テスラ モデル3のCATL製バッテリーパックは角型バッテリーを採用

テスラが中国・上海のギガファクトリーで生産する車両に搭載されるCATL製電池について、省スペースと低価格を実現する「セル トゥ パック」と呼ばれる技術を採用することがわかりました。『Clean Technica』が伝えている記事を、全文翻訳でお届けします。

テスラ モデル3のCATL製バッテリーパックは角型バッテリーを採用

元記事:CATL-Built Tesla Model 3 Battery Pack Will Use Prismatic Cellsd by Chanan Bos on 『CleanTechnica

LFPバッテリーでモジュールを組まない技術を採用

バッテリー関連のニュースには最近、毎日のように驚かされます。ちょうど1週間前、テスラがカリフォルニア州フリーモントにバッテリーセルの生産ラインを作っているかもしれないというニュースがありました。数日前に今度はテスラがコロラド州デンバーのバッテリー系スタートアップ企業を買収することになり、イーロン・マスクも直々に視察に赴いたと報じられたばかりです。

モデル3に、角型バッテリー?

昨日のニュースでは中国にあるテスラの工場ではモデル3のスタンダードレンジプラス(SR+)にCATL製のリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを使用し、しかもモジュールを組むこと無くバッテリーセルをそのままパックに入れる(セル トゥ パック)らしいと言われていました。そして今日分かったのは、このLFPバッテリーがプリズム型で、バッテリーパックの製造(もしくは設計だけ?)はCATLのセル トゥ パック技術を使うということです。

セル トゥ パックはテスラも研究している技術ですが、現在の所、まだ実用化に至っていません。このニュースを最初に報じたのはベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社のサイモン・ムーア氏のツイッターアカウントでした。


【Tweet内容の訳文】
テスラは中国向けモデル3スタンダードレンジで初めてプリズムバッテリーセルを採用。 #EV
これにはCATL製のモデル3専用LFPセルを使用する。
テスラが円筒形セル(18650/2170)以外を使うのは初めて。 @benchmarkmin

省スペースと低価格を実現

繰り返しますが、テスラが中国で生産するモデル3のバッテリーパックは円筒形ではなく角型バッテリーを使用し、モジュールも組みません。このニュースを聞いた時に確信したことがひとつだけあります。それは、このバッテリーパックの実現にはLFPセルを使うしかないということです。

ほとんどのEVが数年経てばバッテリーが劣化していくのですが、テスラはほとんど劣化が起きません。円筒形のセルを何千本と使用することで、放電する際の1本あたりの負荷が少ないからです。また、円筒形バッテリーは容積が小さく、表面積も多いので冷却がとてもしやすいです。

こうした状況の中、テスラはバッテリーの品質を維持し、価格を下げ、角型LFPセルを使用できるのです。セルごとの負担は増えますが、LFPバッテリーは寿命が長いため問題ありません。LFPバッテリーの一番大きな弱点はエネルギー密度の低さです。しかし、これもセル トゥ パック技術を用いることで、より多くのセルを詰め込んでモデル3 SR+に必要な50kWhのバッテリーパックを作ることができます。

見た目の違い

モデル3のバッテリーパックに角型セルを配置した急ごしらえのイメージ図。
(文中写真は Clean Technica から引用)

私が最初に調べたのはモデル3のバッテリーパックと、その内部構造です。そこから、どのようなセルをいくつ、どのように配置すればよいか計算しました。モデル3のバッテリーパックの大まかな外寸は216.63 cm、147.32 cm、10.5 cm (L x W x H)です。その中に4つのモジュールがあり、中央の長いモジュールで185.4 cm、29.2 cm、9 cm (L x W x H)になります。

モジュールを廃止するとはいえ、おそらく間違いないのは、角型セルの高さは90 mm以下で、現在出回っている角型セルもそのぐらいの大きさです。角型セルを使用しているEVの殆どが、約48 mm厚のため、テスラもそうだとすれば、だいたい38個のセルを詰めることができます。それが5~6列になるのではないかと思われます。

