元記事:NEV sales in China expected to exceed 5million this year by Lei Xing
2022年は中国の自動車業界にとって転換点となる
新エネルギー車両は自動車全体の約20%である500万台のセールスを見込み、前年比で2.5倍の350万台を売り上げた2021年に引き続いて記録を樹立する年になりそうです。中国の消費者は今年末まで、NEV購入補助金を受け取ることができます。
外国資本の自動車生産投資規制は今年初めになくなりました。複数の外国自動車メーカーが、自社の既存ジョイントベンチャーへ増資すべく、関連した動きを見せています。しかしNEV競争においては、外国勢はいまだに中国のライバルに追いつく段階にいます。中国NEVメーカーは乗用車市場のシェアを50%に引き上げ、輸出も増やすための最後の年に勢いをつけようとしています。
テクノロジー企業と自動運転スタートアップ企業は共に、より良いソフトウェアやLiDARのようなハードウェアを通じてレベルの高い自動運転機能を提供するか、ロボタクシーをより広域に広げることにより積極的に自動運転車両競争を広げようとしています。
その一方で、世界的な半導体不足やコロナのまん延により生じたサプライチェーンの混乱はここのところ悪化しているように見えます。ロシアのウクライナ侵攻により、さらに混乱が深まるのは言うに及びません。
2つの会議におけるキーパーソンの発言に注目
年に1度、中国議会と国政諮問機関のトップが集まる『2つの会議』が、今年も3月4日~11日に開かれました。第13期全国人民代表大会(全人代・NPC)第5回会議と第13期中国人民政治協商会議(政協・CPPCC)第5回会議ではその年の経済・社会開発の計画を立てます。
国の基幹産業の1つとして、直接的にも間接的にもサプライチェーンに関わる雇用を有し、規模も大きい自動車業界は経済・社会の発展に関して大きな鍵を握ります。李克強首相は「政府活動報告」の中で自動車産業が健全であることは今年の目標であるGDP成長率5.5%を達成するのに不可欠であり、NEV消費へのサポートを継続すると発表しました。
中国自動車メーカーの会長やCEOの多くは全人代や政協のメンバーでもあり、『2つの会議』は毎年様々な取り組みや提案を通じて政治的なサポートを陳情する場となります。今年も10人以上の会長やCEOが、半導体、バッテリー、充電インフラ、自動運転などに関する提案を行いました。
世界の自動車産業は昨年、半導体不足により大きな打撃を受けて中国国内での200万台を含む、約1,000万台減産しました。 国家発展改革委員会(NDRC)の林念修副主任は、3月7日に国務院新聞弁公室が開いた記者会見で、「これは今年私たちが本格的に解決しようとしている課題です。自動車その他の製造業が直面している課題に向き合わねばなりません。サプライチェーンの安定を維持し、スムーズな経済サイクルを確保するのが鍵となります」と話しました。
自動車産業幹部から出た提案の多くに、国内半導体産業強化の必要性が盛り込まれていました。
長城汽車CEOで全人代メンバーでもある王鳳英氏は、短期目標として中国が半導体不足の解決を優先しながら、長期での持続可能な開発に必要な才能を集めるメカニズムやオートメーション化を達成するため、中期では国内でのサプライチェーンを強化する提案をしました。
広州汽車グループ会長で全人代メンバーの曽慶洪氏は、中国が原料の法制化と監督を強化すること、また無秩序に値上がりしてコストに圧力をかけている原料を規制・コントロールすることにより関連市場を安定化させる提案をしました。また国内投資のために国が海外の半導体メーカーを誘致して半導体や重要な原料の緊急用貯蔵メカニズムを構築し、国内半導体サプライチェーンを確立して研究開発、生産、パッケージングなどでのボトルネックを無くすことも主張しています。
上海汽車の社長で全人代メンバーの陳虹氏は、様々な利害関係者が力を合わせて自動車用半導体の技術的コードや基準を作り、第三機関による検査・認証プラットフォームを作る提案をしました。また高度なコンピューター計算用半導体の研究開発、生産、適用能力を国内で加速させるべきだともしています。重慶小康グループの会長で全人代メンバーの張興海氏は中国が関連する省庁や委託機関内に専門の部署を作り、自動車用半導体産業開発における開発をトップレベルで行い、積極的に世界をリードする半導体メーカーを誘致して国内生産に投資し、自動車メーカーが半導体メーカーと直接協業して研究開発、産業化、マネージメントのイノベーションを進めるべきとしています。
バッテリーと充電インフラに注視するエグゼクティブも多くいます。バッテリー交換に多額の投資をしている吉利汽車グループの会長で全人代メンバーの李書福氏は、様々なメーカー、交換ステーション、モデルの間でバッテリー交換を可能とするため、国がステーション、バッテリーパック、コネクターをハード・ソフトの両面から標準化することを提案しています。李氏はまた車両とバッテリーの認可を別々にしたカタログ・商品の循環システムを確立することによってバッテリー交換可能な車両の認可を最適化するために、関連政策や規制のサポートを求めました。加えて、公共の駐車場その他の土地でバッテリー交換ステーション関連が能率的に建設できるようにすべきとしています。
全人代代表で奇瑞汽車会長の尹同躍の主張は、新エネルギー車両用サプライチェーンを安定させるために、関連する法律のたたき台を作ってニッケル、コバルト、リチウムなどのバッテリー原料を中国の戦略的資源マネージメントに組み入れ、専門の基金を設立し、海外のバッテリー原料を中国国内企業が手に入れられるようにするというものです。 SNEリサーチによると、世界のEVバッテリー需要は2023年までに477GWh、2025年には1,400GWhに達し、それぞれ18%、40%足りないと予測されています。
