ベンツのEV『EQB』長距離実走レポート【復路編】兵庫→東京「充電1回で走破」に挑戦

メルセデス・ベンツから7月に日本発売された7人乗り電気自動車の『EQB』で、東京=兵庫をロングドライブ。復路では、兵庫から東京までの約600kmを途中の急速充電1回で走りきるプランを試してみました。結果は「惜敗」。急速充電2回で到着となりました。90kW器の拡充がニッポンの急務です。

ベンツのEV『EQB』長距離実走レポート【復路編】兵庫→東京「充電1回で走破」に挑戦

東京まで充電1回で届くじゃん!

メルセデス・ベンツ『EQB』の長距離実走レポート。8月13日にお届けした往路編の速報レポートでは、昨年同じコースを同じ急速充電回数で走ったEQAと比較しても、素晴らしい電費を記録。56%のSOCを残して余裕で走破できたことをお伝えしました。メーター読みで601kmのルート全体での電費は約6.55km/kWh。EQBが搭載する駆動用バッテリー容量は66.5kWhなので、電費を6.5km/kWhとして、満充電からの航続距離は約432kmということになります。

昨年、EQAによる兵庫から東京への復路は、郷里〜名神草津PA(約188km)、さらに新東名遠州森町PA(約210km)と繋ぎ、90kW2本出し器を独り占めして2回の急速充電で、24%のSOCを残して東京ICまで、余裕で走りきることができました。

でも、先日レポートしたように今年のEQBはさらに電費が向上(約25%も!)しています。郷里から、新東名遠州森町PA(上り線)までの距離は約400kmです。往路の電費で考えると、ざっくり10〜20%くらいの電気を残して一発で走りきれるはず。これで、遠州森町の90kW2本出し器を単独使用で30分間の急速充電を行えば、QC1回で、20%程度は余裕を残して約600kmを走破できるはずです。

8月15日午前9時過ぎ、郷里の道の駅でお土産を買って出発。

さらに、いつもは渋滞を避けて夜中に走ってばかりでしたが、EQBの運転支援機能は秀逸だし、お盆時期の急速充電器事情を実際に確かめてみたい思いもあったので、郷里を朝9時頃に出発。2〜3時間の渋滞を勘案して19〜20時くらいに東京の自宅へ帰着するプランで走ってみることにしました。

単独使用でフル出力充電できたのは10分だけ

結果は、残念ながらQC1回での走破を達成することはできませんでした。理由は、遠州森町PAの90kW2本出し器を単独使用できたのが最初の10分だけだったこと。SOC17%から充電を開始。トイレに行ってアイスコーヒーを買い、様子を確認するために充電器へ戻るところで、もうひとつのEV充電用区画にBMW iX3が入ってくるのが見えました。

実は、私が充電を始めようとした時、隣接の充電用区画に普通のプリウスが駐車しようとしたので「そこに停められると次のEVが充電できなくて困るんですよ」とお声がけして移動してもらいました。「あのプリウスが停まっていればもう少し独り占めできたのに」なんてのは冗談ですが、「あ、これでもうQC1回は無理かなぁ」と、少々残念な気持ちを感じつつ。

90kW2本出し器で充電開始10分くらいで、BMW iX3が並んで充電となりました。

単独使用時に72kW出ていた出力は、2台同時充電となったことで39kWに低下。30分間での充電電力量は25.1kWh。SOCは51%までしか回復しませんでした。仮に30分間単独使用できていたら、38kWh程度の充電量で、SOCは70%強まで回復できたはず。そうすれば、10〜20%の余力を残して自宅に帰着できた、はずなのですが。

まあ、これも今の日本の電気自動車事情の現実です。御殿場から先は大渋滞の交通情報が出てましたし、足りないのはおそらく最後の20km分程度。ルート上の静岡SAから海老名SAまでのどこかで、15分くらい充電すればOKだろうとプランを変更。iX3のご家族連れに会釈して、再出発したのでした。

