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『PEUGEOT 3008』の電気自動車が年内に日本発売/課題の急速充電性能も向上か

『PEUGEOT 3008』の電気自動車が年内に日本発売/課題の急速充電性能も向上か

ステランティスジャパンはマイルドハイブリッド車の新型『PEUGEOT 3008』を、7月2日から日本で販売することを発表しました。併せて、今年中に電気自動車(EV)の『PEUGEOT E-3008』を日本に導入することも明らかにしました。発表会でわかったことをお伝えします。

目次

新型3008はMHEVモデルから日本に導入

ステランティスジャパンは2025年7月2日、六本木の泉ガーデンギャラリーで開催した発表会で、48Vシステムを搭載したマイルドハイブリッド車(MHEV)の新型プジョー『PEUGEOT 3008』の発売を発表しました。

プジョー3008は、プジョーブランドの中核になるCセグメントのSUVで、これまでに世界で累計132万台以上を販売した人気モデルです。モデルチェンジは8年ぶりで、新開発の「STLA-Medium」プラットフォームを搭載する初めてのモデルになります。

プジョー3008のパワートレインは、ハイブリッド車(HEV)と電気自動車(EV)の2種類あります。日本で発売したのはMHEVだけですが、欧州ではプラグインハイブリッド車(PHEV)も展開しています。

●プジョー3008 日本導入モデルと価格
Allure Hybrid 489万円(税込)
GT Hybrid 540万円(税込)
GT アルカンタラパッケージ Hybrid 558万円(税込)

電動化技術に関するプレゼンテーションもありました。

プジョー3008 MHEVは、ターボチャージ付の1.2L直列3気筒エンジンに、最高出力16kWのモーター・ジェネレーターと6速デュアルクラッチ(DCT)を組み合わせたハイブリッドシステムを搭載しています。

モーター駆動の利用幅は広いようで、市街地では最大50%の時間でエンジンを停止すると発表しています。低速時はモーター駆動のみで走行することもでき、状況に応じて30km/hまではモーター走行可能です。

EVバージョンの日本導入は「年内」

さて、新車発表の直後なので、本来はさらなるMHEVの詳細をお伝えすべきとは思うものの、EVsmartブログとしてはやはり、EVバージョンの方が気になってしまいます。むしろ、それを聞くために発表会に参加したようなものです。

結論を紹介すると、EVバージョンの『E-3008』の日本導入は「年内の予定」です。

発表会のプレゼンテーションで、プジョーを含めたフレンチブランドの責任者、小川隼平さんは、「電気自動車モデル『E-3008』は2025年内に発売予定です」と明言しました。発表会直後の囲み取材で「年内のいつごろか?」と聞いてみましたが、今のところは年内としか言えないとのことでした。

ひとまず、よかったです。もう、これだけ聞ければ十分です。帰ろうかと思いました。というのは冗談ですが、もうひとつ、気になることが残っていました。それを確認するまでは帰れません。

急速充電は「最大50kWではない」

3008についてプレゼンテーションする小川隼平氏。

気になるのは、急速充電性能です。ステランティスジャパンのグループ各社が日本で発売しているEVは、どれもCHAdeMO規格に対応してはいるものの、急速充電の受入上限出力が50kWというひと昔前の状態のままで改善の兆しがありません。つい先日に発表されたアルファロメオのEV、『ジュニア・エレットリカ』も50kWでした。

【関連記事】
アルファロメオ初のEV『ジュニア・エレットリカ』日本発売/急速充電性能「最大50kW」はかなり残念(2025年6月26日)

では、E-3008はどうなるのか、ブランド統括の小川さんに直球で聞いてみました。答えは、「50kWではない」でした。よかったです!

ステランティスジャパンでは、プラットフォームが新規になったこともあり、日本導入モデルでも高出力に対応すべく、準備をしているようです。

小川さんは、「これまでのバッテリー容量であれば正直、50kWでもいいと思っているのですが、バッテリー容量が多いロングツアラーになると、やっぱり(急速充電の受け入れ出力を)上げていかなければいけないという認識です」という考えを示しました。

小川さんは、かつて日産のEV事業を統括していた方であり、キャリアの中で電気自動車に精通しています。実際にどんな性能が与えられるのかについては、EVモデルの正式発表を待つしかありません。でも、新たに小川さんがブランド統括を務めるステランティスグループ各社のEVが、ユーザー本位の進化を遂げることに期待しています。

E-3008のバッテリー容量は、73kWhと96.9kWhの2種類です。かなりの大容量で、英国仕様では96.9kWhのWLTP複合モードの一充電航続可能距離は約700kmにもなります。小川さんが言う、ロングツアラーとはこのことでしょう。

バッテリー容量が多いこともあり、E-3008は、欧州では最大160kWの急速充電に対応しています。システム電圧は400V仕様なので、日本では現行のCHAdeMO規格だと最大150kWが上限ですが、十分でしょう。そんなわけで、目的が果たせて満足の発表会になったのでした。あとは年内の発売を待つだけです。

