ホンダ『N-VAN e:』ついに発売/インドでは約140万円の軽トラ級EVが颯爽とデビュー!

ホンダは2024年10月10日に、軽商用電気自動車(EV)の『N-VAN e:(エヌバン イー)』を発売しました。ほぼ同時期に海の向こうのインドでも小型商用EVが登場。待ち望まれる小さなEVの現状を考えます。

ホンダ『N-VAN e:』ついに発売/インドでは約140万円の軽トラEVが颯爽とデビュー!

待ちに待った「30kWh」の軽商用EV登場

ホンダがいよいよ、軽商用EV『N-VAN e:(エヌバン イー)』の販売を開始しました。ベース車両は、軽自動車で2023年から24年にかけて日本で販売台数が最も多い『N-BOX』です。

N-VAN e:

昨年10月に開催されたジャパン・モビリティー・ショー(JMS)ではプロトタイプが展示され、本来なら今年春には発売予定だったのですが、ホンダによれば「一部部品の量産に向けた生産体制の整備遅れ」があり、10月10日販売開始とあいなりました。一部部品が何かについて正式な発表はありませんが、半導体やバッテリーなどの可能性もあります。

予定より遅れはしましたが、軽自動車は日本スペシャルのカテゴリーなので長い目で見れば影響は大きくないと思われます。

納車時期のアナウンスも公式には出ていませんが、Facebookの「HONDA N-VAN e:オーナー」グループの投稿を見ると、予約していた方への納車はもうすぐ始まりそうです。自分の車ではないので他人事とは言え、納車開始は楽しみです。

ここでN-VAN e:の価格をおさらいしておきます。

【「N-VAN e:」価格(消費税込み)】
e: L4 定員4人 269万9400円(普通充電のみ)
e: L4 定員4人 280万9400円(急速充電対応)
e: FUN 定員4人 291万9400円(急速充電対応)
・法人営業部およびHonda ON限定
e: G 定員1人 243万9800円(普通充電のみ)
e: G 定員1人 254万9800円(急速充電対応)
e: L2 定員2人 254万9800円(普通充電のみ)
e: L2 定員2人 265万9800円(急速充電対応)

定員は、自家用タイプは4人、事業用とリースが基本の「Honda ON」なら荷物をたくさん詰める1人乗り、2人乗りも選べます。

搭載しているバッテリー容量は29.6kWhで、WLTCモードでの航続可能距離は245kmです。

普通充電のみに対応したモデルがあるのも、近場の利用が多い軽自動車ということを考えると合理的でしょう。普通充電は最大6kW対応。6kW普通充電器を設置(利用)すれば、空っぽからでも5時間もあれば満充電。実用的な航続距離は200kmほどだと思うので、日常では80%程度をメドにした充電で何の不便もなく乗ることができると思います。

急速充電は50kW対応です。バッテリー総電圧は358Vなので、30分あれば空っぽ近くからでも80%前後まで充電できそうです。

ただ、200Vから充電できる普通充電ケーブルがオプション設定で、しかもケーブル長7mで6万6000円(税込)になったのは少し残念。でも、普通充電ポートからAC100Vを取り出せるAC外部給電器「Honda Power Supply Connector」(オプションで税込み2万9700円)が用意されていることは評価したいポイントです。なお別売りの100Vケーブルなら家庭用100Vコンセントから充電もできます。時間かかりますけど。

Honda Power Supply Connector

東京では実質100万円を切るケースも!

コスパはさらに魅力的です。

ホンダ公式サイトでは、自家用については国の補助金(CEV補助金)が55万円、黒ナンバーの事業用ならLEVO補助金が約100万円になると紹介しています。

自家用なら自治体の補助金が出る場合もあり、例えば給電機能のあるN-VAN e:なら東京都ではさらに45万円が出るといった手厚い補助金が追加されます。

そうすると事業用で東京都で登録した場合の補助金額は「国/約100万円+東京都/45万円=145万円」となり、最も安価な「e: G」なら100万円を切ってきます。自家用(黄色ナンバー)で経産省のCEV補助金(55万円)でも、実質価格は約170万円からになります。

加えて、軽自動車なら車庫証明が不要な自治体もあるし税金も安くて維持費のメリットも大きいし、売れ筋の『N-BOX』がベースだし、個人の感想ですが台数は伸びるだろうと予想しています。

というか、伸びてほしいというか、これが売れなければ日本のEVの将来がほんとうに不安になります。

ちなみに10月9日時点での先行予約状況を知りたかったのですが、ホンダ広報部によれば、公表してないし、公表予定もないそうです。注目車種なのに、なんかもったいないです。

