「Hyundai Brand Day」新規導入のEVやユーザーにうれしいサービスを発表

世界で高く評価されている電気自動車『IONIQ 5』を携えて日本乗用車試乗復活を果たしてから1年。ヒョンデモビリティジャパンが「Hyundai Brand Day」を開催。IONIQ 5 のアップデートモデルや限定車、さらにもうすぐ日本に導入される『KONA Electric』をお披露目するとともに『IONIQ 5 N』の日本導入、ユーザーにうれしいサービスプログラムを発表しました。

「Hyundai Brand Day」新規導入のEVやユーザーにうれしいサービスを発表

強調されたのは「顧客との対話」と信頼の獲得

日本での IONIQ 5 発売から約1年、2013年5月16日(火)、Hyundai Mobility Japan(ヒョンデ)が1年間の成果と2023年度の戦略などを発表する「Hyundai Brand Day」を開催しました。

発表された内容は盛りだくさんで、全体を通じて協調されていたのが「カスタマーとのコミュニケーションを大切にしながら、日本市場での信頼感を育てていく」という姿勢でした。はたして何が発表されたのか、順にポイントを紹介します。

Hyundai Mobility Japan
株式会社の趙源祥(チョ・ウォンサン)社長

IONIQ 5 のアップデートモデルと限定車を発表

イベント会場には3台のEVが置かれていました。最初にアンヴェールされたのは、100台限定で用意される『IONIQ 5 Lounge AWD Limited Edition』です。

IONIQ 5 の旗艦グレードである Lounge AWD をベースに、デジタルサイドミラーを採用。エクステリアカラーには「ルーシッドブルーパール」(20台)と「アトラスホワイトマット」(80台)、インテリアも「ダークティール」と名付けられた限定車専用色となっています。

さらに、会場での展示はなかったものの、IONIQ 5 全体もアップデート。車載カーナビで急速充電スポットを目的地に設定すると、到着時までにバッテリー温度を適切にコントロールしてくれる「バッテリー・プリコンディショニング機能」と、日本の高速道路SAPAなどにも徐々に設置が進んでいる最大出力150kWの急速充電器などで従来より高出力で充電できる「ブースト・チャージングプログラム」が採用されました。また、今までは2WDしか設定がなかった「Voyage」に2モーターのAWDグレードを追加。エクステリアカラーには、Limited Edition にも設定されたアトラスホワイトマットが追加されます。

バッテリー・プリコンディショニング機能やブースト・チャージングプログラムは、本来は350kWクラスにも対応可能なIONIQ 5の急速充電性能を日本でも活用したいというオーナーの要望に応えたアップデートといえるでしょう。

ブースト・チャージングプログラムを少し解説しておきます。急速充電時の出力は車両からの要求で制御されます。今まで、日本仕様の IONIQ 5 は90kW器で「405V×200A=81kW」で、ほぼ30分間フル出力で充電することができました。これだけでも日本で市販されているEVの中ではトップクラスのチャデモ急速充電性能だったのですが、100kWを超えるような高出力器が増えてきたら、さらにパワフルに活用したいのがユーザーの思いです。

ブースト・チャージングプログラムでは、8分間だけ最大電流を250Aに増やし「405V×250A=約101kW」で急速充電を行うことが可能になります。30分の急速充電で、従来は「81×0.5=40.5kWh」だったのが、8分間101kWに出力がアップすることで、約43.2kWhの電力を補給できるようになるということです。わずか3kWh弱ではありますが、ヒョンデからユーザーへの思いが詰まったプレゼントと評価しておきましょう。

ちなみに、バッテリー・プリコンディショニング機能とブースト・チャージングプログラムは、ハードウェアの追加はなく、ソフトウェアのアップデートだけで実現できたとのこと。従来モデルのオーナーが希望すればアップデートできるのかどうか質問しましたが、「現在、従来車両で問題がないかなどを検証中」ということでした。納車済み車両もアップデート可能になるといいですね。

また、最近増えている150kW器の最大電流はおおむね350A。いっそのこと350Aのブーストにはできなかったのかを確認したところ、250Aなら問題ないことを確認しているが、300Aを超えるような大電流になると発熱などの問題が生じるリスクが高まるために見送ったということでした。

コナ エレクトリックとIONIQ 5 N を日本に導入

続いて会場でアンヴェールされたのは、すでに日本での発売が発表されている『KONA Electric(コナ エレクトリック)』です(関連記事)。今、国内でテストを行っているという、カモフラージュされたプロトタイプ車がお披露目されました。インテリアまでしっかりとカモフラージュされていて、車内に乗り込んだりすることはできないのが少し残念。

価格など詳細についてもまだ発表はなかったものの、日本発売の時期は「秋ごろにはデリバリー開始」ということでした。個人的に、BYD ATTO3(58kWhで440万円)を超えるような「うれしい価格」の設定を期待しています。

また、実車のお披露目はなかったものの、IONIQ の最強モデルとして夏頃のデビューが予定されている『IONIQ 5 N』についても、来年の春頃をメドに日本でも発売することが発表されました。

IONIQ 5 と燃料電池車NEXOの2車種で始まったヒョンデの日本市場復活劇。今後はさらに車種のバリエーションが広がります。

「Hyundai Assurance Program」は既存オーナーにも提供

さらに、3年間の車両点検などが無償になる「Hyundai Assurance Program(ヒョンデ・アシュアランス・プログラム)」と名付けた新サービスの提供開始が発表されました。このプログラムは、IONIQ 5 への新車付帯サービスとして、今後納車される車両に加え、2022年5月の販売開始以降、すべての IONIQ 5(既販車はヘルスケアのみ)に無償で提供されます。

具体的な詳細は、ヒョンデ公式サイトをご確認いただくとして、ポイントを箇条書きしておきましょう。

【ヘルスケア】
●新車登録後3年間の法定点検を無償提供。
●3年目車検時の車検基本料金、完成検査費用、継続登録費用が無料。
●3年目車検時にバッテリークーラントを無償交換。
【スタイルケア】
●外装部品の修理サービス(1年ごとに1回、1部位のみ最大10万円)。

ディーラー網を展開しないビジネスモデルを採っているため、アフターサービスへの不安を指摘する声がある IONIQ 5 でしたが、アシュアランス・プログラムのスタートはそんな不安を補って余りあるメリットではないかと感じます。

まさに「ユーザー本位」を徹底した意欲的な発表でした。今後のヒョンデに期待しましょう。YouTubeのEVsmartチャンネルでは、テスカスさんのレポート動画も公開されています。

IONIQ 5のアップデートについて話を聞いてきた【Hyundai Brand Day】

そうだ、会場でアンヴェールされた3台目のEVは、4月にニューヨーク国際オートショーでワールド・カー・アワードを受賞するなど、欧米で高く評価されている『IONIQ 6』でした。こちらは日本導入の予定はなし。この車両は、これからヒョンデが全国で展開するプロモーションなどで活用されるとのことでした。

【追記】
Hyundai Assurance Program は、点検無料などの「ヘルスケア」と、外装部品修理サービスの「スタイルケア」があり、このうち、既存オーナーに提供されるのは「ヘルスケア」だけということです。プレスリリースなどには「一部対象外の車両がございます。また、ご注文時期により一部内容が異なります」と注記があったのですが、突っ込んで確認していませんでした。失礼しました。
この点、IONIQ 5オーナーである杉本容一さん(以前ご紹介した記事)からメールで教えていただいて気付いた次第。杉本さん、ありがとうございました。

取材・文/寄本 好則

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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