量産EVのパイオニアである「日産リーフ」が3代目に進化。日本仕様の詳細や価格が正式に発表されました。バッテリーサイズは78kWh。気になる価格はベーシックな「B7 X」が約519万円〜、装備充実の「B7 G」が約600万円〜。10月17日から受注を開始して、2026年1月からデリバリーが始まる予定です。
ベーシックモデルの「B7 X」は518万8700円〜
2025年10月8日、日産自動車が新型「日産リーフ」の日本仕様「B7」グレードの発表会を開催しました。世界のEVシフトへ向けて先陣を切ったのが「日産リーフ」です。2010年に初代を発売、2017年にフルモデルチェンジして2代目に移行、そして2025年、ついに3代目モデルの発売が正式に発表されました。
2代目はフルモデルチェンジとはいえ、バッテリーの温度管理システムが非搭載のままなど、進化度の面で物足りなさを感じる点が多く、世界のEVの主役をテスラやBYDに奪われた側面がありました。
3代目モデルはEVユーザーの要望を聞き届けて大きく進化。まさに「待っていました」と言いたくなるEVに生まれ変わりました。
今回正式に発売が発表されたのは「B7」グレードの2タイプで、いずれも78kWh(使用可能電力量は75.1kWh)のバッテリーを搭載。上級モデルの「B7 G」が599万9400円、ベーシックモデルの「B7 X」が518万8700円という価格です。

価格や新型リーフ投入戦略を説明した日本マーケティング&セールス担当執行職の杉本全(あきら)氏。
さらに、55kWhのバッテリーを搭載する「B5」というグレードが2026年2月ごろに追加される予定であることが示されました。今回、B5の価格は発表されませんでしたが、発表会のプレゼンにおいて補助金が2代目と同等となった場合「350万円程度で購入できる」というアナウンスがありました。スズキのeビターラやヒョンデのコナなどと張り合える、EVとしては手頃な価格といえるでしょう。補助金が手厚い東京都の場合だと実質300万円を切る価格となり、今後、このあたりが普及タイプEVの価格帯となっていくのではないかとも感じます。
最大150kWに向上した急速充電性能

新型リーフの進化について自信を感じるプレゼンテーションを行ったリーフビークルエンジニアの磯部博樹氏。
さて、新型EVとしてのポイントに注目します。プラットフォームはアリアと同じ「CMF-EV」で、エンジン車と共用のプラットフォームを採用していた先代モデルに残っていた後席のフロアトンネルの名残などがなくなり、フラットなフロアを実現しています。
ボディサイズは全長×全幅×全高が4360×1810×1550(mm)、ホイールベースが2690mmで、ハンズオフドライブが可能なプロパイロット2.0を装着するモデルは、アンテナの高さが高くなるため全高が1565mmです。先代モデルと比べると全長が120mm短縮、全幅は20mm拡幅、全高は10〜25mmアップ、ホイールベースは10mm短縮となり、少し短くなり少し幅広になりました。
急速充電の受け入れ最大出力は150kWと高く設定。バッテリー冷却はもちろん、寒冷地仕様の場合はバッテリーヒーターも装備。充電する地点を目的地としてナビに入力すると、到着までにバッテリーヒーターによって適温にプレヒートする「ナビリンクバッテリコンディショニング」が働き、寒冷条件でも効率のいい充電が可能となっています。
WLTCモードでの一充電走行距離は、B7 Gが685km、B7 Xが702kmです。実用的に約8割が安心して走れる距離としても、「702×0.8=約562km」です。まだCEV補助金額は発表されていませんが、現行型同様に89万円として、B7 Xの実質価格は約430万円です。余裕で600km近く走れるEVが400万円台前半で買えるようになったという一点においても、新型リーフの飛躍的進化を実感します。
充電口の位置も一新
初代、2代目とリーフの充電口はノーズ部分にあり、リッドを開けると普通充電とCHAdeMO急速充電、2つの充電口が装備されていました。しかし今回のフルモデルチェンジではフロントフェンダー部の右側に普通充電、左側に急速充電の充電口となりました。
日本で急速充電インフラ整備が進んだ2010年代中盤当時、市販EVといえばほとんどがリーフ(もしくは三菱i-MiEV)という状況だったことから、リーフの充電口位置に合わせた充電器の設置が多かったのですが、最近はケーブルが吊り下げ式になるなど、ユニバーサル性を持たせたものが多くなっています。急速充電口の位置が変わったことで、特段の不便が生じることはないでしょう。
回生パドルスイッチはGグレードのみに設定