欧州では人気モデルになっているE-3008

E-3008のインテリア。

ところで、E-3008について調べていたら、欧州ではかなりの人気を集めていることがわかりました。ステランティスは今年1月のニュースリリースで、E-3008の受注台数が発売から6か月で10万台を突破したと発表しました。新型3008の販売台数に占めるEVの割合は、22%にもなるそうです。

国別で受注台数が多いのは、フランスが累計3万5000台、英国が2万5000台、ドイツが9000台などとなっています。またEVの割合が多いのは、オランダの37%、ベルギーの34%、英国の31%などとなっています。

リリースではまた、人気になっているのは最上級グレードの「GT」で、全体の60%、英国では85%を占めているとしています。

半年で10万台はかなり多いと言えますが、生産が追いついていないのか、調査会社JATOダイナミクスが発表した2025年5月の欧州の登録台数では、今のところ上位に入っていません。

余談ですが、JATOダイナミクスによれば、欧州でのEV販売台数は2025年1月〜5月の5カ月間で前年比26.1%増と大きく伸びています。販売増の背景にあるのは、『ルノー5』や『プジョーE-208』、『KIA EV3』など、Bセグメントに新たに投入された新型車にあると考えていいと思います。

E-3008は600万円前半になる?

特徴的なのは、これらBセグメントのEVでも、航続可能距離が長いモデルが人気になっているらしいことです。KIA EV3は全長4300mmのBセグメントですが、バッテリーを81.4kWhも積んでいて、WLTP複合サイクルの航続可能距離は600km以上です。

E-3008も、前述したようにバッテリー容量は多くて、73kWhと96.9kWhの2種類です。それに伴って車重も2トンを超えています。

長距離を走る人が少なくない欧州ならではのトレンドかもしれませんが、当然価格もそれなりに上がります。ベーシックグレードで3万7500ポンドからなので、日本円では約740万円です。

この価格のままだと、日本市場では厳しそうです。ただMHEVバージョンの日本での価格は、約590万円からになっている英国より100万円ほど低く設定されているので、EVのE-3008も同様の価格設定になるのかもしれません。

だとすると、E-3008は日本では約600万円台前半になるのでしょうか。そうなれば補助金と合わせると500万円台になるので、バッテリー容量を考えるとコストパフォーマンスの納得感が高まるように思います。

では最後に、欧州仕様のE-3008の特徴をおさらいして締めにしたいと思います。駆動方式はFWDとAWDの2種類です。AWDは今年に入ってから追加されています。

なお、プジョーのEVでは『e-208』の高出力グレードが、今年4月にV2L対応になったという発表がありました。E-3008は今のところ非対応ですが、ここはぜひ、V2L対応になってほしいと思います。それから、e-208やe-2008などの「e」は小文字でしたが、E-3008は大文字になったようです。純粋なEVであることを強調しているという記事もありますが、ほんとうのところどんな意図があるのか、機会があれば聞いてみたいと思います。

前述したように欧州仕様車では、バッテリーは73kWh、96.9kWhの2種類で、急速充電は最大160kW対応です。普通充電は最大11kWです。

トリムは、英国では「ALLURE」「GT」の2種類で、これと別にEVはAWDの「DUAL MOTOR」の設定があります。現在はローンチエディションなので、特別仕様のようです。

兎にも角にも、今は1日も早いE-3008の日本導入を期待したいと思います。

PEUGEOT 3008/E-3008(英国仕様)主要スペック

PEUGEOT 3008 HybridPEUGEOT E-3008(※)
ELECTRIC 73kWh 210ELECTRIC 97kWh 230DUAL MOTOR ELECTRIC 73KWH 325
全長×全幅×全高4565×1895×1665mm4542×1895×1641mm
ホイールベース2730mm2739mm
車両重量1620kg2108kg2166kg2262kg
定員5人5人5人5人
タイヤサイズ225/55 R19235/55 R19235/55 R19または235/50 R20235/50 R20
最小回転半径5.4m約5.3m
駆動FWDFWDFWDAWD
エンジン
種類ターボチャージ付直列3気筒DOHC
排気量1199cc
最高出力100kW/5500rpm
230Nm/1750rpm
モーター
種類永久磁石式交流同期型
最高出力16kW/4264rpm157kW/4370-14000rpm170kWh前:239kW/104-6000rpm
後:239kW/14000rpm
最大トルク51Nm/750-2499rpm343Nm/250-4370rpm前:343/250-4370rpm
後:166Nm/1000-4375rpm
一充電航続距離(WLTP複合)最長326マイル(約525km)最長435マイル(約700km)最長303マイル(約488km)
燃料消費率(WLTC・国交省審査値)19.4km/L
駆動バッテリー
種類リチウムイオンバッテリー(NMC)リチウムイオンバッテリー(NMC)
総電力量0.9kWh73kWh96.9kWh73kWh
総電圧400V
急速充電受入出力最大160kW
普通充電受入出力最大11kW最大11kW最大11kW
価格(税込)489万円〜3万7504.17ポンド〜3万9754.17ポンド〜4万6029.17ポンド〜
(※)英国仕様

取材・文/木野 龍逸

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この記事を書いた人

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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