加速の気持ちよさに痺れて初代リーフを購入
2022年9月11日、私のFacebookのタイムラインに、少し驚く投稿が流れてきました。電気自動車を通じて10年来の知人である杉本容一さんからの「新しい相棒を迎えることになりました」という知らせです。新しい相棒とは、ヒョンデ『IONIQ 5』。グレードはバッテリー容量72.6kWhの「Lounge AWD」で、ボディカラーは「グラビティゴールドマット」と、グレードもカラーも最上級のチョイスです。
杉本さんといえば、リーフオーナーのオフ会などに参加する皆さんならご存じであろうキーパーソン。ジェントルな出で立ちと優しい笑顔でリーフ仲間を繋ぐ存在(と私は感じています)であり、EVsmartブログでレポートした2019年の『日産リーフ オーナーズミーティング in 福島 2019』では幹事のお一人でもありました。さらに、日産自動車公式の電気自動車総合サイトの「日産リーフオーナーボイス」でも、杉本さんにとって2台目のEVとなるZE1、オーロラブルーの40kWhリーフとともにご家族で登場されています。
2012年1月(納車)、杉本さんが初めて購入した電気自動車は、バッテリー容量24kWhの初代日産リーフ(ZE0)でした。三菱i-MiEVや日産リーフが発売されて「電気自動車って面白そうだな」と感じ、リーフに試乗できるディーラーを探して試乗に出かけ「加速が気持ちいい!」と感動。念のため「レンタカーを2日間借りて、街乗りの使い勝手を確かめて、沼津までゴルフへ行ってみて、これなら使えるじゃないか」と購入を決断。EVオーナーとしての第一歩を踏み出しました。
杉本家のマイカーは奥さまの貴代美さんも運転するということなので、当時はまだ得体の知れないクルマだった電気自動車購入に反対しなかったのかと尋ねてみると「自分で運転してみて気持ちよかったから」と笑顔のお答え。当時、販売会社の充電施設が使い放題などメリットの大きかった「ZESP(日産ゼロ・エミッションサポートプログラム)があって経済的」というのも、電気自動車に買い替える後押しになったそうです。
その後、2018年2月にはバッテリー容量が40kWhに増えたZE1リーフへ乗り替え。初代リーフは約6年間で10万km以上を走り、バッテリー容量計が「8セグ」になっていたとのこと。ZE1になってからは、初代リーフでは70km未満で気にしていた充電の心配や手間が減り、一充電で250km以上走れる便利さを堪能しつつ、電気自動車の気持ちよさをますます楽しんできたのです。
(編集部注 ※リーフの「セグ欠け」については『自分に悲報! 中古リーフ「AZE0 30kWh」が4万2000kmでついに電池容量計のセグ欠け』という記事で解説しています)
ZE1の下取り価格が良かったので買い替えを決意
オーナー仲間にとっては「リーフ愛の宣教師」のような存在である杉本さんが、今回、買い替えを決めた理由とは何だったのでしょうか。ストレートに質問してみると「来年5年目車検なんですけど、今年のはじめ頃、ディーラーの担当者から、え、そんなに? と驚くほど条件のいい下取り価格が提示されたことでした」とのこと。
ZE1は5年間の残価設定型クレジットで、50数万円の下取り保証契約になっていたそうですが、なんと、その倍以上の下取り額が提示されたそうです。とはいえ、担当営業マンに勧められたアリアはまだディーラーに試乗車もない状態で決断には至らず、買い替え交渉はいったんストップしていました。
とはいえ、日本国内でも市販電気自動車の選択肢が激増した2022年。杉本さんはいろんな中古車買取業者などで自分のZE1にどのくらいの下取り価格が提示されるのかを調査しつつ、3台目の電気自動車への買い替え検討を進めていきます。
18車種に試乗して徹底的に比較検討
ev_miharuno(旧 leaf_miharuno)のハンドルネームで、『EV総合研究所』を名乗りつつTwitterやYouTubeでの情報発信も行っている杉本さん。買い替え時には奥さまへの説得材料にするのを兼ねて、候補車種を徹底的に比較検討したそうです。
今回、お話しを聞いた喫茶店でおもむろにバッグから取り出して、「これなんですけどね」と、おそらくはエクセルで作成した検討資料を見せてくれました。左側の3枚が今回の検討資料。右側が2017年(納車されたのは2018年ですが)に、初代リーフを買い替えるときに作成した検討資料です。
2017年に検討時の資料に挙げられているのは5車種だけ。この中から「新型リーフ G」を選んだわけです。対して、今回作成した資料は写真に写っている3枚のA4用紙表裏にぎっしり40車種(アリアやIONIQ 5 は各4車種などグレード違いを含む)が並んでいました。
