東名300km電費検証【03】ヒョンデ『KONA』の実用電費~100km/h巡航で5.48km/kWh

市販電気自動車の実用的な電費性能を確かめる「東名300km電費検証」シリーズ。第3回は、ヒョンデが日本市場に投入した2車種目の電気自動車である『KONA(コナ)』で行った。比較的コンパクトなSUVに64.8kWhのバッテリーを搭載した「Lounge Two-tone」での結果をレポートする。

東名300km電費検証【03】ヒョンデ『KONA』の実用電費~100km/h巡航で5.48km/kWh

【インデックスページ】
※計測方法や区間などについては、下記インデックスページ参照。
東名300km電費検証【INDEX】検証のルールと結果一覧

最上級グレードの電費性能を検証

改めて確認しておくと、コナには4グレードがラインナップされている。カッコ内は、搭載する駆動用バッテリー容量と、WLTCモードの一充電航続距離だ。

KONA Casual(48.6kWh/456km)399万3000円
KONA Voyage(64.8kWh/625km)452万1000円
KONA Lounge(64.8kWh/541km)489万5000円
KONA Lounge Two-tone(64.8kWh/541km)489万5000円

今回は寄本さんが三重県伊勢市への取材(関連記事)に行った際に使用した『KONA Lounge Two-tone』の広報車を引き継いで電費計測に臨んだ。横浜=伊勢往復における電費の印象などはすでにレポートされているが、ルールを定めた検証でどんな結果が出るのか興味深い。

コナの駆動方式は4グレードともFWD(前輪駆動)だ。モーター出力は、Casualだけ99kW(135PS)で、他の3グレードは150kW(204PS)と異なるが、トルクは255Nmで同一だ。モーター型式もEM16で一緒なので出力制御の違いでパワーにだけ差をつけている。

装着するタイヤはCasual とVoyage が215/60R17、Lounge の2グレードが235/45R19。一充電走行距離(WLTC)は、バッテリーが大きく17インチタイヤの組み合わせのVoyage が最長の625km、次にLounge の541km、Casual の456kmとなっている。

という訳で、今回の電費計測に使用したKONA Lounge Two-toneの一充電走行距離をバッテリー容量で割った電費(目標電費)は8.35km/kWhで、この数値を上回れば、一充電走行距離を実現できることになる。

今回の目標電費

一充電走行距離電池容量
目標電費
541km64.8kWh8.35km/kWh

各区間の計測結果は下記表の通り。目標電費を上回った区間を赤太字にしている。

【今回の計測結果】

往復の電費は平均ではなく、往復距離を往路と復路で消費した電力量の合計で割って求めているため、E区間の往復は4.6にはなっていない。

目標電費を超えたのは300m超の下り勾配であるD区間の往路とC区間の復路の2区間だった。往復では80km/hが6km/kWh台、100km/hが5km/kWh台、120km/hが4km/kWh台を示す結果となった。

高速道路で冬の実用的航続距離は350〜360kmほどか

各巡航速度の電費は下記の表の通りだ。速度別の電費は、各速度区間の全走行距離をその区間に消費した電力の合計で割って求めている。「航続可能距離」は実測電費にバッテリー容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は、541kmとするカタログスペックの一充電走行距離に対して、どれほど良いのか、悪いかを示す。今回、検証時の外気温が7~9℃と低くかったため、全体として目標電費には届かない結果となった。

【巡航速度別電費】

各巡航速度
の電費
km/kWh
航続可能距離
km
一充電走行距離
との比率
80km/h6.55424.778%
100km/h5.4835566%
120km/h4.59297.555%
総合5.43352.165%

各巡航速度の比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると16%電費が悪くなった。120km/hから80km/hに下げると1.4倍ほど(143%)に航続距離の伸長を期待できることが確認できた。

ベースの速度比較する速度比率
80km/h100km/h84%
120km/h70%
100km/h80km/h120%
120km/h84%
120km/h80km/h143%
100km/h119%

自動車線変更のスムーズさは市販EVトップレベル

コナのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)設定は、ステアリングホイール左側のスポークにあるボタンで行う。一番左上がACC走行スタートのボタン。その下が速度調節用の上下に動くスイッチで、1クリックで1km/hごとに、長押しで10km/hごとに変えられる。その下は先行車との車間距離調整ボタン(4段階)。その右側のボタンは車線維持機能のオン/オフだ。