バッテリーの安全性に関しては、長城汽車の王氏がバッテリーの熱暴走保護テクノロジーをすべてのEVに強制的に搭載する法律を作るよう主張しています。王氏によると、中国では昨年3,000台以上のEVに火災が起き、そのほとんどがバッテリーに関連しているとのことです。
傘下にチタンバッテリー子会社を持つ(チタン酸リチウム電池開発を進めていると伝えられています)、家電メーカー「グリー」の会長兼社長で全人代メンバーの董明珠氏は、国がバッテリー生産からリサイクルまでの法整備を進め、バッテリーの安全性の監督基準やリチウム電池リサイクル市場の規制も改善されることを求めました。
政協メンバーで世界最大のEVバッテリーサプライヤーであるCATL会長の曾毓群氏は、国内でリチウムの探査・開発を加速し、原料使用の効率性と循環性を向上するために供給の安定とイノベーション及びテクノロジーの強化を図るべきと提言しました。また地域やサイズにより、国がリチウム電池の運搬に関して適切に行政措置を強化し、物流を監督するよう求めました。
オンラインサービス会社NetEaseのCEOで政協メンバーの丁磊氏は、中国がナトリウムイオン電池の開発を加速させて国内に潤沢にあるナトリウムを活用し、NEV車両用バッテリーのリース用モデルの在り方を模索して、資源の無駄遣いを減らし、バッテリーの再利用を促すべきと主張しました。
2024年に自社初のスマートEVをローンチするXiaomi会長兼CEOで全人代メンバーである雷軍氏は、建設規模、土地利用、充電容量を定義する通信プロトコルと標準化された技術を兼ね備えた次世代高出力急速充電ネットワーク工場の建設を加速させるべきと提案しました。高出力充電テクノロジーのカタログを作るためには国としてのイノベーション協業体制が必要で、充電ステーションの建設や改築のためにも投資や補助金交付を増やして認可を速やかにすべきとしています。
CEO達の多くが、中国がカーボンフットプリントや貿易の適正なメカニズムを作ることを望んでいます。
Xiaomiの雷氏を例に取ると、彼は中国がNEV用にカーボンフットプリントを完全、明確、正確に計算できるようにし、行政システムを整備すべきと提案しています。カーボンフットプリントに関連する行政手法と生の原料からリサイクルまでを含む全体のバリューチェーンや、NEV車両のみのバリューチェーンから来るカーボンフットプリントの計算方法が作られるべきです。また業界全体で共有できる、関連する新エネルギー車両のライフサイクル・カーボンフットプリントデータ用プラットフォームも構築される必要があり、それにともなって認可や評価の仕組みも向上されるべきだとしています。
CATLの曾氏はバッテリーのカーボンフットプリントの計算方法に関する研究を国が後押しし、関係する電力から来るCO2排出量を公表してバッテリー用のグリーン証書行政手続きを強化すべきとしています。奇瑞汽車の尹氏は国がNEVを炭素取引マネージメントの枠組みに取り入れ、自動車メーカーがCCER(中国認証排出削減量)取引及び業界間の炭素取引にも参加できるようにしてほしいと呼びかけました。
自動運転車両に関しては、ほとんどが規制の枠組みをより包括的に改善する提案となっています。
最近レベル4自動運転のテスト走行で2,500万kmを達成したBaidu(百度)の創業者で現会長・CEOの李彦宏は政協のメンバーでもあり、中国内でロボタクシーのテストとオペレーションを人間のドライバーなしで行え、試験区域では客を乗車させられるようにするローカルな法整備をする提案をしました。また道路交通安全法を見直して、広がる自動運転の商業化をサポートし、5GやV2Xを通じたインテリジェント交通インフラ建設を加速すべきとしています。海外でのインテリジェント交通の建設とプロジェクトのオペレーションのため、キャリアも設立される必要があります。
上海汽車の陳虹氏は李氏のコメントに合わせて道路交通安全法が自動運転システムの適法性、またドライバーと自動運転システムの責任領域を明確に定義すべきとしました。長安汽車会長で全人代メンバーの張宝林氏は、インテリジェント・コネクテッド車両(ICV)に関する法体制や規制の枠組みを改善し、協業を増やすためにデータの障壁をなくし、信頼できる自動車データの循環チャンネルを作り上げてICV開発を促進することを提案しました。
広州汽車グループの曽慶洪氏は、道路交通安全法が交通事故の際に「機械ドライバー」と責任が誰にあるのかを明確に定義するべきと話しました。インテリジェント・ドライビング車両用の重要なデータストレージとクラウド・バックアップのための「ブラックボックス」をインストールするために条項が定められるべきで、インテリジェント・ドライビングシステムの法的責任を明確にする関連法案の整備も必要になるとしています。
中国のスマートEVスタートアップ哪吒汽車の創業者・会長で全人代メンバーの方運舟氏は、政府機関から業界関係者まで、様々な利害関係者を巻き込んだスマート車両オペレーティング用エコシステムを作り上げるべきと主張しました。
終わりに
今年の『2つの会議』で自動車エグゼクティブたちから出た提案や動きは、業界の変化に関連して急を要する、半導体、バッテリー、自動運転車両周りの規制と法整備に集中していたのがお分かりいただけたかと思います。このうち半導体とバッテリーは業界が今直面しているサプライチェーン問題を代表する一方で、個人使用の車にさらに高度な自動運転(市内でのレベル2以上など)が搭載され、大都市でロボタクシーが急増するにつけ、法規制は不可欠なものとなります。
(翻訳/杉田 明子)