EV専用プラットフォームによる最高級セダンモデル
EQC、EQA、EQBと現在3車種のEVを販売中のメルセデス・ベンツ日本。車名の「EQ」は電気自動車を意味し、末尾の「C」「A」「B」が内燃機関車時代同様、車両のクラスを指すのがメルセデス・ベンツのネーミングルール。同社から29日、EQS、すなわち電気自動車のSクラスが発売された。
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9月29日に発売されたのはEQS 450+。同時に発表されたEQS 53 4MATIC+の予約注文も始まった。EQS 450+は同社として初めて電気自動車専用プラットフォームを用いて開発された。現在販売中のEQC、EQA、EQBはいずれも内燃機関を搭載することも考慮されたプラットフォームを用いて開発されたため、それぞれ内燃機関を搭載するGLC、GLA、GLBと似たサイズとスタイリングをしていたが、専用プラットフォームが用いられたEQSは内燃機関を搭載するSクラスとはまったく異なるスタイリングで登場した。
価格はEQS 450+が1578万円、EQS 53 4MATIC+が2372万円(ともに税込)。
メルセデス・ベンツをはじめ既存自動車メーカーの高級電気自動車はSUVタイプを中心に展開されてきた。Sクラス、Eクラスはブランドの中核車種であり、専用プラットフォームを採用したセダンモデルが日本に登場する点でも、このEQSと、同時に発表されたEQEは画期的。テスラ モデルS Plaid(プラッド ※日本未導入だが)の強力なライバルとなるEVが登場したと言っていいだろう。
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EQSはSクラス同様セダンなのだが、いわゆる3ボックススタイルではなく、著しく低い車両の前端から尻すぼみの後端まで、横から見るとなだらかな弧を描いたようなシルエットをしている。メルセデスはこのスタイリングを「ワンボウ(ひとつの弓)」と呼ぶ。明らかにフロントにエンジンがないからこそ可能なスタイリングであり、専用プラットフォームであることがひと目でわかる。
当然エアロダイナミクスも追求されており、Cd値は市販車として最高レベルの0.20を誇る。過去同社の市販車で最もこの値が優れていたのは現行のSクラスで0.22。特徴的なのはボンネットフードで、ボディサイドまで回り込んだ形状となっている。走行風でフードが持ち上がることがないこの形状が空気抵抗低減に大きく貢献するという。
EQS 450+はフロア下に実に107.8kWhの総電力量をもつリチウムイオンバッテリーを搭載。最高出力245kW(333ps)の永久磁石同期モーターで後輪を駆動する。EQS 53 4MATIC+はそのモーターが前後車軸に1基ずつ搭載され、同484kW(658ps)を発揮する。一充電での走行可能距離は450+が700km(WLTCモード)。これは現在日本で市販されるEVとして最長。53 4MATIC+は601km(同)。実用に近いアメリカのEPA基準では、450+が350マイル(約563km)、53 4MATIC+が340マイル(約547km)となっている。
充電は150kWまでの急速充電(CHAdeMO規格)と6.0kWまでの普通充電に対応。急速充電の場合、50kWの充電だと10%の状態から30分間で29%にまで回復、10%から80%まで回復するのに110分を要する。90kWだと10%の状態から30分間で47%、10%から80%までに55分、150kWだと10%の状態から30分間で59%、10%から80%までに48分を要する。バッテリーには10年間もしくは25万kmの性能保証(残容量70%)をしている。
インテリアの最大の特徴は、450+にオプション、53 4MATIC+に標準装備のダッシュボードをほぼ画面で埋め尽くすMBUXハイパースクリーン。ダッシュボードを覆う1枚もののカバーガラスの奥にディスプレイが3枚設置されるもの。ドライバーの正面(ステアリングホイール奥)に12.3インチ、中央に17.7インチ、助手席正面に12.3インチの触覚フィードバック付きのタッチ式ディスプレイが配置される。ハザードランプなど法律上定められたものを除くと物理的なスイッチはほとんどなく、ほとんどの操作をタッチ式ディスプレイで行う。
日本仕様のEQSには特別な機能が盛り込まれた。双方向充電(外部給電機能)が備わったのだ。日本製の電動車には珍しくない機能だが、輸入電動車にはこれまで備わっていなかった。停電時などに充放電機器を介して住宅などにバッテリーの電力を送り込むことができる。災害多発国日本では特に重要視される機能で、日本市場の要求に海外メーカーとしてはメルセデス・ベンツがいち早く応えた格好だ。
同時に発表されたEQEについては、別記事で詳細をお伝えする予定。東京・六本木の発表会場からは、私のYouTubeチャンネルでライブ配信を行った。
「メルセデスベンツ EQS と EQE 発表会場よりLIVE」
(取材・文/塩見 智)