ACCの速度制御は優れており、急な加減速による怖さを感じることはなかった。車線維持機能もHUD(ヘッドアップディスプレイ)を見ていると、車両が認識しているカーブの屈曲率に合わせて滑らかに曲がっていく。他車によくある、切りすぎて戻す動きもほぼないので快適だ。

自動車線変更機能も有しており、ウインカーを出すだけで車線変更を行なってくれる。テスラ『モデル3』も同じ機能があるが、モデル3はウインカーを出して、ドライバーが少しステアリングを切る必要があるのに対して、KONAはそれも不要だった。

ステアリングの切り方はモデル3もかなり滑らかだが、KONAはもう1段階上をいっていた。具体的には切り始めの一瞬の動きに差がある。モデル3は、「くっ」と切るのにしたいて、KONAは「じわー」と切る印象でより滑らかな動きを実現している。

スピードメーター表示とGPS計測による実速度の差は、下記表の通りどの速度でも3km/hだった。実速度を100km/hにしたい場合は、メーター速度を103km/hに合わせた。

80km/h
巡航
100km/h
巡航
120km/h
巡航
メーターの速度
km/h
83103123
ACC走行中の
室内の静粛性 db
697167

巡航時の車内の騒音(スマホアプリで測定)は差があった。コナは速度による風切音の増加よりも、タイヤのパターンノイズの増加の方が、他車種よりもより顕著になるように感じた。その結果として東名区間の速度が80km/hと100km/hでは100km/hの方がより大きい。新東名の120km/hは東名よりも路面が新しくきれいなため一番静かだった。

急速充電はSOC30%以下からのスタートが効率的

急速充電は6回行なった。バッテリーを充電に適した温度に温めるプレコンディショニング(以下、プレコンとする。ヒョンデの正式呼称はバッテリーコンディショニング)は、1回目と2回目は行なっていない。3回目は10分行なったが適温までは温められていない状態、4回目から6回目は適温の状態で充電を開始した。おかわり充電の6回目が10分で終わっているのは、次の利用者に譲ったためだ。

充電結果

●クリックすると拡大表示します。
※「外気温」は車内メーター表示の温度。
※「充電時最大出力」は、車両もしくは充電器で確認できた数値。
※「航続距離表示」は、エアコンオフ時に確認。
※「SOC推計充電電力量」は、充電前後のSOC値から算出した電力量。
※「充電器表示充電電力量」は充電器に表示、もしくはアプリなどに通知された電力量。

結果的としては、1回目のプレコンを行なっていない50kW充電器がSOCで28%分と最も多く充電できたので、より高出力な充電器やプレコンを使用する効果を今回は実感できなかった。1回目と他の充電の差を挙げると、外気温の差は2℃と小さいが、開始時のSOCが1回目は28%と最も低かった。外気温やバッテリー温度の影響よりも、充電開始時のSOCがより大きく影響する制御になっていると思われる。

センターディスプレイで電力消費を確認できる。外気温が8℃の時に、暖房は23℃設定で0.58kW、プレコンは5.30kWと、人間よりもバッテリーを温めるのに10倍ほどの電気を使っていた。なお、120km/h走行中はプレコンがオフでもずっと「適温」のままだった。「6/6」と表示されている充電器の使用可能口数は5分ほどのタイムラグがあるが便利な機能だ。

30分間の急速充電で、91kmから107km分の充電は少し頼りなく感じる。しかし、同じ車両で寄本さんが新東名の掛川PAで充電した際(関連記事)には、SOC17%、外気温13℃で163km分をチャージできている。KONAの急速充電は、SOC20%程度からを目安にするのが効率が良さそうだ。また、外気温10℃前後で、充電性能が大きく左右される可能性を感じた。

また、実際に複数回の急速充電を繰り返しながら走ってみて、ラウンジグレードに標準装備の前席リラクゼーションコンフォートシートは、充電中に体を休めるにはうってつけの機能であることが実感できた。

運転席が「リラクゼーションコンフォートシート」の状態。スイッチを操作すると自動で背もたれが倒れ、座面も持ち上がったこの状態まで動く。アイオニック5にはオットマンもあるが、コナにはない。

オートエアコンの細かな気配り

コナの航続距離表示は冷暖房の使用でどれほど変化するのか、エアコンオフ、冷房最大、暖房最大のそれぞれで3回確かめてみた。

結果として冷房は0%から4%、暖房は3%から6%と下落率は一桁台におさまった。冷房は外気温が低いため本来の数値ではない可能性が高い。

ヒョンデの細かな配慮を感じたのは、オートエアコンのボタンでファン速度を3段階で調節できる点だ。設定温度は同じでもファン速度を変えるとそれに合わせて航続距離表示も変わる。設定温度を0.5℃変えても航続距離表示は変わっていく。クルマに乗り込んですぐはファン速度を最大の3にして、適温になったら2や1に下げることで航続距離を伸ばすことが可能だ。

