ジャガーが正式に電気自動車I-Paceを発表

2018年3月のジュネーブモーターショーに先駆けて、ジャガーが完全電気自動車のコンパクトSUV I-Paceを発表しました。完全電気自動車の新車種の発表は2016年のGM BOLTとテスラモデル3から実に2年ぶり。いよいよ始まります。

ジャガーが正式に電気自動車I-Paceを発表

このコンパクトSUVというスタイル、CUV(しかしCUVのCはCompactではなくCrossoverすなわち乗用車とSUVの良いとこどり的な意味です)とも呼ばれており、非常に人気のあるスタイルです。I-Paceは今年欧州で先に発売されるとみられており、米国でも2018年の後半と発表されています。日本にはいつ導入されるのか不明ですが、すでに公式サイトができていますので、導入は決定していると考えられます。

肝心のスペックですが、まず航続距離はWLTP基準で480km。当サイトは今までEPA基準で電気自動車の航続距離を測ってきましたが、ジャガー社は今回国際標準であるWLTPで数字をリリースしてきました。これからWLTPは日本でもJC08に代わり導入され、数字にはかなり大きな変化があると思われますが、数値的には、EPAがやはり最も現実に近く厳しい燃費測定基準であることには変わりないようです。WLTPはEPAから見て、10-15%程度甘いと見られているように思います。
実はジャガー社は以前I-Paceについて米国の記者に語った際、EPA航続距離を240マイル=386kmと語っているので、WLTP 480kmとの差は24%もあります。一応、現時点では航続距離は386km前後と思っておけばよいでしょう。
2018/10/18訂正:米国での納車が開始され、ジャガーは現時点での予想EPA航続距離は234マイル=377kmであると発表しました。

377kmを走行するバッテリー容量は90kWh。345km(暫定)のテスラモデル3が50kWh、382kmのGM BOLTが60kWhですから、やはりCUVというのが重くのしかかっています。フロントを通常のガソリン車っぽく見せるためにグリルを導入したりすることと、CUVのために車高を高くしたこと、プレミアムカーにふさわしいスポーツ性能を高めるためにタイヤを太くしていることなどが電費の悪化につながっていると言えるでしょう。実際に使える電池容量が同じかどうかは分かりませんが、I-Paceより一回り大きいテスラモデルX 90DのEPA航続距離は257マイル=413kmであることを考えると、I-PaceのEPA航続距離はもう少し長いのかも知れません。

モーターはデュアルモーターで、前後に1つずつ、四輪駆動となります。出力は294kW、696Nmですから非常にパワフルで、最近の電気自動車と同様、ポルシェ911であっても信号待ちでI-Paceを抜くことはできないでしょう。0-100km/h加速は4.8秒と、テスラモデルXの75Dや100Dよりもわずかではありますがさらに速い。

車名0-60mph(秒)
ジャガーI-Pace4.5
テスラモデルX 75D4.9
テスラモデルX 100D4.7
テスラモデルX P100D2.9

この表は米国のドラッグレースの基準である0-60mph(時速0マイルから60マイル=約96km)で比較しています。時速4kmの違いだけでしょ、というのは実は間違いで、米国では1 foot rolloutというものがあり、こちらの記事の上の方で解説していますが、測定基準が全く異なるのです。テスラは米国の会社で基本的な数字は0-60mphでしか出していないため、同じ基準で比べてみました。こうやって比べると、車体が小さいI-Paceはおそらく車重も軽く、素晴らしい加速が楽しめることと思います。

充電環境としては、特にチャデモとかCCSとかは記載がないのですが、おそらく欧州と米国ではCCSのみなのではないかと推測します。ただ数としてはチャデモの方が多いので、実際にどうなるのかは分かりませんね。急速充電は当然のように100kWまで、40分間で80%まで充電できます。80%は308kmになるのですが、これだけあれば3時間走行できますから、充分と言えるでしょう。テスラのように専用充電ネットワークは構築せず、公共のインフラを利用することがリリースにもうたわれています。
家庭での普通充電は欧州では単相7kWまで、日本では単相6kWのようです。6kWは新型リーフでも採用されていますが、これからは普通充電もハイパワー化の時代。90kWhを3kWで充電したら30時間もかかってしまいます。スペックでは普通充電の時間は10時間とされていますが、これは@7kWで80%まで。空から満充電までは、6kWの充電器で14時間半くらいと考えて良いでしょう。三相普通充電が一般的な欧州で、なぜか単相のみの普通充電というのは、欧州では問題になりそうです。

バッテリー関係でもう一つ目を引くのは2011mmという車幅。ホイールベースも2990mmと非常に長いです。これはバッテリーを底面搭載しているため。今後電池の体積エネルギー密度が上がればもっと車幅を狭くできるのですが、今のところは長距離EVの宿命と言えると思います。

公式プレスリリースはこちら(英語)。日本での正式発表が楽しみです。

2018年式 I-Pace specification
バッテリー方式 リチウムイオン
バッテリー容量 90kWh
モーター駆動軸フロントアクスル、モーター1基
リアアクスル、モーター1基
EPA基準航続距離 377km
JC08モード基準の航続距離 未定
交流電力消費率(JC08)未定
最大出力400hp(294kW)
最大トルク696Nm
車体側の充電プラグ位置 フロント左側面(急速充電)、フロント左側面(普通充電)
普通充電の容量と時間の目安 100%/約14.5時間(6kW)
急速充電の規格 CCS(日本導入時は不明)
急速充電の最大出力 100kW(詳細不明)
急速充電の容量と時間の目安 80%/約40分
全長×全高×全幅 4682×2011×1565mm
ホイールベース2990mm
トレッド前/後未発表
車両重量2395kg
乗車定員5名
車両価格(税込) 国内価格未定
英国での価格
I-Pace S(英国VAT込)£63,495
(英国VAT抜、@145円/GBP、消費税込)829万円

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この記事の著者


					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

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