少しお話ししたところ、iX3のご家族は島根県松江市から東京へ戻る途中とのこと。SOCは40%くらいからの充電開始だったようですが、「90kW器独り占めなら東京までの電力を充電できたのに」という状況は私と同じ(届いたとしてもギリギリ)だったことでしょう。つまり、この充電器が2本出しというちょっと頼りないシステムであるために、2台の大容量EVが東京へ辿り着くために、さらにもう1回、どこかで急速充電しなくちゃいけなくなったということでもあります。

お盆渋滞の洗礼は各SAPAの急速充電器でも……

大容量バッテリーの余裕で充電場所は選べるし、まあ、問題ないだろうと思っていたのですが。結局、御殿場IC過ぎから横浜ICあたりまでどっぷり巻き込まれた渋滞(事故渋滞が重なりひどくなったようです)とともに、各スポットに設置台数が少ない充電渋滞の洗礼を受けることになってしまいました。

清水PAではアウトランダーPHEVが3分ほど前に充電開始したばかりだったので、スルー。

まず、せっかくなら50kW器で充電するのがいいかなと、遠州森町を出発する前に、ジャパンチャージネットワーク(JCN)が提供している「高速充電なび」で確認。すぐ次の静岡SAは使用中だったものの、空いていた清水PAに入ってみたら……。3分前にアウトランダーPHEVが充電を始めたばかりでした。こりゃダメだ、と清水はスルー。

駿河湾沼津では、充電終了したモデル3の横で、もう1台のモデル3が充電待ちしていたので、スルー。

さらに、ちょうど私が清水PAを出る直前に充電が開始された、つまり、私が到着する頃には充電が終了するという情報が得られた駿河湾沼津SA(上り)に到着してみると……。テスラ モデル3がちょうど充電を終えるところだったのですが、隣りの区画でもう1台のモデル3が充電待ちをしていました。で、諦めてスルー。

足柄SAでは2基の40kW器でリーフとe-GOLFが充電中。ともに残り数分だったので、1枠残っていた充電待ちスペースにピットイン。

御殿場あたりから渋滞が始まり、トイレにも行っておきたかったので足柄SAに入ってみました。ここには2台の急速充電器があり、2台はともに使用中。先に充電を始めた充電器の待機スペースにアウトランダーPHEVが待っていました。もう1台の待機スペースが空いていたので、ともあれEQBを入れてトイレに行って。充電器を確認すると、1台は残り5分、私が待機スペースに入れた1台は残り7分くらいだったので、ここで充電していくことに決定。

充電前のSOCは18%。残り航続距離表示は84km。足柄SA上り線の急速充電器は最大40kWです。開始直後の充電器表示では「361V×92A=約33.2kW」、車両側の表示でも「33kW」で約20分間充電。SOC36%まで、充電器表示で12.7kWhを補給して、東京を目指したのでした。

さらに鮎沢PA(ここも50kW器)と海老名SA(ここには90kW器1台と40kW2台の計3台設置)の状況を確認してみようかとも思ったのですが、この区間は大渋滞中で、それぞれのSAPA入口にもたくさんのクルマが行列していたのでスルーしました。

東京都世田谷区の自宅に到着したのは20時30分頃。京都あたりで10km程度、東名で20km以上の渋滞を経て、11時間ほどのドライブとなりました。

電池残量21%で20時半過ぎに帰着。3kWのコンセントで一晩充電しても、昼前に確認するとまだ70%ちょっとまでしか回復してませんでした。66.5kWhという容量の大きさを実感します。

到着時のSOCは21%です。遠州森町PAで2台同時使用となったために充電できなかったと思われる約13kWhを、足柄SAでの注ぎ足し充電(12.7kWh)で補充したので、もし、遠州森町PAの90kW2本出し器で30分間単独使用できていれば、急速充電1回で、およそ20%の余裕を残して兵庫→東京を走破できた、と考えることができます。

【復路の急速充電データ】

スタート●兵庫県養父市
SOC/100%
↓ 約398km
QC1回目●新東名 遠州森町PA(最大90kW2本出し)
充電時間/30分(10分間1台のみ以降20分間は2台で充電)
充電電力量/25.1kWh
SOC/17%→51%
↓ 約128km
QC2回目●東名 足柄SA(最大40kW)
充電時間/約22分
充電電力量/12.7kWh
SOC/18%→36%
↓ 約85km
ゴール●東京都世田谷区
SOC/21%

