レッドアクセントなどデザイン加飾で選択肢拡大
2024年8月23日、Hyundai Mobility Japan株式会社(ヒョンデ)が、昨年秋に発売したばかりのコンパクト電気SUVであるKONAに、同社の高性能車ブランドである「N」のエッセンスを加えた『KONA N Line』を追加発売することを発表。同日から販売を開始しました。
ヒョンデの「N」といえば、『IONIQ 5 N』が今年6月に日本でも発売されました(関連記事)。一連の試乗レポートでもお伝えしているように、電気自動車の強みを活かしつつ、高性能エンジン車にも引けを取らないスポーツ性能の高さは圧巻です。
KONAの「N Line(エヌライン)」は、パワートレインや足回り、快適装備などは標準モデルの「Lounge(ラウンジ)」のまま。エクステリア、インテリアのデザインに「Nの感性を加えた」モデルとなっています。
専用装備をリストアップしておきます。
<エクステリア>
●N Line専⽤デザインフロント&リアバンパー
●N Line専⽤ウィングタイプリヤスポイラー
●N Line専⽤デザイン19インチアルミホイール
●ブラックアウトドアミラーカバー
<インテリア>
●N Line専⽤本⾰巻ステアリングホイール(N ロゴ、レッドステッチ)
●N Line専⽤全席メタルドアスカッププレート
●N Line専⽤Alcantara®+本⾰コンビシート(レッドステッチ)
●N Line専⽤インテリア(Nロゴ、レッドカラーアクセント)
デザイン的な加飾のみの追加なので、最高出力や最大トルク、バッテリー容量(64.8kWh)やWLTCの航続距離(541km)、車両重量(1,790kg)などの基本スペックは変わりません。バンパー形状の変更があるため、ボディサイズの全長だけが30mm増えて4,385mmになっています。
価格は、KONA Loungeが489万5000円(税込)に対して、506万円(税込)。16万5000円高く設定されました。
電気自動車のスポーティ加飾モデルとしては、日産リーフNISMOが思い浮かびます。リーフNISMOの場合、モーターを制御するコントローラーのセッティングにも変更が加えられているので、このエヌラインでも「少しくらいは加速感のセッティングを変えたりはしていないんですか?」と確認してみましたが、もともと、コナではスポーツモードを選択できるなど「優れた動力性能とスポーティな走りを楽しめる実力を備えているので、まったく手は加えていない」という回答でした。
コナに対する日本ユーザーからの反応には、ツルッとした顔面など個性的なデザインに対する賛否両論の声があり、エヌラインは「デザイン的な選択肢」を増やすためのモデルということになります。
EV性能やユーザビリティはオーナーとして太鼓判
いろんな記事でレポートしているように、ヒョンデKONAは私のマイカーでもあります。私が買ったのはバッテリー容量48.6kWhの最安モデルであるCasualですが、まあ、バッテリー容量と、電動スライド式サンルーフなど贅沢装備以外の基本性能はほとんど変わりません。
ヒョンデカスタマーエクスペリエンスセンター横浜で行われた試乗会で、改めて乗ってみましたが、日常使いの走りやユーザビリティなどは「日本国内で販売されているEVでも最上質レベル」という感想はそのままです。
一点、具体的に挙げておくと、センターディスプレイのナビ画面。左側に表示されるワイプ画面を上下にスワイプすると、電力消費状況や俯瞰のカメラ映像などを手軽に確認できます。テスラ車のようなEVとしての斬新さはありませんが、エアコンやオーディオを操作する物理スイッチも適度に整理して残されていて使いやすいです。
メーカー別の国内新車販売台数(2024年7月)をみると、BYDが207台に対してヒョンデは43台(それでも前年の15台からは躍進)と苦戦は続いているようですが、コナのEV性能やユーザビリティには1オーナーとして大満足。日本でも、もっと売れていいEVだと感じています。
大衆的車種拡大とEVライフスタイル提案に期待
