ステランティスジャパンがプジョーのフラッグシップモデルとなる電気自動車「E-3008」を日本で発売することを発表しました。搭載するバッテリーは73kWhで一充電走行距離は604km。急速充電はチャデモ規格で最大160kWの高出力に対応します。価格は760万円と予想より少しお高めですが、ラグジュアリーSUVのEVに新たな選択肢が加わりました。
フラッグシップモデルの電気自動車が日本デビュー
2026年2月12日、Stellantis(ステランティス)ジャパン株式会社がプジョーブランドのフラッグシップとなるCセグメントSUV「3008」で初めてのBEVとなる「PEUGEOT E-3008(イー サンマルマルハチ)」を日本でも正式に発売することを発表しました。

2025年7月2日には先行してマイルドハイブリッド車の新型「PEUGEOT 3008」を発売。その発表会の席上で、電気自動車モデルの E-3008 を「年内にも日本導入」予定であることを明らかにしていました(関連記事)。
宣言した予定よりも少しずれ込んだのは、昨年末から吹き荒れる円安の嵐の影響でしょうか。今回発表されたのは「GT アルカンターラパッケージ」のワングレードで、希望小売価格は760万円(税込)です。昨年7月の速報記事では、プジョーブランドの他車における英国と日本の価格を比較した上で、600万円台〜を期待していたので、希望的な予想よりは少々高めの価格設定となりました。
国のCEV補助金は89万円で、実質的な価格は671万円〜ということになります。
新プラットフォームの採用でEV性能が向上

新型3008の特長は、まず、個性的かつプジョーブランドのアイデンティティを感じさせるエクステリアデザインといえるでしょう。大型のフレームレスグリルの存在感や、ライオンの爪痕をモチーフにしたLEDデイタイムランニングライトなどのたたずまいは、プジョー好きなクルマユーザーの心を揺さぶっているはずです。
さて、EVとしての出来栄えはどうなのか。E-3008は、CおよびDセグメント向けに設計されたプラットフォーム「STLA-Medium(ステラ ミディアム)」を採用し、従来のステランティスグループの車種よりもEV性能が向上しています。
大容量モデルなどの日本導入は「未定」
日本仕様が搭載するバッテリーの総電力量は「73kWh」です。既報のように、欧州では73kWh、96.9kWhの2種類のバッテリーやAWDモデルもありますが、日本ではひとまず73kWhのFWDモデルのみとなります。96.9kWhやAWDモデルの日本導入計画をステランティスジャパンに確認しましたが「今のところ未定です」という回答でした。
カタログスペックの一充電走行距離は604km(WLTCモード)と堂々の600km超え。高速道路を利用したロングドライブの実用電費が約6km/kWhと仮定しても、420〜450km先の急速充電器に到着できる航続距離性能を実現しているはず(改めて長距離試乗などで確認します!)なので、ラグジュアリーSUVとしての実用性は十分です。
急速充電性能は最大160kW

さらに賛辞を贈りたいポイントが、急速充電性能の向上です。E-3008は日本の公共用急速充電器で一般的なCHAdeMO(チャデモ)規格で、最大160kWの出力に対応できることが発表されました。昨年7月の発表時、プジョーを含めたフレンチブランドの責任者である小川隼平さんに質問したところ「50kWではない」という回答をいただいていましたが、日本国内のSAPAなどに増えている「最大150kW器」の性能をフルに活用できる性能を得たことは朗報です。
ステランティスグループの既存EV車種のほとんどは、最初に日本発売されたプジョー「e208」以来、「eCMP ※現在はeCMP2(STLAスモール)」という共用プラットフォームを採用しており、チャデモ規格の急速充電性能は「最大50kW」に抑えられていました。
e208が日本発売された2020年当時、日本国内の急速充電器は最大50kWが大半で、バッテリー容量も50kWhなので、実用的には「これで十分」という印象でした。でも、ここ数年で高速道路SAPAに新設される急速充電器は90kW以上が標準的になり、150kW器も続々と登場。小川氏からも「バッテリー容量が多いロングツアラーになると、やはり急速充電の受け入れ出力を上げていかなければいけないという認識」とする思いを聞いていました。
ステランティスグループでは、2027年以降、日本や北米、韓国で発売されるEVにNACS(North American Charging Standard=北米充電標準規格)を採用し、テスラのスーパーチャージャーネットワークを利用できるようにすることをすでに発表済み(関連記事)です。
2027年までにはもうそんなに時間もないし、既存モデルの高出力対応は難しいのだろうと思っていたら、このタイミングでE-3008が160kW対応。これはもしかすると、1月に試乗したアルファロメオ「ジュニア」(関連記事)など、ステランティスの既存車種にもアップデートの可能性が! と勝手に期待して「急速充電性能の向上や温度調節システムは、e-CMP採用の他モデルへ広げる予定などはありますか?」と質問してみましたが、回答は「拡大予定はございません」ということでした。
ちなみに、E-3008の急速充電における「最大電流値」を確認すると「400V×400A=160kW」で、「最大400A」とのこと。日本国内の150kW器の最大電流はおおむね350Aですが、海老名SAへの初設置が決まった新型の350kW器は「400A」対応です。電圧が400Vシステムなので350kWは無理ですけど、最新350kW器で利用するメリットを実感できる数少ないEV車種のひとつになるかも知れません。
バッテリーのプレコンディショニングは手動設定が基本
EV性能向上のポイントのひとつが、先の質問で触れた「バッテリーの温度調節システム(プレコンディショニング)」機能です。外気温が低い冬場など、バッテリーが低温だと急速充電性能が制限されるため、あらかじめ温める(夏場は冷やす)機能です。
この点については「バッテリーの温度調節システムはナビ連動などの自動動作も可能ですか?」と確認したところ、「欧州仕様は(自動も)可能ですが、日本仕様は手動でONにします」とのこと。プレコンディショニングを手動で使う際、充電スポットに到着する何分前くらいにオンにすればいいのか戸惑いがちですが「急速充電スポットに到着する30~45分程度前での操作を推奨しています」という(ディスプレイの「i」を押すとそのような案内表示が出るそうです)補足説明もいただきました。
普通充電は最大11kWに対応
急速充電の160kW対応は欧州仕様と同等であり、普通充電について念のため確認すると、「欧州仕様と同じ最大11kW」対応ということでした。日本国内メーカーのEV車種は「最大6kW」がほとんどですが、E-3008はグローバルな普通充電性能も実現していることになります。
現状、日本国内の普通充電スポットは「6kW」を中心に拡充が進められているものの、先だって筑波サーキットに「9.6kW器」が新設(関連記事)されたり、アウディが全国の宿泊施設に「8kW器」を無償設置(関連記事)するなど、普通充電サービスにおいても多様化、高出力化が進展していくことが予想できます。新たなプラットフォームを採用して最新のEV性能を実現してきたE-3008は、ステランティスグループのEVが着実に進化していることを象徴する1台といえそうです。
航続距離や充電性能などの細かな点は、改めて長距離試乗レポートをお届けしたいと思いますが……。まずは、プジョーのフラッグシップEVが登場したことを祝福しつつ、日本でもさらに多様で魅力的な電気自動車の選択肢が広がることに期待しています。
取材・文/寄本 好則






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