ちなみに、渋滞もあってややのんびり走った復路。メーター表示の平均電費は6.9km/kWhと良好でした。
(充電データのSOCなどで計算すると往路とほぼ同じ6.52km/kWh程度でしたけど)

くどいけど、90kW器の複数台設置は急務です

先日の往路編をはじめ、いろんな記事で繰り返していることなのでくどいですけど、日本の高速道路網、すべてのSAPAに90kW器の複数台設置を進めることが急務です。

「50kWで十分」というのは、初代リーフ時代の思い込みに過ぎません。今回、遠州森町でEQBとiX3が並んだように、高出力急速充電対応の車種はどんどん増えています。かといって「150kW以上の超高出力器を増やせ」とは言いません。大容量の高出力対応EVであっても、バッテリー保護などの理由から100kWを超える高出力で充電可能な時間はさほどではないですし、90kWで30分フルに充電できれば、おおむね200〜250kmを走行する電力を補給できます。

なので、「90kWをシェアする」という考えに基づいた、今回使用した遠州森町などの「ダイナミックコントロール」や、大黒PA新型器のような「ブーストモード」は、充電インフラのポテンシャルを下げる機能とさえいえます。「高速道路網の急速充電器は、デフォルトを90kWとするべき」というのが、本格的なEV時代到来を願う私の思いです。道の駅などを中心に、一般道にも計画的に有効な90kW基準の急速充電インフラを整えることも必要でしょう。

初期コストや維持費(電気代)の関係で、EVの急速充電が儲かりにくいサービスであることは承知しています。したがって、民間企業である e-Mobirity Power だけに理想的な充電インフラ構築の責任や負担を強いるのは難しいとも思います。充電インフラの設置と維持に必要なコストを透明化して、EVを販売する自動車メーカーがきちんと自社EVの性能を活かすために理想的なインフラのあり方を提言し、合理的にコストを負担できる仕組みを構築することが必要になってきているのではないでしょうか。また、政策として充電インフラの理想像をきちんと示し、そのための税金を創設してEVユーザーが負担するような仕組みが必要なのかも知れません。

なんにせよ、本格的なEV時代を迎えるために、ことに日本の高速道路網の急速充電インフラが脆弱過ぎる現実を、改めて認識する長距離実走となったのでした。

メルセデス・ベンツの電気自動車という価値を実感

インパネのイルミネーションは赤基調。写真では派手にも見えますが、夜間、実際に運転してるといい感じです。
帰着後、普通充電を始めるとイルミネーションがグリーンで点滅しました。こういうちょっとした演出も高級車感いっぱいです。

今回のEQB長距離試乗。往路編を含めて電費や経路充電のことを中心にレポートしてきましたが、最後に、EQBに感じた「自動車」としての完成度についてのインプレッションに触れておきたいと思います。

まず、広報車を借りてすぐに実感できたのが、段差や路面の変化に応じた乗り心地の上質さと安心感の高さです。「エンジン車から乗り替えても違和感がなく」と説明されてもいますけど、エンジン車と比較してどうこうではなく、「メルセデス・ベンツが電気自動車を作るとこうなるんだ」と納得できるEVに仕上がっています。

そもそも、エンジン車はエンジンの振動や騒音を抑え排ガスをクリーンにするための進化を遂げてきました。メルセデス・ベンツの高級車はより上質な静粛性を追求してきたのでしょうが、それがEVになった瞬間にエンジン車ではあり得なかった静粛性や振動の少なさを実現できます。そこからさらに「ベンツならでは」の上質さを加えた乗り心地が、EQBで、さらにはEQCやEQAで具現化されているのです。

シートが電動じゃないのは少し残念なポイント。充電待ちでリラックスしたい時にダイヤルを回すのは少し面倒です。
EQBはハセテック製の急速充電器と相性が悪いようです。CHAdeMO規格の急速充電器で多い話で、詳細な原因はわからないですが、こういう相性問題がいつまでも続くと規格としての弱点にもなりかねないと危惧します。CHAdeMO側の対策や改善でなんとかならないものなんでしょうか。

