中国で格安電気自動車『宏光 MINI EV』のライバル車種が続々登場【前編】チェリー『QQ アイスクリーム』

2020年8月の発売当初、日本円換算50万円以下という価格で話題になった中国の超格安EVである上汽通用五菱の『宏光MINI EV』が大ヒット。中国ではそれに続くお手頃価格の電気自動車が続々と登場しています。はたしてどんなEVなのか、チェックしてみました。

中国で格安電気自動車『宏光 MINI EV』のライバル車種が続々登場【前編】チェリー『QQ アイスクリーム』

『宏光MINI EV』は絶好調!

日本でも話題となった『宏光MINI EV』は大ヒット。初めて年間を通して販売された2021年では累計販売台数42万6484台を記録、販売台数のランキングではテスラ モデル3も抑えて2位の座に君臨しました。2022年における最新のデータでは、3月末までではあるものの、すでにこの3ヶ月で10万6721台を販売しており、その人気は衰えるどころか、新グレードや新モデル投入でますます勢いづいています。

この超格安EVを手がけたメーカーは上海汽車とアメリカのゼネラルモータース(中国語名:通用汽車)などが設立した合弁会社「上汽通用五菱」です。今でこそ「宏光」といえば『宏光MINI EV』ですが、このEV登場以前から小型バンとしての「宏光」シリーズは販売されており、すでにその時から中国では人気のモデルでした。

宏光MINI EV。

最初のモデル「宏光」を2010年にローンチ以来、より大型の『宏光S1』や、SUVの『宏光S3』、『宏光PLUS』などの派生車種を展開中。上汽通用五菱の「宏光」は2017年と2018年の2年間は販売台数50万台以上を記録し、小型ミニバン部門のみならず、中国で販売されている全乗用車の販売台数ランキングで首位に輝きました。その後は台数を減らしながらも、依然として販売好調な小型ミニバンであることは確かで、2021年は25万5922台を販売、乗用車年間販売台数ランキングでは9位に位置しています。元の車種が培ってきた評判もこの超格安EVへの爆発的人気に少なからず影響していることでしょう。

チェリーが格安EV『アイスクリーム』で宏光を追随!

絶賛うなぎのぼりの勢いを記録している超格安EVですが、この最新のトレンドを後追いするように、これ以外にも似たような小型の超格安EVをさまざまなメーカーがリリースする事態となっています。まず一番に名乗りを挙げたのが、中国の国有自動車メーカー「チェリー(奇瑞)」です。

チェリーは1997年に安徽省蕪湖市にて設立されたメーカー。ほとんどの国営企業が1980年代以前に設立されたのに対し、チェリーは中国の経済改革開放以降に設立された、ある種異色のメーカーとも言えます。設立から2年後、フォルクスワーゲングループからライセンスを譲り受け、スペインの自動車メーカー「セアト」のトレドがベースの『風雲』を製造、自動車メーカーとして歩み始めました。また、ここ20年は自動車の輸出にも積極的で、2021年は26万9154台を輸出、中国メーカー全体では上海汽車に次いで2位の輸出量を誇ります。中国国内の乗用車販売実績も好調で、2021年は約95万9000台と、中国メーカーの中では9位に位置しました。

また、チェリーの一つの特徴としてAセグメントの小型車を積極的に開発していた経緯があります。2003年には大ヒットとなる『QQ』を発売。このモデルはゼネラルモータース傘下の韓国メーカー「大宇(デーウ、現・韓国GM)」が販売したマティスに酷似していたために、ゼネラルモータース側に知的財産権に関する訴えを起こされたこともありました。

そんなチェリーが、宏光 MINI EVに端を発する格安&小型EVの人気にあやかって『QQ 冰淇淋(アイスクリームの意)』という超小型EVを2021年8月の成都モーターショーで発表し、同年12月に販売開始しました。

チェリー『QQアイスクリーム』。

もちろん宏光 MINIEVが登場する以前よりも、中国の自動車メーカーたちはこぞって小型EVをリリースしていました。この『QQ アイスクリーム』も超小型EVであるという点では何も新しくはありませんが、ポイントはそのフォルムにあります。

