ヒョンデの電気自動車「新型 KONA Electric」を先取りチェック/日本でも年内に発売か!

ヒョンデの電気自動車『KONA Electric』がフルモデルチェンジ。3月7日午前8時01分(日本時間)からのデジタルワールドプレミアに先駆けて、ドイツのベルリンで開催されたプレス向けイベントに参加してきました。今年中には日本でも発売される計画で、大衆的なEVの車種拡大に期待が広がるニュースです。

ヒョンデの電気自動車「新型 KONA Electric」を先取りチェック/日本でも発売か!

BセグメントSUVのBEVがついに日本にも登場か!

昨年、電気自動車『IONIQ 5』とFCEVの『NEXO』という2車種のZEV(ゼロエミッションビークル)で日本市場再進出を果たしたヒョンデが、『KONA』のフルモデルチェンジと、EVモデルである新型『KONA Electric』を発表。今日、3月7日午前8時01分(日本時間)からデジタルワールドプレミアを行いました。

The all-new KONA | Digital World Premiere

さらに、2月末にドイツのベルリンで all new KONA の実車に触れて撮影できる「Exclusive Product Preview」というメディア向けイベントが開催されて、EVsmartも参加してきました。日本からは自動車メディアの方数人と、ウェブメディアとしてEVsmartとユーチューバーのEVネイティブさんだけが参加できた貴重なチャンスに恵まれて、先取りチェックの速報です。

まず最初に日本のユーザーにとって大切なポイントに言及しておきましょう。Hyundai Mobility Japan では、まだ正式に発表していませんが、この新型KONAのEVモデルである KONA Electric を、今年中をメドに日本でも発売する計画であるということでした。日本に導入するグレードや価格もまだ未定ではあるものの、IONIQ 5の一択だったヒョンデの電気自動車、さらに、600〜700万円オーバーとか1000万円級の高級車ばかりが並ぶ日本のEVマーケットに、より現実的な価格の新型EVが登場することになります。

【追記/2023年3月7日】
3月7日朝のデジタルワールドプレミアを受けて、Hyundai Mobility Japan がプレスリリースを発行。KONA Electric は日本市場にも年内導入予定のモデルであることを正式に発表しました。また、システム電圧(急速充電対応電圧)は400Vと記載されています。高電圧システムのIONIQ 5では、V2H接続時に変圧のロスが大きいことが課題になっていましたが、KONA Electric ではリーフなどと同程度の効率でV2Hが運用できるのではないか(実車仕様が決まってからの要確認ですけど)と思われます。

まだ日本導入を正式発表していないいなかった新型 KONA Electric のイベントに日本のメディアを連れて行ってくれたのは、ようやく新車販売シェアが上昇の気配を見せ始めている日本の電気自動車マーケットに対する、ヒョンデからの「ちょっと待った!」なのだと感じます。実際に見て触れた新型 KONA Electric は、かなり魅力的な電気自動車でした。あわてて他社のEVを買わないで、もう少し待てば、ヒョンデのコンパクトで魅力的な新型EVが発売されますよ、ってことですね。

今回フルモデルチェンジとなった KONA は、Bセグメントの小型SUVで、2017年から韓国や欧米、中国などでEVモデルも発売されていました。累計の販売台数としては、KIAなどを含むヒョンデグループで最も売れているEVです。

ディメンションなどを、IONIQ 5やATTO3などと比較できる表にしてみました。

Hyundai KONA ElectricHyundai IONIQ 5Hyundai IONIQ 5BYD ATTO3PEUGEOT e-2008
Long RangeStanderd RangeベースモデルLounge AWD---GT
全長×全幅×全高(mm)4,355×1,825×1,5754,355×1,825×1,5754,635×1,890×1,6454,635×1,890×1,6454,450×1,875×1,6154,305×1,770×1,550
バッテリー容量65.4kWh48.8kWh58kWh72.6kWh58.56kWh50kWh
航続距離(WLTP)490km342km498km
(日本WLTC)
577km
(日本WLTC)
485km
(日本WLTC)
380km
(日本WLTC)
航続距離(EPA推計値)約437km約305km約398km約462km約388km約304km
最高出力160kW114.6kW125kW225kW150kW100kW
最大トルク255Nm255Nm350Nm605Nm310Nm260Nm
車両価格(税込)未発表未発表479万円〜589万円〜440万円〜565万4000円〜

Bセグメントの電気SUVとしては、日本でも発売されたBYDのATTO3や、プジョーの e-2008 などステランティスグループの50kWh車種が競合ソーンになると思われます。日本での取り回しの良さを推し量る目安として気になる全幅が、KONA は1,825mmに対して、ATTO3は1,875mmと日本の立体駐車場の多くで規制されている1,850mmを超えて少し大きく、KONA のほうがコンパクト。e-2008 は全幅が1,770mm、全高も1,550mmと日本的立体駐車場サイズに収まっていますが、価格が500万円台後半と、IONIQ 5のAWD並みになっています。