ホンダは目標の販売台数も発表していませんが、来月か再来月には自動車販売協会連合会(自販連)や全国軽自動車協会連合会(軽自協)が統計を発表するので、状況はすぐわかると思います。期待したいと思います。

インドの小型商用EVがいい感じ

ところで海の向こうでは、10月3日にインドの自動車大手マヒンドラ&マヒンドラ(M&M)の子会社で、小型商用車メーカーのマヒンドラ・ラストマイル・モビリティーが、小型商用EV『ZEO』を発売したというニュースがありました。ZEOは「Zero Emission Option」の略で、環境に対するEVの利点を表現しているそうです。

日本での発売予定はないのですが、これがまた、いい感じのコスパになっているのでちょっと紹介したいと思います。

【マヒンドラ『ZEO』価格】
V1 DV(デリバリーバン) バッテリー:18.4kWh 価格:78.2万ルピー(約138万円)
V2 DV バッテリー:21.3kWh 価格:79.9万ルピー(約141万円)
V1 FSD(トラック) バッテリー:18.4kWh 価格75.2万ルピー(約133万円)
V2 FSD バッテリー:21.3kWh 価格76.9万ルピー(約136万円)

航続距離は、マヒンドラの自社測定ですが「リアルワールド」として小さいバッテリーで135km以上、大きいバッテリーで150km以上と公表しています。

インドの交通状況は地域によっても違いがあるものの、車線に関係なく走る、信号グランプリのような走り方も多い、道がデコボコで穴があいているのも珍しくない等々、かなり特殊です。それでも、公表電費でほぼ7km/kWhなので、いい線いってるかもしれません。

コスパ、サイズ感が日本にも合いそう

注目は、価格とサイズです。安ければいいわけではありませんが、とりあえず車両価格が140万円程度なのは魅力的です。

価格を抑えることができたのは、バッテリーがLFPになっているのも一因だと思います。

仕様では、バッテリー電圧は300V以上なので急速充電への対応性能もそこそこあると思われます。CCS2規格対応ですが、受け入れ出力性能は表記がありません。

車体のサイズは全長3898mm、全幅1501mmなので、日本の軽自動車と同じくらいです。

インドは今でも3輪モビリティーが多いし、都市部でも狭い道が多いのでこのくらいのサイズがちょうどいいのでしょう。マルチスズキの車が売れていることを考えても、小さな車が売れ筋なのは明らかです。

道路事情に合った車がきちんと売れている市場には合理性があって、なんとなく、ゼロを発見した数学王国のインドっぽいなあと思うのです。

とは言え、インド人にとって、やっぱりEVは高価な車です。ZEOと同じ車格のディーゼルエンジンの小型トラックは20万ルピー程度なので、EVの価格は3倍以上。おいそれと買えるものではなさそうです。

でも日本市場では魅力的です。安全対策など規制の問題が大きいので日本市場に入れるのは容易ではありませんが、もし入ってきたら小型商用EV市場の活性化につながるかもしれません。

軽商用EVを比べてみる

マヒンドラZEOとホンダN-VAN e:、三菱MINICAB EV比較表

ホンダ
N-VAN e: e: L4
三菱自動車
MINICAB EV
マヒンドラ
ZEO V1 DV
マヒンドラ
ZEO V2 DV
マヒンドラ
ZEO V1 FSD
マヒンドラ
ZEO V2 FSD
全長
全幅
全高
3395
1475
1960(mm)
3395
1475
1915(mm)
3898
1501
2640(mm)
3876
1525
1750(mm)
最低地上高165mm165mm180mm
ホイールベース2520mm2390mm2500mm
車両重量1130kg1130kg(2シーター1100kg)1720kg(GVW)1675kg(GVW)
最大積載量300kg(4人乗車時150kg)350kg(4人乗車時200kg)665kg650kg765kg
最小回転半径4.6m4.3m4.3m
定員4人2人/4人2人
駆動FWDRWD
最高出力47kW31kW30kW
最大トルク162Nm195Nm114Nm
一充電航続距離245km(WLTC)180km(WLTC)135km(自社測定)150km(自社測定)145km(自社測定)160km(自社測定)
駆動バッテリー
種類リチウムイオンバッテリー(NMC)リチウムイオンバッテリーリチウムイオンバッテリー(LFP)
総電力量29.6kWh20kWh18.4kWh21.3kWh18.4kWh21.3kWh
V2X対応対応
車両価格(税込み)280万9400円〜(急速充電対応)243万1000円〜(2シーター)78万2000ルピー79万9000ルピー75万2000ルピー76万9000ルピー
269万9400円〜(普通充電)248万6000円〜(4シーター)約138万3000円約141万3000円約133万円約136万円
※マヒンドラはインド仕様(1ルピー=1.77円)

