ヒョンデの高性能EV『IONIQ 5 N』サーキット試乗で確認した「テスラよりスゴい」ポイント

ヒョンデが開催した「IONIQ 5 N Media Track Day」に参加して高性能EV『IONIQ 5 N』に試乗。サーキット&公道を走って感じた、テスラのEVとは異なる「高性能」へのアプローチ、また通常モデルとの違いや魅力についてレポートします。

ヒョンデの高性能EV『IONIQ 5 N』サーキット試乗で確認した「テスラよりスゴい」ポイント

4月25日から「First Edition」予約受付開始

2024年4月中旬、ヒョンデ・モビリティ・ジャパンが袖ケ浦フォレストレースウェイで開催した「IONIQ 5 N Media Track Day(発表試乗会)」に参加。ヒョンデがグローバルで注力する「Nブランド」の日本初投入モデルとなる高性能EV『IONIQ 5 N』に試乗してきました。

ことさらレースの実績があるわけでもない私が走行性能を語るのも僭越なので、試乗で気付いたテスラのEVとは異なる「高性能」へのアプローチや、IONIQ 5通常モデルとの違いや魅力のポイントを紹介したいと思います。

Nブランドマネージメント室常務(室長)のパク・ジューン氏。

「Nブランド」の「N」は開発テストの舞台であるニュルブルクリンク(ドイツ)に由来。WRCやニュルブルクリンク24時間耐久レースなどで勝利の実績を積み重ねつつ、モータースポーツで磨き上げた技術や性能を市販車にフィードバックして「ドライビングの楽しさ」を追求したモデルを展開しています。昨年1月、東京オートサロン2024で日本初公開された『IONIQ 5 N』は、Nブランドとして日本に初めて投入される高性能EVです。

メディアトラックデイでは、『IONIQ 5 N』を2024年6月5日から販売開始すること。発売に先駆けて、4月25日(木)から5月30日(木)の期間限定で、さまざまな特典を得られる「First Edition」(50台限定)の購入予約受付を開始することが発表されました。

価格はまだ確定していないものの「900万円前後」と明示。日産アリアの「B9 e-4ORCE」が約944万円なので、まさにガチンコ勝負という感じでしょうか。First Editionではないモデルの価格は発表されませんでしたが、少しお手頃になるとすると、テスラ モデルYパフォーマンスの約698万円(ホワイト以外のボディカラーやエンハンストオートパイロットを選ぶと700万円台後半)とどのくらいの違いになるかも気になります。

First Editionに用意される特典は、専用フロアマットやエンブレム、センターホイールキャップなどのスペシャルパーツ。さらに、グローバルなモータースポーツイベントへの招待やNブランドグッズ、国内レーストラックでのハンドオーバー(納車)セレモニーなどが予定されています。「海外でのレースイベントに招待」ってあたりはかなりゴージャス。予算に余裕があって購入を検討している方にとっては、むしろFirst Editionがお買い得! かも知れません。

参考までに、通常モデルのIONIQ 5 Lounge AWD、日産アリア NISMO B9 e-4ORCE、テスラ モデルY パフォーマンスとの主要スペック比較を表にしておきます。

ヒョンデ
IONIQ 5 N
First Edition
ヒョンデ
IONIQ 5
Lounge AWD
日産
アリア NISMO
B9 e-4ORCE
テスラ
モデルY
パフォーマンス
バッテリー総電力量84.0kWh72.6kWh91kWh75kWh(推定)
一充電走行距離
(WLTC)
未発表577km520km
(参考値)
595km
【最高出力】
フロント
リア
175kW
303kW
70kW
155kW
160kW
160kW
158kW
235kW
【最大トルク】
フロント
リア
370Nm
400Nm
255Nm
350Nm
300Nm
300Nm
240Nm
450Nm
全長
全幅
全高
(mm)
4715
1940
1625
4635
1890
1645
4650
1850
1660
4751
1978
1624
ホイールベース
(mm)
3000300027752890
車両価格900万円前後599万円〜約944万円〜約698万円〜

まだ未発表の部分も多いのであくまでも概要ですが。いずれ劣らぬハイパフォーマンス。違いはサーキットで確かめるしかないレベルです。IONIQ 5 Nについては一充電走行距離や電費性能はまだ発表されなかったものの、なんといっても84kWhの大容量バッテリーを搭載しているので、普通に使っている分にはバッテリー残量のことなど意識することなく、気持ちよくアクセルを踏めるはずです。

EVを操る醍醐味を満喫できる「Nモード」

走行性能などのインプレッションは他の著者陣にも寄稿をお願い済みなので、私のレポートでは印象的だったポイントを簡潔に紹介します。

まず、通常モデルのIONIQ 5と異なる重要なポイントが、前席ウォークスルーではなく、横Gに耐えやすくするためにニーホールドパッド付きのセンターコンソールが装備されていることです。シートも電動ではないので、ヒョンデ名物の「リラクゼーションコンフォートシート」機能はありません。重量増につながるガラス貼りのビジョンルーフもなし。もちろん基本的なサイズなどは変わらないので、「快適な居住空間を」というIONIQ 5の特長は維持しつつ、あくまでも「走り」を楽しむための作りになっている印象です。

