんな記事で紹介してきたように、今回無償貸与されたKONAは私のマイカー(バッテリー容量48.6kWhのCasualグレードですが)でもあります。おおむね350kmくらいは一気に走れる航続距離は問題ないし、私は自宅で充電できるので高速SAPAの急速充電器すらあまり使わなくなりました。ACCなどの運転支援機能の安心感、室外V2Lの便利さ、回生パドルシフトをはじめとするEVとしての使い勝手などが秀逸。今、日本で購入できる市販EVとして、価格や性能、EVとしての魅力がベストバランスの1台だと感じつつ大満足。KONAが横浜市の公用車として活躍することになるのは、ひとりのオーナーとしてもうれしいニュースなのでした。
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がんばれ、日本の脱炭素社会実現! です。
取材・文/寄本 好則