ボルボが初めての電気自動車『XC40 Recharge』に込めた電動化への意気込み

ボルボ・カーズは10月17日(現地時間16日)に、同社としては初めての電気自動車となる「XC40 Recharge(リチャージ)」を発表しました。「リチャージ」は、EVとPHEVという充電可能なモデルを示す総称になります。

ボルボが初めての電気自動車『XC40 Recharge』に込めた電動化への意気込み

同時にボルボ・カーズは、こらからの5年間に毎年、EVのモデルをラインナップに加えていき、2025年までに世界での販売台数の50%をEV、残りの50%をハイブリッド車にするという野心的な目標を公表しました。つまりボルボ・カーズはあと6年で、ICEだけで走る車を作らなくなるということです。

XC40リチャージの発売時期は未定ですが、5年で5つのEVをリリースするというボルボの目標から考えると、欧米では来年(2020年)の発売になるのでしょう。もっとも、日本で買うことができるようになるのは、ちょっと先になりそうです。

バッテリー容量は75kWh前後?

コンパクトSUVのXC40は、ミドルサイズSUVのXC60と並ぶボルボ・カーズの売れ筋モデルです。Global Newsroom の販売実績(Retail Sales By Car Model)を確認すると、2019年1~9月の販売台数はXC60の14万5629台に対して、XC40は9万5475台の2番手につけています。2018年には欧州、日本でカー・オブ・ザ・イヤーも獲得しています。そうした主力車種に電気自動車モデルを加えたことに、ボルボの電動化に対する本気度を感じます。

とはいえ、XC40リチャージの詳細はまだ明らかになっていません。価格も未発表です。ボルボ・カー・ジャパン広報にXC40リチャージについての情報を確認すると、「リリースに書かれている以上の情報はないんです。それ以外のことは臆測になってしまうので……」と、申し訳なさそうな声で回答がありました。

ということで、公表されている画像などから、どんなクルマなのかを推測してみたいと思います。

現段階で公表されているスペックは、満充電からの航続距離がWLTPモードで400km(EPA推計値=約357km)であることと、前後にモーターを搭載した全輪駆動で最高出力が408hp(約304kW)ということ。また、急速充電器を使うと40分で電池容量の80%まで充電できるということです。単純に出力一定で充電したとすると(そんなことはありえませんが)、日本風に30分だと60%ということになります。

ただし、最大出力がどのくらいの急速充電器を想定しているのかは言及されていません。

たとえば、すでに公表されているボルボの別ブランドモデル「ポールスター2」のバッテリー容量は78kWhで、出力は408hpです。ポールスター2も前後にモーターを搭載した全輪駆動なので、スペックはそれほど変わらないかもしれません。EVのデータベースサイト「Electric Vehicle Database」によると、XC40リチャージのバッテリー容量は75kWhとしています。

気になるのは、電池容量に3kWhの差しかないとすると、ポールスター2の航続距離が500km(WLTPモード)なのに対して、XC40リチャージは400km(WLTPモード)と、大きな差があることです。推定値をもとに1kWhあたりの電費を計算してみると、ポールスター2が「500÷78=6.4km」、XC40リチャージが「400÷75=5.3km」となります。テスラのモデルSとモデルXを比較しても1km/kWh弱の差があるように、スタイリングによる空力や車重の違いが電費に大きく影響することを感じます。

【関連記事】
ボルボの高性能車ブランド「ポールスター」が、電気自動車「ポールスター2」を発表

ほぼ間違いなく100kW以上の急速充電出力に対応

ここで、XC40リチャージの充電出力を考えてみましょう。もし75kWh前後というバッテリー容量が当たっているとすると、40分で60kWhの充電ができるということになります。仮にそこまで一定の出力で充電しているとすると、充電出力は90kWになります。

もちろん、充電出力は電池の容量によって変わってくるので、充電開始時には100kW以上になるのは間違いありません。欧米では150kWh以上の急速充電器の設置が進んでいるので、XC40リチャージも当然、そこに合わせてくると思われます。

