京都の京阪バスが BYD の電気バス導入〜ひとつの路線のバスすべてをEVに

京阪バス(本社・京都)と関西電力、ビーワイディージャパンの3社は2021年2月24日、電気バスの導入に関する協定を締結したことを発表しました。まずは京阪バスに電気バスを導入し、電気バスを活用したビジネスモデルの展開を目指します。

京都の京阪バスが BYD の電気バス導入〜ひとつの路線のバスすべてをEVに

京都駅と京阪七条駅などを結ぶ路線に電気バス導入

業務提携を発表した花田晋作・ビーワイディージャパン副社長(左)、鈴木一也・京阪バス社長(中)、藤野研一・関西電力執行役員

よく晴れたけれども冷たい風が肌に刺さる2月24日の午前。京阪バス、関西電力、ビーワイディージャパンの3社は京都駅近くのホテルで合同記者会見を行い、電気バスに関する業務提携を発表するとともに、今後のビジネスモデルの展開について説明をしました。業務提携は2026年までの5年間で、まずは実証実験として、京阪バスが電気バスを運行します。

京都に本社を置く京阪バスは大阪、京都、滋賀の3府県を中心に路線バス、高速バス。定期観光バス等の輸送を担っています。現在の保有台数は628台です。来年で創立100周年を迎えるので、絶好のタイミングでの電気バス導入になりそうです。

実証実験ではまず、今年中に京阪バスが運行している京都駅と京阪電車の七条駅、梅小路を結ぶ「ステーションループバス」で使用している4台の車両をすべてEVにします。京阪バスによれば、ひとつの路線すべてを電気バスにするのは日本初だそうです。

「ステーションループバス」は京都駅を起点に祇園などを観光するにも便利な路線です。

また京都駅がルートの中に入っている路線に電気バスを導入することで、京都市民はもちろん、観光客へのカーボンニュートラル実現に向けた機運を醸成できるという期待もあるそうです。

使用するのはBYDの小型バス『J6』です。EVsmartブログでは上野動物園で使っている様子を紹介したことがあります。

【関連記事】
上野動物園にBYDの電気自動車小型バス『J6』が国内初導入(2020年10月20日)

発表会場に置かれた『J6』は前扉だけのバージョンですが、運行時には後扉もある2ドアになる予定です。

京阪バスの鈴木一也社長は会見で、今後の進め方について「(実証実験で)メンテナンスコストなどの理論値が確認できれば、次は営業所単位での電動化に取り組みたい」と述べています。

京阪バスでは、例えばステーションループバスを電気バスに替えることで1台あたり38.8トン、4台で155.2トンのCO2削減になると試算しています。そんな机上の計算値はあるものの、実際に使うことで確証を得たいということのようです。まずは使ってみないとはじまりません。

営業所単位での導入というのは、ひとつの営業所で内燃機関の車とEVが混在していると設備費などが二重になって無駄が出るからと考えているそうです。やるなら一気にやる、という意気込みは好印象です。

でも今は新型コロナで運輸機関の経営は非常に悪化している時期です。それでも新しい業務提携に踏み出した理由を聞かれた鈴木社長は、国からの補助金などもあるので「経済的な合理性はある」と明言しました。電気バス導入については2年ほど前から考えていたそうなので、熟慮の末ということなのかもしれません。

また期間が5年間になっているのはちょっと長いのではとも思ったのですが、京阪バスの担当者によれば、春夏秋冬を通した運行データを集めることが必要で、そうすると1年とか2年では短い、5年間、つまり5サイクルは見てみたいということでした。

良いデータがとれることを祈りましょう。あわよくば、前倒しで次の段階に進むことも祈りましょう。

チャデモ仕様の急速充電に対応

では実証実験の次はどうするのでしょうか。日本は実証実験ばかり多くてちっとも先に進まないので、なんとなく気になります。

京阪バスは、有効性が確認されれば将来的に保有車両すべてを電気バスにすることも考えているそうです。と言っても、今のところ2050年くらいを目標にしているとのことなので、まだまだ先の話ではあります。これも、少しでも時期が早くなるといいですね。

