テスラの家庭用蓄電池「パワーウォール」がいよいよ日本上陸。劇的な安さと高機能で持続可能な社会実現へ!

テスラ・モーターズ・ジャパン(以下、テスラ)は10月15日、家庭用蓄電システム「Powerwall(パワーウォール)」を2020年春から日本で発売(設置開始)することを発表しました。東京・青山のショールームで開かれたプレス発表会では、説明に立った浅倉眞司 エナジープロダクツカントリーマネージャーが「ここでみなさんに(パワーウォールについて)説明するのを心待ちにしていました」と、少し上気した声で心境を語りました。

テスラの家庭用蓄電池「パワーウォール」がいよいよ日本上陸。劇的な安さと高機能で持続可能な社会実現へ!
Powerwall本体(左)とBackup Gateway(右)

今年11月からは順次、家庭用太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間が終わることもあり、発電した電気の自家消費が増える可能性があります。そのためテスラとしては、卒FIT対策の切り札としてパワーウォールの販売を広げたい考えもあるようです。

13.5kWhで99万円という圧倒的な低価格を実現

青山で行われた発表会には、自動車メディアとは雰囲気の違う記者の方々が集結。

パワーウォールの特長の中でも特筆すべきは、まず価格の安さでしょう。パワーウォールの本体価格は82万5000円(税抜)、蓄電容量は13.5kWhと大容量であるにも関わらず系統電力接続をコントロールする『Backup Gateway』(税抜16万5000円)と組み合わせた価格は99万円(税抜)です。工事費は別ですが、1kWh当たりの価格に換算すると約7万3000円。現在、日本国内で市販されている家庭用蓄電池の価格は1kWh当たり20万円以上が相場なので、驚異的な低価格であることがわかります。
※税込のシステム価格は108万9000円となります。

パワーウォールは連続して5kWを出力できます。ピークであれば7kWまで対応しています。5kWは、家庭の契約電流だと50Aに相当するので、家中の電気製品をまるごと動かすのに十分でしょう。容量に不安があれば最大10台まで並列で拡張できるので、使用電力量が大きな家や、学校などの施設(ハワイなどではすでに設置事例もあります)にも対応できます。

1台の『Backup Gateway』で10台までコントロールできるので、本体を増設すれば容量当たりの価格はさらにリーズナブルになります。

動作温度はマイナス20度~50度。日本国内であればほとんどの地域で問題なく使用可能ですね。保証期間は10年なので、これも安心要素ではないでしょうか。しかも、EV作りで培ったノウハウを投入して、水冷による温度管理機能を内蔵しています。少なくとも、車より使用条件がはるかに緩いので、水冷システムが電池セルの長寿命化に貢献するのは間違いないと思います。

パワーウォールは、太陽光発電システムや系統電力と連携。専用の『Tesla app』(スマホ用アプリケーション)でパワーウォールや太陽光発電システムの稼働状況、電気の使用状況をモニタリングしたり、運転モードの設定変更をが可能です。充電器に接続したテスラ車(電気自動車)から家庭への給電はできませんが、太陽光発電システムから電気自動車への充電は可能とのこと。事実上の、ほぼ「トライブリッド」を実現することができます。ただし、テスラ社製ではない既設の太陽光発電システムとの連携などについては要相談です。

既設太陽光発電システムとの連携などについて(追記:2019年10月18日)

既設の太陽光発電システムとの連携などについて、発表会取材時に「施工業者と相談なんだろうな」と推察してしまいきちんと確認していなかったので、テスラジャパンの広報ご担当者に2点を確認しました。

● 他メーカーの太陽光発電システムとの連携は可能ですか?
【回答】Powerwallは分電盤につなぎますので、メーカー問わず連携は可能となっております。ただ、万が一の場合もございますので、設置前の現地調査等で事前に確認させて頂きます。

● ニチコンなどのV2Hシステムの追加電池としての連携は可能ですか?
【回答】論理的には可能だとは思いますが、検証等を行っているわけではございませんので、保証は出来かねます。

