テスラ『パワーウォール』稼働の様子を初公開〜「ストームウォッチ」テスト運用も

テスラ・モーターズ・ジャパンが、日本で本格展開を開始した家庭用蓄電池『パワーウォール』が実際に使われている様子を初公開。停電に備えて電気を蓄える「ストームウォッチ」テスト運用の様子を披露しました。画期的な家庭用定置型蓄電池の使い勝手や動作状況はどうなのか。ユーザーのレビューをお届けします。

テスラ『パワーウォール』稼働の様子を初公開〜「ストームウォッチ」テスト運用も

パワーウォールユーザーのお宅にお邪魔しました

残暑厳しい9月1日の午前、東京都内に一軒家を構える舘義彦さんのお宅を訪ねました。筆者は春に舘さんがパワーウォールを設置した時にも見学に行っていましたが、その時は稼働まではしなかったため、改めて、実際に動いている様子を見せてもらうことになりました。

パワーウォールはテスラが販売している家庭用の蓄電池です。日本導入が発表されたのは昨年10月で、今年(2020年)春から家庭への設置が始まりました。アメリカでテスラ本社がパワーウォールを発売したのは2015年です。それから5年を経て日本で販売されているのは、初代よりも容量を拡大した第2世代の「パワーウォール2」です。

舘さん宅に届いた梱包開封前のパワーウォール2。

今回、稼働中のパワーウォールを見学させていただいた舘さんは、テスラが8月下旬にパワーウォールの本格展開を開始したことを公表した際、テスラの「カスタマーストーリー」に登場したユーザーさんです。

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静かで、動いてるのかどうか外からはわからず

さっそく稼働中のパワーウォールを見せて頂きました。と言っても、発電機のようにバリバリと音がするわけでも、じーっと見ていても何かが動くわけでもありません。改めて、リチウムイオン電池なんだなあと思いました。電池はテスラ車と同じものを使っています。

電池と名前は付いていても、燃料電池のエネファームなどは稼働中に補機類の音が継続的にしています。大型の蓄電池だと、やっぱり冷却装置やインバーターなど機器の音が低く響くことがあります。でもパワーウォールは、本体に耳をくっつけても、かすかに「ブーン」という音を感じるくらいです。「ブーン」の音源は、内部に設置されているパワーコントローラーかもしれません。

ほんとうに動いているのかどうか見ただけではわからないので、舘さんのスマホに入っている「TESLA アプリ」で動作状況を確認すると、確かに放電モードになっているのがわかりました。またパワーウォール側面のふちに沿ってライン状にデザインされた緑色のLEDが、ゆっくりと明滅していました。

舘さんは、パワーウォールを2台設置しています。設置場所は建物横のスペースで、下にプレキャストコンクリートを敷いて簡易基礎にしています。でも舘さんは本当は、建物正面にある玄関の横に設置したかったそうです。

「パワーウォールを買ったのは、所有している車と同じテスラの製品だし、他より安かったことや、デザインが良かったからでした。だから、できれば玄関の横に壁掛けしたかったんです。でも木造住宅には壁掛け設置ができなかったんです」

確かにLEDの配置といい、うっすらと「TESLA」のロゴが入った上品な白のカバーといい、多くの他社製電池のように「蓄電池でござる」という無粋な雰囲気はありません。これなら最も目立つ玄関の横に置きたくなる気持ちもわかります。

アメリカでのパワーウォール発売直後にポチ!

家庭用蓄電池を購入する大きな目的のひとつは、太陽光発電との連携のためではないでしょうか。太陽光発電などの再エネと連携することでオフグリッドを目指すものです。でも舘さんのお宅には、ソーラーパネルはありません。周辺の建物との位置関係で、北傾斜の屋根の面積が大きくなっているため、設置するメリットがあまりなかったそうです。それでもパワーウォールを入れたのはなぜなのでしょう。舘さんは次のように教えてくださいました。

「家を建てて10年目のリフォームの時に、(燃料電池の)エネファームを入れたんです。その頃、アメリカでパワーウォールが発表されました。もともとテスラが好きで、車(モデルS)もあります。それでテスラのサイトを見たら予約ができるようになっていたので、すぐポチしました。発表直後だったので、サイトになかなかつながらなかったんですよ」

パワーウォールが発表直後から人気を集めたことがわかるエピソードです。

さて、ポチしたと言ってもすぐに日本で設置できるわけではありません。テスラは、製品を発表するとまずは予約を受け付けるサイトをアップするので、予約と「買える」は別物です。でも、とりあえず予約で人を集めるのは、いかにもアメリカらしい販売方法にも思えます。

それから5年が経過しましたが、舘さんにとっては予想通りだったそうです。

「テスラの場合、発表から日本導入までに5年くらいかかると思っていました。だから、それほど長いとも思ってないんです。それに、5年後にどこかをリフォームするなどの計画を考えているのであれば、ちょうどいい期間かもしれません。不要なら解約も簡単です。私は今は、『ソーラールーフ』や『サイバートラック』もポチしています」

