電気自動車『Honda e』 東京-白馬 ロングドライブ〜EV普及アンバサダーに認定された

『Honda e(ホンダe)』を衝動買いしたフリーライター、篠原さんによる実録! 電気自動車体感記の第二弾。長野県白馬村で開催された第8回『ジャパンEVラリー白馬2021』に参加した感想とともに、リアルなロングドライブレポートをお届けします。

電気自動車『Honda e』 東京-白馬 ロングドライブ〜EV普及アンバサダーに認定された

※冒頭写真は長野日産自動車茅野店(長野県茅野市)での充電風景。

白馬村を目指す一般道のロングドライブ

『ジャパンEVラリー白馬』は「旅路」が主役のイベントです。

「ラリー」といわれると悪路を突っ走るレースを連想するけれど、もともとの意味は「集合すること」だそうだ。全国各地からEVやPHEVが長野・白馬を目指して走るイベント「ジャパンEVラリー白馬2021」(10月23日)に、今春から乗りはじめたHonda eで初参加した。仕事と遊びを兼ねての参加で、ロングドライブの楽しさを満喫。EV仲間とも出会える貴重な機会となった。

「街なかベスト」の都市型コミューターであるHonda eのバッテリー容量は35.5kWh。航続距離はそれほど長くない。しかも自宅に充電器がないので、日頃は120km前後で継ぎ足し充電をしている。長距離ドライブとなると、確実に途中充電が必須。東京から白馬までは片道ざっと300キロ。運が良ければギリギリ2回で行けるかもしれないが、どうなるやら。

前泊することにして、イベント前日の午前中に東京都中央区の自宅を出発。バッテリーは76%。ナビを長野県白馬村の白馬五竜スキー場にセットする。さっそくナビが航続距離を超えていることを警告してくる。ご親切にありがとう。わかってますよ。

のんびり旅なので、なるべく一般道を走ろうと考えて、池袋から国道254号で埼玉を北上する。和光、川越、東松山…充電量が30%台まで減ってくると、そろそろ充電器を…… という気分に。同じ充電器でも、減っているほど電気がたくさん入るので、日頃はギリギリまで引っ張ったりもするが、旅先では心もとない。本庄市で1回目の充電。ナビの「充電スタンド検索」をポチッとしたら表示された「児玉千本桜ステーション」というスポットだ。

急速充電器設置駐車場のEV普及率は約20%!

児玉千本桜ステーション(埼玉県本庄市)

清掃会社の駐車場に充電スタンドが設置されていた。河川敷が近くて、空が広い。千本桜というぐらいだから春には絶景だろう。のどかな風景。充電しながらちょっと散歩。テスラを駐車した女性に「こんにちは」と挨拶された。充電待ちではなく従業員さん。ふと気づいて数えてみたら、駐車中の20数台のうち5台がEV(テスラ4、リーフ1)。ここ限定で驚くべきEV普及率。身近に充電インフラが整えば、意外にEV乗りは増えるのかも。

30分で10.3KWh充電して、64%まで復活したが、このあたりから電費が伸びなくなる。上りの坂道が多くなったのだ。藤岡、富岡、下仁田…… そして群馬・長野県境の内山峠越え。峠道はドライブしていて楽しいのだが、がっつり電気も食う。充電残量低下の警告灯が点いた。峠のてっぺんで13%。やばい、と下り坂の回生ブレーキで回復させつつ、すべり込んだ「佐久市役所」で2回目の充電(16.3kWh)。隣のスーパーで弁当を買い、車内で夕食を済ませた。

佐久市役所(長野県佐久市)

続いて国道18号へ。小諸、上田、千曲…… 長野に近づいたところで再び30%台に。川中島で、充電するかどうか迷った。白馬へはオリンピック道路(白馬長野有料道路)を走ればいい。だけどまた峠越えになる。安全策を取ることにして、長野の市街地へ向かう。

賑やかになってきたところでナビをポチッ。「メルセデス・ベンツ長野」で13.5kWhを充電して、電池残量を気にしなくていい状態で白馬村に到着した。だけど、もし予約した宿泊施設が充電器を備えていたら、最後の一回はいらなかったかもしれない。着きさえすれば、夜中に充電できるのだから。

メルセデス・ベンツ長野(長野市)

