発売開始27分で5万台受注【シャオミ『SU7』の衝撃】実力のポイントを徹底解説

スマホメーカーとして知られる中国のシャオミがEV進出の第一弾車種となる『SU7』の発売を開始。電気自動車として刮目すべき性能と452万円〜という価格が世界に大きな衝撃を与えています。注目すべきポイントを、EVネイティブこと髙橋優氏が解説します。

発売開始27分で5万台受注【シャオミ『SU7』の衝撃】実力のポイントを徹底解説

シャオミに関する基礎知識〜家電のIOT化に注力

中国の家電メーカーである小米(Xiaomi/シャオミ)が、ついに初めてとなるEVのSU7の正式発売を発表しました。

最長航続距離830km、9100トン級のギガキャスト採用、市街地を含めた先進ADAS、そして独自OSのHyper OSの採用によって、スマホや家電とのシームレスな連携など、注目すべきトピックはてんこ盛り。しかも452万円から発売をスタートして、発売開始27分で5万台の注文を獲得したことが世界中で大きな話題になっています。2024年の中国におけるEV動向で最も注目するべき新型車についてのポイントを解説します。

シャオミはすでに日本国内でもスマホや家電を発売している中国のメーカーです。家電製品のラインナップは、掃除機やテレビ、加湿器やスピーカー、さらにはウェアラブル製品や体重計、デスクトップモニターなど多岐にわたります。そして、主力製品であるスマートフォンについては、Xiaomiブランドとともに、Redmiと名付けられた、より安価なサブブランドも展開しています。

このシャオミが注力しているのが、幅広い家電製品のIoT化です。一旦シャオミ経済圏に引き込んでしまえば、次に購入するスマホや家電製品もシャオミの製品を購入しないと不便に感じてしまうという囲い込み戦略によって、家電とスマホ事業のシナジーを図ろうとしてきています。

そして、家電のIOT化の基盤となるのが、シャオミの独自開発OSであるHyper OSの存在です。スマホと家電のOSを共通化することで、Hyper OS上で動くタブレットやパソコンから、スマホのカメラを起動させるなんてことが可能となります。

さらに、このHyper OSをベースとして、家電やスマホとともに、人々の生活に根付いている最も高価にして最後のピースともいえる、自動車市場への参入を2021年に表明。人・家・クルマをシームレスに繋ぐことで、シャオミ経済圏の完成を図ってきた格好です。

自動車(EV)市場参入の発表からちょうど3年後である2024年3月29日、ついにシャオミ初となるミッドサイズセダン『SU7』の発売をスタートしました。日本で購入できるようになるかどうかはまだ全くわかりませんが、世界の自動車業界に衝撃を与えたといえる圧巻のEV性能やスペック、コストパフォーマンスについてまとめていきたいと思います。

SU7の注目ポイントを紹介!

今回発売が開始されたSU7は、全部で3種類のグレードをラインナップ。エントリーグレードには73.6kWhのBYD製Blade Battery、中間グレードの「Pro」には94.3kWhのCATL製Shenxing Battery、そして最上級グレードの「Max」には101kWhのCATL製Qilin Batteryを搭載。Maxグレードのみ、前後にモーターを搭載したAWDを採用。下の2グレードにはRWD仕様を採用しています。

表内のEPA値は髙橋氏独自の計算による推計値。

上位グレードは余裕で600kmを超える航続距離

一充電航続距離は、中国市場で採用されているCLTCサイクルベースで、エントリーグレードでも700kmを確保、Proグレードは830km、AWDのMaxでも810kmと発表されました(タイヤサイズなどによって発表値には幅があります)。高速道路を時速100kmで走行しエアコンを使用しても達成可能とされるEPAサイクルベースに換算すると8割程度になると推察できるので、実用的な航続距離は、エントリーグレードが約560km、Proが約664km、Maxで約648kmと推計できます。

航続距離の長さに貢献するのが、空力性能を示すCd値が0.195という、市販車で最も空力に優れた一台となっている点です。

このグラフは、現在世界で発売されている空力性能に優れたEVのCd値をランキング化したものです。ご覧の通り、今回のSU7は、メルセデスEQSやテスラモデルSなどをさらに下回るCd値を実現しており、このCd値の低さによって、特に高速走行時においても電費性能の悪化を最小限に食い止めることを期待可能です。

また、このグラフは、現在中国市場で発売されているAWDグレードの最新EVたちの、CLTC基準での航続距離の長さをランキング化したものです。すでに150kWhの半固体電池のリリースを開始しているNIOについては、1000km以上という航続距離を実現済みです。また、ZeekrのミニバンEVである009に関しても、140kWhのQilin Batteryを搭載することで822kmという航続距離を実現しています。

