レクサスがBEV『RZ450e』の特別仕様車「F SPORT Performance」100台限定発売〜価格は1180万円

レクサス初の電気自動車専用モデル『RZ450e』に特別仕様車「F SPORT Performance」が追加された。「東京オートサロン2024」での初公開でも話題となったこのクルマにはどんな特徴があるのだろうか。

レクサスがBEV『RZ450e』の特別仕様車「F SPORT Performance」100台限定発売〜価格は1180万円

そもそもRZはどんな電気自動車?

『RZ450e』は2023年3月にレクサス初のBEV専用モデルとして発売された(ちなみにレクサス初のBEVは2020年10月発売の『UX300e』)。

発売時にはAWD(全輪駆動)のRZ450eのみだったが、2023年11月にはFWD(前輪駆動)の『RZ300e』もラインナップに加わった。両モデルともに71.4kWhのバッテリーを搭載しており、一充電走行距離(WLTC)はRZ450eが494km、RZ300eは599kmと105kmもの差がある。価格はRZ450eが880万円、RZ300eが820万円で、価格差は60万円と意外に小さい。

コンセプトモデル「RZ SPORT CONCEPT」

特別仕様車「F SPORT Performance」はRZ450eをもとに開発された。このモデルに既視感を覚えた読者諸兄はさすがだ。ちょうど一年前、2023年1月の「東京オートサロン2023」で発表されたコンセプトモデル「RZ SPORT CONCEPT」がベースになっている。このモデルの市販化を望んでいたファンには吉報ではないだろうか。

特別仕様車「F SPORT Performance」の特徴

特別仕様車「F SPORT Performance」を、RZ SPORT CONCEPTと比較するとボンネットのアウトレットは小さくなり、フロントフェンダーのアウトレットがなくなっていることにはすぐに気づくが、その他の外装パーツはほとんどそのままの形状で残されているように見える。端正なルックスのノーマルに対して、迫力ある外装デザインにすることに成功している。特に前後フェンダーの幅広化とカーボンターニングベイン、ルーフとリヤに設置されたカーボンウイングには目を奪われる。全幅は70mm拡大されているのでフェンダーは片側35mmずつ広げられているはずだが、実際にはそれ以上の印象を受ける。

カーボンターニングベイン(フロント・リヤ)

そんな幅広のフェンダーには前255/40R21、後295/35R21のタイヤが収められている。RZ450e(20インチタイヤ)との比較では、前は20mm、後は40mmも太いタイヤを装着、トレッドについても前は50mm、後は40mmも増えているので、コーナリング性能は大幅に引き上げられているのではないだろうか。

もう一つの大きな特徴は空力性能だ。エアレース・パイロットの室屋義秀選手との技術交流から得られた知見を活かし、航空機に用いられている空力技術を応用したカーボンウイング、カーボンターニングベインなどの17点の専用エアロパーツを採用。ダウンフォースの増加など、より高い空力性能を実現させた。2枚のカーボンウイングは、ルーフ側はリヤへの空気の流れをコントロールする役目に徹することで、リヤ側でより効率的なダウンフォースを発生させていることが面白い。

これは羽根から空気の剥離が起こると、空気が失速し抵抗も増えるという室屋氏のパイロットならではの知見が大いに活かされたポイントだ。リヤのカーボンウイングは、実はハイマウントストップランプが入るトランクリッド上面部分などの5つのカーボンパーツを組み合わせて一体成形されている。

カーボンウイング(ルーフ・リヤ)

足回りはENKEI製の専用21インチホイールを採用、コイルスプリングやショックアブソーバーのチューニング、佐々木雅弘選手とのToyota Technical Center Shimoyamaで徹底的に走り込みにより、走行性能を鍛え、「妥協のない走りを実現した」と発表された。これほど数多くの専用パーツを採用したにもかかわらず、車重は2,110kg とRZ450eに対してわずか10kg増にとどまる。

ボディカラーは、マットホワイトの「白銀」に対してカーボンパーツなどのブラック、アクセントとしてフロントスポイラーやターニングベイン、ブレーキキャリパーにブルーが施されている。室内も専用のブラックとブルーのインテリアカラーを採用し、内外装をトータルでコーティネイトしている。