「D-」「D」「D+」という回生ブレーキ3段階のパドルシフトは、電気自動車としての特性を活用して操る楽しさを提供しつつ、使い勝手もシンプルです。「D+」ではコースティングとなるので、高速道路走行時など、効率よく走りたいというEV運転の上級者にも満足感が高い操作が可能でしょう。完全停止までするワンペダルドライブのモードは備えていませんが、そのあたりは「ワンペダルドライブは本当に必要ですか?」というベンツからの提案とも受け取れます。

今回、私はあまり使いませんでしたが、回生ブレーキの強さを状況に応じて調整してくれる「D AUTO」モードは、普段、あまり細かいことは気にせず電気自動車ならではの走りの気持ちよさを効率良く楽しみたいという方には便利だと思います。

また、今回の長距離試乗は高速道路をひた走る時間が長かったので、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック (自動再発進機能付 ※いわゆるACC機能)や、アクティブステアリングアシストといった安全運転支援システムをたっぷりと活用しました。停止して30秒以内なら自動で再発進してくれるACCの機能は、ことに復路の大渋滞でとてもありがたく、京都周辺と御殿場以降、合わせて40kmほどの断続渋滞もそれほど苦痛には感じませんでした。

さらに、全体として安心感が高く、とても完成度の高い運転支援システムなのですが、たとえば、テスラのオートパイロットや日産のプロパイロット2.0を使っているときの「自動運転を使いこなしたい」という感覚ではなく、あくまでも「安全運転支援」なんだと感じながらストレスが少ない運転を楽しむことができる印象でした。言葉で説明するのは難しいところもあるのですが、たとえばステアリングアシストが介入する際のステアリングの振動やアシスト動作などに急激さが少なく、ジェントルな印象を受けました。言うなれば「運転はちゃんとドライバーがやるんだよ」と諭されている感じ。先進の運転支援機能とドライバーとの関係について、メルセデス・ベンツの姿勢とか哲学を提示されているような思いまで感じつつ、往復1200km余りのドライブを楽しむことができました。

7人乗りSUVだけに外観デザインはどちらかというとミニバン的などってり感がありますが、前後ともに横一直線に輝くLEDライトのアクセントや、EVならではのオーバーハングの短いレイアウト(つまり室内空間の広さ)、このフォルムにして最少で0.28という優れたCD値を実現するなど、オーナーとなれば満足感を得られるポイントには事欠きません。

今回試乗した「EQB 250」の価格は788万円(税込)〜。前後にモーターを搭載した全輪駆動の「EQB 350 4MATIC」は870万円(税込)〜。日産 アリアやヒョンデ IONIQ 5といったEVもそれぞれに魅力的な高級EVではありますが、EQBにたっぷり乗って「さすがベンツ」という上質さを実感することができました。もうすぐ、さらに上級車種となる『EQE』や『EQS』も日本に導入されるはず。メルセデス・ベンツがどんな高級EVの世界を見せてくれるのか、ますます楽しみになりました。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)10件

  1. E+乗りです 最近非常に残念なことがわかりました 新東名の90kw2本だし急速充電器は90kを名乗って欲しくないです なぜなら90kwの充電が単体では得られないからです メーカーホームページには逆に90kwっていう検索に引っかかるので集客も期待できますくらいのことが書いてあります これが日本の実情かと言うくらい残念です 誤認させてます もうテスラ一択になりそうなくらいショックを受けました 200Aでる充電器、現在の高速道路にどれだけありますか?

  2. ちょいちょい登場するアウトランダーPHEV、これは経路充電する方が得なんですかね?
    充電カードの力なんだろけど、こう言う風に各社が充電カードを設定している状況もどうなんでしょう?
    e-MPが設備を維持出来る価格設定のカードを出す、受益者負担の観点から利用者はそれを利用する。
    きっと今より高価格設定になるでしょうけど、それは仕方ない。
    そうなれば不必要な経路充電も減るはず。