今回のSU7については、101kWhというバッテリー容量で航続距離810kmを実現しており、バッテリー容量に対する航続距離の長さ、つまり空力性能を追求したセダンとして、航続距離と電費性能を高い次元で両立していることが見て取れます。

次に充電性能については、Maxグレードのみ最大電圧を871Vと高電圧化することで、15分間の充電時間で510km分の航続距離を回復可能としています。最大充電出力の数値こそ発表されなかったものの、充電残量10%から80%までにかかる時間は19分間と、充電時間の短縮に成功しています。

また、最大電圧が486VのエントリーグレードとProグレードについても、15分間の充電で350km分の航続距離を回復可能。どちらも10%〜80%まで30分以内という充電時間を実現していることが示されました。

独自の超急速充電ネットワーク構築も発表

また、シャオミは独自の急速充電ネットワークの構築計画も発表し、液冷式ケーブルの600kW級超急速充電器を設置する方針を表明しました。上海や北京など主要都市圏から配備をスタートする予定です。

すでにNIOやXpeng、Li Auto、Zeekr、ファーウェイなどが500kW級以上の超急速充電ネットワークを構築中であり、どこも一般向けに開放するとしています。超急速充電を使用可能なインフラ網が中国全土で構築され始めていることから、超急速充電に対応したEVが宝の持ち腐れにならないという点も重要だと思います。

このグラフは中国の公共充電器で一般的な120kWタイプで充電した際の充電カーブをモデル3と比較したもの。電圧の高さも相まって、充電カーブが優れている様子が見て取れます。

圧巻の動力性能も実現

また、動力性能に関しても、特にMaxグレードについては最高出力が495kW、最大トルクも838Nmを発生させることで、0-100km/h加速が2.78秒、最高速も時速265kmとハイパフォーマンス化。この動力性能はポルシェタイカンのターボに匹敵すると豪語しています。

20秒間最大パワーを発揮可能なブーストモードであったり、ドリフトモード、ローンチコントロールなども搭載するなど、スポーツセダンとして動力性能に全く妥協していないことがわかります。

さらにMaxグレードには、CDC(連続可変ダンピングコントロール)付きのエアサスペンションを搭載することで乗り心地を向上させています。

フランク採用など高い実用性もアピール

また、517Lというトランク容量とともに、ボンネット下にも105Lものフランクを採用しており、これはセダンとしては最大級のサイズを確保。小型のスーツケースも収納可能など、高い実用性をアピールしています。

ホイールベースが3000ミリという中大型セダンというサイズながら、最小回転半径が5.7メートルと、取り回しの良さも両立しています。

世界が驚く価格を発表!

そして、今回の正式発売において最も注目されていた車両価格が驚きでした。エントリーグレードが21万5900元、日本円に換算しておよそ452万円からのスタートと、アナリストたちの予測を大きく下回るコスト競争力を実現しました。

さらにサプライズとして、4月30日までに注文を完了させたユーザー限定特典として、車載冷蔵庫や25スピーカーシステムのサウンドシステム、ナッパレザーシート、およびADASシステムであるXiaomi Pilotを全て無料で付与するなど、最大4.8万元(日本円で101万円)もの特典で、初期注文を最大化しようとしてきています。

右からLi AutoトップのLi Xiang、NIOトップのWilliam Li。値段発表の際には驚きを隠せない様子が映し出されました。

そして、この衝撃的な値段設定によって、正式注文を受け付けてから4分で1万台、7分で2万台、27分で5万台という注文を獲得したことがアナウンスされました。

この注文というのは、7日間までは5000元(10.5万円)の予約金を返金可能な予約注文です。とはいえ、キャンセル不可まで7日間しかないということを加味すれば、そのうちの多くが確定注文になると推測可能であり、まさに記録的な売れ行きと評することができるでしょう

ライバル車と比べて驚異的なコストパフォーマンス

また、このSU7がどれほどのコスト競争力を実現しているのかについてを、特に競合関係となる、テスラモデル3を中心に、Zeekr 007、ファーウェイのLuxeed S7などとEV性能を比較してみたいと思います。

今回比較対象とするのは、最上級パフォーマンスグレードです。モデル3パフォーマンスについては現在発売停止中であり、一部のリーク情報では間も無くモデルチェンジバージョン(いわゆるハイランド)のパフォーマンスグレードが追加設定される見込みです。今回は旧モデルのスペックを記載しています。

まず注目するべきは電費性能です。モデル3パフォーマンスは13.2kWh/100kmと優れた電費性能を実現しているものの、SU7も13.7kWh/100kmと、より多くのバッテリー容量を搭載していることを加味すれば、テスラに肉薄する効率性を実現していると言えます。