ギアセレクターやe-PEDALなどの操作スイッチはフロントパネル下に集約。
B7のモーターは160kW/355Nmでフロントタイヤを駆動するFWD(G、Xともに共通)。先代リーフに採用されていたeペダルはeペダルステップに変更され、完全停止しないワンペダルドライブとなりました。
カタログをチェックしていると少し残念なことが判明。回生ブレーキ量を調整するためのパドルスイッチは上級のGにのみ装着され、Xでは選べません。EVの基本装備として重要な機能がグレードによって異なるのはちょっと残念です。このほかGに装備、Xに未装備となるのはアダプティブLEDヘッドライトやリモコンバックドア、BOSEサウンドシステム、プロパイロットパーキング、電動ドアミラー、運転席パワーシート、19インチホイール(Xは18インチ)など、いわゆる快適性や高級感を得るための装備が多く基本機能に大きく関わらない部分となっています。
お手軽V2Lは、なんと最大3kWを給電可能
現行リーフと同様に、もちろんV2Hには対応しています。とはいえ、多くのユーザーが求めてきたのはもっと簡単にAC100Vを取り出すことでした。新型リーフはこの点でも大きく進化、AC外部給電コネクターが標準で装備されます。このコネクターを普通充電口に差し込むことで簡単にAC100Vを1500Wまで取り出せます。
さらにオプションで車内にAC電源のコンセントを取り付けることも可能。この場合はセンターコンソールとラゲッジの2カ所にAC電源ソケットが装備されます。標準装備のAC外部給電コネクターとオプションのAC電源ソケットは別系統のインバーターで電力を供給するため、それぞれから各1500W、合計3000Wの電力を得られるというのがポイントです。これは家庭用30A契約と同等の電力。キャンプなどで、瞬間的な消費電力が大きい電気ケトルとホットプレートを同時に使うこともできます。

オプションのコンセントは、荷室とセンターコンソールの後部座席側の2カ所に装備。
現行リーフはフロントにストラット式、リヤにトーションビーム式のサスペンションを採用していましたが、今回のフルモデルチェンジでリヤサスペンションがマルチリンクに変更されました。走りのポテンシャルが向上しているのはもちろんですが、マルチリンクサスの採用によりラゲッジルームの形状を改善しています。
VDA容量は先代モデルよりも15リットル少ない420リットルですが、ラゲッジ最大幅を1011mmから1100mmに拡大。ラゲッジフロアへのサスペンション構成部品の張り出しなどが減少したため、ゴルフバッグ2個を横積み可能となりました。
全体を通して新型リーフはEVユーザーの要望に応えて大きく進化した印象です。リーフの型式名は初代がZE0、先代がZE1、そして今回がZE2です。初代が「大いなる実験」として登場したゼロであり、ZE1にはZE0から踏襲された点があまりに多かったことを考えると、今回の新型ZE2こそが本当の意味での2代目モデルといえるかもしれません。
新型リーフは、今後さらに大きく広がり、そして変わっていくであろうEVのマイルストーンとしての役割を果たしてくれる。そんな魅力とポテンシャルを備えて登場したと感じる発表会でした。
【中継】新型日産リーフ 国内発表会(YouTube)
取材・文/諸星 陽一
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