アメリカでEVやEV関連技術に関する迅速なニュースを伝えているINSIDEEVsが2018年9月28日にリリースしたBjørn Nylandのレポートよると、150kWや350kWなどの「超急速充電」世代に属するJaguar I-Paceを超急速充電器で充電してみたところ、同社が公称している100kWには達せず、ピークでも84kWにしか上がらなかったことが分かりました。同氏はこれまで、I-Paceの様々なテストを繰り返し行っています。
Bjørn Nyland氏は、I-Paceをドイツにある「IONITY」が設置した超急速充電器に持って行って実験しました。IONOTYは欧州に展開する急速充電器ネットワークで、アメリカで言うとテスラのスーパーチャージャー・ネットワークや、フォルクスワーゲンの子会社Electrify Americaが展開する全米ネットワーク、日本だとNCSにあたるものです。当該のIONITYの充電器は、理論的には800Vで350kWが出せることになっています。状況にもよりますが、少なくともこの半分である175kW程度は常に出せるはずです。
Bjørn Nyland氏がみずから説明を行っている動画があります。英語ですが、画面左側にIONITYの充電状態を示す画面が表示されるので様々なステータスが読めます。例えば、「40%台が最も高いkWが出ている」とか、「50%を超えるとみごとにkWが下がり始める」などの様子も見て取れます。(ただし、アプリの表示は「1分」を「4秒程度」に短縮した早送りになっているのでご注意を。また余談ですが、日本ではJaguarは通例「ジャガー」と呼ばれていますが、本家の英語では「ジャギュワ」のように発音されます。)
Jaguar社は、公称では「CCS Combo Charger」を使えば100kWの充電が可能としています。これだと0〜80%の充電はおよそ40分で済むことになります。ところが実際に試したところ、最大でも「84kW」にしか達しませんでした。これは、テスラ(90kWh搭載モデル)を充電した時の「110kW」よりも低い値です。とはいえ、今後(数週間で実現するか、数ヶ月かかるかは分かりませんが)、同社は、100kWだけでなく120kWの超急速充電にも対応させるだろうとBjørn Nyland氏は見ています。
大容量のバッテリーを積む長距離走行可能なEVのメリットの一つは、「超急速」充電する際にSOCの60〜70%の「美味しい」部分を使って充電できる点です。この範囲内はもっとも「吸い込みが早い」ためです。大抵のバッテリーは「超急速」充電時には、SOCが50%を超えると充電kWが下がって来ます。従来の50kWの「急速」充電器の場合だと、SOCが85%に達したあたりから下がりますが、I-Paceはそれまで48.6kWで充電できます。
I-Paceは、テスラ・モデルXが先鞭をつけ、現在各社から続々登場している「長距離用BEV」の重要な一角を占めています。人気のSUVである点も魅力です。充電速度がどう改善されるか、Jaguar社の取り組みとBjørn Nyland氏の今後のレポートに注目してゆきたいものです。
(文・箱守知己)