ということで、表のように、インドのZEOと、日本発の軽商用EV、ホンダN-VAN e:、三菱自動車MINICAB EVを並べてみました。

安全装備含めて違いは大きいので単純比較はできませんが、無理やり比べてみます。

バッテリー容量はホンダN-VAN e:がもっとも大きいですが、その分、価格も高いです。とはいえ、バッテリー容量あたりの車両価格では、N-VAN e:の2人乗りは1kWhあたり約9万2000円、MINICAB EVの2人乗りは12万1500円で、ホンダに軍配が上がります。

一方、マヒンドラのZEO(デリバリーバン)は容量18.4kWhが約7万5000円/kWh、容量21.3kWhなら約6万6000円/kWhで、突出して安くなっています。ZEOだけLFPなのも大きく影響していると思います。

最高出力はN-VAN e:が47kWでトップ。MINICAB EVが31kW、ZEOが30kWでほぼ同じです。

最大積載量はN-VAN e:が4人乗車時で300kg、MINICAB EVが350kgです。50kgの差はバッテリー搭載量の違いによるものと思われます。

なお350kgは、法律で定められた、2人乗車時の軽商用車の積載上限です。4人乗車だと200〜250kgです。乗用車なら最大165kgになります。

ZEOの最大積載量は、デリバリーバンの小容量バッテリーが665kg、大容量バッテリーで650kgにもなります。トラックなら最大765kgまで積めます。日本よりずっと多く積めるのは規格の違いでしょう。

こうしてみると、コスパでは ZEO > N-VAN e: > MINICAB EV の順番になりそうです。無理やりですが。

この他にも軽商用EVは、スタートアップのHW ELECTRO(車種ブランドはELEMO)やASFがそれぞれ販売をしています。また日産自動車は、三菱MINICAB EVのOEM供給で「クリッパーEV」を販売しています。

エレモの『ELEMO-K』はピックアップタイプが267万3000円、ボックスタイプが325万6000円ですが、バッテリー容量は13kWhと小さめです。補助金は、今年度から減額されてしまい自家用のCEV補助金が15万円になっています。ASF『ASF2.0』は価格が非公表なので、ちょっと比べることができません。

軽EV市場の活性化に期待したい!

こうした中、再び個人の感想ですが、現状の軽商用EV市場では、N-VAN e: の評判が広まっていくほど「一強」の様相になっていくのではと思っています。

9月27日に、軽乗用EVの兄弟車、日産『サクラ』と三菱自動車『ekクロスEV』の累計生産台数が10万台を突破したことが発表されましたが、2022年6月の発売から2年で販売台数はさすがに少し減ってきています。

それでも2024年9月は通称名別でサクラが月間15位と健闘していますが、強力な競争相手がいてこそ、市場は活性化します。N-VAN e:で軽EVが注目されれば、もうひと伸びあるかもしれません。

もうひとつ欲を言えば、軽自動車市場の巨人、スズキやダイハツにも期待したいところです。

ところがですよ。

2023年度に軽商用EVを発売する計画だったトヨタ、スズキ、ダイハツ、いすゞ自動車、日野自動車が参画したCommercial Japan Partnership Technologies(CJPT)は、検査不正問題でダイハツが脱退したほか、トヨタやスズキも認証不正で国交省の立ち入り検査を受けるなど大混乱です。

軽EVは発売延期で、時期は未定になりました。残念すぎます。2023年のジャパン・モビリティー・ショーではプロトタイプを展示していましたが、ベース車両を提供していたダイハツが抜けてしまったのではどうにもなりません。

そんな状態の軽EV市場なので、よけいにN-VAN e:への期待が大きくなってしまいます。直近の軽EV市場の進展はホンダの双肩にかかっていると言っても過言ではありません。

というわけでEVsmartブログとしては今後も、N-VAN e:に注目していきたいと思うのであります。

文/木野 龍逸

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 閲覧数稼ぎ目的のタイトルは直ちにお止めください。世の中のためにならない不燃ごみです。
    軽トラEVでは無いですし、まるでホンダがインドで軽トラEVを販売しているとの誤解を与える表現です。

    1. ネット警察 さま、コメントありがとうございます。

      タイトルを「軽トラ級」としました。ホンダが販売? といったことは記事を読んでいただければと思います。

      今後ともご愛読ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

執筆した記事