フォルクスワーゲンがドイツで行われた労使会議でブランドの未来に向けた計画を発表。価格約2万ユーロとするエントリーモデルの電気自動車をお披露目しました。2027年の世界初公開を目指すとしています。
エントリーモデル発売への準備が進行中
2025年2月10日、フォルクスワーゲンがドイツのウォルフスブルグで開催された労使会議において、ブランドの未来に向けた計画を発表。エントリーモデルの電気自動車(価格は約2万ユーロ=約313万円)のデザインを従業員向けにお披露目したことを発表しました。「新しいエントリーモデルのコンセプトカー」は3月初旬に一般公開を予定。量産モデルの世界初公開は2027年を予定しているということです。
ドイツ本国のニュースリリースは、フォルクス ワーゲン ブランド最高経営責任者(CEO)のトーマス シェーファー氏がエントリーモデルのEVについて「手頃な価格、高品質、収益性の高いフォルクスワーゲンの新しい電気自動車は、ヨーロッパで生産され、ヨーロッパ向けに発売されます。これは、自動車生産におけるチャンピオンズリーグに例えられるでしょう」と述べたことを伝えています。
さらに「エントリーモデルの低コストなモビリティの開発は、フォルクスワーゲン ブランドの未来に向けた計画の基盤」のひとつになるとした上で、この新型エントリーモデルのほかに、かねて開発が伝えられている『ID.2all』のファミリーに位置付けられると説明。「最初のニューモデルは、『ID.2all』の量産バージョン」であり、2026年にディーラーに導入される予定であり、ベース価格が2万5000ユーロ(約391万円)未満に設定されるとしています。

Volkswagen ID. 2all concept car
ブランドの未来を切り拓く「加速」「攻勢」「達成」
今回の発表では、フォルクスワーゲングループが世界に冠たる量産車メーカーであり続けるため、「Zukunft Volkswagen」(未来のフォルクスワーゲン)協定に基づき、持続可能なモビリティの分野における経済的安定、雇用、技術的リーダーシップを組み合わせた将来のビジョンについて、従業員代表団と合意したことも伝えられています。
具体的には3段階の目標が策定されました。
●キャップアップ(追いつき)
コスト構造を最適化し、既存のモデル ポートフォリオをターゲットを絞って拡大することで、競争力を強化する。
●アタック(攻勢をかけ)
2027年までに、2万5,000ユーロ未満の「ID.2all」量産型と、約2万ユーロのエントリーモデルの電気自動車を含む、9つのニューモデルを導入する予定。
●リード(リードする)
量産セグメントにおけるテクノロジーリーダーのブランドとして、フォルクスワーゲンは新たな基準を設定し、世界中でモビリティを推進していく。
持続可能なモビリティ時代の「国民車」となれるのか
つまり、2万5000ユーロ未満の『ID.2all』や、2万ユーロのエントリーモデル電気自動車を、持続可能なモビリティが主流となる未来におけるフォルクスワーゲンブランドの重要な戦力、シェーファー氏の発言に倣ってチャンピオンズリーグ的に表現するなら「2トップ」ともいうべき攻撃力に位置付けていることがわかります。
「Volkswagen」という車名はドイツ語で「人々の自動車=大衆のためのクルマ」を意味するのはよく知られています。また、1938年に発売された『ビートル』が自動車史に輝く名車であることは、世界中の自動車好きの常識です。今、フォルクスワーゲンが発売に向けて開発を進めている「2万ユーロのエントリーモデル」は、いわば「電気自動車時代のビートル」になるのかも知れません。
「EVが普及するためには大衆EVが必要」ということは、EVsmartブログがずっと叫び続けていることです。フォルクスワーゲンは、改めて大衆EVでの攻勢を世界に宣言したといえるでしょう。

トーマス・シェーファーCEO
とはいえ、シェーファーCEOの発言では2万ユーロのエントリーモデルが「ヨーロッパで生産され、ヨーロッパ向けに発売」と強調している点が気になります。実際に現行EVモデルでもっともコンパクトな『ID.3』は日本未導入。フォルクスワーゲングループの視界に、日本市場は入っていないんだろうな(少なくともそんなに重要視はされていない)と感じたりもして。
ヨーロッパやグローバルな市場でフォルクスワーゲンの「攻勢」に踏み潰されてしまわないよう、日本の自動車メーカーからも魅力的なエントリーモデルの電気自動車が続々と登場することを期待しています。
文/寄本 好則
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