白馬では充電できる宿に泊まればよかった……

あとで知ったことだが、毎年「ジャパンEVラリー」を開催している白馬村には、充電設備のある宿泊施設が多数存在していた。次からは、ちゃんと確認して予約しよう。

イベントの話に入る前に、帰路の充電記録から。白馬から松本経由で中央道を目指した。「イオンモール松本」(6.8kWh)で1回目の充電。高速に乗って諏訪湖SAに入ったら、充電器は使用中。そばに立っていた男性が「EVですよね。僕らも待ってて、1、2、3、おにいさんで4台目」と肩をすくめる。まさかの3台待ち! 出くわした充電渋滞としてはワースト記録だ。先の小仏トンネルが渋滞しているという情報も出ていたし、待つのはやめて一般道に切り替える。諏訪ICで下りてすぐの「長野日産自動車茅野店」(15.1kWh)で2回目の充電をしつつ、隣の牛丼店で腹ごしらえ。

富士河口湖町役場(山梨県富士河口湖町)

ここでナビのルート案内を「最速無料」(一般道優先)にすると、案内してくれたのが相模湖を迂回して山中湖へ向かうルート。たしかに信号は少ないし道も空いていたのだが、つらいのは激坂。最速かもしれないけれど電池も減る。自宅までまったく届きそうになくなり、「富士河口湖町役場」(14.0kWh)で3回目の充電。通ったことのなかった道なので楽しめたが、EVのナビは「電費優先」も選べるようにしておいてほしい。

ジャパンEVラリー白馬でのうれしい出会い

さて、イベントだ。冒頭に書いたように「ラリー」の趣旨は白馬に集まること。なので、これまで書いてきたような、それぞれの道中がメインイベント。会場では「ゴール」の喜びを楽しむことになる。出迎えてくれた村のゆるキャラと一緒に記念撮影。順位はつかない。ゴールした全員が「EV普及アンバサダー」に認定される。大使なんて呼ばれるのは気恥ずかしいが、EVの普及率が1%といわれるいま、こうやってロングドライブをするだけで、なにかをPRしていることになるのかもしれない。

会場でやっていた最新EVとPHEVの試乗会はうれしい企画だった。モータージャーナリストが同乗して乗り方などをアドバイスしてくれる。8台全部乗りたいところだったが、あっという間に枠が埋まって、試乗できたのは三菱アウトランダーPHEVだけ。でも、同乗してくれたのが、プライペートでHonda eに乗っているという片岡英明さん。話したいことがありすぎて、試乗タイムでは全然足りなかったので、東京での後日の再会を約束させてもらった。

参加車両は60台もいて、駐車場はEVだらけ。誰に声をかけても、みんな気さくに答えてくれる。同じ趣味を持つ人の「オフ会」のようなイメージ。「来るのに何回充電した?」とか「いつからEV?」とか、話のきっかけにも事欠かない。普段はEVについて話せる相手が少ないので、仲間ができるのはうれしい。それは他の人も同じようで、SNSをつないだり、名刺を交換したり、というシーンがあちこちでみられた。

夕刊フジで連載している『EV放浪記』の取材では、イベントを主催した日本EVクラブの舘内端代表に話を聞かせてもらったし、充電時間を楽しく過ごそうと呼びかけるSNSグループ「EVごはん」の石井啓介さんにもお会いできた。こうやってEVsmartブログの寄本好則編集長に声をかけていただいて、原稿を書かせてもらっているのも、白馬でご縁ができたからだ。

無音無臭のEVは自然に似合う(長野県白馬村)

翌朝、参加したEVで村内をパレードしてから解散となったが、意気投合した「ポルシェ・タイカン」のTさん、「BMW i3」のKさんと一緒に、そのまま白馬山麓をドライブ。さらにロープウエイで積雪のある栂池自然園まで登り、1時間ほど散策した。ドライブからまさかの雪山トレッキング。EVの話にはじまって、趣味や仕事の話題まで、あれやこれやと話が尽きない。これまた関東での再会を約束して別れた。

脱炭素とかSDGsとか、未来のために解決すべきいろいろな課題がある。EVや再生可能エネルギーの普及をサポートすることが、地球環境への貢献になるとしたら、それはそれでうれしい。だけど、なにかを我慢してEVに乗っているわけではない。ジャパンEVラリーに参加して、車の旅はやっぱり楽しいと再確認できたし、EVが交遊を広げてくれることも実感させてもらった。

(取材・文/篠原 知存)

この記事のコメント(新着順)10件

  1. ホンダe
    良いですね!(笑)

    フィットEVを出した頃から、ホンダさんに何とかEV量販車を市場に出して欲しいと!m(_ _)m

    フィットは、本当に顔見せだけでしたか?(泣)

    まあ、あのトヨタさんがEVに飛びつか無かったのは?何故?

