電気自動車レース『JEVRA』シリーズでタイカンが参戦を中止した理由

開幕戦からポルシェ『タイカン』が参戦して注目された今年の『JEVRA』シリーズ。すでにシーズンも折り返し、8月8日(日)に第5戦が開催。でも、そこに『GULF RACING Taycan』の姿はありませんでした。参戦中止の理由と、残るシーズンの見どころを青山義明氏がレポートします。

電気自動車レース『JEVRA』シリーズでタイカンが参戦を中止した理由

多彩な電動車両が参戦する日本国内の電気自動車レース

日本国内で電気自動車レースシリーズを開催する『JEVRA(Japan Electric Vehicle Race Association=日本電気自動車レース協会)』。すでに12年目のシーズンとなっており、市販車や実証実験に使用された開発車両等これまでさまざまな電動車両が参戦してきています。

今季も開幕から連勝を続ける地頭所選手のモデル3。

近年、テスラモデル3の強さが際立ち、「モデル3とそれ以外」というような展開になり始めています。それでも日産リーフやノートe-POWERなどが参戦し、それぞれのクラスでしのぎを削っています。また、JEVRAシリーズ初代チャンピオン(2010年)のレーシングドライバー飯田章選手が、第3戦筑波から新型ミライを持ち込んでいます。

注目のポルシェ『タイカン』は参戦を中止

激しいバトルを繰り広げたタイカンとモデル3だったのですが……(第2戦)

今季開幕戦での注目はポルシェ・タイカン(ターボS)の参戦でした。GTにも参戦しているガルフ・レーシングのチームオーナーであるKUNI(国江仙嗣)選手が持ち込みました。同チームのチーム監督のKIMI(八代公博)選手はモデル3を持ち込み、2台体制で参戦してきました。

富士スピードウェイで行われた開幕戦の予選では、モデル3勢のトップタイムを1秒近く離した1分54秒882というタイムを叩き出し「やっぱりタイカンはすごいぞ」とパドックもざわつきました。ところが、実際のレースではレース中盤に、車両の制御モードが入って失速してしまいました。続く第2戦袖ケ浦でも同様にレース中盤に失速。第3戦の筑波でも2番手でモデル3を追い詰めるかに見えたものの、10周目にまたしても失速。第3戦までの結果は「5位」「5位」「8位」という不本意なものでした。

レースで20~25kmほど走行すると制御モードに入って失速してしまうトラブルから、どうしても抜け出せなかったようです。リザルトとしてはスタートからの貯金もあるので、リーフなど他の車両よりは速いという結果となっていますが、モデル3には歯が立たない状況でした。

タイカンとKUNI選手は結局第3戦まで参戦したものの、それ以後は参戦を中止しています。一緒に参戦してきたガルフ・レーシングのKIMI選手(モデル3)は第4戦こそスキップしたものの、今回の第5戦には再び参戦しています。

タイカンが参戦を中止した理由

今回、ピットにKUNI選手の姿はなかったのですが、チームメイトであるKIMI選手に話を訊くことができました。タイカン参戦中止の理由、そして現状はどうなのでしょう。

「タイカンは制御モードに入るとリーフより遅くなってしまいます。テスラのように事前に制御モードに近づいていることがわかる仕様ならいいのですが、そうではなくて……。ポルシェのディーラーに協力してもらえるはずだったんですが、対策についてはまだ返答がもらえていない状況で。このままレースを続けても意味がないということで、現在は参戦を見合わせています。結局このままタイカンがレースに使えないのなら自家用に戻そうかとも……」(KUNI選手)ということです。

「モデルSプラッドがすぐに手に入るのなら、それで参戦も考えるのですが」とも語ってくれました。来シーズンあたり、モデルSプラッドでの参戦があるかもしれません。

サーキットのレースは、やはり特別なフィールドです。予選のタイムは「さすがにポルシェが誇る電気自動車!」と感じさせるものであっても、サーキットでのレースディスタンスを戦うためには、一般に市販されるポテンシャル以上に必要な何かがあるということでしょう。

ドイツツーリングカー選手権(DTM)がEVとFCVによるスーパーGT並みのレースシリーズを創設する計画であることが伝えられたりしてはいますが、JEVRAのように市販される電気自動車が本気でサーキットで競うレースシリーズは世界でもまだレアなケースです。というか、こういう年間シリーズの存在を、私は聞いたことがありません。日本のサーキットを舞台にした貴重な競技で、熱制御対策を講じたタイカンとテスラの争いを見てみたい、という気持ちはありますが……なかなか難しいんでしょうねぇ。

