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日産よ、EVのトップランナーであれ! 初公開された「新型リーフ」発売へEVユーザー視点の期待とは

日産よ、EVのトップランナーであれ! 初公開された「新型リーフ」発売へEVユーザー視点の期待とは

日産が新車説明会を開き、3代目となる新型リーフを世界初公開したのをはじめ電気自動車を含む新モデル戦略を発表しました。初代リーフの元オーナーとして「新型リーフにはこうなってほしい」と期待するポイントを考えてみました。

目次

新型リーフの日本発売は2025年中

日産が「日産とインフィニティ 両ブランドの新商品と新技術の投入計画」を発表し、今後の世界市場で展開する新型車や、2025年度から2026年度にかけて投入予定の新技術を公開しました。

日本市場では、2025年度に新型「日産リーフ」のほか、新型軽自動車などを投入。2026年度には「第3世代のe-POWERを搭載した新型大型ミニバン」を投入する計画で、詳細は今年後半に発表する予定であることを示しました。

日本の自動車ユーザーとして気になるのは、やはり新型「日産リーフ」です。初代のZE0、2代目のZE1に続く3代目は、従来のセダン(ハッチバック)からSUVに近いクロスオーバースタイルに刷新されます。「日産アリア」から採用されたCMF EVプラットフォームを採用し、3-in-1パワートレインによって効率的なエネルギーマネジメントを実現、大幅な航続距離の改善を見込んでいるとのこと。詳細の正式発表(発売?)は「2025年半ば」の予定です。

発表会に参加していないので実車は見てないし、あくまでも、AZE0の元オーナー、EV普及への逆風がまだまだ強い日本で踏ん張るひとりのEVユーザーとしての意見ですけど、新型リーフは「こんなEVであって欲しいな」という期待を整理してみます。

新型リーフは「優れたEV」に進化して欲しい

まず大きなポイントとしては、新型リーフは世界で最も長く販売されているEVとして、EVならではの魅力を実現した「優れたEV」に進化して欲しいということです。初代リーフが発売されたのは2010年12月。それから15年、グローバルで累計100万台ほど(2023年にアリアなどを合わせて「電気自動車のグローバル累計販売台数100万台を達成」と発表)を販売してきた市販EVのパイオニアです。

ZE0からZE1へのモデルチェンジでは、基本的なプラットフォームやパワートレインに根本的な進化があまり見られませんでした。満を持して繰り出される今回のフルモデルチェンジですから、世界で一番長く量産EVを販売してきたメーカーならではの「さすが日産」「さすがリーフ」と称賛できる新型車として登場してくれることを期待しています。

程よいバッテリー容量と車両価格を提示して欲しい

では、どうすれば魅力的な新型EVになり得るのか、具体的に挙げてみます。

最も重要なのは、やっぱり車両価格でしょう。そして、EVの車両価格を決める最大の要素が、搭載するバッテリー容量ということができます。現行リーフ(ZE1)の、ベースモデル40kWh、上級モデルの「e+」で60kWhという容量は、EVユーザーの実感として必要にして十分だと感じています。40kWhでも日常使いには十二分だし、60kWhならロングドライブでも十二分、ってことですね。

航続距離を延ばすためにより多くのバッテリーを搭載! っていうのはあまり感心しません。プラットフォームがアリアと同じらしいので現行モデルのように「20kWh刻み」ではなくなるかもしれないですが、同程度のバッテリー容量で効率アップによって航続距離を延ばし、日本の自動車ユーザーに向けて「これで十分!」という自信に満ちたメッセージを発信して欲しいと思います。

そしてお値段。現行の車両価格は、それなりの装備があるGグレードで、40kWhモデルが約450万円。60kWhのe+が約580万円です。新型だから高くなるなんてのは論外です。たとえば、69kWh(実質64kWh)のバッテリーを搭載した日本仕様のボルボ「EX30」でさえ、基本的な先進運転支援機能標準装備で価格は559万円〜と、e+よりもお手頃です。58.56kWhで400万円程度のBYDドルフィン並みに、とは言いませんが、日本の一般的なユーザーにとって手が届きやすい価格設定となることを期待します。