日本発売の価格次第ではありますが、「軽EVでは役不足だけど、便利に使えるEVが欲しい」というユーザーに広い支持を得る可能性が高いサイズ感ではないかと思えます。

EV専用プラットフォームではないものの作りは上出来

この新型KONAには、エンジン車やハイブリッド車も用意されます。つまり、IONIQ 5のようなEV専用プラットフォームではありません。インテリアのボタン配置などもレガシーなエンジン車ベースであるようにも感じて、正直、少し新鮮味に欠けるのかななんていう第一印象を抱きました。でも、じっくり実車に触れてみると、なかなかどうして、個性的で魅力ある電気自動車に仕上がっていると感じます。

EV専用プラットフォームではないと言いながら、ボンネットを開けるとちゃんとフランクが装備されていましたし、全体の質感や後席の居住性なども及第点。使いやすい電気SUVにまとまっている印象です。

回生ブレーキの強さをパドルスイッチで切り替えられる機能(これは先代KONAにも装備されてたようですが)や、運転席と助手席のシートがボタンひとつで下がって倒れる「リラクゼーションコンフォートシート」など、IONIQ 5でも好評のEVらしい機能を満載。車両のソフトウェアを無線でアップデートするOTA(テスラのように車両のコントロールに関するアップデートも可能なのか対応範囲はまだわからないところもありますけど)にも対応しているということでした。

考えてみれば、世界で発売されている電気自動車でフルモデルチェンジするのは日産リーフ以来のことだと思います。ヒョンデが取り組んできたEVづくりのノウハウを活かして、格段の進化を遂げたのが、2代目 KONA Electric ということになるのでしょう。

実際に運転してみないとなんとも言えないところはありますが、IONIQ 5と同じ12.3インチ液晶モニターの使い勝手なども良さそうでした。

しっかりV2Lに対応して色バリ豊富なのが強み

今回、ベルリンの会場でもアピールされていたのが、普通充電口から電気を取り出すV2Lの機能です。IONIQ5 でキャンプ屋外クッキングのイベントに参加したこともありますが、ほんとに便利です。後席には室内V2L、ACのコンセントもちゃんと装備されていました。

また、IONIQ 5のボディカラーは割とシックでバリエーションも少ないですが、新型 KONA Electric にはブルーやレッドといったビビッドな色を含めて11色のカラーバリエーションが用意されるようです。日本でどのくらいの色バリが用意されるのかも未知ですけど、ボディカラーという点でもEVの選択肢が広がりそうです。

ちなみに急速充電性能は、韓国や欧州のコンボ規格(CCS)350kW器で、10〜80%まで41分(ロングレンジ)と説明されていました。平均しておおむね70kWくらいの出力を受けられる概算になるので、最大90kW対応くらいと推定できそうです。日本の高速道路にも最大150kW器や最大90kWのマルチプラグ器が増え始めた状況の中、チャデモ規格でもIONIQ 5と同じように「90kW器のポテンシャルをしっかりと活用できる」高い充電性能を発揮してくれる、のではないかと思います。

最後に、やっぱり気になるのが日本での価格です。

車格としては IONIQ 5の弟分的な存在になるでしょう。IONIQ 5のベースグレードがバッテリー容量58kWhで479万円〜ですし、65.4kWhのロングレンジで450万円程度以下、48.3kWのスタンダードレンジが400万円程度以下といった価格で登場してくれたら、日本市場ではまだ数少ない大衆的なEVとして、かなり売れるのではないかと思います。

私自身、中古のリーフを買ってすでに4年以上が過ぎました。今年の12月にはZESP2も終わります。新型 KONA Electric の日本発売には、個人的にも期待しています。

あと、いつもはテスカスさんが渾身取材の力作を紹介してくれている YouTube の EVsmart チャンネルで、今回は私が、ベルリン取材の様子を紹介する動画をアップしました。ぜひ、こちらもご覧いただければ!

ヒョンデ 新型 KONA Electric をベルリンで先取りチェック

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)4件

  1. >後席には室内V2L。100Vコンセントもちゃんと装備されていました。
    欧州向けだと220V 240Vですね?

  2. チャデモV2HとAWDを条件に手が届く価格のBEVを待っています。BEVとしての性能ではテスラがダントツですが、V2H非対応なので手が出せません。現状はIONIQ 5が有力ですが、他社比で割安とはいえ高額で、ATTO 3にはAWDがないので傍観状態です。

    今回紹介いただいた新型 KONA Electricでは、Long Rangeは出力が異なるのでAWDと推察しますが、そうであれば、具体的に購入を考えられるモデルが登場しそうです。

    また、駆動用バッテリーの総電圧がIONIQ 5(523Vまたは653V)と同様であれば、急速充電器の最高出力を引き出してクルマ側で昇圧して充電することから、高い急速充電(受電)性能が期待でき、それも他社にはない有力なポイントになります。

    本音をいえば、完全に出遅れて(または停滞して)しまった日本メーカーを本気にさせる起爆剤になってほしいところです(具体的にいえば、次期リーフの大化けを期待)。

    1. totton さま、コメントありがとうございます。

      >Long Rangeは出力が異なるのでAWDと推察

      説明不足で失礼しました。ロングレンジ、スタンダードレンジともに2WD(前輪駆動)という発表です。
      また、先ほど記事に追記しましたが、システム電圧は400Vのようです。V2Hには有利かと思います。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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