さらに、ディーラーの試乗車はもちろん、イベントなどの機会を利用してできるだけ多くの車種を試乗することにチャレンジ。今年2月から6月ごろにかけて、全部で18車種のEVに試乗したそうです。もちろん、比較する全車種に試乗できたわけではないものの、「走行性能」「先進機能」「安全性能」「航続距離」など検討項目ごとに★5つを最高点とする評価を整理。下取り価格や補助金、残価設定ローン利用後の購入費用なども検証して、買い替え車種を絞り込んでいきました。
コンフォート性の高さと走りの良さがお気に入り
綿密な比較検討の結果、今回買い替えた ヒョンデの IONIQ 5 Lounge AWD の総合評価は40車種中唯一の「★5つ」。次点の「★4つ」は、AWDではない IONIQ 5 Loungeと、日産 アリアB6、アウディ Q4 40 e-tron advanced の3車種でした。
直接確認しなかったので勝手な推定ですけど、ZE1の下取りや補助金、残価設定などを勘案して、実質的な購入価格が300~400万円くらいの車種がターゲットになったということでしょう。共感できる評価だと感じます。
IONIQ 5 には、ヒョンデハウス原宿がオープンした今年2月に早速試乗。原宿から神宮外苑あたりの道を少し走っただけでも「なんてコンフォートなEVなんだ」と実感し、「しかも、コンフォートカーとスポーツカーの醍醐味を1台で楽しめる!」と好感触だったそうです。
一緒に選ぶ奥さまも「車幅が広くなるのが不安だったけど、実際に運転してみるとそんなに気にならなかった。デザインやインテリアの雰囲気も気に入りました」と高評価。その後、数か月にわたっていろんな新型EVに試乗して比較検討したものの IONIQ 5 を超える総合評価には届かず、また「このクルマは二人の評価が一致したんです」(杉本さん)と、最終的に購入する決断に至ったのでした。
今まで、雪道を頻繁に走るわけでもなく「AWDまでは不要かな」と思っていたそうですが、最初に試乗した IONIQ 5 がLounge AWDで、スポーツモードでの加速の気持ちよさに驚き、ワンペダルドライブ(IONIQ 5では「i-PEDAL」と呼んでいます)時にノーズダイブもなくスムーズに完全停止するなど、走行性能の高さと気持ちよさを実感して奮発しました。実際に納車されて八ヶ岳や箱根などを走ってみて、AWDならではの安定感のある走りにますます惚れ込んでいるところです。
停電時のV2Hパワーも強化。大好きなアイスを守り抜く!
杉本さんといえば「無類のアイス好き」というのは、SNSなどで繋がっているリーフオーナー仲間にはよく知られています。2019年、台風15号の被害を受けた千葉県内で大規模な停電が発生した時には、杉本さんのお宅も4日間でのべ45時間近い停電に見舞われました。その際、愛車のZE1リーフの12Vバッテリーに500WのDC-ACインバータを接続して冷蔵庫などに通電、大好きなアイスを守り抜くレポートをFacebookなどで発信していたことを、私もしっかり覚えています。
IONIQ 5 であれば、室内、室外のV2Lを完備。室内にAC100V1600Wのコンセントが装備されているだけでなく、普通充電口から室内コンセント同様にAC100V1600Wの電気を取り出すことができるアダプタも標準装備されています。つまり、リーフ用にせっかく購入したインバータもIONIQ 5ではお役御免。別売の機器などなくても手軽に冷蔵庫に電気を流せるようになったのです。
さらに、愛車のバッテリー容量は40kWhから72.6kWhへと大幅増強されたこともあり、リーフ時代から興味はありつつ導入はしていなかったV2H(EVの電気で自宅に給電)の導入も決断。まだ納期未定ながら、すでに注文済みということでした。
取材後、「停電になっても安心だから、改めて買い置きアイスを仕入れてきました」と、冷凍庫にアイスがいっぱい並んだ写真までメールしてくれて……。なんだか、こっちまで幸せな気持ちになってきます。
リーフオーナー繋がりからEVオーナーのネットワークへ
「24kWh/リーフ」→「40kWh/リーフ」→「72.6kWh/IONIQ 5」と乗り継いできた杉本さんのEV遍歴は、日本における市販EVが辿った進化の系譜とも読み解けます。今後はさらに、70kWhオーバーとはいわないまでも、40~50kWh程度のバッテリー容量で、庶民にも選びやすい車種が増えてくるはず。来年の発売が予告されているBYD『DOLPHIN』をターゲットとするような、コンパクトな大衆車と呼べるEVのラインナップが増えることにも期待しています。
「リーフ愛の宣教師」だった杉本さんは、「EV愛の宣教師」へと進化を遂げました。今後、日産が協力するようなオフィシャルなリーフオーナーズミーティングでは会うことができなくなるかも知れません。でも、長年のEV愛で培ってきた仲間との関係は、車種を乗り替えても変わることはないでしょう。
杉本さんはこれからも、EVライフを堪能する先駆者であり続け、「電気自動車の気持ちよさ」をより多くの人に伝える役割を果たしてくれるに違いない、と思っています。
杉本さん、これからもよろしくお願いします!
