パナソニックが太陽電池事業を縮小か
高性能な電気自動車を出してきたアメリカのテスラは、ニューヨーク州バッファローにある同社の工場「ギガファクトリー2(GF2)」で行ってきた、パナソニックと共同での「太陽電池」生産を解消する方針のようです。日経電子版(2020年2月26日)などが伝えている報道によると、パナソニックが太陽電池事業を縮小することが要因と思われます。
テスラ社の本質は、単に電気自動車を作るだけの企業ではなく、再生可能エネルギーを軸とした包括的なエネルギー・ソリューションを提案する企業なのは、当ブログの読者の皆さんはご存じですね。そうしたなか、太陽電池は産業用蓄電池・家庭用蓄電池と並んでテスラが目指すエネルギー・ソリューションの大きな柱になっているはずです。パナソニックとの共同生産解消は、何を示唆しているのでしょうか。
テスラとパナソニックは別れてしまうの?
ところで、ネバダ州には車載用電池の大規模工場「ギガファクトリー1(GF1)」がありますが、こちらではこれまで通りテスラとパナソニックは車載用電池の共同生産を続けます。
太陽電池の共同生産を解消するGF2の今後の扱いについては、テスラは4月に投資家などを対象に、現地で発表する可能性が出てきました。しかも、GF2ではパナソニックの撤退があるものの、テスラは雇用を増やす意思も見せています。
このところテスラは、中国CATLや韓国LGからの電池供給も発表していますから、これまでテスラのBEVの電池を独占的に製造してきたパナソニックの立ち位置は、必然的に変わってくることでしょう。
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ギガファクトリー2 での太陽電池の製造
それでは、ギガファクトリー2での太陽電池の製造について振り返ってみましょう。両社が、太陽光発電パネル(Photovoltaic Panel:PV Panel)の中心を成す部材である「太陽電池(Solar Cell)」の製造で提携を発表したのは2016年のことでした。
製造開始は翌年の2017年でしたが、テスラの求める太陽電池をパナソニックが製造することは、発電効率などの観点から難しく、結局ここでパナソニックが製造した太陽電池は日本の住宅メーカーに販売されてきた経緯があります。現行のテスラ製ソーラールーフ(Solar Roof)は、条件を満たす中国製を使っていると言われています。
そのような事情で、GF2での太陽電池製造プラントは稼働率は低かったようです。パナソニックとしては稼働率の低いラインを停止することでコストをカットし、日本の住宅メーカーに送っていた分は、2019年5月に協業を発表した中国の提携先「GSソーラー(GS-Solar、リンク先は英語サイト)」からのもので充分賄えると判断した模様です。
パナソニックはこの時点で、太陽電池事業の開発・生産体制をこの協業によって最適化し、ここから産み出したリソースをHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)や太陽電池モジュール、蓄電池、エコキュート、電気自動車(EV)充電などを組み合わせたエネルギー・ソリューション事業へ振り向ける、としていました。
おわりに
今回の解消については、突き抜けたものづくりを目指すテスラのエキセントリックな姿勢に、パナソニックが「ちょっと、これ以上ついて行くのは無理」と距離を置いた、という見方もあるようです。太陽電池の「効率」と「デザイン性」はトレードオフの関係にあると耳にしますが、ブレイクスルーが無いものでしょうか。筆者としてはパナソニックにも期待しているのですが……。
パナソニックは、東日本震災のあった2011年に、三洋電機を完全子会社化しました。現在のパナソニックの太陽光事業の主流は、この三洋電機のものが源流と言われています。優秀な充電池「エネループ」が三洋電機からパナソニック「エボルタ」に吸収されるかと思いきや、今でも併売されていることは、三洋電機製の優秀さを図らずも表していますね。
余談ですが、筆者の家の屋根にはパナソニックの太陽電池が載っています。旧三洋電機系の太陽電池の子孫だと言われています。我が家の太陽電池はなかなか高性能で、近所の知り合いの他社製パネルより朝の起電は早く、夕方も薄暗くなるまでよく粘ってくれます。テスラの要求するようなデザイン性とコストパフォーマンスを備えた電池は無理だとしても、この技術が消えてしまうのはあまりにも惜しい、と感じています。両社の関係が今後は変化することは避けられないでしょうが、テスラもパナソニックも頑張って欲しいものです。
(文/箱守知己)
エネループは実はパナソニックに吸収したのではなく、工場をFDKに売却してそこからOEM供給を受けるという形で販売しています。
当時のニッケ水素電池のシェアで物言いがついたので、親会社のエボルタを守るためにエネループを売ったのです。当時圧倒的にエネループが売れていたのに
正直、太陽電池とリチウムイオン電池事業だけが欲しかったのは分かりますが
その他にも優秀だった三洋の部門を捨て値で中国に売り払ったのがその後の中国勢の躍進と順調な退潮につながってると思います
中国の勢いからすれば時間の問題だったのかもしれませんが、
それでも良い判断ではなかったですね。