中国製電気自動車Kandi EX3がアメリカの安全基準をクリアして株価急上昇

中国の電気自動車メーカーである『Kandi』が発売する『EX3』と『K22』と名付けられた2モデルについて、アメリカのNHTSA(National Highway Traffic Safety Administration=国家道路交通安全局)の輸入販売承認を受けたことを発表。ニュースが報じられた2月20日には、同社が上場するナスダックで株価が40%以上急騰したことが、アメリカでセンセーショナルに報じられています。

中国製電気自動車Kandi EX3がアメリカの安全基準をクリアして株価急上昇

また、中国製電気自動車についての衝撃的なニュースです。このEVsmartブログで、数日前にお届けした『中国製電気自動車 ORA R1 を世界が絶賛! 100万円で200KM以上を実現』という記事には、数日間で1000を超える「いいね!」をいただくなど大きな反響をいただきました。国を挙げてEVシフトを進める中国製電気自動車の動向は、日本人にとっても気になる話題です。

今回、NHTSAから輸入販売の承認を受けた2車種はどんなEVなのか。すでに公開されているアメリカ向けの公式サイトで確認してみます。

『KANDI』公式サイト

Model EX3=2万3000ドル以下で買えるSUV

車両価格/2万9995ドル(約330万円)
控除税額/7500ドル(約82万5000円)
実質価格/2万2495ドル(約247万円)

全長/約4005mm
全幅/約1760mm
電池容量/41.8kWh
航続距離/188マイル(約303km)

主力車種と思われるEX3はコンパクトなSUV。約42kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は約303kmとなっています。この数値は実用に近いアメリカのEPA基準だと思うのですが、先日マイナーチェンジして電池を約42kWhに増量したBMW i3 のEPA基準での航続距離は153マイル(約250km)程度と予想されているのに比べて、大幅に航続距離が長いことになります。

同じような電池容量でなぜ? ということについては、EX3のモーターの最高出力は明記されていないのですが、定格出力は21kW。i3 のモーターの定格出力は75kWです。スポーツカーに匹敵する加速を誇るi3と比べて走りを穏やかにすることで、航続距離が伸びているのだと推察します。

それにしても、新型車を紹介する自社サイトで、最高出力や最大トルクといったスペックがまったく紹介されていないのはどうなんでしょう。電気自動車は新しいモビリティだという陰ながらのアピールのようでもあり、言わない方が賢明という判断のようでもあり……。おそらく、CCS2対応だとは思うのですが、急速充電についての説明もありません。


KANDI公式サイトで公開されている『EX3』のムービーです。

Model K22=130万以下で買えるコンパクト2シーター

車両価格/1万8995ドル(約209万円)
控除税額/7500ドル(約82万5000円)
実質価格/1万1495ドル(約126万円)

全長/約2770mm
全幅/約1560mm
電池容量/17.6kWh
航続距離/75マイル(約121km)

K22は、日本でいう軽自動車に近いサイズのコンパクトな2シーター車です。バッテリー容量は17.6kWh。リア駆動(RWD)である点も、三菱のi-MiEVに似ています。

航続距離は約75マイル(約121km)となっています。モーターはEX3と同じ「YS220H020」という型式番号の同じものが使われているようです。電池1kWh当たりの航続距離を計算してみると、EX3が「303km÷41.8kWh=約7.3km」であるのに対して、K22は「121km÷17.6kWh=約6.9km」と、よりコンパクトなのに電費が悪い計算になってしまうのがちょっと不思議ではあります。K22のほうが、スポーティな走りが楽しめるセッティングになっているのでしょうか(まだ想像するしかないですが)。


KANDI公式サイトで公開されている『K22』のムービーです。

中国製電気自動車なんて、はもう通用しない!

ここ数年、中国で電気自動車メーカーが増えているというニュースを知っても、日本では「安全性が……」などと、ライバルになり得ないといった評価をする人が多かったのではないでしょうか。

でも今回のニュースは、その中国製電気自動車が、アメリカの形式認定に合格して輸入販売を承認された、つまりアメリカが安全性にお墨付きを与えたということを意味しています。日本でも乗りたいという人がいれば、アメリカから並行輸入してナンバーを取得することも可能なはず。

Kandi のCEOであるHu Xiaoming氏は、プレスリリースの中で「EX3とK22は、価格と品質、機能において、アメリカのユーザーに支持される競争力があると信じています」とコメントしています。中国製電気自動車の日本市場進出も、いよいよ秒読み段階に入ったといえるのではないでしょうか。

(寄本好則)

この記事のコメント(新着順)3件

    1. さくら様、コメントありがとうございます。
      https://e-go-mobile.com/en/
      こちらでしょうか。3月から製造開始とのことで、まだ販売台数などはよく分かりませんでした。また情報が入りましたらお知らせいたします。
      すでにコンセプトカーの域は出ているようですね。ただし単相にしか対応していないこと、急速充電に対応していないことなどから、一般には売れないのではないでしょうか。特殊な用途向けのように思えます。

    2. K22,E-GO…どっちもスマートフォーツーに似てますね。二人乗りとか急速充電非対応とかリアモーター後輪駆動など共通点も多いですし。ただ既に三菱i-MiEVに乗っている身として、4人乗り・急速充電対応は必須。いずれも検討外です。
      いずれにせよシティコミューターの立ち位置は間違いないので行く末を見守りますか。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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