特に、ほぼ同じバッテリー容量や動力性能を実現しているZeekr 007が660kmの航続距離に留まっており、タイヤサイズを20インチに揃えても、SU7の航続距離は750kmと、Zeekr 007を圧倒しています。

Zeekr 007

また、その動力性能についても、Zeekr 007とともに0-100km/h加速タイムで2秒後半を実現しており、モデル3やS7を上回っています。

車体のねじり剛性についても、SU7は51000 Nm/deg(ねじり剛性値の単位)という高剛性を実現しており、ハンドリング性能の高さも期待できます。モデル3パフォーマンスが26000 Nm/degに留まっていることを踏まえると、その剛性の高さがイメージできると思います。

さまざまな車両設定もお好みで!

ユーザーインターフェースや快適装備にも抜かりはありません。SU7では、ステアリング重量、サスペンションの高さと固さ、電動リアスポイラーの角度、前後駆動力配分、回生ブレーキ(コースティングからワンペダルまで対応)、運転サウンド(アクセル・回生ブレーキに合わせた擬似電子音)など、さまざまな設定をドライバーの好みに合わせてカスタマイズ可能。

音響システムについても、25ものスピーカーを搭載し、Dolby Atmos 7.1.4に対応。スピーカーの搭載数という観点でも競合他車を圧倒しています。

その上MaxグレードにはCDC付きのエアサスペンションが標準装備されています。これはLuxeed S7 Max RSグレードにしか標準装備されていないことから、SU7 Maxの大きな付加価値と言えます。

そして何と言っても注目は、その価格設定です。Maxグレードについては29.99万元、日本円で628万円というコスト競争力の高さを実現しています。モデル3パフォーマンスは発売停止前で33.19万元、日本円で695万円と、70万円近くも高額です。

もうすぐ発表されるであろうモデルチェンジバージョンのモデル3パフォーマンスについては、動力性能などを引き上げられるものの、価格が下がることはないと予想しています。それを考慮に入れると、やはり脅威的なコスト競争力の高さであることが見て取れるでしょう。

このグラフは、現在中国国内で発売されているプレミアムEVセダンの、航続距離と価格設定との相関関係を比較したものです。

縦軸が航続距離(CLTC/km)、横軸が価格(RMB)を示しています。よって左上に行けば行くほど航続距離が長く、かつ価格も安いことを意味します。

水色で示したのがベンチマークであるテスラモデル3、ピンクがAWDグレードの各車。そして黄色が今回のSU7です。

この通り、モデル3 RWDと比較しても、SU7が左上に位置していることが確認できます。しかもこの価格設定は、4月30日までの早期購入者に対する限定特典を考慮していないことから、現時点ではさらにコスパが高いわけです。よって2024年3月末時点では、SU7が中国市場でコスパ最強のEVセダンであると断言できるでしょう。

ユーザーファーストを徹底した快適性能

EV性能の完成度の高さに加えて、シャオミは、さらにスマートキャビンと名付けてインテリアの快適性を追求してきています。

16.1インチの3Kの解像度を誇るディスプレイを採用しながら、さらに56インチものARヘッドアップディスプレイも搭載。そして、そのインフォテインメントシステムを駆動させるのが、Qualcommの最新プロセッサーであるSnapdragon 8295です。

それ以上に注目すべきなのは、冒頭も説明した通り、シャオミの独自開発OSであるHyper OS上駆動させることによって、スマホや家電とのシームレスな連携が可能となり、スマホ、家電、EVのどれかでシャオミユーザーになると、それ以外でもシャオミの製品を購入する動機付けにもつながるわけです。

個人的に興味深かったのが、このスマートキャビンでは、実はトラディショナルな設計も採用されているという点です。特に強調されていたのが、最小限の物理ボタンをあえて採用しているという点です。

センターコンソール上では、空調設定やエアサスの調整など、即座に操作が求められる機能については物理スイッチでコントロール可能にしています。

さらには、後席側に、ユーザーが所有しているタブレッドを搭載可能であり、ワンタッチで車両の空調やサウンドシステム、前席側のシート調整などにアクセス可能です。また、これはシャオミ製のタブレットだけではなく、アップル製のiPadなども使用可能。完全にシャオミ製品にしか互換性を持たせないという制限をかけないことで、ユーザーの利便性ファーストな設計開発を行っています。これはまさに、シャオミが創業当初から大切にしていた、圧倒的ユーザーファーストな設計思想が反映されていると感じます。

先進運転支援(自動運転)対応も最先端へ

そして、現在中国市場で重要視されている自動運転について、シャオミではLiDARを採用しながら、Nvidia Drive Orin-Xプロセッサーを2つ搭載して、その演算能力は毎秒508兆回と、現在のハイエンドEVで標準となる演算能力を確保してきました。このXiaomi Pilotについては、当初高精度マップを使用するというアプローチも検討されていたものの、テスラFSDと同様に、高精度マップに頼らないアプローチを採用しています。

