NIOが『ES8』を欧州でローンチ〜バッテリー交換のサブスクも提供

中国の電気自動車スタートアップNIOが欧州で遂に自社EV ES8を発売しました。バッテリーを充電するだけではなく、数分で丸ごと交換するサービスをサブスクで付けるオプションも用意されます。『CleanTechnica』の記事を全文翻訳でお届けします。

NIOが『ES8』を欧州でローンチ〜バッテリー交換のサブスクも提供

元記事: by Chanan Bos on 『CleanTechnica

「BaaS」のオプションが選べるEVを欧州でローンチ

ついにNIOが、欧州で初の車両ES8とNIO Houseをローンチしました。場所はノルウェーのオスロです。9月の始め、私達はES8のデモンストレーションに参加し、車両を詳しく見て評価する機会を得ました。まだ記事動画をご覧になっていないようでしたら、チェックしておくことをお勧めします。

最大の謎は欧州向け車両そのものと、車両をバッテリー抜きで買うことにより大きくディスカウントされる「バッテリー・アズ・ア・サービス(BaaS)」双方の価格です。

普通のEVは充電ができるだけですが、BaaSは高度に自動化された交換ステーションでたった3~5分で空のバッテリーを満充電済のバッテリーに交換することができます。BaaSには私達もまだ完全に把握しきれていない、計り知れない恩恵をもたらしてくれる能力があり、相当な影響を及ぼすものです。

例えば、より安価で小さめの75kWhバッテリーを購入した後、長距離を走るように150kWhのバッテリーに交換もできるのです。読者の皆様、書き間違いではありませんよ。2023年にNIOは、既存車両でBaaSが使えるすべての車両用に150kWhの固体電池をローンチします。航続距離はまだ発表されていませんが、単純計算で750kmほどになります。BaaSによって解決される他の課題としては、もうバッテリーの劣化に悩まされなくなる、ということも挙げられます。ほとんどないですが、バッテリーの故障で大きな支払いをするという状況もなくなります。交換して、NIOに任せれば良いのです。

テスラはよく、自社の車はどんどん良くなっていき、価値が下がることはないと言います。NIOに関しては、この言説がより真実味を増します。定期的に出てくる素晴らしいアップデートに加え、150kWhのような大容量バッテリーも出てきて、さらに「充電が速くなる」としたら…… 購入時よりも、航続距離が大幅に伸びて充電時間もかなり短縮されるのです。

NIO ES8の価格

NIOのプレゼンによると、ES8の価格は5万1,344ユーロ(約661万円)~で、バッテリーのサブスクは75kWhが138ユーロ(約18,000円)/月、100kWhが198ユーロ(約26,000円)/月です。ただし、例えば長距離旅行用のアップグレードやその後のダウングレードなどはいつでもできます。

NIO ES8 electric SUV

バッテリー付きのES8を購入する場合、75kWhの価格は6万230ユーロ(約778万5,600円)で、100kWhが9万1,305ユーロ(約1,180万2,500円)となります。これに加えて、クールなバッジと追加のサービス付きのシグネチャー・エディション(詳細は後述します)もローンチされます。

シグネチャー・エディションのバッテリー無しの価格は59,243ユーロ(約765万8,000円)で、通常のES8と同じBaaSサブスクサービスをつけられます。バッテリー付きにすると、75kWhで6万8,147ユーロ(約880万9,000円)、100kWhで7万5,071ユーロ(約970万4,100円)です。

比較して見ると、ノルウェーでテスラ・モデルXは10万3,840ユーロ(約1,342万2,900円)、モデルYは5万2,880ユーロ(約683万5,500円)~です。言い換えると、バッテリー無しの値段ではES8の方が価格は安く、競争力があるということです。バッテリー込みでも、モデルYのベースモデルとそれほど変わりません。さらに面白いことに、ES8は今のところNIOの最も高価なモデルで、テスラが気を使っていない部分をラグジュアリーに仕上げています。特にシートはヒーター、ベンチレーション、マッサージ付きで、助手席はレッグサポートとフットレスト付きのファーストクラスベッドになるのです。

