同社は、サウジアラビアの公共投資ファンド「PIF : Public Investment Fund」と10億USドルの投資協定を結びました。これは、PIFが完全所有(全額出資)する車輌を通じて行われます。Lucid MotorsとPIFは契約条件に基づき、規制当局の認可と慣習的な決済条件のもとで、取引きを行うための拘束力のある取り決めを行いました。
この取引きはLucid Motors社にとっては重要なマイルストーンです。これによって、2020年に同社初のBEV(バッテリー式電気自動車)である「Lucid Air」を市場に送り出すための資金を手に入れたことになります。この資金を使って同社は、開発とテストを完了し、アメリカ・アリゾナ州のカサグランデ(Casa Grande)に工場を建設し、北米を皮切りに車輌販売のグローバル展開を始め、Lucid Airの生産に入るとしています。
Lucid Motors社によると、同社の使命は「我々人間の日常の様々な経験の中心に、最も魅力的な高級電気自動車を据えることで、持続可能なエネルギー(再生可能エネルギー)の利用を促進することだ」としています。同社のCTO(最高技術責任者)であるPeter Rollinson氏は以下のように述べています。「今や、いくつもの新技術が集まって、自動車の形が根本的に変わろうとしています。しかし、そのメリットはいまだ充分には人々に認識されているとは言えません。このことは、持続可能なモビリティーとエネルギー利用を実現しようとする動きを妨げています。Lucidでは、産業全体を前進させるため、電気接続車輌(electric connected vehicle)の持つ様々な可能性をフルに実証するつもりです。」
Lucid MotorsとPIFは、世界に通用するエンジニアリングの才能を携えて、高級EVを生産する世界的な企業をシリコンバレーの中心に設立する目的で、こうしたビジョンを掲げています。自動車産業が急速に変化する時代を迎えているなか、Lucid Motorsは、製品を迅速に市場に投入するための戦略的焦点を明確にする目的で、PIFと緊密に連携するとしています。
PIFの広報担当者は、「急速に発展するEV市場に投資することによって、長期成長戦略の機会を充分に捉え、技術の革新と発展を支援し、さらにサウジアラビア王国の収益を増やして部門の多様化を進展させることができる」と述べています。さらに、「PIFの国際投資戦略は、国際経済における積極的な貢献者として、未来の産業への投資家として、また国際的な投資機会における最適なパートナーとして、PIFの力を高める目的で行っています。Lucid Motorsへの今回の投資は、これらの目標をめざした動きの好例と言えるでしょう。」とも話しています。
テスラ・モデルSを設計した「元チーフ・エンジニア」たちが立ち上げたLucid Motorsは、この投資協定締結によって、Fisker、Faraday、Rimac、NextEV、Apteraといった「第2のテスラ」を目指すメーカーの中で、頭ひとつ抜きん出た存在になりました。もとより同車には「テスラ元副社長」も含め「テスラ」からの移籍組が多く、また「マツダ」や他の世界的自動車メーカーから来たスタッフも数多くいます。バッテリー容量は標準で「100kWh」、その上には「130kWh」を積むモデルも予定され、テスラの最上級グレードの100kWhを超える量がアナウンスされています。バッテリーは「LG Chem」と「SAMSUNG」の両者と提携し、自動運転分野では以前テスラと組んでいたイスラエルの「モービルアイ」社とも連携と、すでに世界のトップ企業とのパートナーシップ構築を済ませています。今後の動きに注目してゆきたいものです。
(翻訳・文:箱守知己)