パワーウォールの予約から設置までおよそ5年。「ソーラールーフが日本に導入される頃には、ちょうど屋根をリフォームしてもいい時期になるでしょうから」と舘さん。ひとりのテスラファンとして、イーロン・マスクにも負けない遠大な構想(!)を抱いているようです。

ピーク負荷を考えて2台設置に

舘さんがパワーウォールを入れた目的は、ひとつは災害対応のためで、もうひとつは深夜電力の有効活用でした。

「東京は5年に一度くらい大きな停電があります。私はIT関係の仕事をしていることもありUPSも入れていますが、長時間はもちません。それに、パワーウォールで深夜電力の安い電気を利用できると思ったんです」

舘さんのお宅では、2台のパワーウォールを設置しています。2台にしたのは、4人家族で使う際の負荷を考えてのことだそうです。

「フルバックアップを考えると、ピークに合わせないといけません。電子レンジやオーブンなどもありますし、テスラのウォールコネクターもあるので、容量も考えて2台にしました」

舘さんのお宅では東京電力のピークシフトプラン(2016年3月末で新規契約受付は終了)を利用しているので、1kWあたりの単価は23時から7時までは約13円、日中は約30円、夏の日中は約56円になるそうです。この契約の中でパワーウォールを使うと、電気料金はどうなるのでしょうか。

舘さんのお宅にパワーウォールが設置されたのは今年の4月末。それから約4か月間、実際に使ってみた感想を聞いてみました。

「私はパワーウォールを入れる前から電気料金を記録してるんです。この夏は暑かったので電気の使用量は増えているんですが、去年より料金は下がりました。うちは15kVA契約なので基本料金が高いのですが、それでも、基本料金を含めて去年より4割くらい安くなっています」

「電気料金とは別にいいことがありました。今までは深夜電力の料金のことを考えて、乾燥機や電気ポット、食洗機を使う時は料金が下がる23時以降にしてねって言っていたんですが、日中でも気にしないで使えるようになったんです。パワーウォールを入れて、過度な省エネを家族に要求しないでもよくなって、電気を使う上でのストレスがなくなりました」

なるほど、と思いました。毎日使う電気製品のことで、いつも時間を気にしながらというのは確かにストレスかもしれません。パワーウォールが、電力の平滑化だけでなく家庭の安定化にも役立っているみたいです。

減災に役立つ「ストームウォッチ」機能

今回の取材では、停電が予想される天候になったときに、事前にパワーウォールを満充電にする「ストームウォッチ」のテスト運用を見ることもできました。

パワーウォール対応の「TESLA アプリ」を見ていると、ストームウォッチの起動とともに放電していたパワーウォールが充電モードになり、電流の流れ方が変わるのがわかります。と言っても、何か音がするわけでもないので、アプリ上で運転状況を確認するだけです。

ストームウォッチの機能は、TESLA アプリでオン/オフを選択できます。オンの場合、台風などの悪天候が予想されるとパワーウォールを事前に満充電にします。その後、気象災害終了後に、自動的にオフになります。

テスラ本社のHPの説明によれば、パワーウォールは停電が発生する気象災害のレベルを学習することで、動作を調整していく機能が備わっています。ちなみに気象災害の予想は、アメリカの場合はアメリカ国立気象局のサービスを利用していますが、日本で何を参照するのかは非公開です。

EVsmartブログ取材チームは、舘さんのご自宅の中に設置されている「Backup Gateway(バックアップ ゲートウェイ)」も見せて頂きました。系統電力とパワーウォール、家の中の電力をつなぐための制御器です。パワーウォールの充放電を管理しています。

舘さんは、分電盤横のBackup Gatewayを指さしながら、「これ、カバーはガラスなんです。重いんです」と笑っていました。白いカバーにはやっぱり、TESLAのロゴが入っています。本体と同じように、玄関に付いていても何ら違和感のないデザインだと思いました。

国産メーカーにとっては、パワーウォールはまさに黒船のような存在ではないでしょうか。販売台数は公表されていませんが、イーロン・マスクはエネルギー事業が自動車事業と同じレベルに拡大すると考えています。7月発表の第2四半期決算では、発電所などで使う蓄電池の『メガパック』が、発売から2年経たずに黒字化しました。これからもエネルギー部門に力を入れ続けるのは間違いなく、コストダウンも進むと思われます。国産メーカーは、根本から考え方を変えないと厳しいのではないでしょうか。

そうした産業としての家庭用蓄電池市場とは別に、パワーウォールのデザインは筆者も秀逸だと思っていて、設備機器だからといってデザインをないがしろにするのではなく、きれいなものが街に増えるといいのだけど……などと、まったく別のことを考えたりしているところです。同じようなことは、車のデザインにも言える気はしますが。

(取材・文/木野 龍逸)

<2020年9月10日追記>
パワーウォールは2台設置にすると合計27kWhとなるため、消防法上の規制により、設置には各種の手続きが必要になります。テスラの広報担当者に確認したところ、2台以上の場合は個別に所轄の消防署に確認をとって設置をしているとのことでした。

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この記事の著者


					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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