標高約4300mの山頂を目指す世界的ヒルクライムレース
パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称:パイクスピーク)は、アメリカ・コロラド州にある標高4301mの山で、この頂上への登山道路であるパイクスピーク・ハイウェイの一部を使用して、誰が一番速く山を登れるかを競う単純明快なレースです。毎年初夏に開催されるイベントで、インディ500(インディアナポリス500マイルレース)に続く、世界で2番目に歴史のあるレースとなります。
その競技区間は標高2862mのスタートラインからその頂上である4301mのゴールまで、高低差約1440m、全長約20㎞、156のコーナーを持つコースを1台ずつがタイムアタックして競技をすることとなります。
パイクスピーク・ハイウェイは、観光有料道路として使用されている道路で、この年に一回のレースの1日だけ一般車は完全閉鎖されます。また、決勝を前にしたレースウィークは、その営業時間前となる早朝の時間を使用して練習走行が行われます。練習走行は3日間とオプションで1日の4日間のみ。設定されているコースを3セクションに分けられています。
練習走行は全エントラントを3グループに分け、日ごとに走行セクションが変わるようにして走行を行ない、一番標高の低いボトムセクションのベストタイムが予選タイムとなります。ちなみにスタートからゴールまでを通しで走ることができるのは決勝レース1本のみとなります。今年の記念大会には、6カテゴリーに計75台がエントリーしています。
出走を断念した昨年の雪辱を期す
SAMURAI SPEEDは2012年から「パイクスピーク EV チャレンジ」というテーマを掲げ、電気自動車で参戦してきたチームです。昨年は、日本仕様の日産リーフe+ をベースに、リーフのモーターを2台分搭載した4WDモデルに改造したマシンで参戦をする予定でしたが、車検通過後に高電圧の接続系にトラブルが発生し、その原因究明と対策に時間を取られ、公式練習の条件を満たすことができず、出走を断念しています。
今年参戦するのも、昨年出走できなかった日産リーフe+をベースにしたマシンとなります。ニューマシンの『NISSAN LEAF e+ KAI』は、チームの運営母体であるゼロイースクエアのアメリカ事務所であるフリーモントガレージで準備を完了しました。今回はモーターを1基に戻し、車両の軽量化と熱管理に注力したモデルとなります。具体的には、軽量化のために大王製紙が手掛けている「CNF・セルロースナノファイバー」をボディカウルに採用。環境に優しい素材で製作したボディカウルは前後それぞれが一体式となり、ドアパネルも同様の素材で製作されています。
また熱管理については、サンデン(2019年のニュースリリースにリンク)が開発を進めている駆動用リチウムイオンバッテリー温度管理システムを搭載しています。これによりノーマル車両よりも熱の影響を受けにくく、長時間の高速走行が可能となっています。そのほか、前後の重量配分を調整し、補器類の配置を変更して運動性能の向上も図っています。
このパイクスピークへのチャレンジは、これまで日本のトップラリードライバーである奴田原(ぬたはら)文雄選手を起用してきたのですが、昨年から大井貴之選手にスイッチ。大井選手は、昨年決勝レースに出場していないため、今年もルーキー扱いとなります。ゼッケンはこれまで同チームが使用してきた230(奴田原選手の名前「ふみお」から取った番号)から234へ変更。参戦するクラスは「アンリミテッドクラス(全11台がエントリー)」となります。
この日お披露目となったカラーリングは、これまで参戦してきた同チームのリーフ同様、侍の図柄は変わらないが、ベースとなるボディカラーを昨年のホワイトからブルーメタリック系に変更。チームはこの後、20日に行われる車検、そしてその後に続くレースウィークに向け、ベースキャンプをコロラド州のコロラドスプリングスに移すこととなります。
パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム第100回記念大会は6月26日(日)に決勝を迎えます。はたして、今年はどんな電気自動車が参戦してどんな活躍を見せてくれるのか。EV目線の決勝レースレポートもお届けする予定です。お楽しみに!
(取材・文/青山 義明)