さらに、パワートレインを強化して占有スペースが増えたため、フランクがなくなっています。

「N」というアイデンティティを象徴しているのがN専用のレザーステアリングまわりです。センターステー右側の赤いボタンは「Nグリンブースト」ボタン。通常は前後で448kW(約609PS)のシステム最高出力が、10秒間478kW(約650PS)にアップします。

その下に「N」のマークがある丸いボタンを押すと、ワンタッチで「本気でサーキットを走る」ための「Nモード」に切り替えることが可能です。用意されている走行モードは、一般道走行を前提とした「ECO」「NORMAL」「SPORT」に加えて、この「Nモード」の4パターンということになります。

EVユーザー的に興味深かったのが、Nモードのメーターディスプレイにバッテリーや前後モーターの温度が表示されること。バッテリー温度はEVの走行や充電性能を左右する重要なファクターですが、従来の市販EVではOBDツールなどを利用しない限りドライバーが知り得ない情報でした。いわば、テスラ車よりスゴいポイントです。

バッテリーに高負荷がかかるサーキット走行を前提に、N専用のバッテリー冷却システムを開発&採用し、冷却効率を高めていることも説明されました。このあたり、早くからグローバルでEVモデルのKONAを発売し、IONIQ 5でさらにノウハウを積み上げてきたヒョンデならではの、EVへの深い理解を具現した装備や性能と評することができそうです。

エンジン音(仮想)が響くと、疲れてしまう……

Nモード走行時、通常は回生ブレーキの強度を切り替えるパドルスイッチが、8速のシフトチェンジスイッチになる「N e-Shift」も、必要なのか? なんて野暮な疑問は抜きにして、楽しかったです。

また「N Active Sound+」という機能があって、Nモード走行時、「Ignition/Evolution/Supersonic」という3種類から選択可能なサウンドが車内外に響きます。シフトダウン時にはブリッピング的な音が演出されていたりして、なかなか面白くはあったのですが……。

1時間ほどの公道試乗で、おもに「Ignition」の仮想エンジン音を聞きながら運転していたら、なんだか「やっぱり音があると疲れるな」と感じてしまいました。音があると、錯覚で微妙な振動まで感じる気がします。森の中の上り坂、音を消して走ってみたら、爽快で気持ちよかったです。

この日はチューンナップ車&プロドライバーによるドリフト走行のデモ&同乗体験も。

「IONIQ 5 N Track Day 特別先行試乗会」

さて、ヒョンデでは「IONIQ 5 N Track Day 特別先行試乗会」(案内ページ)を開催するとして、今、参加者を募集しています。関東と関西、それぞれでの開催となり、概要は以下の通りです。

【関東】
日程:2024年5月9日(木)~11日(土)
開催時間:(午前セッション)9:00-13:00 /(午後セッション)13:00-17:00
申込み受付期間:2024年4月8日(月)~25日(木)
当選者ご案内:2024年4月30日(火)
開催地:袖ヶ浦フォレストレースウェイ
住所:千葉県袖ケ浦市林妙法台348-1

【関西】
日程:2024年5月19日(日)~20日(月)
開催時間:(午前セッション)9:00-13:00 /(午後セッション)13:00-17:00
申込み受付期間:2024年4月8日(月)~5月6日(月)
当選者ご案内:2024年5月8日(水)
開催地:泉大津フェニックス多目的広場
住所:大阪府泉大津市夕凪町

きっと楽しいことは間違いなし。ただし「IONIQ 5 Nの購入検討が前提」で、Hyundaiサイトへの会員登録が必要です。購入を検討するぞって方は、ぜひ。

ちなみに、Media Track Dayの中でIONIQ 5 Nでパイクスピークヒルクライムに再挑戦することや、韓国でワンメイクレースシリーズを開催することなどが説明されました。

日本国内で開催されている数少ないEVレースである「全日本電気自動車グランプリシリーズ(ALL JAPAN EV-GP SERIES)」は、昨年まではモデル3、今シーズンはモデルSプラッドも参戦してテスラ車の独壇場的な様相なので、「IONIQ 5 Nで参戦は?」と尋ねてみたのですが。このシリーズは「メーカーが直接参戦するようなステージではない」ということで、当面、日本国内でレースを走る「N」の姿を見ることはできない感じでした。

早々にFirst EditionをGETしてEV-GPに参戦、テスラに挑んでやる! という方がいらしたら、観戦に駆け付けてレポートしたいと思います。

取材・文/寄本 好則

EVsmartのYouTube動画はこちら
IONIQ 5 N サーキット&公道初試乗!トラックで鍛えられたハイパフォーマンスEV

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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