さて、通常のNIO ES8にはなく、シグネチャー・エディションにあるものは何でしょうか。シグネチャー・エディションには、Nomi mate 2,0(頭部のみのロボット)、ナッパレザー、アクティブ・レーン・チェンジ機能、ナビゲート・オン・パイロット機能、21インチ・アルミホイール(通常版は20インチ)、自動調光式サイドミラー、インテリア上部にマイクロファイバー、ナビ情報を表示する改良版HUD、オーディオを追加して進化したオーディオシステム(追加情報は将来の記事に載せます)、最後に、もっとも重要な運転席のマッサージ機能、がついています。

Nio Nomiの紹介動画(YouTube/Car Design News)

サービス

以前の記事で、NIOが提供する信じられない位ユニークなサービスについて、NIOノルウェーのジェネラル・マネージャーであるMarius Hayler氏へのインタビューを含め、その詳細を報じましたが、今回欧州で出すサービスの計画について、すでに発表している事以外にもNIOに聞いてきました。

まず始めに、NIOはテスラと同じようにモバイルサービスを提供し、サービスセンターに持ち込まず、その場で多くの問題を解決します。テスラと違っているのは、モバイルサービスが適用できずに車をサービスセンターに持ち込む必要がある場合、ユーザーは時間を無駄にしながらUberタクシーのポイントを貯めて家に帰る必要がなく、NIOが有償で車を拾い、返却してくれます。中国ではこれを1日でできることもよくあり、あなたが一日の仕事を終えたら、車を置いていた場所に問題解決済みの車が戻されているのです。

さらにテスラと違う点は、NIOは自前のサービスセンターだけでなく、NIO認定サービスパートナーと呼ぶ、既存のサービスセンターと協業する点です。

保証とサービス

車両には6年または15万kmの保証がつき、ロードサイドアシスタンス、月8GBのインターネットアクセス、type-2ケーブル付きで無料のレベル2家充電器、BaaSにサインアップしなくても、月2回の無料バッテリー交換、200kWhの電気(バッテリー交換か充電)が含まれます。

2022年3月1日より前にES8 シグネチャー・エディションを注文した人には、さらなる特典があります。4年もしくは6万kmまでの無料メンテナンス、月15GBのモバイルデータ、無料で家充電の設置までNIOがサポートします。NIOが車を拾ってメンテナンスし、返却するまでのサービスも4回目までは無料です。最後に、BaaSに申し込まない人には、月6回の無料バッテリー交換と、月600kWhの電気がついてきます。

6年が過ぎたらどうなるのかは、まだ先の話なので今のところ不明です。分かっているのは、今無料で提供されるサービスは引き続き使えるけれど、有償になる、ということです。

アプリ

残念ながらNIOアプリの英語版はまだ存在せず、試すチャンスは今までありませんでした。しかしノルウェー市場向けのアプリはリリースされ、ノルウェーにいる人ならばNIO車両を所持している、いないに関わらず、誰でもダウンロードできます。

彼らが作り上げようとしているコミュニティはすべての人を歓迎しています。NIOはこのアプリが中国で提供されているものとほぼ同じであると発表しており、NIOの顧客を自社のポイントシステムを含むソーシャルネットワークに取り込むことに大きくフォーカスしています。

しかし運転代行サービスや、ワイン、ケーキ、アートなどの販売をノルウェー市場で行うかはまだ決まっていません。ノルウェー版アプリの翻訳動画をできるだけ早く見たいところです。

バッテリー交換ステーションネットワークの拡大

NIOはまだ車のローンチもしていなかったのですが、読者の中には欧州にバッテリー交換用ステーションができていないことを批判しようとする方もいるでしょう。しかしユーザーはコンセプトを信頼して適応し、簡単には理解できないであろうその内容を、自ら学ぶ必要があるのです。

まずノルウェーだけでも、社は今年中に5つの交換ステーションを設置した後、来年末までに20のステーションを作ると発表しています。具体的な計画はまだ明らかにされていませんが、私達はNIOが中国外で2025年までに1,000のバッテリー交換ステーションを作る予定で、そのほとんどは欧州になるという情報を手に入れました。したがってNIOが他大陸への拡張計画を発表する際には、新しく作られるバッテリー交換ステーションの数も発表されるでしょう。これから数週間以内に、欧州でどのような動きが見られるかの分析記事を出したいと思います。

