GMとLGが『ボルトEV』などのリコール費用負担で合意〜原因はバッテリー製造上の欠陥

ゼネラル・モーターズは2021年10月12日、電気自動車のシボレー『ボルトEV』と『ボルトEUV』のリコール費用について、総額20億ドルのうち19億ドルを電池メーカーのLGエレクトロニクスが負担することで合意したと発表しました。原因はバッテリー製造上の欠陥でした。

GMとLGが電気自動車『ボルトEV』などのリコール費用負担で合意〜原因はバッテリー製造上の欠陥

1回目のリコールは2020年11月

ゼネラル・モーターズ(GM)は2020年11月に、シボレーの電気自動車(EV)『ボルト(Bolt)』について、まれに火災が起きる可能性があるとしてリコールを発表しました。米メディアのCNBCによれば、リコールの対象は2017~2019年モデルイヤー(製造年は2016~18年)で、世界で6万8667台でした。このうちアメリカ国内にあるものは約5万1000台です。

2019年モデルの『ボルトEV』

またNHTSA(米運輸省道路交通安全局)は2020年11月13日のリリースで、火災により2人の負傷者が出ていること、および5件の火災を認知していることを発表しました。

CNBCは火災について、シボレーの上級チーフエンジニアが、火災になったバッテリーは満充電かそれに近い状態だったこと、2016年5月から2019年5月の間にLG化学で製造されたものだったとコメントしてること、およびGMがバッテリー管理のソフトウエアを更新して最大充電量を90%に制限したことなども伝えました。

このときにGMは、2020年モデルイヤーについてはリコール対象にしていませんでした。一方でNHTSAは、2020年10月9日に、2020年モデルイヤーも含んだ7万7842台の『ボルト』を調査するとしていました。

このほかNHTSAは、11月13日の安全リコールリポートで、バッテリーは韓国のオチャン(梧倉)にあるLG化学の工場で製造されたものであることを公表しています。

2021年8月にリコール対象を大幅に拡大

2020年モデル。

最初のリコールから約8か月後の7月14日、CNBCなどはリコール対象になった『ボルト』で新たに2件の火災が発生したことを報じました。そのうち1件は、バーモント州議会議員の自宅で充電中に発生しています。

GMによる発表と同じ日、NHTSAは『ボルト』に関するアラートを発表しました。このアラートでNHTSAは、『ボルト』を屋外に駐車することを推奨。もし建物の中に止めていた場合、車から建物に引火して火災が大きくなる可能性があることを警告しています。

その約1か月後、8月20日にGMは、追加のリコールを発表しました。リコール対象はこれまで除外されていた2019年モデルイヤーから2022年モデルイヤーの『ボルト』すべてです。台数は、アメリカとカナダの合計で約7万3000台です。すでに対象になっていたものと合わせると、合計14万1685台にのぼります。

このリコールの発表時にGMは、予想される追加コストが約10億ドル(約1142億円)になることを公表しました。さらにGMは、問題のあった『ボルト』のバッテリーの製造工程を調査した結果、すでに公表されていたオチャン工場だけでなく、他の工場についても製造上の欠陥があることを発見したと報告しています。

GMの発表によれば、問題の工場で製造されたバッテリーの欠陥は、①アノードタブ(負極側のタブ)に破損がある②セパレーターに折りたたまれた状態になった部分がある、という2つです。この2つの欠陥が同時に存在する場合、火災に至るリスクが高まるとしています。

アノードタブは、電池の内部から接点を引き出すベロの部分ではないかと推察します。セパレーターが折り畳まれているというのは、ノートの端が折れ曲がったような状態のことでしょうか。

GMは、リコールによって交換したバッテリーには8年/10万マイル(カナダでは8年/16万km)の保証を付けたことも明らかにしました。

またGMは、リコール対象になった車両のユーザーに対して、90%までの充電に制限する設定をすること、可能な限り頻繁に充電してバッテリー残量が約70マイル(113km)未満にならないようにすること、充電後はすぐに車を屋外に駐車すること、屋内で一晩中充電したままにしないことなどを要請しました。