モーターの出力はRZ450eと同じ

内外装がこれほど特別な仕立てになっているF SPORT Performanceだが、モーターには手が加えられていないようだ。出力はRZ450eと同一で、フロントモーター(型式1XM)は150kW(203.9PS)、266Nm(27.1kgf・m)、リヤモーター(型式1YM)は80kW(109PS)、169Nm(17.2kgf・m)のままだ。

バッテリー容量も71.4kWh、eアクスルの減速比も13.786とノーマルと同値、0-100km/h加速もさほど変わらないと思われるため、主に空力性能を向上させ、それに合う足回りを与えられた特別仕様車と言える。

本格的なスポーツ走行時には、高温になるバッテリーやモーターの温度管理、さらには次の走行に備えて、もしくは帰路に向けた航続距離を確保するため、バッテリーの急速充電もノーマルよりさらに高度な性能が必要となるのが想像できるが、レクサスの広報担当部署に確認したところ、こういった観点でのチューニングは施されていないという回答だった。しかし、今後「IS F」のようなBEVの「Fモデル」が出る時にはバッテリー温度マネジメントなどについてもぜひ強化されることを期待しておきたい。

価格は1180万円とノーマルよりも300万円高い。専用のカーボンパーツも多用し“素の” RZ450eとは全く異なる精悍なルックスに仕上げられているので、妥当な上昇幅に思えるが、絶対値としてはとても高価なクルマになったと感じる。

一方、購入特典として、日本各地の充電器付きの宿泊施設を起点とした独自の旅行プログラム「LEXUS ELECTRIFIED JOURNEY」への招待(1組2名)や、全国のレクサス店における充電料金を無償とするサービス(特典利用可能期間は2025年9月まで)が提供される。

この特別仕様車「F SPORT Performance」は100台限定、2月19日(月)までレクサス店での抽選申し込みを受け付け、2月22日(木)以降に当選者への連絡が実施されて商談を開始するスケジュールが組まれている。

BEVの走行性能を向上させるため、ここまで専用のパーツやチューニングを施したモデルはまだ珍しい。同様の例としては同じオートサロンで発表されたヒョンデ IONIQ (アイオニック)5 Nと日産の『アリアNISMO』くらいだろうか。エコでクリーンなイメージのBEVに、ノーマルモデルよりもさらに高次元なハイパフォーマンスを求めるユーザーがどれほどいるのかを測る試金石になるモデルとしても注目していきたい。

LEXUS RZ450e
F SPORT Performanceversion L(通常モデル)
全長4860mm4805mm
全幅1965mm1895mm
全高1625mm1635mm
ホイールベース2850mm
トレッド(前)1660mm1610mm
トレッド(後)1660mm1620mm
車両重量2110kg2100kg
乗車定員5名
一充電走行距離未発表494km(WLTC)
最高出力(前)150kW(203.9PS)
最高出力(後)80kW(109PS)
最大トルク(前)266Nm(27.1kgf・m)
最大トルク(後)169Nm(17.2kgf・m)
バッテリー総電力量71.4kWh
モーター数前1基、後1基
トランスミッション1速固定(13.786)
駆動方式AWD(全輪駆動)
フロントサスペンションマクファーソンストラット
リアサスペンションダブルウィッシュボーン
フロントブレーキベンチレーテッドディスク
リアブレーキベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前)255/40R21235/50R20
タイヤサイズ(後)295/35R21255/45R20
最小回転半径6.2m5.6m
車両本体価格1180万円880万円

文/烏山 大輔

この記事のコメント(新着順)1件

  1. トヨタのクルマ造りは、本当にこの方向ってことなんでしょうかね。
    こういう高価な車を出したって、遅れていると言われているトヨタのEV戦略を翻そうとしているとは、誰も受け取らないでしょうね。しかも、失敗作だったとトヨタ自身が公言しているe-TNGAプラットホームのままですよね。
    EVに乗るならトヨタのEVに乗りたいって言ってる多くの人たちが待ってるクルマは。こんなクルマではないですよ。絶対!

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					烏山大輔

烏山大輔

1982年生まれ、長崎県出身。高校生の時にゲームソフト「グランツーリスモ」でクルマに目覚め、 自動車整備専門学校を卒業後は整備士、板金塗装工、自動車カタログ制作、 自動車雑誌カーグラフィック制作、ALPINA総輸入代理店のNICOLEで広報・ マーケティングと一貫してクルマに関わる仕事に従事。 現在の所有車はインテグラ・タイプR、ハイゼットとガソリン車のみだが、BEVにもFCEVにもとても興味を持っている。

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