4月3日から納車されたSU7は、納車直後から高速道路上におけるNOA(Navigation On Autopilotの略。追い越しや分岐、工事などによる車線減少などを全てカバー)に対応可能です。

そして、すでにファーウェイとXpengが一般リリースしている市街地におけるNOA(信号や右左折、工事などによる車線減少などを全てカバー)についても、5月から主要10都市で一般リリースを開始して、8月中にも中国全土に範囲を拡大。2024年中にADAS開発のトップ企業に追いつく目標を宣言しています。

Xiaomi PilotにはProとMaxの2種類が存在。MaxはLiDARとNvidia Drive-Orin-Xを2つ搭載することで市街地NOPに対応。ProはLiDARを搭載せず、高速NOPのみ対応するとしています。

シャオミは自らを「自動運転の開発で新参者」であるとしながら、AIの研究開発は当初から行われており、このAIをベースとしたADASシステムを開発することで、後発ながら、自動運転競争を勝ち抜く自信を見せてきた印象です。

ギガキャストにも独自技術を展開

ちなみに、そのAIを活用することで、SU7のリアアンダーボディに採用されている9100トン級のギガキャストの合金の配合割合も効率的に計算するなど、テック企業として効率的な自動車開発にも貢献していることが紹介されました。

実演が動画でも紹介されている自動バレーパーキング機能は、途中で対向車とすれ違えないことを判断して、バックするという挙動であったり、当然歩行者優先したりなど驚異的な性能であることも見て取れることから、実際のユーザーによるリアルワールドでの使い勝手の良さが期待できます。

「Xiaomi Autoのために戦う」宣言!

シャオミは自動車(EV)市場参入を表明してから3年後に、初の量産EVとなるSU7の正式発売をスタートしてきました。トップのLei Junはかねてより、電気自動車のために全力で戦うとしながら、この電気自動車市場への参入こそ、自身の最後にして最大の挑戦であるとも宣言。実際に、すでにSU7の開発に対して14億ドル(約3000億円)という莫大な投資を行っており、今後10年間でさらに100億ドル(約1兆5000億円)の投資を行うとも宣言しています。

3年前の発表から、「Xiaomi Autoのために戦う」をスローガンに。Lei Jun曰く、自動車事業が自身最後のビジネスになり、自身の名誉と業績を賭けるとまで宣言。

はたして、EV市場への最強の挑戦者となるであろう、この中国のイーロンマスクとも言われるLei Jun率いるシャオミが、27分で5万台の注文を獲得しているSU7を皮切りとして、どこまで成功を収めることができるのか。

Lei Junが掲げた、今後15年以上をかけて、世界のトップ5に入る自動車メーカーに成長していきたいという野望を本当に実現できるのかについては、実際の販売台数の動向なども含めて期待していきたいと思います。

すでに家電やスマホで参入を果たしている日本市場への導入にも、期待せずにいられないのは私だけでしょうか?

また、スマホメーカーであるシャオミのEVは、間違いなく、2025年後半以降に発売される予定のソニー・ホンダのアフィーラにも大きな影響を与えることは間違いないでしょう。後発となるソニー・ホンダが、EVを使ってどのような付加価値をユーザーに提供することができるのかにも、日本人としては注目していきたいところです。

以前ソニーホンダの川西社長は中国EVに対して「スマホのアイコンを並べているだけ」とインタビューに答えていたが、このSU7に対してはどのような感想を抱いているのかは気になるところ(筆者撮影)。

Xiaomi EV Launch March 2024(YouTube)

文/髙橋 優(EVネイティブ※YouTubeチャンネル)

※本文中に紹介している画像はシャオミ公式Weibo、Xからの引用。およびライブ配信のキャプチャーを使用しています。

この記事のコメント(新着順)4件

  1. ジャーナリストを名乗るなら車に乗ってからレポートして欲しいなぁー
    って思うのは私だけではないでしょうか?

  2. 個人的にはSU7は4人乗りの点が気になりますが国内に持ってきてくれるなら購入したいですね。
    SU7はモデルSクラスのサイズのため、モデル3クラスのSU5などでてくれると嬉しいですが。

  3. 残念ながら試乗で急加速等複数の事故が起きてるそうです
    ユーザービリティが悪いのかもしれません

    1. 試乗ではなくサーキットです。事故の経験者本人の説明を聞いてもいいよ。無理やりブレーキパッドの制限を突破してレーシングするなら事故は怪しくないでしょう?レーシングだから。

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