リコール費用の総額約20億ドルのうち19億ドルをLGが負担

『ボルト』のリコールの原因がバッテリーの製造工程にあったとGMが明確にした時点で、焦点はリコール費用を誰が負担するのかに移りました。リリースでGMは、サプライヤーに対して支払いを求めることを明言しています。

LG化学のバッテリーについては、GMだけでなく、現代自動車の『コナEV』でも発火事故があったことがわかっています。2020年8月30日にロイターは、現代自動車が『コナEV』の発火事故を調査した結果、バッテリーのセル内部での短絡が原因と特定したことを報じています。発火事故は、韓国、ヨーロッパ、カナダで15件発生していました。なお『コナEV』はアメリカではリコールの発表はありません。

またロイターは、韓国当局が2021年2月に、LG科学の中国工場で製造されたバッテリーセルを搭載している『コナEV』のリコールを発表していること、同月に現代自動車は『コナEV』を含む約8万2000台のEVをリコールする計画を発表し、推定費用は9億ドル近くになると予想していたことも報じています。

このリコール発表の後、GMは一時的に『ボルト』の生産を中断しています。『ボルト』組立工場の操業停止はその後、半導体不足の影響も加わって、10月下旬まで延期されたと報じられています(2021年10月18日時点)。

以上のような経緯を経て、2021年10月12日にGMは、バッテリー製造上の欠陥によって生じたリコール費用をLG化学でバッテリー製造を担う、LGエレクトロニクス(LG電子)が負担することで合意したことを発表しました。

GMは、リコールに関連する費用は約20億ドル(約2285億円)と発表しています。このうち19億ドル(約2171億円)については、バッテリー製造を担うLGエレクトロニクスがGMに支払います。つまり、ほぼすべての費用をLGエレクトロニクスが負担することになります。

LGエレクトロニクスはGMの発表と同じ日、2021年第3四半期決算の速報を発表しました。この中で『ボルト』のリコールについて、第3四半期に約4800億ウォン(約462億円)の引当金を含めていることを明らかにしています。ちなみにLGエレクトロニクスの売上高は連結で18兆8000億ウォン(約1兆8120億円)で、過去最高でした。

なおLG化学は、前述した『コナEV』と『Ioniq』のリコールについても、費用の大部分を支払っています。リコールの原因は、中国・南京にあるLG化学の工場で作られたバッテリーでした。2021年3月6日に日経アジアは、リコール費用が約9億ドルになること、そのうち70%をLG化学が負担することを伝えています。

この他、フォルクスワーゲンのEVもLGエナジー・ソリューションのバッテリーが原因でリコールをしています。

どうもLGグループのバッテリーについてはよろしくない品質になっていたようです。リコールの原因になったLGのバッテリーについては、コストダウンの要請が強いことが背景にあるのではないかと推察する専門家もあります。根本的な原因は公表されていないのでわかりませんが、リコール後もGMは、LGエレクトロニクスとの関係を崩してはいません。ただ、品質については共同で対策をしていくと発表しています。

バッテリーという基幹部品でリコールが出るのはEV市場にとってもマイナスになります。それにLGのバッテリーは、GM、フォード、フォルクスワーゲンなどたくさんのメーカーが使っているので、つまずきの影響は懸念されます。GMの大量リコールによってLGの品質が向上するのかどうか、注視する必要がありそうです。

(文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. コストダウン=低品質では困りますね。

    そういえば以前にアウトランダーPHEVでバッテリーのリコールがありましたね。
    あの時はバッテリーの品質ではなくバッテリーの組立手順の問題だったとして製造工程を見直すことで解決を見た、という風に認識していますから
    バッテリーの製造メーカーに責任は無かったということでしたでしょうか。
    あの時の全数交換/代車のガソリン代全額負担というメーカーの対応には当時驚いたものです。
    あの時中途半端な対応をしていたらと思うとぞっとしますね。

  2. アノード = 負極

    ではないでしょうか、電池用途の場合であれば。

    ご確認いただければと存じます。

    1. もか 様、コメントありがとうございます。ご指摘の通り誤植でした。修正させていただきました。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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