話はちょっと横道に逸れますが、欧州メーカーの動きを見ていると、日本の急速充電器事情に不安が増していきます。CHAdeMO規格は日本発だし世界各地での設置台数もそれなりに多いのですが、急速充電器の性能は時代遅れになりつつあります。

このままだと充電器の性能がEVのスペックに追いつかず、大容量バッテリーを搭載するEVのメリットが、日本市場では生かしにくい状況になってしまいます。もう、徐々にそうなってきていますが。

高い所に視点を置いて社会の全体効率を考えたときに、大容量バッテリーに大出力充電の組み合わせがいいのか、適度な容量と50kW程度の充電器の組み合わせがいいのかは、考え方が分かれるところだとは思います。一方で、世界市場を握っている日本以外のメーカーが大出力の急速充電器に対応してきていることを思うと、考えている時間は少ないようにも思います。

20年ほど前、日本のホテルが率先して有線LANを客室に導入したものの、すぐ後には世界的に無線LANが主流になって、日本の対応が結果的に遅れたことを思い出しました。先行者の悲哀とでも言うのかもしれませんが、ここから先は将来を見据えた戦略が必要なのは間違いありません。

電池はパウチ型を搭載か

XC40リチャージのプラットフォームは、ボルボが中国の吉利汽車(Geely)と共同開発した小型車用の「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャ)」を使っています。CMAは電気、内燃機関(ICE)で共通のプラットフォームで、ICEのXC40でも採用しています。

Volvo XC40 Recharge Battery Package

画像を見るとバッテリーはすべて床下に配置されています。形状からは、ポールスター2が採用したパウチ型のセルと同様ではないかと推測できます。

またこの画像からは、モーターと同軸上に車軸が出ているのが見えます。とくに後輪は、デファレンシャルギアとモーターが統合されているのがよくわかります。

ボルボ・カーズはこれまでに発売したXC90などのプラグインハイブリッド車に、今は英国に本社を置くGKNオートモティブの電気駆動システムを採用しています。

XC90 T8 ツインエンジンに搭載されている出力60kWのモーターユニット。 The integrated drive unit in the T8 Twin Engine comprises the inverter and electric motor. The electric motor T8 Twin Engine delivers 82 hp (60kW) and 240 Nm torque. Photo source: Siemens AG

GKNオートモティブの電気駆動システムは「eTwinster」というラインなどが公表されていて、BMWも一部モデルで使用しています。XC40リチャージも、これらと同様のシステムを採用していると考えていいでしょう。

2025年までに毎年1つのEVを追加

ボルボ・カーズは2016年に、電気で走る車を2025年までに100万台にするという目標を発表しました。この目標を具体化したのが、今回のXC40リチャージです。

XC40リチャージ発表と同時にボルボ・カーズは、2018年から2025年までに車のライフサイクルでのCO2排出量を40%削減するという目標を発表しました。XC40リチャージは、その先兵になるモデルです。

XC40リチャージの発表時にボルボ・カーズのホーカン・サムエルソン代表取締役社長兼CEOは「ボルボ・カーズにとって、未来は電気です」と発言。電動化に向けた意欲を示しました。前述のようにボルボ・カーズは2025年までに毎年、1モデルのEVを市場に投入すると共に、ICEだけで走る車から手を引くことを計画しています。

電動化への動きを促進するため、ボルボ・カーズのWEBサイトは2020年の早い時期から、サイトを見る顧客にまず「リチャージモデル」が欲しいかどうかを聞くようになるそうです。それだけでなく、ボルボ・カーズの全プラグインハイブリッド車には、1年間の電気代と同額の電気料金を払い戻しする特典が付くようになります(時期は未定)。

EVを出すだけでなく、市場の主力にしようというボルボ・カーズの意気込みは伝わってきます。周知のように、北欧ではノルウェーがEVの販売台数を急増させているなど一定の需要もあります。車が増えれば充電器への需要が増え、設置業者の意欲も高まるという好循環が生まれるかもしれません。

XC40リチャージが欧米の市場でどう受け取られるのか。まずは実車のデリバリーを待ちたいと思います。

(木野龍逸)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

執筆した記事