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日本導入にも期待! テスラ「モデルY L」待望の6人乗り電動SUVが中国で登場

日本導入にも期待! テスラ「モデルY L」待望の6人乗り電動SUVが中国で登場

テスラが中国市場に「モデルY L」を正式投入しました。モデルYのホイールベースを伸ばして3列シートを搭載する6人乗りのSUV電気自動車として、中国だけでなく世界全体に投入される見通しです。日本導入にも期待したい新モデルの概要を紹介します。

目次

中国市場でニーズが大きい3列シートのSUV

中国市場で発売がスタートした「モデルY L」は、全長4976mm、全高1668mm、ホイールベースが3040mmと、通常のモデルYの全長4797mm、全高1624mm、ホイールベース2890mmと比較してひと回り大きいサイズ感です(全幅は1920mmで変更なし)。

ホイールベースの延長によって3列シート搭載が可能となり、2列目にはキャプテンシート(左右独立した一人掛けシート)が採用され、6人乗り仕様となりました。中国市場で需要が拡大する3列シート搭載の大型SUVセグメントに参戦するために、既存のモデルYをベースに開発することで、開発コストを最小限に抑えて、魅力的な新モデルを市場に投入してきた格好です。

また2列目と3列目シートはどちらも電動で折りたたむことができます。トランク部分に搭載されているボタンか、車載ディスプレイからワンタッチで座席の電動調整が可能です。中国市場ではキャンプなどが若者世代を中心に流行しており、通常のモデルYと同様の車中泊性能を実現しています。

3列目シートのスペースはあまり広くない

モデルY LのEV性能や装備内容を確認していきましょう。まずモデルY Lと通常のモデルY、モデルXとを比較してみると、ホイールベースはモデルXよりも長く、車内スペースの広さが最適化されています。

とはいえ、3列目シートは身長175cmの人間が乗車して、レッグルームは拳ひとつ分弱、ヘッドクリアランスも拳ひとつ弱と、モデルXと同等程度のサイズ感です。あくまでも子ども向けが中心的な用途であり、大人も短時間程度なら移動することが可能というようなイメージをしておいた方がいいでしょう。

モデルY Lには82kWhの三元系バッテリーが搭載されており、通常のモデルYの78.4kWhよりも増量されていることが伝えられています。航続距離も中国CLTC基準で751km、電費も12.8kWh/100kmと、モデルYロングレンジAWDと比較して車両サイズや車両重量が約100kgも増量、タイヤサイズも大型化されている中で優れた電費を実現しています。Cd値が0.216と、通常のモデルYよりも空力性能を改善していることもプラスに働いているはずです。

充電性能は最大250kWであり、通常のモデルYと同等に留まりました。動力性能はモデルYロングレンジAWDと全く同様のモーターを採用しながら、最高出力が340kWとわずかにアップしたことで0-100km/h加速時間も4.5秒と俊敏です。また乗り心地を改善するために、モデル3パフォーマンスと同じくCDC(コンティニュアス・ダンピング・コントロール=電子制御ダンパー)を搭載しています。

2列目キャプテンシートは折りたたむことが可能な構造を採用することで、フロントトランクと2列目以降を合わせた最大積載空間は2539Lと、通常のモデルYだけでなくモデルXの6人乗り仕様よりも広いスペースを確保しています。

価格は日本円で約697万円〜

値段は33.9万元(日本円で約697万円)からとなっています。モデルYロングレンジAWDグレードと比較すると、日本円換算で約55万円高額という値段設定です。とはいえ、バッテリー容量が増量され、2列目シートはキャプテンシート、3列目シートも追加、CDCも追加されたという点を踏まえると、モデルYロングレンジAWDと比較してもコスト競争力が高いと感じます。

モデルY Lは中国で9月から納車がスタートする予定で、現時点において中国以外で発売するという公式発表はありません。でも、一方で以下のような状況が見受けられます。

●欧州でもテスト走行の様子が確認されている
●イーロンマスクが2026年末に北米で投入する可能性を示唆している
●オーストラリアや日本、欧州では3列シート搭載SUVのモデルXが終売している
●東南アジアや日本では3列シート搭載のミニバンの需要が大きい

こうした点を踏まえると、中国以外のマーケットでもモデルY Lが展開される可能性が高いと推測できます。

ちなみに日本国内に導入された際の値段を推測してみると、モデルYロングレンジAWDが647.6万円で発売中ですが、これは中国国内の日本円換算とほとんど同水準の値段設定です。よってモデルY Lはおよそ700万円程度で日本国内に投入される可能性が高いと予測できます。

600万円以上の大型SUVは中国市場の激戦区

中国市場で競合する大型SUV電気自動車一覧

その一方で、中国市場では大型SUVセグメントの競争が激化しているという点が極めて重要です。特に現在の30万元クラス(日本円換算で600万円以上)の3列シート搭載SUVでベンチマークとなっているのがAITO M8(表上段の一番左)で、このファーウェイの最新SUVは現在月間2万台級という圧倒的な販売量を誇ります。