【独自】急速充電がレベルアップ

以前の記事で、現在のソフトウェアで管理されている充電出力は最高で90kWと報じました。しかしNIOはソフトウェア・アップデートでパフォーマンスを改善し、最高値は120kWとなったようです。

ただ私達は制限が90kWだった頃の急速充電カーブに関する情報も持っています。充電中、車両がピークの充電速度をほぼ維持できるというのは予想通りでした。下の図は、アップデート前にNIOが充電サイクルの内部テストを行ったものです。90kWの制限でも100kWhのES8は30分で20%から80%まで充電ができています。

新しいアップデートによるパフォーマンスは、まだはっきりしていません。NIOのエンジニアから出てきた根拠に乏しい証言によると、充電サイクルのほとんどで120kWを維持できたということですが、彼は急いでいたため80%よりかなり手前で充電を止めたそうです。充電のスピードは下がるのか、そしてそれがいつになるのかは不明なままです。計画通りにいけば、明日私達はNIOとテストをし、この記事をアップデートします(※現時点でアップデートはなし)。これだけ充電出力が上がれば、充電サイクルもかなり短くなるはずです。現時点では20%から80%まで、20分で充電できれば良いなと考えています。でもこれも楽観的な予想ですので…… 実際のところはもうすぐ見られるでしょう。

重要なのは、まだこれが始まりだということです。NIOが今日話していたのは、例えばES8のオーナーは全員、将来バッテリー交換の際に150kWhの固体電池を選択できるようになります。このような新しいバッテリーをリリースした際には充電出力はさらに改善されている可能性があります。バッテリー交換ステーションに加えて設置されるNIOの急速充電ネットワークでは180kWの出力で充電できるとのことで、まだ成長する余地があります。

しかし繰り返しになりますが、3分のバッテリー交換に勝てるものは、すぐには市場に出てきません。計算してみるとこれは1万km/時間の充電量に匹敵するのに対し、現在ほとんどの車両では100kW以上の充電器を使って、最大でも500km/時間程度の充電量にとどまります。

NIO House

テスラやアップルのショールームは世界中どこでも同じで、商品を見る、購入することに特化しています(※テスラのショールームでは車の購入はできません)が、NIO Houseにはまったく違うコンセプトが掲げられています。本やカフェがあるコミュニティセンターの趣があって人々が気軽に集まることができ、アクセサリーやギフトなどのグッズを売る店もあり、NIO車両の中を見ることもできる、というものです。この場ではすべての年齢層と多種多様なライフスタイルをターゲットに、週替わりでヨガのクラスや料理教室など様々なイベントも開催されます。

各NIO Houseではそれぞれ独自のデザインが採用され、またユニークなドリンクも用意されます。欧州初のNIO Houseはオスロに作られますが、比較的小さめのショールームであるNIO Spaceもローンチされる予定です。現時点で社は次のNIO Houseを欧州の別の国に作ろうとしており、個人的にはドイツになるのではないかという気がします。社は通常NIO Houseを大きなNIOコミュニティができる大きな都市に作ることを目指していますが、オスロのNIO Houseに関しては簡単に説明できない部分がありますので、明日ツアー動画をリリースしようと考えています。

NIO ギフトショップ(NIO Life)

中国と同じように、NIOはアクセサリー、グッズ、燃料、サービスなどに使えるポイントシステムを導入します。

どのようにポイントが得られるの? とお考えでしょう。実はNIOのポイントシステムはどちらかというと複雑で、ポイントを得るには様々な方法があります。別の記事で、ポイントシステムの例をお見せしたいと思います(※現時点で続きの記事は出ていないようです)。

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. バッテリー交換のサブスクはそれなりの値段になるので日本ではどうでしょうね。
    本体が安くなり、6.5年位で乗り換えるなら悪くはない計算ですがあまり乗らない人にとっては維持費が上がることへの抵抗は大きそう。
    逆に交換の回数制限がなければガソリンで毎月2万円近く使っていた人にとっては良い選択肢なのでしょうね。

  2. バッテリー交換サービス

    テスラのイーロン・マスクは、バッテリー交換サービスを断念しました。
    何度か、検討して駄目だと判断したか?

    其れを敢えて続ける!NIO

    否定はしませんが。大丈夫かな?

    個人的には、NIOは中国のフェラーリと考えます(笑)

    上手く、生き延びれば良いですが。
    NIOの高級車戦略の事です!

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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