まとめ

このニュースを理解するには少し時間がかかります。裏側に隠された意図に気づくためにはたくさんの計算と気分転換のシャワーが何度も必要になるでしょう。このニュースから現時点で汲み取れる重要な内容は、テスラとCATLの協力関係は思っていたよりも真剣なものと思われるということです。

CATLはモデル3のバッテリーパックの寸法を大幅に変更する必要のない、特別な新型バッテリーパックを設計するための下準備を相当してきたことが伺えます。。

これはテスラが中国の当局者を喜ばせるために本来の得意分野からそれているだけなのか、それともCATLのセル トゥ パック テクノロジーを競合に晒すリスクを犯してでも新型バッテリーパックを設計するメリットがテスラとCATLにあるのか?

角型セルを使用する場合に懸念点が2つあります。ひとつはどれだけしっかり冷却ができるのか、そしてもう一つはこのバッテリーパックからどのような加速が得られるのか、です。よく耳にする質問は「テスラが買収したマクスウェル社の乾式電極技術を利用してエネルギー密度を大幅に向上させられたら、このテクノロジーに未来はあるのか」ということですが、こればかりは誰にもまだ分かりません。

このニュースに関して、読者の皆様でシャワー中に何か閃いた方がいれば、是非コメント欄で共有してください。

※情報開示:先日発表した記事、「Electric Car Drivers: Demands, Desires & Dreams」のスポンサーには CATLも含まれています。

訳者あとがき

テスラがこれまで使ってきたパナソニック製のNCA(ニッケル コバルト アルミニウム)は、とても性能が高いのですが、材料に用いられるコバルトが非常に高価で、社会的な問題も抱えています。一方、LFPはありふれた材料でできているため、大量生産に向いています。

中国では2019年の新車販売のうちEVが4.7%を占めました。台数にして120万台強ですが、今後EVが普及すると今のコバルトの供給量では足りなくなることが必至です。EV最大手のテスラだからこそ、先を見据えたバッテリー戦略なのだろうと思います。

(翻訳・文/池田 篤史)


7 thoughts on “テスラ モデル3のCATL製バッテリーパックは角型バッテリーを採用”

  1. 初めまして。リチウムイオン電池についての情報サイト(http://libattery.info/)を運営している者です。

    このニュースの裏側にあるテスラ・CATLの意図はかなり複合的で読み解くのは一筋縄ではないとは思いますが、一つの側面としてテスラ側の要求を満たす供給能力を基準にするとCATLの角型LFPが解になったということが考えられます。

    もともとテスラがPanasonicの一社供給体制から大きく舵を切ったのはPanasonicのキャッシュフローがうまく回らず、生産設備の増設が間に合わなくなってきたという背景があります。(Panasonic側のコストコントロールが下手で利益が出せていないということもあるでしょうが。)

    そこでテスラは他の電池メーカーとも積極的に協業する方針に切り替えたわけですが、やはりあれだけの需要を満たすだけの生産量を出せてそこそこの質(Panasonicには遠く及ばないと思います。やはり質だけでいえばPanasonicが世界トップです)のところとなるとCATLくらいしかないわけです。

    それに加えて材料供給面から言っても、安定性でいえばLFPはNCMやNCAよりも上です。NCMの場合、何でもよいというのであればそれなりの量は確保できるでしょうが耐久性に優れていてテスラが求めるような基準のものは特に中国国内ではそれほど多くはありません。NCAは住友金属鉱山(Panasonicに供給)以外で大規模に生産している材料メーカはほとんどありません。そういう意味ではPanasonicのNCAの電池は特別だといえます。

    付け加えて言うのであれば、NCM、NCAの電池セルを作るのは生産技術的にもLFPよりはハードルが高めです。基本的には全面的に湿度コントロールをしたドライ環境下で生産を行う方がベターですし、製造ノウハウ自体もやや高度です。(中国でLFPの電池が多いのもそれが背景と言われています。)CATLがそのような技術を持ち合わせていないとも考えにくいですが、少なくとも生産設備的にはLFPの方がコストもかからず楽なのでLFPを主力にしているのではないでしょうか。業界内でもCATLのNCM系セルの品質についてはあまり良い情報は聞きませんし。