このほかにも設置場所によって諸条件はさまざまでしょうから、まずは下記の公式サイトに申し込んで相談、検討を進めるか、認定施工会社に相談するのがスタート、ということになりますね。なにはともあれ、テスラ社製以外とは繫がらない! といったクローズドなプログラムではないようです。

ちなみに、10月18日には認定施工会社が何社か公式に発表されました。

●株式会社SIソーラー(本社:東京都中央区) ニュースリリース
●ゴウダ株式会社(本社:大阪府茨木市) ブログ記事
●日本住宅サービス株式会社(本社:広島県福山市) プレスリリース(valuepress)

(追記ここまで 編集部/寄本好則)

設置開始は2020年4月頃を予定

ではいつから使えるようになるのかというと、これは少し先になりそうです。すでに予約などは受け付けていますが、「JET認証」と呼ばれる日本国内で系統電力に接続する機器としての認証はまだ「申請中」の段階です。また設置を申し込んでからも、経産省や電力会社への申請、認可が必要で、およそ6〜9カ月が必要とされています。ただ、申請に対する許可が出れば、実際の設置は1~2日で完了するそうです。

『Powerwallのご予約から設置完了までの流れ』について、テスラの公式サイトで詳しく案内されているのでリンクを貼っておきます。

なおパワーウォールの予約はテスラジャパンの公式サイトで受け付けていますが、実際の販売はテスラ社が認可した「Certified Installer(認定施工会社)が販売や設置を手がける仕組みになるそうです。また、すでに多くの予約を受けているため(予約数は非公表)、今から申し込んでも実際に設置する機器が入手できるのは先行している予約者の後になることを認識しておく必要があります。

本体の重量は114kg。設置方法は床置きと壁掛けに対応していますが、木造の日本家屋では簡単な基礎工事をした上での床置きが推奨されています。詳細は、設置業者と相談してください。

テスラはエネルギーソリューション企業へ

電池セルを手に熱弁を振るう浅倉さん。

発表会の冒頭、浅倉氏はテスラ社のミッションが「サステイナブルトランスポート」から「サステイナブルエナジー」に変わったことに伴い、2016年に「Tesla Motor Inc.」から「Tesla Inc.」に社名を変更したと説明。現在は「持続可能なエネルギーで世界の移行を加速すること」を目指していると述べました。

そのための手段は大きく3つ。発電と蓄電池と輸送です。パワーウォールは3本柱のひとつを担う重要な役割を担っています。

パワーウォールに使用されているのは、テスラの車と同じ、小型のリチウムイオン電池セルです。電池の生産工場も、テスラの各モデルと同じギガファクトリーです。ギガファクトリーの生産能力があるからこそ、家庭用や商工業用の蓄電池を供給することが可能になったということです。

想定されるパワーウォールの使われ方は、太陽光発電システムとセットにした再生可能エネルギーによる自立発電、非常時の電力供給、電力会社からピーク電力削減要請があった場合の対応という3つの場面を想定しているとのこと。台風19号の被害が起きたばかりですが、このところ停電が長期間続くことも増えています。今の家は、電気が止まるとガスのお風呂も使えなくなるシステムになっているので、停電の影響は以前より大きくなっていると言えます。

日本ではEVから家庭に電力供給をするリーフtoホームのようなシステムがすでにありますが、EVを蓄電池と割り切るにはさまざまな制約や電池劣化などの懸念があるのも事実。新たに魅力的な「蓄電池」の選択肢が加わったといえるでしょう。

ことに、パワーウォールが最大のメリットを発揮するのは、太陽光発電システムと組み合わせた自立型の電力供給システムを構築できることです。さらにテスラ社は、サステイナブルエナジー社会を実現するための手段として、たくさんのパワーウォールが系統連携してVPP(バーチャル・パワー・プラント/複数の再生可能エネルギー発電をIoTで統合して、ひとつの大きな発電所に見立てた仮想発電所)を構成するところまで見据えています。