ちなみに京阪バスでは、毎年30~40台を入れ替えているそうです。耐用年数は18年程度なので、全取り替えまで少し時間がかかるのは仕方のないところです。

導入する『J6』はチャデモ(CHAdeMO)規格の急速充電に対応しています。上野動物園では専用の交流充電器を使っていたようですが、『J6』はバッテリー容量が105.6kWhで、専用の交流充電器でも40kWの出力があるため、チャデモでも専用充電器でもそれほど大きな違いはありません。

将来的にBYD以外の電気バスを導入する場合は共通規格のチャデモの方が互換性は高くなりそうですが、とは言えその時にどんな規格が主流になっているのかという問題もありそうで、現時点で何が最善策かを考えるのは難しいところです。ぜんぜん別物ですが、USBもどんどん進化してますよね。

電気バスを導入するための初期費用についても、鈴木社長から説明がありました。導入する『J6』の車両価格は、「ざっと2000万円くらい」で、その他に充電設備などの工事で1000万円、合計で3000万円くらいになるとのことです。充電設備はバスの数とは比例しないので、導入台数が増えていけば相対的にコストの中での比率は下がります。

とは言え、充電設備関連で初期費用が1000万円というのはちょっと高いような気もします。EVなどへの補助金窓口になっている次世代自動車振興センターのHPにチャデモ仕様の急速充電器の一覧が出ていますが、本体価格は一番高くても363万円です。設置費用が高いのかもしれませんが、「ざっと」なので目安と思った方がよさそうです。

運行開始時期はまだ未発表

京阪バスの鈴木一也社長。

ではいつから電気バスに乗れるのでしょうか。

京阪バスの鈴木社長によれば、運行開始時期は2021年内、ということしか言えないそうです。新型コロナの影響もあるらしく、なかなか簡単にはいきません。

でも導入時には4台同時に運行予定です。早く新型コロナが集束して、晴れて電気バスで京都を走ることができることを願っています。アマビエ様、よろしくお願いいたします。

業務提携でエネルギー利用の効率化や新ビジネスを模索

(左から)協定書を手にするビーワイディージャパンの花田副社長、京阪バスの鈴木社長、関電の藤野執行役員、。

今回の『J6』導入は業務提携の第一歩に過ぎません。京阪バス、関電、BYDは業務提携の協定書で、それぞれの役割、目的を記載しています。

協定書によれば、京阪バスの役割は、実際に使ってみてドライバーの運転や運行への影響、乗客の反応の確認、CO2削減効果の確認やデータ収集などです。

関電の役割は、運行データ収集とデータの利活用、そうしたデータから充放電のタイミングの最適化を図ること、複数台を導入した時のエネルギーマネジメントの最適化や適正価格での充電器等の安定供給などとなっています。

人口減少やCO2対策などにより、将来的にエネルギー消費量が減少していくのは確実です。つまり、エネルギーの供給産業は減っていくパイの食い合いになります。その中でどうやってシェアを確保するかを考えると、EVは電力会社の目に魅力的に映るようです。関電担当者によれば、CO2削減の狙いがあるのと同時に、電気のユーザーをどうやって増やすかも重要なポイントだそうです。EVはその両方にプラスになるわけです。

プラスになるためにはもちろん脱化石燃料が大前提なので、ここで、昭和を引きずる旧来型電源に行くのか、それとも未来に向かって再エネを拡大できるのかは、日本の将来に大きな影響を与えそうです。そしてその前の現実的な話として、京阪バスの設備がもうちょっと安くならないものなのか、というのは個人の感想です。急速充電器が設置され始めてから10年以上が経つのですが、大きな変化は感じられないのが残念です。