    CATL側からすれば、これほどの台数を出せるのはテスラくらいしかないので思い切って手を組んでしまった方が良いのではないかという判断だと思います。中国はこれまでは助成金でEV市場がややオーバーヒート気味だったのが、その助成金が打ち切りになることでかなり淘汰が進んでいます。中国国内のLIB材料メーカーの担当者たちも、中国国内向けから海外のEVメーカー(向けLIBメーカー)に切り替えようとしていると口をそろえて言っています。

    もう少し付け加えて言えば、テスラの場合はもう航続距離(≒LIBエネルギー密度)自体をそこまで伸ばすことには関心がないのではないでしょうか。床一面にびっしりと電池パックを並べることで航続距離自体は確保できているわけですし、Cell-to-packのシステムを採用することで最低限のエネルギー密度は抑えられたということでしょう。それよりも、電池寿命や安全性の方を重視するためにLFPにしたのかもしれません。

    特に、EVを蓄電装置として使いまわすことを考えているのであれば耐久性は今以上に求められます。これまで日産リーフを蓄電装置として使いまわすことも実証実験などで行われてきたみたいですが、リーフのNCM系のLIBでそんな使い方をしたらすぐに寿命が来てしまいます。そんな考えもイーロン・マスクの頭の中にあるのではないでしょうか。

    1. Battery info様、大変参考になる分析をありがとうございます。LFP、どうなんでしょうね。個人的にはLFPじゃ容量が足りないという気がするのですが、そこはご指摘のように、パックのパッケージングを改善し、実装密度を高めれば可能になるのかもしれませんね。
      もしかすると(現行のSRに使われている55kWhでなく)50kWhパックになるのかもしれません。

    1. テスラと超密接な連携関係にあるDahn教授の論文
      “Is Cobalt Needed in Ni-Rich Positive Electrode Materials for Lithium Ion Batteries?”
      答えはNo(いらない)
      http://jes.ecsdl.org/content/166/4/A429.full.pdf+html
      ” Unlike Al, Mn, or Mg, Co has no contribution to safety improvement. Therefore, we believe that Co brings little or no value at all to NCA-type materials with high Ni content (> 90% Ni in the transition metal layer) and we hope this paper will spur more interest in Co-free materials.”
      ニッケルを90%以上含ませるとコバルトはいらなくなる。

    2. 可能性としてはLFP以外の「コバルトフリー」の正極材もありそうです。
      ただ、こちらの記事(http://libattery.info/tesla-model3-catl-not-lfp/)でも書きましたが、NCAのCoをなくすとなると入出力は出にくくなります。

      出力の方は、元々の電池パックの容量が大きいのでたいした問題ではないかもしれませんが、入力(=充電)の方は急速充電に対応しにくくなるという問題はありそうです。

      実際、Dahn教授の論文でもハイレートでの充放電というのは行っていないのでそもそもできないんじゃないかという見方もできます。その点をテスラやCATLが解決できたのかは気になるところです。

  2. ニッケルやコバルト以外だとチタンやニオブ等を組み入れる方法もあります、もっとも東芝SCiBのLTOやNTOケミストリーになりますが(笑)
    ハイレート充放電を実現させるなら発熱量が少なくリチウム析出がないチタン酸化物系統が優位ですが、電位差の低さゆえテスラが大々的に受け入れるかどうかですね。
    それ以外にも広範囲安定の温度特性もあり電池温度管理不要のメリットもありますが、エネルギー密度の低さが難点ですか!?今後この系統の素材でエネルギー密度が上がればテスラも考えるでしょうが。

    以上アイミーブM乗りの余談。
    もしCATLと組んだところで、コロナウィルス問題があるので先行きは不透明でんがな…どないするんでしょ!?

  3. マックスウェルの技術はドライ電極では無く、乾燥工程の要らないドライプロセスです。
    CATLを使う大きな理由はコストの低さ。バッテリーパックレベルで1kWh当たり$80と言われています。これは、電気自動車がコストでガソリン車より有利になるレベルです。

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