さらに7月末にはLi Auto i8とOnvo L90が矢継ぎ早にローンチされ、これらの車種は全て30万元級と、モデルY Lと直接の競合関係にあるため販売対決の行方が大きく注目されているのです。

まずEV性能の比較として、モデルY Lの大きな強みと言えるのが電費性能の高さでしょう。競合のi8と比較しても、より少ないバッテリー容量でさらに長い航続距離を確保。車両重量も2088kgと、競合よりもだいぶ軽量化されているため電費を稼ぐことができています。

その一方で、電費の良さと引き換えに400Vシステムの採用を継続していることから、充電性能では大きく劣っているのも事実です。i8の場合はSOC10%〜80%を10分程度で充電可能。さらにL90ではバッテリー交換に対応しているため、3分間でエネルギー補給が可能です。

また、モデルY L以外の競合はCDC付きのエアサスペンションが搭載されていますし、自動運転システムも、L90とi8では市街地における自動運転支援であるシティNOAを標準搭載しているものの、モデルY Lでは全てオプション設定となっています。

さらに比較するべきは車両サイズです。モデルY Lはホイールベースこそ3040mmを確保しているものの、3列シートの居住性では制約が出ていますが、L90やM8のホイールベースは3100mm超であり、全高も高く、よりSUVライクなデザインを採用することで3列目を含めた車内空間の最大化を実現しています。

装備内容では競合車種の高級感が上回る印象も

標準装備内容に注目してみます。

【モデルY Lの標準装備内容】
●コンチネンタル19インチ前後異形タイヤ
●16インチのセンターディスプレイ(モデルYは15.4インチ)とリアの8インチスクリーン
●USB Cポートは合計6つ搭載
●ワイヤレス充電は空冷式の急速充電にグレードアップ。運転席側が最大50W、助手席側が30Wに対応
●シート関連の装備について、1列目は8方向電動調整にレッグサポートエクステンションが追加。モデルYと同じくランバーサポート、メモリー、ヒーター、クーラーに対応
●2列目は4方向電動調整とシートヒーター、シートクーラーに対応
●3列目は電動背もたれ調整とシートヒーターに対応
●サスペンションにはモデル3パフォーマンスと同じく電子制御ダンパーが採用
●ワンペダルドライブ
●256色のアンビエントライト
●リアサイドガラスを含めた車両ガラス全面に二重ガラス採用
●一面のガラスルーフ
●高度自動運転支援は高速道路も市街地もオプション設定
●V2Xには非対応
●音響システムはサブウーファーを含めた19スピーカーシステム。特に2列目センターコンソール下にスピーカーが追加
●エアバッグは3列目のサイドエアバッグが追加されて合計9つ搭載
●車両保証は4年8万km、バッテリー保証は8年19.2万km(モデルYと同様)

このように主要な装備内容を比較してみると、モデルYと比較してもより優れた装備内容であり、やはりモデルY Lのコストパフォーマンスが高いと感じます。ところが競合であるL90やi8は、以下のような優位性を有しています。

●L90では後席向けの17.3インチの3Kスクリーンを搭載
●i8も助手席向けの15.7インチの3Kスクリーンを搭載
●L90ではボンネット下に巨大な電動開閉フランクを搭載

Onvo L90の電動開閉可能なフロントトランク容量は240Lと業界最大級。

●両車種ともに高級ナッパレザーを採用しながら、シートマッサージやレッグレスト機能を1列目だけでなく2列目キャプテンシートにも適用。ゼログラビティシートや折りたたみテーブルも採用
●両車種ともにエアサスペンションや冷温庫、電動サンシェード付きガラスルーフ、ソフトクローズドア、シティNOAを含めた高度自動運転支援、トランク部分の220Vコンセントを含めたV2L、最高出力2000W級の20スピーカーシステム

Onvo L90のインテリア。

こうした豪華装備を採用しており、モデルY Lと比較しても明らかに高級感で優っています。とくに2列目キャプテンシートは、電動アームレストや手動ヘッドレスト調整などの機能は追加されたものの見劣りしている感は否めません。中国国内のモデルYの大多数はRWDが人気であり、そのRWDよりも日本円で160万円以上も高額であるモデルY Lがどれほどの販売台数を達成できるのかは、競合と比較すればするほど予測が難しいところです。

果たして中国国内において販売台数が落ち始めているテスラが、この新型モデルY Lでどれだけ販売台数を伸ばすことができるのか。もちろん日本をはじめとする海外マーケットへの展開動向を含めて、今後の最新情報にも注目です。

文/高橋 優(EVネイティブ※YouTubeチャンネル

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この記事を書いた人

免許を取得してから初めて運転&所有したクルマが電気自動車のEVネイティブ。

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