  3. 日本でのEV普及を今後10年単位で考えると、バッテリー容量は60kWhくらいが適当というのが寄本さまの見識(?)と理解しました。
    EQBは乗用車として日本では大型の部類ですが、敢えて小型のEQAと同容量で出した上、航続距離も伸ばしてきました。同じことをテスラモデル3や日産アリアは既に実現しています。これらのモデルは長距離でも不自由のない性能を備えています。
    今後、技術開発が進めばさらに高効率なEVが出て来ることが期待されます。そうなると、高速道路の充電器は(日本では)90kW器の複数台設置が適切という結論なのだと思います。

    EVを生産するのは間違いなく自動車メーカーだと思います。欧米では自動車メーカーがリードして充電インフラの整備と進化が実現していますが、なぜ日本では?という問いが何度も繰り返されていますね。この辺のことはくどいようでもEVスマートさんに繰り返し主張していただきたいです。

  4. 日本でテスラを除くEVによる長距離移動が大都市間であってもいかに大変かよく分かる記事だと思いました。
    ただ、90kW器の拡充が急務と以前から編集長は書かれている気がしますが、私は今時90(しかも半分になる可能性がある)では遅すぎて大多数の同乗家族の理解は得られないと考えます。

    EVsmartでは長距離移動の記事をよく掲載されていますが、家族=特に妻+子供を同乗させている気配がほとんどしません。
    私は数年前からモデルXの100kWhバッテリー搭載車に乗っており、EVの中では距離が走れる部類ではありますが、スーパーチャージャーの無い地域への遠出はかなり不安を感じます。
    途中や目的地の充電器情報は物凄く調べる必要があります。

    充電器がもう閉鎖されているのではないか、故障しているのではないか、またエラーになるのではという不安もありますが、妻が充電ばかりに時間がかかりすぎて腹をたてるのではないかという不安が最も大きいのです。
    すんなり充電できても30分充電で100kmしか走れないとか話になりません。充電待ちに出くわして1時間も待とうものなら、こんな車(EV)捨てろと言われかねません。

    これは私の妻が短気だとかいうわけではなく、世の中の奥様方こんなもんでしょう。
    男のEV趣味など理解できないのが普通です。
    だから最低でも10年近く前に登場した初代スーパーチャージャー(120kW?)の速度は必須ですし、新設するならV3以上(250kW)以外あり得ないと考えます。
    EVに理解の無い同乗者が許容できる充電時間もせいぜい15分かと思います。
    遠方の目的地に運良く普通充電器があっても、今時3kWじゃ一晩待っても大して充電できません。

    だから私は日本でEVを買いたい・EVに乗換えたいと言われても、独身者以外にはあまり勧められませんし、スーパーチャージャーの使えないEVなど独身者にも勧めません。

    この文章、e-mobility powerや高速道路を運営している方々に是非読んで頂きたいです。これが日本のEVの現実です。

    1. Model X User さま、ご意見ありがとうございます。

      推察の通り、コロナ禍以降、ここ数年は単独行で東京=兵庫を走っています。
      とはいえ、往路記事で少し触れた「i-MiEVで東京〜兵庫16時間」の際は妻が同乗していましたし、数年後、「BMW i3で大阪→東京各駅停車状態で8回ほど充電」の時は妻のお姉さんも同乗し、「また充電?」攻撃に晒されるEV黎明期を経験してきています。充電性能、大事ですよね。

      「90kWでもまだ遅い」という感覚も、テスラSCの利便を知っていれば当然の思いでしょう。

      チャデモにもせっかく1000Vまで対応可能な「2.0」という規格があるのですから、CCSで拡充が進められているような、800V仕様で最大350kW! といった急速充電器が増えていくのは、将来のEV社会構築のためにひとつの理想であることは間違いありません。

      その上で、最近私が「高速道路SAPAに90kW器拡充を」と叫び続けているのは、公共の充電インフラとして、幅広い車種の利便を満たすために必要十分な出力だと感じているからです。たとえば今回復路でも、ルート上のSAPAに90kWQCスポットの選択肢があり、30分間フル出力で利用できていれば、30分の充電=休憩1回で600kmを走破できました。

