テスラ2020年第1四半期の生産台数は約10万3000台

2020年4月2日(現地時間)、テスラ社は第1四半期の生産台数と納車台数を発表しました。生産台数は10万2672台、納車台数は8万8400台です。納車台数は前期比2万3695台減ですが、これまで3期連続で生産台数を上回っていたことを考えると一時的な状況と考えられます。

テスラ2020年第1四半期の生産台数は約10万3000台

【参考情報】
Tesla Q1 2020 Vehicle Production & Deliveries(ニュースリリース)

テスラの生産台数と販売(納車)台数推移

生産台数モデルS/Xモデル3合計
2017Q125,418025,418
2017Q225,708025,708
2017Q325,07626025,336
2017Q422,1402,42524,565
2018Q124,7289,76634,494
2018Q224,76128,57853,339
2018Q326,90353,23980,142
2018Q425,16161,39486,555
2019Q114,16362,97577,138
2019Q214,51772,53187,048
2019Q316,31879,83796,155
2019Q417,93386,958104,891
2020Q115,39087,282102,672
販売台数モデルS/Xモデル3合計
2017Q125,051025,051
2017Q222,026022,026
2017Q325,91522226,137
2017Q428,3201,54229,862
2018Q121,8008,18229,982
2018Q222,30018,44940,749
2018Q327,71056,06583,775
2018Q427,60763,35990,966
2019Q112,09150,92863,019
2019Q217,72277,63495,356
2019Q317,48379,70397,186
2019Q419,47592,620112,095
2020Q112,20076,20088,400
2018年度
四半期販売台数平均
24,85436,51361,367
2019年度
四半期販売台数平均
16,69275,22191,913

モデル3の生産は引き続き増加

テスラ社の2020年第1四半期の生産台数内訳は、モデル3とモデルYが8万7282台、モデルSとXが合わせて1万5390台でした。納車台数はモデル3が7万6200台、モデルSとXが合計で1万2200台です。生産台数、納車台数はともに前期を下回りました。

リース契約は全体の7%ですが、上級モデルのモデルS/Xは16%を占めます。一方、モデル3/Yのリース契約は5%にとどまり、買い取りが多いことがうかがえます。

テスラ社はニュースリリースで、新たにモデルYの生産が1月に始まったこと、および3月から納車が始まったことを明らかにしました。モデルYは2019年第4四半期の決算報告で、米カリフォルニア州フリーモントの工場で生産が始まったと報告がありましたが、無事にユーザーの手元まで届いているようです。モデルY単独での生産規模がわかるのは少し後になりそうです。

【関連記事】
テスラの第4四半期は純利益1億500万ドル~連続黒字で株価急騰(2020年1月30日)

コロナ禍の中、加州フリーモント工場は操業停止

2019年度は生産台数、納車台数ともに右肩上がりで伸びました。他方、モデル別の状況を見ると、モデル3の増加に合わせるように、モデルS/Xの台数が徐々に減っていることがわかります。今後はモデルYの動きも増加するので、生産、納車ともに売れ筋の価格帯は絞られていくことが予想されます。

また台数の減少は、現在のコロナウイルス感染症の影響もあると思われます。テスラ社のニュースリリースでは、直接コロナウイルスに言及はしていませんが、「当社の上海工場は、大きな後退局面にもかかわらず記録的な生産台数を達成した」と主張しています。上海工場は春節(中国の旧正月)の時に中国政府の命令で一時、操業停止していましたが、2月10日には再開。影響はそれほど大きくはなかったようです。

このほか、米フリーモントの工場は、コロナウイルスのために自治体が外出禁止令を出す中でも操業を続けて批判を浴びたりしていましたが、3月19日には指示に従って操業を止めています。

さらにニューヨーク州バッファローの太陽電池工場も一時的に生産を停止していますが、ここではコロナウイルス対応のための人工呼吸器を生産すると、イーロン・マスクCEOが宣言しています。アメリカの工場の操業状態の影響は第2四半期に出てくるかもしれません。

【参考記事】
Tesla CEO Elon Musk vows to make ventilators at Buffalo plant that got $750M state subsidy(2020年3月26日)

世界市場の低迷でテスラ社の株価も半分に

ちなみにテスラの販売台数についてニューヨークタイムズ電子版(2020年4月4日付)は、2019年12月のテスラのヨーロッパでの販売台数は全メーカー中21位だったものの、数十のモデルを持つBMWやメルセデスの3分の1にあたる2万4000台を売ったと報じています。1モデルあたりの台数でいえば注目すべき成果を挙げていることになります。

さて、コロナウイルス感染症は世界の株式市場に大きな影響を与えています。テスラ社も例外ではなく、2019年12月19日に記録した最高値の917ドルから、4月2日の終値は半分以下の454.47ドルまで下がりました。

ただし、生産&納車台数の速報発表後の時間外取引は535ドルで引けているので、概ね好感を持って受け入れられたと言えそうです。テスラ社の株価は昨年の第3四半期以降で3倍以上になっているので、現在でもまだ、当時に比べれば高止まりではあります。

問題は、米国での操業停止がいつまで続くかです。モデルYが上海工場で出荷されるのは来年の予定ですし、ベルリンの工場もまだ先になります。ドイツは感染拡大による影響をなんとか抑制できているように見えますが、欧州の状況を考えるとベルリン工場も予断を許しません。

電気自動車は、少なくとも欧州や中国、米国(カリフォルニア州ですが)では一定の市場シェアを確実に占有するようになっています。今は耐えるしかないということでしょう。

EVsmartブログでは引き続き、テスラ社の決算情報をカバーしていきます。

(文/木野 龍逸)

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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