デザイン的な選択肢拡大として、本国から数カ月程度のタイムラグでエヌラインが追加されたのは、ヒョンデが日本市場での躍進を図る意欲を示したと評価できるでしょう。
一方で、EV推しメディアの編集長としては、先だって韓国で発表されたコンパクトEV『インスター』を、一日も早く、少しでも安価な設定で日本でも発売してほしいと期待しています。
また、ヒョンデやBYDのEVが日本市場でなかなか販売台数を伸ばせない要因として、そもそも日本ではEVへの偏見がまだ根強いことに加えて、中国や韓国といったアジアの隣国(製品)に対する妙なコンプレックス(あるいはその裏返し)があることも事実でしょう。実際、私がコナ購入を決めようとした時(BYDドルフィンも選択肢のひとつだった)も、最大の障壁は、妻の「韓国や中国のクルマなんて絶対にヤダ」という強固な思い込みを解きほぐすことでした。コナが「日本で発売されている中で、我が家が購入できる価格帯で、いかに優れたEVであるか」を根気強く説明して、説得には2カ月くらいかかったほどです。
ヒョンデでも、韓流タレントやアーティストとコラボしたキャンペーンなどを展開しています。とはいえ、私たちのような50〜60歳代以上の「じいじ」や「ばあば」はさておき、今どきの若い人たちにはそもそも韓国や中国製品を購入することへの偏見なんて、そんなにないのではないか(推察でしかないですけど)とも感じます。
一方で、ヒョンデからの発信としてすごく良かったのが、たとえば、8月初旬に参加したBEVキャンプに協賛するヒョンデが出展してくれていたEV屋台です(関連記事)。ヒョンデは、グローバルではエンジン車やハイブリッドを含むさまざまなパワートレインのモデルを展開していながら、日本再進出についてはBEVを中心としたゼロエミッションビークル(ZEV)のみを導入することを表明しています。いわば、電気自動車の伝道師的なブランドになろうとしていると言えるでしょう。
であれば、高出力複数口の急速充電&6kW以上の普通充電ステーションとともに、EV屋台を備えた「EV充電パラダイス」とも呼ぶべき施設を日本各地で展開するなど、EVを軸にした新たなライフスタイルを発信してくれたら素敵だなぁ、と思います。ヒョンデさん、ぜひご検討ください。
ヒョンデやBYDはもちろん、日本でも魅力的なEV車種がいっぱい出揃う日が来ることに期待しています。
取材・文/寄本 好則
日本ではまだまだ韓国車や中国車に対する偏見が強いと思います。しかし我が家を見ると、テレビは既にSONYからLGに、他の電化製品も多くは中国製になっています。従って日の丸家電が凋落したように、日本の自動車産業が衰退していくのは時間の問題と考えています。次の政権に期待するのは、日本の自動車産業の国際競争力を高めるため抜本的なEV政策です。一つの提案ですが、世界で通用するアップルのiPhoneの様な日本発の新たな次世代EVを官民で検討していっても良いのではないでしょうか?
日本ではEVへの偏見が根強いとありますが、それは違うと思います。日本のEV普及率が低いのは、他国と状況が違うからです。中国ではEVは国策です。ヨーロッパは脱炭素に対する強迫観念がある。アメリカの場合は、日本に比べ平均年収が高く裕福です。日本にはそんな「くびき」がありません。その意味で日本の消費者はEVを客観的に見ていると思います。そんなくびきがなければ、外国も日本のEV普及率に近づくでしょう。
また、日本にはアジアの隣国に対する妙なコンプレックス(あるいはその裏返し)があるとありますが、これも間違っています。日本人を拉致した北朝鮮を支援する中国、嘘の歴史認識を拡散し続ける中国や韓国を日本人がこころ良く思わないのは当然です。そんな国の製品を買いたくない人が多いのも当然でしょう。
ただ、そうは言っても、車として走行性能、充電機能、充電インフラ、価格の総合力が既存の内燃機関車に比べて優れていれば、状況は変わってくると思います。現状ではまだまだだと思いますが。
seijima さま、コメントありがとうございます。
記事の趣旨としては、韓流推しより、EVライフスタイル発信に期待したい! ということで。
日本のメーカーからも、日本の「くびき」を超えるEV車種が続々と登場する日を待ち望んでいます。