HW ELECTRO がお披露目〜初のオリジナル開発となる軽商用EV「PUZZLE」の実力やいかに

商用BEVの企画開発や販売を手がける日本のベンチャー企業「HW ELECTRO」が、ラインナップ第四弾となる『PUZZLE』をJAPAN MOBILITY SHOW 2023でお披露目しました。設立当初から同社の取材を続ける中国車研究家、加藤ヒロト氏のレポートです。

HW ELECTRO がお披露目〜初のオリジナル開発となる軽商用EV「PUZZLE」の実力やいかに

※冒頭写真はJMSのプレスブリーフィングで登壇した蕭社長(左)とデザイナーの石丸氏(右)。

EVベンチャー企業がモビリティショーに初出展

4年振りに開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」は11日間の会期で約111万2000人の来場者を集めて盛り上がりました。

今年のJAPAN MOBILITY SHOWはこれまでの東京モーターショーと趣を変え、EV関連のスタートアップ企業や、自動車に限らない幅広いモビリティ関連企業の初出展が目立ちました。そしてHW ELECTRO (以下、HWE)も、初出展した企業のひとつです。

HWEは2019年5月に設立され、臨海副都心にあるオフィスビル「the SOHO」に本社を置く日本企業です。現在のラインナップは小型商用車の『ELEMO』、それをベースとする軽自動車の『ELEMO-K』、そしてより大きいパネルバンの『ELEMO-L』の3車種です。また、全国にカー用品店「オートバックス」を展開する「オートバックスセブン」などとの資本提携も結び、万全のアフターサポート体制を構築しています。

HWEが今まで販売してきたモデルは、どれも既存の他メーカーが設計・製造し、同社が日本向けに改良したものでした。『ELEMO』『ELEMO-K』はアメリカに本拠地を置く自動車メーカー「容大智造(CENNTRO=セントロ)」のモデル、そして『ELEMO-L』も中国メーカーの商用BEVをベースとしています。以前からHWEの蕭 偉城 (ショウ・ウェイチェン)社長は「やがては独自開発車種のリリース」を目標として掲げていましたが、このたび、それが現実となりました。

商用と呼ぶにはキュートすぎるデザインと機能が魅力的

コンセプトカーとしてお披露目された『PUZZLE(パズル)』は全長3395 mm x 全幅1475 mm x 全高1920 mm、ホイールベースが2480 mmと軽自動車の規格に収まる設計です。ホイールサイズは15インチ、最大積載量は350kgです。デザインや設計は完全にHWEのオリジナル。製造は中国の提携工場で行う計画です。

特長的なのはデザインだけではありません。軽自動車規格の小さなサイズに、これまでのクルマとは一線を画す、社会のための各種機能を装備しています。災害時に使えるV2L用のAC 100 Vコンセントも車体の両側に搭載しており、ファーストエイドキットや誰もが利用できるWi-Fiホットスポットなど、ありそうでなかった斬新な装備を搭載しています。

左側にはファーストエイドキットとコンセント、USBポートを装備。
右側の充電口の下にもコンセント!

なお、これらの機能はHWE独自のアプリやプラットフォームサービスとも連携しながら、さらに進化させていくとしています。

なんといっても、エクステリアのデザインがユニークです。商用車らしく角ばった見た目をしていますが、そのシルバーの外装色に大きな丸目のヘッドライトは近未来的な雰囲気を漂わせており、これまでにない商用バンが具現化されています。このヘッドライトはこれまでの ELEMOシリーズでも見られたデザイン要素であり、初の独自車種であってもこの点はしっかり受け継がれています。

サイドシルエットは長方形の一辺を切り落としたかのようなデザインで、丸目ライトが位置するボンネット部のラインとAピラーが一直線を描くことにより、洗練されつつも可愛らしいフロントマスクとなっています。また、ボディ前端には普通充電と急速充電に対応した充電口(ACコンセントも)を右側に、そしてエマージェンシーキットとACコンセント&USBポートを左側に搭載しています。

エクステリアパネルはシンプルかつ直線的で、複雑なボディラインを持ちません。ボディのどこかをぶつけたとしても、この設計により修理や交換の費用が安く抑えられることを狙っているようです。両側のドアは観音開きとなっていますが、量産モデルでは後部ドアをスライドドアにすることも検討されているとのこと。個人的には購入する人の用途に合わせて観音開きかスライドドアを選べたり、後から細かな改修で変更できたりすると面白いのではないかと感じました。

ピンボードのようにアクセサリーが着脱自在

さらに驚くべき点はインテリアの設計にあります。エクステリアと同じく直線を基調としたデザインになっていますが、ダッシュボード部分はUSBポートやAC 100 Vコンセント、ハンドル、そしてメーター以外、ユーザーの思うままにさまざまな収納アクセサリーなどを配置できるようになっています。

これはドアの内装やダッシュボード直下のパネルに穴を開けることによって実現されており、まるでピンボードのようにカップホルダーやセンターディスプレイ、フック、書類入れなどを自由自在に組み換えられるアイデアです。

もちろん、「運ぶクルマ」「小型商用EV」としての利便性も最大限に考えられています。座席は前一列(乗車定員2名)にとどめ、そこから後ろはすべてが荷室というボディ設計です。荷室部の内装パネルは極力凹凸を排除することで、隅々までデッドスペースがないように段ボール箱などの荷物をきっちり積み込めるような設計になっています。

リアの開口部にも要注目です。リアゲートを開けた際の最大の高さはパズルの全高(1920mm)とほぼ同じ高さになります。つまりパズルのルーフとリアゲートが水平になる形で開くので身長187 cmの筆者でもゲートの下にまっすぐ立つことができました。これはかなり感動しました。この十分な高さのリアゲートによって平均的な日本人以上の体格でも腰に負担をかけることなく、伸び伸びとした自然な姿勢で開口部での荷物の積み下ろしが可能となります。

PUZZLEは量産化に向けて動いているとのことですが、前述のスライドドア以外にも、フロントガラスの形状が強度や衝突時の歩行者保護の関係で変更になる可能性があるとのこと。搭載するバッテリー容量などの詳細も未発表ですが、車両価格は「1万円/航続距離1kmを目指している」(蕭社長)とのこと。実現すればとても魅力的な商用軽EVとなります。

2024年はホンダや、トヨタ、ダイハツ、スズキなどの大手メーカーからも商用軽規格BEVがリリースされる予定なので、ラストワンマイル領域での電動化が大きく進むと期待されます。

さらに、HWEの蕭社長と、デザインを担当したクリエイティブディレクターの石丸竜平氏にインタビューを行うことができました。お二人の熱い思いは【後編】記事でお伝えします。

取材・文/加藤 ヒロト

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この記事の著者


					加藤 博人

加藤 博人

下関生まれ、横浜在住。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶ傍ら、さまざまな自動車メディアにて主に中国の自動車事情関連を執筆している。くるまのニュースでは中国車研究家として記事執筆の他に、英文記事への翻訳も担当(https://kuruma-news.jp/en/)。FRIDAY誌では時々、カメラマンとしても活動している。ミニカー研究家としてのメディア出演も多数。小6の時、番組史上初の小学生ゲストとして「マツコの知らない世界」に出演。愛車はトヨタ カレンとホンダ モトコンポ。

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