最後にBYDの役割は、当然ながら、バスの安定供給や技術的なサポートが中心になります。将来は自動運転まで実現することが目標です。

発表会ではビーワイディージャパンの劉学亮社長もオンラインで参加。「長年蓄えてきた製品、サービスなどのノウハウをもとに実証実験を成功させて、目指す社会を迎えられたらいい」と話しました。

オンラインで参加したビーワイディージャパンの劉社長(モニター内)と、同社の花田副社長。

ノウハウは、確かにあります。劉社長によれば、日本市場ではこれまでに、11都府県で53台のBYDのバスが走っているそうです。でも劉社長は、BYDはこれまでに「全世界50カ国地域、300以上の都市に67000台のバスを投入した」と言っています。企業全体では、使いながら改善していくノウハウは相当に蓄積されていると思います。

個人的な感想ですが、上野動物園で『J6』に乗ったときには、やっぱりEVは、ディーゼルやCNGエンジンのバスよりも乗り心地はいいなあと思いました。メンテナンスコストも安くなります。EVを使っている事業者からは、導入時の差額は数年で取り戻せるという話も聞きます。

とくにバスのようにルートが決まっていて、しかもスタート&ストップが多く低速走行中心の使い方ならEVが最適じゃないのかというのも、個人の感想です。でもそう考えている人が少なくないことは、最近の流れを見ていると感じます。

最後になりましたが、業務提携では各社がそれぞれの役目を果たしつつ、一路線すべてを電気バスに替えた場合のモデルケースを確立し、EV関連事業を拡大していくことが共通の目標です。同時に、災害対応に電気バスを使うことも視野に入れています。

なにはともあれ、日本はまずEVを増やすことが第一歩です。世界の流れには完全に乗り遅れてますが、まずはドアを開けて乗らないことには始まりません。そんなわけで、電気バスのドアから開けてみるというのもひとつの手だと思うのです。

(取材・文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)6件

  1. 京都ではすでに京都駅~東山七条を結ぶプリンセスラインでBYD K9が2015年から導入されており、BYDのEVバスが目新しいというわけではないです。逆に使われている方はEVという認識はあまりないのではないでしょうか、行き先が京都女子大なので私は乗ったことはありませんが。
    こちらは導入時に重量オーバー問題などがあったそうなので、小型のバスであればその問題もなくあとは充電インフラだけ準備すればよくそれほどハードルは高くなかったのではと思われます。それよりも京都の夏の暑さで電費が気になります。

  2. 日本の場合、トラックメーカーの片手間でバス作ってて
    トラック屋さんって殆どディーゼルエンジン屋さん兼業みたいなところがあるからなあ

    むしろバスができるならレールバスのev版みたいに
    地方ローカル線を「電化」したい

  3. 埼玉県久喜市ではコミュニティバスに採用されました(たぶんJ6かと思います)。
    同一路線というわけではなさそうです。
    緊急事態宣言が解除されたら行ってみようかと思っています。

    ここからは 希望です。
    これでV2H対応してたら災害時など有効活用ができそうですが…。
    そうでなくても他の方法で電源取り出しができるといいですね。

    国内メーカーもより積極的に取り組んでいただけるとうれしいです。

  4. 川越にも『日本初電気ボンネットバス』が走っているようですが、ベースは中国製とか。国産メーカーには頑張ってもらいたいです。

  5. 国産のEVバスもありますが,高いのでしょうね。国産には頑張ってほしいですね。リチウムイオン電池は日本が発明したのに残念です。日本が昔のアメリカみたいに,そして中国が昔の日本みたいになりつつある。日本は今後,アニメなどのコンテンツで稼ぐしかないのでしょうか。

    1. 国産の場合
      某社の影響力は無視出来ないので外販の始まった水素になるでしょうが、
      充填の面倒や4年のタンク寿命を考えるとやはり電気のほうが良いように思います。
      交換されたバッテリには使い道がありますが、交換された水素タンクに使い道はあるのでしょうか?

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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