妄想的な希望として、40kWhで350万円、60kWhで450万円(補助金なしで)くらいを実現してくれれば、日本のEV普及を推し進めることができるのではないかと思います。

無理せず使い勝手のいい充電性能を実現して欲しい

次のポイントは充電性能です。バッテリー劣化対策と言い換えることもできるでしょう。

現行モデルの急速充電性能は、40kWhモデルが最大50kW。e+(60kWhモデル)が70kW程度。とはいえ、輸入車を中心とした新型EVはどんどん「最大150kW」レベルになってきています。バッテリーの能力を超えた高出力充電は劣化を招く懸念がありますから、速ければいいというわけではないですが、急速充電性能が高ければ「経路充電」の時間短縮となり、ロングドライブの利便性が向上します。

たとえば「40kWhのバッテリーを1時間で満充電にできる出力=40kW」は「1C」と定義されています。先日BYDが発表した「スーパーeプラットフォーム」は驚愕の「10C」でした。これは、インフラ整備の観点も含めて「too much」とも感じますが、日本の高速道路SAPAに90〜150kW級の高出力急速充電器整備が進んでいる現状を踏まえても、なんとか「2C」程度の急速充電性能を実現してくれると素敵です。40kWhモデルで「最大80〜90kW」、60kWhモデルで「120〜150kW」程度という感じですね。

左のバッテリー温度計がレッドゾーンに入ると充電出力が制御されます。(ZE0で大間へ弾丸ドライブ時の写真)

ZE1へのモデルチェンジ、e+の登場時にも期待して実現しなかった「バッテリー温度管理システム」は、今回、アリア同様のプラットフォームとのことなので搭載されるのだと思います。これで「夏場のロングドライブでは数回目の急速充電でバッテリー温度が上昇して出力制限が掛かる!」といった不便は解消されるはず。願わくば「ナビで急速充電スポットを目的地設定したら自動でクーリングやヒーティングが行われる」といった先進の便利さを備えて欲しいところです。

ちなみに、温度管理システムを備えた今どきのEVのバッテリーは、三元系であっても、初代リーフほどに劣化したという話は聞いたことがありません。まあ、リチウムイオン電池なのでそれなりに劣化はしますが、使い勝手として「こんな感じ」というのは、10年落ちのモデルSを衝動買いした青山さんのレポートをご参照ください。

コネクテッドアプリの使い勝手向上にも期待

これは、私自身AZE0(初代の後期、2016年モデル)オーナーであった時の印象ですけど、コネクテッドのスマホアプリ起動に時間がかかったりして、使い勝手がイマイチなところがありました。

すでに日産ではアリアやサクラなどEV車種のバリエーションが広がり、アプリやサーバも進化していると思うので、「今はもうそんなことないよ」であればコメントでご指摘いただきたいですが。ことにEVユーザーにとってコネクテッドアプリで操作する「乗る前エアコン」とか走行記録の確認などの機能は便利。クルマそのものの機能や性能とともに、重要な満足度ポイントになっていると感じています。一例を挙げると、テスラのアプリはとても使いやすくて機能が豊富です。新型リーフには、ぜひ使い勝手のいい進化したアプリを提供して欲しいと願います。

手軽なV2L装備を搭載して欲しい

そもそも、日産リーフは「走る蓄電池」というキャッチフレーズでのぼり旗まで作ってプロモーションを展開していましたが、実は、高価な他社製の別売機器がないと駆動用バッテリーの電気を取り出すことはできませんでした。

2020年、アリアのCVE(開発責任者)中嶋氏にインタビューした際にも「ACコンセントを!」と直訴しましたが、アリアへのACアクセサリコンセント装備や、V2Lアダプタの設定などは実現しませんでした。

でも、AC100V 1500Wのアクセサリーコンセントや、普通充電口から電気を取り出すアダプタは本当に便利で、EVならアイドリングせずにたっぷり電気を使えます。新型リーフはぜひV2Lに対応して、文字通りの「走る蓄電池」になって欲しいと思います。

なにはともあれ、新型リーフにはひとりのEVユーザーとして期待しています。「2025年半ば」の正式発表を楽しみにしています。

文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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