シリーズは開幕5連勝で地頭所光選手が独走中

ポールポジションを獲得したのは今橋彩佳選手。

さて、台風10号が接近する中行われたJEVRAシリーズ第5戦(ツインリンクもてぎ)。風はないものの、雨が強くなったり弱くなったりする状況でした。

午前8時半から15分間で行われた予選では、今橋彩佳選手(#2 ガーデンクリニックCNR3アキラRテスラ)が2分22秒680のタイムで前戦のSUGOに続く2戦連続でのポールポジションを獲得。今回も5台のテスラモデル3が参戦しましたが、そのモデル3に続いたのが、今回JEVRA初参戦の本間康文選手(#6 PETRONAS FUNTIME ZE1)でした。リーフ(40kWh)を手に入れて、面白いのでレースに出てみようと思って調べたらこのJEVRAシリーズにたどり着いたということです。シリーズスケジュールを見て、コースを一番よく知っているこのもてぎでのレースに出てみようということで参戦となり、見事に6番グリッドを獲得しました。7番手は同じくリーフを駆るレーサー鹿島選手(#88 東洋電産・LEAF e+)でした。

新型ミライを持ち込んだ飯田 章選手(#104トーヨーシステムミライCNRアキラR)は、モデル3が5台、リーフ2台に続く予選8番手でした。飯田選手は「とにかくパワーがない。タイヤもこのサイズでSタイヤとか選択できなくてコーナリングスピードも上げられないし……、リーフとの競り合いになってしまってます」と苦しそう。

そして雨は降り止まないまま午後1時45分、もてぎの全長4.8kmのコース12周で争われる決勝がスタートしました。

予選3番手からスタートの地頭所光選手(#1 TEAM TAISAN東大UPテスラ)が、今橋選手、そして2番グリッドからスタートのTAKAさん選手(#33 適当Lifeアトリエ Model3)をオープニングラップでパスしてトップに立ち、その後は堅実にレースをリードします。

後半追い上げた今橋選手と適切なマージンを取り、危なげないレース運びで、開幕5連勝の貫録勝ちとなりました。一時は2番手に浮上したTAKAさん選手は中盤で今橋選手の先行も許し3位という結果です。

地頭所選手はこれでシリーズポイントを100と伸ばし、総合2位につけるTAKAさん選手をさらに引き離し35ポイント差としました。2018年からの4連覇に向け、今シーズンの総合タイトルに王手をかけることとなりました。

「次でチャンピオンを決めて、最終戦もしっかり勝って全勝でシーズンを終えたいです」と地頭所選手。まずは次戦の走りに注目です。

2021年シーズンのJEVRAシリーズは残すところあと2戦です。10月3日(日)に筑波で、そして10月31日(日)に袖ヶ浦で、それぞれ60kmレースが開催予定となっています。

【公式サイト】
日本電気自動車レース協会(JEVRA)

(文・写真/青山義明)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. う〜ん、やはり「ポルシェが最も似合うチーム」であるTAISANがタイカンで参戦して欲しい!名前も似ているし。
    シリーズもぶっちぎりで余裕もあるわけだから強者の義務としてもやって欲しい。
    本気で要望します!

  2.  ポルシェタイカンはテスラと違い何度加速させてもポテンシャルが落ちないと宣伝していましたが、異なる現実へのサポートが遅いのはがっかりです。
     モデルSプラッドが驚異的な加速をどこまで維持出来るのか気になるので、参戦に期待したいです。
     ミライは結果が予想されたと思いますが、どれくらいの差があり、バッテリーEVとの差は今後どうなるのかという事を知る意味で貴重な参加だと思います。

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この記事の著者


					青山 義明

青山 義明

自動車雑誌制作プロダクションを渡り歩き、写真撮影と記事執筆を単独で行うフリーランスのフォトジャーナリストとして独立。日産リーフ発売直前の1年間にわたって開発者の密着取材をした際に「我々のクルマは、喫煙でいえば、ノンスモーカーなんですよ。タバコの本数を減らす(つまり、ハイブリッド車)のではないんです。禁煙するんです」という話に感銘を受け、以来レースフィールドでのEVの活動を追いかけている。

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