    水素燃料自動車は、FCEVと言う電気自動車なんですがね!(汗)

    個人的に、トヨタさんの今回出すEV・bj4x?は単なるOEMと見てます!(泣)
    元トヨタ社員(笑)
    確かに車メーカー何ですが。
    生粋のエンジンメーカーとまでは行かない(汗)

    EVのエンジンに当たるバッテリーは、全く形になって無い!(汗)

    だから、トヨタコムスの発展系?のC-PODと、言う物を平気で売り出した(汗)

    新型EVは
    バッテリーから何から、ほぼBYD製かな?

    車の皮・外側だけはトヨタ車に見せてる!(汗)

    1. 羽柴健一さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
      FIT EV、恥ずかしながら初耳でした。まったく見たことなかったです。もしかしたら普通のFITに紛れて見逃していたかもしれませんけど。ご教示、ありがとうございます。
      20kWhだったんですね。どんな車だったのか、一回乗ってみたいですね。昨年12月まで、まったくEVに興味がなかったので、私にも疑問がたくさんあって、あれこれ見聞きするのがとても楽しいです。

    2. FIT-EV、実力は名車レベルながら一般市販してない点が最大の欠点でしたね。
      i-MiEV(Mタイプ)で世間が認めた高耐久大電力対応(ただし単位面積あたりのエネルギー量が小さい)東芝電池SCiBを搭載したのは特筆に価しますが、当時のホンダ販売方針があまりに消極的過ぎた点が惜しすぎますよ!
      今出てるホンダeにSCiBを搭載してれば買おうかなぁ?って思いますが。

      トヨタがEVに飛びつけない理由は従来構築してきたサプライチェーンを守ることは周知の事実、それ以上にTHSハイブリッド技術の投資償還がまだ終わってへんことも考えられまへんか?! もう後戻りできないレベルなら電動化も遅れて当然やー思いますが。
      一方日産や三菱自工は過去の業績不振でサプライチェーンも減れば新車開発も滞り、起死回生を狙い社運をかけて電気自動車を製作した…カルロスゴーン・益子修、両カリスマ経営者の苦悩が見て取れますよホンマ。
      ホンダ三部社長の今後の手腕、暖かく見て行こうではありませんか。

    3. ヒラタツさん、Eddyさん、ご教示ありがとうございます。
      実験レベルだったんですね。動画も見ました!
      天草&ホンダはその後も超小型EV「MC-β」で実証実験をやったみたいですね。実験向きなのでしょうか。一度行ってみたいです。

  2. 初めまして(^^♪
    素敵なEV旅(たび)でしたね。
    3台待ちの充電については正直どう感じられましたか。
    私が乗り始めたころは、充電器が少なく2~3台待ちは日常茶飯事でしたが
    その頃は、この待ち時間に色々おしゃべりして楽しんでました。
    今はほどんどそういう場面に出会うことがなく、確実にEV車の環境が進んでいることを感じます。
    ホンダEは街中で乗るには軽快で小回りが利いて本当に楽しい乗り物ですが
    なぜか、値段が異常に高いと感じてしまうのは私だけでしょうかね。

    1. リクリンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
      おしゃべり!それです。EVに乗るようになって、いろんな人と話す機会が増えました。まさか車に乗ってるだけで、こんなに人との縁が広がるとは。私にとっては、EVでドライブする楽しさのひとつになっています。諏訪湖SAでも、失望感より、4台目と教えてくれた男性の親切心がうれしくて、そちらが頭に残っています。とはいえ、充電インフラの整備は着実に進めてほしいですね。

    1. n_wakaさん、こんばんは。
      うっかりしてトリップをセットしなかったのですが、最近の電費動向からみて7km台(1kWhあたり)だと思います。

    2. 実は自身もホンダeをレンタル(カーシェア)した経験がありますが電費は7km/kWh台でしたね。i-MiEVと同じアクセルワークで比較的良い部類ですが。
      それにしても日産リーフe+で8km/kWh出した自分には物足りないと思います。さらにi-MiEV(M)で12km/kWhが平常運転ともなると「電池回生が足りなひ」とも思う有様。
      もしも、ですが…Honda e の搭載電池が東芝SCiBなら容量25kWhで後続可能距離220km程度だとは思います、ただし電力回生効率は良いから市街地でも180km走れるんやないですか?!

      電気自動車の電池/放電特性/持久力/電費/変換効率などを気にするユーザーが少ないのは泣き所やと思いまへんか?!

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この記事の著者


					篠原 知存

篠原 知存

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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