      600kmを休憩(充電)1回ではきついので、15分×3回の休憩を取るとしても、40kWと90kWのQCだと充電量に倍以上の差が出ます。

      車種の条件によって充電回数などの利便は違ってくるでしょうが、すべてのSAPAに90kW器が複数台設置されているという状況(どの程度の台数が必要になるかは今後のEV普及率次第)になれば、受入出力が50kW以下のEVや、20kW程度でしか充電できないPHEVを含めて、公共インフラとしてより多くのEV(プラグイン車)ユーザーの利便を満たすことができる、ということです。

      チャデモ規格では、現状の90kW器などで採用されている「1.2」規格でも、最大で500V×400A=200kW出力まで対応可能であると認識しています。では、公共インフラとして「90kWをデフォルトに」というところからさらに進んで、150kWや200kWといった超高出力の急速充電は必須なのか。

      急速充電はEVの性能そのものだと思います。

      今、日本の高速道路網におけるQCインフラ拡充は、e-Mobirity Power とNEXCO各社の判断(実際には国交省などの意向も働いているのだと推察しますけど)に委ねられています。最近は、ABB製の「56kW 2本出し」の充電器をあちこちに増設しているようですが、大黒PA 6口器のような最大90kW器の複数台設置は、遅々として進んでいないのが現状です。EVユーザーとして不満ではありますが、SAPAの充電器は公共インフラということもあり、新しく登場する高性能EVの利便を担保することよりも、未設置PAへの増設や、50kW程度で2本出しのような、やや中途半端な性能であっても、公共インフラとして最低限の利便性を整えることに注力されているのであろうと、一定の理解はしつつ……。

      たとえば日本メーカーのEVでも、日産アリアは最大130kW、トヨタbZ4Xやスバルソルテラは最大150kWの急速充電に対応していますが、現状のままでは8〜10年後くらいまで、日本国内にこうした高級EVの航続距離&急速充電性能を利便性高く活用できる環境が整うことはないでしょう。たとえば、欧州のIONITYやアメリカのElectrify Americaには、フォルクスワーゲングループなどの自動車メーカーが大きく関与して、CCS規格による最大350kW出力という超高出力器の設置計画を進めています。個人的に今後増えるであろう大衆車EVのバッテリー容量は40〜50kWhで十二分と考えていることもあり、「350kWなんて必要ない!」とも感じますが、それは、VWGを中心とした欧州メーカーが描くEV社会のビジョンに基づくことなのでしょう。テスラSCもしかり、テスラ車の性能を担保するためにテスラ自らが投資しているインフラです。

      日本メーカーが自社製EVの魅力を日本のオーナーに提供し、また世界の市場で勝負していくためにも、健全なQCインフラ網構築のためのビジョンを提示し、適切に投資していくことが必要ではないか、と、今は考えています。

      QCインフラは誰がどうやっても儲かるサービスにはなりにくいでしょう。であれば、設置や運営に必要なコストを透明化して、ユーザーの都度負担だけで賄いきれず、eMPやNEXCOの公共インフラとしての投資限度を超える部分については、OEMが自社EVの性能を活かすために必要なインフラのあり方を示し、適切に投資することが可能なスキームができるといいな、と夢想しています。

      普通充電についても、たとえばエネチャージが6kW出力を基本にした独自ソリューション展開を進めるような動きが出てきています。普通充電については、特段eMPの決済ネットワークが必須であるとは思わないので、多様なソリューションの選択肢が登場し、全体としてEVの利便が高まっていくといいですね。

      これだけでもう1本記事になりそうな長文返信になってしまいました。m(_ _)m

      さらにご意見あればお聞かせください!

    2. 寄本様
      熱い返信ありがとうございます。

      奥様や義姉さんが同乗された事もあるのですね。
      記事が見つけられなかったのですが、感想はどうでしたでしょうか。

      日本のEV充電環境は誰も利用していない人たちだけで会議し設置、運営してきてしまったのが問題だと私は思います。
      1人でもいいから日常的に何年も前からEVを利用していた所轄の大臣または国会議員、事務次官?でもいれば、こんな使いにくく遅い充電器群にはなっていないはずです。
      EVを日常利用している自動車ジャーナリストもほとんどおらず他サイトでは薄っぺらなレビューが濫造されています。
      eMPやNEXCOの経営陣も実際にEVに乗っている人がいるのか疑問です。
      eMP株主のトヨタはこれで良いと本当に思っているんでしょうか。
      日本のお家芸だったカイゼンはほとんど見られません。