(取材・文/寄本 好則)
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筋金入りのリーフオーナーがサクラに乗り替え~亜由美さんの電気自動車ライフ(2022年9月20日)
hatusetudennさん
いつも、冷蔵庫に大好きなアイスがいっぱい入っているので、せっかく電気自動車を乗り換えるなら、V2H対応してくれている電気自動車がいいなと思いました。
テスラも、とっても魅力的なクルマで、特にモデルYの日本での発売開始時期と近いこともあり悩みました。
サクラの納期は、とても気になりますね。
8月に注文されて、来年の5月と言われてしまうと、今乗っていらっしゃるクルマの車検の時期とか、心配になりますね。
私も日産SAKURAを試乗しましたが、とても良いクルマで、魅力的なクルマだと思います。
国産メーカーには、ユーザーのためにも、納期頑張ってほしいですね。
IONIQ 5はいい車だと思いますが、ディーラーが近くにないとなにかあった時を考えると躊躇してしまいますね。俺のリーフ30kwhはまだ元気なのでもう少し様子見します!
しおしおさん
30kWhの日産リーフは、急速充電の入りも良いし、いいクルマですよね。
24kWhのリーフの乗っているときに試乗して、その進化に驚愕しました!
ディーラーが近くにないと、なにかあったときに、不安ですよね。
私も、気になっていろいろ調べてみたんですが、国産メーカーのディーラー網と比較すると弱いんですが、最近のクルマはそんなに壊れないし、もしもの時には、ちゃんと対応してくれそうだなと思い、その不安はクリアできました。
・整備拠点となる協力工場が、どんどん増えている
・ロードサイドアシスタンスがしっかりしている
・Mobile Service (出張整備サービス)で軽微な対応はしてもらえる
・電欠レスキューにも対応もちゃんと付いている
この辺りは、今後、さらに良くなっていくと思われますので、ときどき、ヒョンデのサイトのサービス欄を見てみるとよくなっていくのがわかるんじゃないかと思います。
30kWhリーフ、ぜひ、これからも大切に乗っていってください。
日産アリアを春に申し込み、先日ディーラーさんから半年後納車から部品不足のためさらに延期します。今のところ2年後には納車できると思いますと謝罪の電話が。キャンセルを促されてるのかとも思いましたが被害的に推測するのもつまらないのでそのままにして、その間に出てくる新型も探してみようと気持ちを切り替え。冷やかしでヒョンデに聞くと即納できるとディーラーさんからの連絡。悩む。半導体不足と聞いてますが後から申し込みしている割高限定車や円安日本より海外輸出を優先していると聞くと日産は罪な会社だ
日産アリアの納期は、長くなっていますね。
私も、日産アリアを考えていたのですが、だんだん納期が先になっていき、今年の7月末には、注文の受付を一旦停止することになってしまいましたね。
半導体不足もあるとは思いますが、それだけ、日産アリアが人気ってことでもあるんでしょうね。
私が、以前、リーフの40kWhに乗り換える時には、こんなに選択肢のない状態でしたが、今は、どんどん日本市場でも電気自動車が選べるようになりましたね。
これから先、さらに、新しい電気自動車も増えてくるでしょうから、いろいろ探してみるのも楽しいことと思います。
ぜひ、いろいろな電気自動車に試乗して、ご自分にあった電気自動車を選んでください。
ヒョンデは、即納できるモデルがあると言っていますので、チャンスかもしれませんね。
V2Hが必須ならテスラは除外ですね!
国産EVで一番気になるのは納期が異様に長いことです。8月にサクラを注文したところ納期は来年の5月だと言われました。その後、魅力的な輸入EVが次々と出てきて、車種によっては即納のものもあります。サクラを断ろうか迷っています。
このままでは輸入EVに市場を奪われてしまいそうです。国産メーカーの動きの遅さは経営陣に問題があるのでは?と心配しています。
充電車両の選択肢が増えたことで、何を重要視するかで選べるようになったことは朗報かと思います。
長距離走りたいから大きい駆動用バッテリーの車両を選ぶのもひとつの理由でしょうし、
小さい駆動用バッテリーで問題無い使用方法だから軽EVを選択することもあるかと思います。
そんな中で充電車両を楽しんでいることが文面から伝わってきました。
大きい車も小さい車もどちらが優位ということでなくそれぞれに長短がありますが、他方を貶めるような発言をしないよう気をつけたいと思います。
と、最近の充電スポットに出てくる悲しいコメントを見ながら考えています。
また、インバーターから電源供給についてはメーカーの推奨する使用方法ではないため自己責任で、といったところでしょうか…。
cakar1m さん
日本の試乗でも、充電車両が増えましたね。
選択肢が増えたことで、何を重視するかによって、選べるようになったのは、とても良いことと思います。
今回、日本カーオブザイヤーを日産 サクラ/三菱 eKクロス EVが受賞して、販売が好調なのも、選択肢が増えて20kWhのバッテリーでも問題なく使える方々にとって、とても使いやすいクルマと言うことですね。
私の知り合いでも、何人もの方々が、サクラに乗り始めて、とても満足しています。
停電時に、インバーターを使って12Vバッテリーから電気を取り出す方法は、メーカー推奨ではありませんし、あくまで、緊急時の臨時対応ですね。
これから、100Vの電気を取り出せる電気自動車が増えてくれるといいなと思っています。