宏光 MINIEVが登場した2020年8月以前の小型EVは、サイドのシルエットを見たときにAピラーとボンネットが一直線になっている、車で例えるとメルセデスベンツの初代スマート フォーツーが持つ典型的な「マイクロカー」的なフォルムが一般的でした。チェリーも『eQ1』という超小型EVを2016年から販売していましたが、それもその一つです。他にも、「宏光」シリーズと同じ上汽通用五菱が手がける『宝駿 E100』や、ポルシェ マカンのコピー車でも話題となったメーカー「ゾタイ(衆泰)」の『E30』などもこの部類に該当します。

ですが、このQQ 冰淇淋はクラシカルながらもポップな「箱箱しい」デザインで、端的にいえば宏光 MINI EVとそっくりです。これはつまり、宏光 MIN IEVの人気に危機感を覚えたメーカーが、同じようなデザインで格安EVをリリースしたということであり、明確にライバル視していると言えるでしょう。

価格は日本円で50万円台〜

QQ 冰淇淋の詳しいスペックを見ていきましょう。まずボディサイズですが、宏光 MINI EVは全長2917 mm x 全幅1493 mm x 全高1621 mmであるのに対し、QQ 冰淇淋は全長2980 mm x 全幅1496 mm x 全高1637 mmと、とても近いものとなっています。また、先述の通り、全体のデザインも非常に宏光 MINIEVを意識したものになっており、パステルカラーがベースのツートンによってオシャレさを演出している点も全く同じ発想です。

EVとしての性能ですが、これもほとんど宏光 MINI EVと同一です。モーターはチェリーの関連会社「安徽瑞露科技有限公司」が製造する出力20 kWのTZ160XFDM13Aを搭載。一方で、宏光 MINI EVのモーターも同じ20 kWの出力を持ちます。宏光 MINI EVが搭載するのは「浙江方正電機股份有限公司」が製造するTZ160X020ですが、同じ出力、名前も途中まで一緒なので、中身は一緒の可能性が高いと思われます。また、航続距離に関しても、宏光 MINIEVと同じ120 kmと170 kmの2モデルが展開されています。

バッテリー容量は、宏光MINI EVが9.3kWh(120kmモデル)と13.8kWh(170kmモデル)に対して、QQアイスクリームは9.6kWhと13.9kWhと発表されています。

肝心の価格はどうでしょうか? デビュー当初「45万円EV」と話題になった宏光 MINIEVですが、その後段階的に値上がりしており、当時よりも高い3万2800元(邦貨換算:約63万9000円)から4万4800元(約87万4000円)の間で販売されています。また、2021年4月から販売されている、装備面を充実させた「宏光 MINIEV マカロン」は最も高いモデルで5万4800元(約106万8000円)となります。

一方で、QQ 冰淇淋は3つのグレードがそれぞれ2万9900元(約58万7200円)、3万7900元(約73万8700円)、4万3900元(約86万5600円)となっており、単純に一番下のグレードで比較すると、QQ 冰淇淋の方が安い結果となります。

ここまでスペックや価格を羅列してきましたが、売れなければ意味はありません。なので販売実績を見てみましょう。冒頭にも書きましたが、宏光 MINI EVは2022年3月末の時点で10万6721台を販売しています。内訳は1月が3万7048台、2月は2万2110台、そして3月は4万7563台となっており、平均で1ヶ月に約3万5573台売れている計算になります。

宏光MINI EV。

では、満を持して登場したライバルはどうでしょう? 2022年1月は9984台、2月は6442台、そして3月は1万1687台と、宏光 MIN IEVと大きく差が開いているのがわかります。やはり、元からネームバリューがあり、なおかつ一大ブームを巻き起こしているモデルの単なる後追いでは、いくら価格が3000元(約5万8000円)ほど安くても、簡単に牙城は崩せないということなのでしょう。

さて、宏光 MINIEVの後追いをリリースしているのはチェリー1社だけではありません。後編ではチェリー以外の2車種について紹介します。

(取材・文/加藤ヒロト)
※記事中画像は各社公式サイトなどから引用。

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この記事の著者


					加藤 博人

加藤 博人

下関生まれ、横浜在住。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶ傍ら、さまざまな自動車メディアにて主に中国の自動車事情関連を執筆している。くるまのニュースでは中国車研究家として記事執筆の他に、英文記事への翻訳も担当(https://kuruma-news.jp/en/)。FRIDAY誌では時々、カメラマンとしても活動している。ミニカー研究家としてのメディア出演も多数。小6の時、番組史上初の小学生ゲストとして「マツコの知らない世界」に出演。愛車はトヨタ カレンとホンダ モトコンポ。

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