新型MINIファミリーは4種類のトリムを選択可能
2023年9月のIAA(国際モーターショー)で発表された新型MINIは、内外装をコーディネートした4種類のトリムが設定されている。ちなみに「トリム」と聞くと日本ではインテリアなどの装飾をイメージする方が多いと思うが、欧州では車種の「グレード」といった意味で用いられることがある。
今回発表されたクラシックトリムの特徴は、ボディカラーとは別のルーフカラー(白か黒)が選択可能で2トーンにもできる。ドアミラーも基本は黒だが、ルーフカラーが白の場合は白の組み合わせになる。他のトリムにはあるガラスルーフの設定はなさそうだ。
内装では、インパネが黒と青のニット素材で覆われており(一見すると黒だが、角部に青が見える)、シートは千鳥格子パターンの「Vescin」という合成皮革とファブリックの組み合わせで、シートカラーはグレーか黒が選択できる。
クラシック以外ではJCWトリムも発表されている。フロントグリルには赤、白、黒のJCWロゴがあり、2トーンデザインの18インチホイール、赤いブレーキキャリパー、ボンネットストライプなどでJCWならではの個性を際立たせている。
シートは肩まわりとヘッドレストがニット素材になっていたり、インパネの助手席側はチェッカーフラッグパターンでレーシーな雰囲気のインテリアに仕上がっている。
他の2つのトリムはエッセンシャルとフェイバード(Favoured、和訳すると「お気に入り」の意)で、エッセンシャルはシートがファブリックになるなど一番質素で、ボディカラーもシルバーと黒の2色のみのワントーン。フェイバードはガラスルーフで、ボディカラーによってはグラデーションのルーフカラーが選べるなど、より個性的なトリムになっている。
ドイツのウェブサイトで確認したMINI Cooper E、各トリムのスタート価格は以下の通り。日本での販売価格を予想するため、ドイツと日本で発売中のモデルである5ドアのガソリンモデルを比較すると、日本は400万円ほどに対して、ドイツ価格の28,500ユーロは約460万円になる。ドイツ価格より約13%分手頃になると仮定した場合の日本価格をユーロの後に記載する。
エッセンシャル:32,900ユーロ(約460万円)
クラシック:37,460ユーロ(約525万円)
フェイバード:40,510ユーロ(約570万円)
JCW:41,810ユーロ(約590万円)
MINIらしい特徴が溢れる内外装
バッテリーは2種類、それぞれに組み合わせられるモーター出力も異なり、Cooperに続く「E」と「SE」の車名で判別できる。
MINI Cooper E
バッテリー40.7kWh、出力135kW/184hp、トルク290Nm、0-100km/h加速7.3秒、航続距離305km(WLTP ※EPA換算推計値=約272km)
MINI Cooper SE
バッテリー54.2kWh、出力160kW/218hp、トルク330Nm、0-100km/h加速6.7秒、航続距離402km(WLTP ※EPA換算推計値=約359km)
40.7kWhのバッテリーは、最大75kWの急速充電に対応しており、10-80%の充電を28分でこなすことができる。54.2kWhのバッテリーは最大95kWで充電可能、10-80%の充電を30分以内に完了できると発表された。充電口は右リヤに設置されている。実際の急速充電時の出力は諸条件で変動するため「何分で10-80%」といった説明はわかりにくい(あまり意味がない)が、75kW、95kWとする充電性能は合理的で十分に使いやすいと思われる。
ボディサイズは、全長3,858mm、全幅1,756mm、全高1,460mm、ホイールベース2,526mmで、4人乗車時の荷室容量は210L、6:4で分割可倒なリヤシートを倒せば800Lまで拡大できる。
インパネ中央の直径240mm のOLEDディスプレイは、先代では横長の長方形だったディスプレイの表示範囲が新型では円の内側全てに広がっている。ドライバー用のディスプレイは無くなったが、代わりにHUD(ヘッドアップディスプレイ)が用意されている。このHUDはガラスに投影するタイプではなく、半透明のディスプレイが立ち上がるタイプのようだ。ディスプレイサイズも割と小さめに見える。どんな見え方なのか実車で確かめてみたい。
OLEDディスプレイの下にはシフトコントロール、システムのオン/オフ、ドライブモード切り替え(EXPERIENCE)、オーディオスイッチなどの物理コントロールスイッチがまとめられている。特に中央の3つはMINI伝統のトグル形状になっているのが嬉しい。
シフトコントロールはPだけ独立、その他はスイッチを上下させて切り替えるようだ。ドライブモード切り替えも同様に見える。システムのオン/オフスイッチは左右に倒すのか、もしくは左右に回すのかが分からないが、実際に試す時までの楽しみにしておきたい。フロントシート間のシフトレバーやスイッチが無くなったことで、追加の収納やスマホのワイヤレス充電ができるスペースに変わった。USB-C端子も2つ確認できる。
ドライブモード切り替えによってアンビエントライトも色が変わるようで、ドアやセンターコンソールに加えてインパネ下部のニットの部分までも光っているのが新しい。3本スポークに見えるステアリングの下のスポークは実はファブリックだったり、インパネの助手席側には用途不明のレザーベルトがあったりする遊び心がMINIらしくて楽しい。
エクステリアでは、MINIらしい丸目のヘッドライトと八角形のグリルは変わっていない。ヘッドライト内のDRL(デイタイムランニングライト)の光り方が円に加えて上下2本の線が追加になり新しい表情を作り出している。DRLは円のみ、2本線のみ、その両方の3種類から選択可能だ。
ドアのアウターハンドルはグリップ式からフラップ式になった。16インチから18インチまで用意される空力が考慮されたホイールとともに空力性能向上を狙った変更かもしれない。
テールランプのデザインは、先代の縦長形状から三角形へと大きく変わった。「ユニオンジャック柄感」は少し弱くなったが、十分に個性的なデザインと光り方だ。
今年4月には「プレミアムコンパクトクロスオーバー」と謳う『Aceman』もデビュー予定、先代にはあったEVのコンバーチブル(欧州限定999台だった)のカタログモデルの登場にも期待しつつ、まずは3ドアのCooperモデルの国内発表を待ちたい。
文/烏山 大輔