      アリアの130、bZ4Xの150kWというのは日本では高級EVだから実現している数値という位置付けかもしれませんが、
      10年前のモデルSとほとんど変わらない事や、既に国外EVはこれ以上の受電能力は当たり前になっていますので
      90kWもしくは50kW程度2本出し機を今から設置しているのは、他国が先行して5G携帯電話網に置き換えていく中3G/4G網を整備しているようなものだと思います。

    3. (上の続きです)
      一方で私も最初の書込時点で見落としていたのですが、Sakuraのように急速50kW、普通6kWすら受電できず10年前の充電器の能力も活かせない日系EVやPHVが大量に出回る事による無駄な充電器占有が心配です。
      テスラにも以前確認した限り新型チャデモアダプターを開発していない可能性が高い気がしています。
      そういう事もありeMP側も仕方なしに90kWという中途半端機の整備に突き進んでいるのかもしれません。

      私はそろそろ規格として負けが確定しかかっているチャデモを捨てることを国が検討し始めても良い段階に入っているのではないかと思います。
      既に急速充電器も国内勢が脱落してきてABBやデルタ電子など海外勢頼りになってしまっています。
      CCSの機材をFW改変程度でそのまま使えれば、かなり費用の削減になりますし車両もそのまま輸出入できます。
      日本政府、産業界、国民全てが他国のEVに対する変化の速さについていけていないわけですから傷口が広がる前に何とかすべきではないでしょうか。

      それと私も若干仕事が建設系ですから原価をすぐ考えるのですが、NEXCOの発注する工事は恐らく公共系と同じ価格で「ぼったくられている」気がしてなりません。
      キュービクルを除くと、90kW機の設置費用はテスラが自社でV3 SCを4ストール設置したのと同じかそれ以上かかっているのではと予想しています。
      もしそうなら、もうNEXCO+eMPのみが高速道路の充電器整備する事にこだわらず、テスラやVWでもどこでもいいので他社解放条件に世界規模で安価に機材を調達しているところに急速充電器設置を開放すべきだと考えます。

    4. Model X User さま、返信コメントありがとうございます。

      チャデモを諦めるかどうかはなかなか悩ましい課題ですが。OEMの急速充電インフラへの関与への期待、これからも声を上げ続けたいと思います。

      i-MiEVで16時間、は、日刊SPA!という媒体で少しレポートしています。

      兵庫「但馬」の山村でアーティスト暮らしができる!?【後編】
      https://nikkan-spa.jp/317310

      i3での大阪から各駅停車、は、記事にはしなかったかなぁ。
      日本EVクラブの特集企画で、こんなのはありました。

      BMW i3ドライブ日記『レンジエクステンダーは必要なのか?』使いながら考えてみた。
      http://www.jevc.gr.jp/bmw-i3%e3%83%89%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%96%e6%97%a5%e8%a8%98%e3%80%8e%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%82%b8%e3%82%a8%e3%82%af%e3%82%b9%e3%83%86%e3%83%b3%e3%83%80%e3%83%bc%e3%81%af%e5%bf%85%e8%a6%81%e3%81%aa/

  5. 設置費用に数千万円する高額な90kW充電器の普及をどう進めていく?
    先駆的なテスラ社の取り組みについて聞きたい気がします(大赤字覚悟?)。

    それからもう一つ気になっているのが高速料金で、兵庫から東京までの高速代は1万3000円位掛かると思います。。それをガソリン車(EQB相当)で走行した場合、リッターで13km走行したと仮定すると、600km ÷13km ×170円 ≒ 約8000円の燃料代、EVの場合、600km ÷6.52km/kWh × 〜30円/kWh ≒ 約3000円程度の電気代。
    1万3000円の高速代に比べ、約5000円程度しか燃料/電気代の価格差がない事を考えると、高額な大容量バッテリーを搭載したEVを国内に普及させるには高速料金制度も見直していく必要があるのかな?と思っています。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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