設定温度を最高の27℃、オートエアコンのファン速度を最大の3にしている状態。オートボタンの下はエアコンをドライバーに集中させるボタンで、このボタンをオンにしても航続距離表示は増える。

装着タイヤは19インチが標準

ラウンジグレードに標準装備の19インチホイールは、アイオニック5とコナのエクステリアデザインの特徴になっているドットを取り入れたかのように見える。

【装着タイヤ】
メーカー/KUMHO
ブランド(商品名)/ECSTA PS71

サイズ空気圧
kPa
製造週年
左側右側
フロント235/45R19 99V25025232523
リヤ235/45R19 99V25024232523

※製造週年は「2523」の場合、2023年の25週目に製造されたことを意味する。

補助金減額もコストパフォーマンスは優れている

実はコナの電気自動車は2代目だ。フロントに充電口があり、アシンメトリーな「顔」になっていること、前後のライトがバンパーレベルの低い位置にもあるなどデザインの特徴を受け継いでいる。

オートエアコンで触れた細かな気遣いは、3段階調節ができるシートヒーター(後席も3段階! ※Casual、Voyageには後席シートヒーターの設定はない)にも現れている。グレードも4つあるので、街乗り中心の方はCasualを、ロングドライブが多い方はVoyageを、電動ガラスルーフを含めた充実装備を求める方はLoungeを、より個性的なボディカラーを求める方はLounge Two-toneをと、好みや用途に合わせて選択できるのもコナの魅力だ。

この4月からのCEV補助金は、65万円から20万円減額されて、45万円(Casualは35万円)となってしまったが、それでも依然としてコスパには優れている点は変わらない。しかも、使いやすいボディサイズにゆとりある室内空間も備えている。

東京、大阪、愛知にはカーシェアサービス「エニカ」の試乗車も用意されているし、愛知と福岡にある「Hyundai Citystore」では試乗に加えて購入相談もできる。気になった方は一度体験してみてはいかがだろうか。

取材・文/烏山 大輔

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 記事中で「寄本さんが新東名の掛川PAで充電した際には、SOC17%、外気温13℃で163km分をチャージできている」とあるのですが、参照元の関連記事を見ると、充電前67km→充電後163kmとあるので、航続距離が97km分のチャージが正しいと思うのですが。
    そうなると90kW級で充電したところでKONAの充電性能はあまりよろしくないですね。

    1. ヘミン さま、コメントありがとうございます。

      掛川での急速充電。開始時航続距離表示61kmが終了時230kmで、増加分が36%、163kmです。
      KONAの急速充電性能については、ほかの記事でも言及しているように「まあ、そこそこ」ですね。w

  2. 貴重な検証お疲れ様でした。

    暖房を付けてもそこまで航続可能距離に大きな影響がないようでホッしました。
    私の職場ではサクラが何台かあるのですが、暖房を付けると航続可能距離が100km未満になるらしく、konaの購入を考える身としてはそこが気がかりだったのですが。
    それにしても3段階で調整できる所などもそうですが、konaは値段の割にはかなり細かい箇所まで微調整されていて好感が持てます。
    急速充電の問題に関しては、やはりEV専用プラットフォームであるE-GMPを搭載したIONIQ 5には遠く及ばないものの、自宅充電ができる環境下であればそこまで大きな欠点ではないかなというのが個人的意見です。

    ヒョンデは2024年中に軽に近い大きさの小型EVを発表しますし、IONIQ 5もマイナーチェンジ版が出るので、今後もウォッチを続けていきたいです。

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この記事の著者


					烏山大輔

烏山大輔

1982年生まれ、長崎県出身。高校生の時にゲームソフト「グランツーリスモ」でクルマに目覚め、 自動車整備専門学校を卒業後は整備士、板金塗装工、自動車カタログ制作、 自動車雑誌カーグラフィック制作、ALPINA総輸入代理店のNICOLEで広報・ マーケティングと一貫してクルマに関わる仕事に従事。 現在の所有車はインテグラ・タイプR、ハイゼットとガソリン車のみだが、BEVにもFCEVにもとても興味を持っている。

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