オーストラリアではパワーウォールを大規模実証試験に利用

パワーウォールはすでに、世界各地で販売されています。発表会で示されたスライドでは、米国をはじめ、ドイツやイタリア、ニュージーランド、オーストラリアで販売台数が多いことが示されました。

このうちオーストラリアでは、パワーウォールをVPPのシステムとして実際に採用した大規模な実証実験が展開されていることも示されました。

南オーストラリア州でのVPP説明動画

実証実験をしているのは、F1を開催したこともあるアデレードが州都の南オーストラリア州政府(SA州政府)です。SA州政府はテスラのパワーウォールを太陽光発電と組み合わせ、VPPを構成することで、エネルギー価格の低下、グリッドの安定性、消費者のエネルギー使用の見える化、再生可能エネルギー経済への移行などを目指しています。

浅倉氏によれば、SAは太陽光発電に適した地域でもあり、パワーウォールとの相性もいいそうです。SA州政府の実証実験では、2018年1月~6月のフェーズ1で約100軒の太陽光発電システムとパワーウォールが使われたのを皮切りに、2018年~2019年10月のフェーズ2では追加で約1000軒のシステムを州営住宅に設置。経済性が成り立つかどうかを検証しているそうです。今後は2019年末からフェーズ3として、2万4000軒の州営住宅と、2万5000軒の個人宅に設置する計画です。前述のSA州政府のHPでは、参加者を募集しています。

日本でもVPPへの関心は高まっているものの、本格的に稼働させるためには蓄電システムの価格が大きなハードルになっています。パワーウォールはこの壁を壊す武器になるかもしれません。

最後にひとつ、ごく個人的な感想です。白基調のパワーウォールは、例えば玄関脇に置いてあってもスマートに感じるくらい、きちんとデザインされていることを感じました。日本のインフラ関係の機器は、EV用急速充電器といい、見た目を気にしなさすぎるのが、気になるところです。日本でもデザインがもう少し洗練されるといいのになあと改めて思ったのですが、多くを望みすぎでしょうか。

(木野龍逸)

この記事のコメント(新着順)20件

  1. 今年期限がくる我家のソーラーにとテスラー会員に登録して販売を待っています。一方で、昨年ある限界集落にマイクロ水力発電施設を作りました。民間手作りとしては数少ない系統連系を完成させました。約1KWhで10ケ月問題無く回り続けていますが、24時間発電し続ける水力発電にテスラーのバッテリーを使えばまさに地産地消が現実となりますね。中山間地域のライフラインとしての活用を期待したいところです。

  2. 昨年申請してパナ製を設置、蓄電池は見送っていましたが。
    分電盤に直接つなぐというところに興味津々です。
    技術的にはどのメーカーにも接続可能ということでしょう?
    期待してます。

  3. 使用してみたいです。二カ月前ハワイにテスラのお店で車🚗の説明をして頂きました。

  4. パワーウォールには、蓄電池市場の拡大と他メーカーが対抗することによる、更なる低価格化の促進を期待してます
    来年販売するネクストエナジー・アンド・リソースが10kwhで100万円以下の製品を計画していますが、それががどうなるか気になりますね

  5. いつも拝見しております。記事にして頂き、ありがとうございます。
    PowerWallは既存メーカーの脅威となる位、魅力的です。
    自宅は太陽光発電設備と給電コンセントがあるのですが、蓄電池はありません。
    仕様の詳細(接続可能か等)を今度、販売店に聞いてみようと思います。
    申込はそれからですね。
    報告できることがあればいいのですが。

  6. やっと、日本での発売が決まりましたね。テスラのことなのでいつになるかと思っていましたが、本当に発売するとアナウンスがあり嬉しいですね。うちは、パワーウォールを待つことが出来ず3年半前に4Rエナジーのエネハンド充電器(蓄電池)12kwhと太陽光11.5kw導入済です。国産の蓄電池と比較するとかなり安価でかつ高容量で導入できるので魅力的です。今の蓄電池が導入済みの状態でさらにパワーウォールの追加導入は可能なんでしょうか?可能なら追加で予約しようかと考えているのですが。

    1. Wackyさま、コメントありがとうございます。
      既設システムへの増設について、さきほど情報を追記しました。可能だけど、念のため個別に確認してから受注や施工を行うことになる、ようです。
      (編集部/寄本)

  7. テスラが電気自動車を手掛けたのは、地球温暖化について考えその対策としての電気自動車を手掛けました。
    そうした意味で蓄電池は必然的に導き出された解答かと思います。
    勿論、テスラモーターズにはまだまだ課題も山積していますが、この価格で販売した事は大いに評価すべきだと思います。

  8. うん、ゴミ。
    紛れもないゴミ。
    どんな太陽光パネルとも接続できる、位でなければ。なんだ要相談て。
    安ければいいというものではない。これならある程度接続保証が望めるパナ製とかの蓄電池の方がまし。

    1. ふふ。様、コメントありがとうございます!確かに相互接続性についての情報はまだないのでしょうね。一方PVや蓄電池は既設のみならず、新設の方のほうが多いと思います。そのため、まずはパネルも一緒に買ってくれる人にのみ提供するという意味も考えられると思います。
      低価格化できたことによる、強者の論理ですね。来年になればJET認証も取得するとのことなので、相互接続性についての情報もその頃には出てくるのかなと思います。

    2. ふふさま、他社製太陽光発電システムとの連携などについて、改めて確認して追記しました。参考にしていただければ幸いです。
      (編集部/寄本)

    3. 中身はパナの電池&テスラのバッテリーマネージメント
      マネージメントでテスラに勝てる製品は無いのでは!

    4. Hhana様、コメントありがとうございます。中身は、噂レベルではありますが、現時点ではサムスンSDI製のセルが使われているとされています。パナソニックはおそらく車両向けで精一杯なのではないでしょうか。

  9. 劣化して5年で80%になったとしても10kwh以上。
    中古のリーフ+V2Hと価格面で勝負できそうですね。
    あとは太陽光発電との連携ができるのかどうか次第ですね。
    ほぼオフグリッドが実現可能そうで、楽しみです。

  10. とうとうテスラパワーウォールが日本上陸ですか!昔のDOS/V日本上陸時に同じく”黒船”扱いされるんでしょうかねぇ!?
    FIT終了に向け自宅蓄電計画を立てている家庭は200万戸あるとされているので商機としては十分ありそうですが、所詮テスラは世間一般的に電気自動車メーカーとみられているので日産三菱連合のEV(CHAdeMO)+V2Hと比較になるかどうかですが?

    まだ世間一般日本人の情報源は新聞テレビなど旧来メディアの活用が多いのでソーラー発電家庭での認知度が高いとはいえません。現に以前2019年問題の市民講座を実施したときでも受講生のEV+V2Hへの関心があまりにも低く愕然としました。
    YouTubeでは説明動画が結構あがっているのに…知らない人が多すぎる(^^;

    当方現在V2H設置検討中ですが、パワーウォールの工法・電気配線次第では有力案になります。ニチコンV2Hも重量100kg近く工事費込100万円以上なのでどちらを取るか!?
    13.5kWhでも当家のi-MiEV(M)を充電できるので魅力的。配電線停電中でもソーラーからパワーウォールへ充電できるならV2H入れるまでもないでしょ!?
    ニチコンV2Hプレミアムモデルには一部パワコンでは停電中動作しない相性問題があるのは心配じゃありませんか!?

    1. ヒラタツさま、コメントありがとうございます。

      ことに戸建新築時であれば、この価格はほかの住宅設備機器と比べてもすごく手が出しやすいのではないかと感じます。Powerwall の出現を契機に、戸建て住宅には太陽光発電と蓄電池が当たり前、という日本になればいいのになと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

執筆した記事