サクラのスタッドレスを純正タイヤに履き替えた/EVタイヤ交換のポイント

電費がよくなる季節を迎え、先日、筆者宅の日産サクラのタイヤをスタッドレスタイヤからノーマルの夏タイヤに履き替えた。EVだからというポイントはそれほど多くはないが、EVであるサクラのタイヤ交換作業の実例を示し、注意点などをまとめてみたい。

サクラのスタッドレスを純正タイヤに履き替えた/EVタイヤ交換のポイント

納車時は&純正タイヤ&アルミホイールを選択

今の車、道路事情ではパンクやタイヤ交換などを自分で行うことはあまりないかと思う。だが、ガソリンスタンドに行かないEVはいまの自動車オーナーが忘れていた日常整備を自分でこなさなければならないことがある。タイヤ交換、空気圧チェックなどはその代表例だ。やったことがない人でも、手順くらいは覚えておくといいだろう。この記事がその参考になればと思う。

我が家のサクラ。夏タイヤは純正アルミホイール(15インチ)を装着している。

我が家のサクラが納車されたのは11月の頭。ディーラーには10月最後の週には届いていたのだが、納車可能日が確定した10月初旬のタイミングで、こちらが受け取りに行ける適当な日がなく11月になってしまった。納車が冬シーズンと重なったため、スタッドレスタイヤをどうするかもそのタイミングで考えることになった。

成約時は6月だったので冬タイヤのことは考えなかったが、納車の11月はそろそろそのシーズンのスタッドレスタイヤの在庫がなくなり始める時期だ。年が明けてしまうと欲しいサイズのスタッドレスタイヤが入手できなくなるかもしれない。

サクラの純正タイヤサイズは以下のとおり2種類のサイズが選べるようになっている。

【日産サクラのタイヤ・ホイールサイズ】
155/65R14 75S 14×4.5J PCD100・4穴・インセット46
165/55R14 75V 15×4.5J PCD100・4穴・インセット46

純正設定はエコピアEP150(ブリヂストン)。

我が家のサクラは15インチのアルミホイールを選んだので、タイヤサイズは165/55R15。ホイールサイズは15×4.5J。PCDは100ミリの4穴。インセット46となっている。タイヤの銘柄はブリヂストン「エコピアEP150」だった。余談だが純正タイヤもそろそろ静粛性と耐摩耗性でEV専用の設定がほしいところだ。コンチネンタルやミシュランはすでにEVモデルを市販している。

スタッドレスはAmazonで4万3000円!

筆者は神奈川県在住なので、スキーなど雪山に行く予定がなければ、冬タイヤはあまり必要ない。本来ならオールシーズンタイヤでもよいのだが、今回はスタッドレスを探してみた。

アマゾンでポチったダンロップのスタッドレスタイヤ。

ネットや近所の量販店を調べて、ダンロップのウィンターマックスWM02という銘柄のタイヤにした。このタイヤはWM03という2022年モデルが発売されているが、値段を優先したので、1年前のモデルを選んだ。サイズは155/R14インチのタイヤで、ホイールは純正サイズと同じ14×4.5Jだ。ホイールはノーブランド品だ。オフセット(インセット)が45ミリと純正ホイールと比べて1ミリほどタイヤが内側になる。だが、1ミリくらいは誤差の範囲と思っていいだろう。

なおスタッドレスを155幅の14インチとしたのは、雪など滑りやすい路面では、接地面積より接地圧を高くするのがセッティングのセオリーだからだ。ただし、タイヤチェーン(豪雪地帯や雪の状態によってはスタッドレスでもチェーンが必要な場合がある)も購入する場合、このサイズの両方をカバーしているチェーン製品は入手困難と思ったほうがいい。

つまり、チェーンも別途購入する場合、夏タイヤの15インチ用かスタッドレスの14インチ用のチェーンのどちらかに決める、あるいは両方を用意する必要がある。夏タイヤ用に買ったチェーンはスタッドレスに使うことはできない。タイヤ形状やチェーン形状の組み合わせによっては装着可能なこともあるだろうが、チェーンの固定や余ったチェーンの処理などには細心の注意を払うことが重要だ。

もう1点、ホイール交換やドレスアップで注意すべき点は、ホイールナットの形状とホイール側のナットを受ける部分の形状だ。ホンダ車など一部の車両はナットの締め付け部分がボール状に丸くなっているものがある。その場合、ホイール側も同じ丸くえぐれている必要がある。サクラを始め多くの車両はナットとホイールが接する部分はテーパー(円錐の上端を切り落としたような形)になっている。

最終的にはアマゾンで購入したが、値段はタイヤとホイール4本のセットで43,000円(消費税・送料込み)だった。1年落ちのモデルとはいえ1台分が5万円しない。今シーズンモデルだと銘柄にもよるが5万円から7万円といったところだ。

テスラなどのスタッドレスタイヤのセットが30万円、60万円という話を聞くが、このときはサクラにしてよかったと思った。

作業に必要な工具などをチェック

タイヤ交換に必要なものを以下に挙げておく。

●パンタグラフジャッキまたはガレージジャッキ
●当て馬
●ホイールレンチまたはインパクトレンチ
●トルクレンチ
●エアゲージ
●エアコンプレッサー(空気入れ)
●手袋

手袋は軍手でもよい。車載のパンタグラフジャッキでもよいがガレージジャッキもあると便利。
インパクトレンチもそろえたい工具のひとつ。いまはもっとコンパクトな製品が増えている。

ジャッキは車載されるパンタグラフ式のジャッキで十分だが1輪ずつ上げ下げの作業をしなければならないので、ガレージジャッキがあれば前2輪、後2輪を同時に上げられるので便利だ。荷重が2トンくらいあればホームセンターなどで売っているものでOKだ。

なお、自分の場合、契約のオプション設定をよく理解しておらず、車載ジャッキを追加するのを忘れていた。昔の車の感覚でジャッキや基本的な工具(昔の車にはスパナやプラグレンチなどがそろっていた)は黙っていてもついてくると思っていたが、いまの車だと工具はドライバーくらいしかついてこない。スペアタイヤもジャッキもオプション扱いだ。自分はパンタグラフジャッキなど古い車からのおさがりでいくつか持っていたのでそれをサクラに載せている。スペアタイヤはないが、パンクの応急処置キットはついていた。

右:サクラに付属するエアコンプレッサー。左:量販店で購入したエアゲージ。

後述するが、シガーソケットを電源とするエアコンプレッサー(空気入れ)も付属していた。これは地味にうれしい。

タイヤ交換くらいの作業なら当て馬は必須ではないが、ジャッキアップする場所が不安定な場合は必要となる。が、そのような場合は無理せずディーラーやボディショップに作業を依頼すべきだ。EVだと入庫をいやがるショップもあるようだが、ディーラーなら受け入れてくれるはずだ。

4穴ホイールのサクラの場合、ホイールレンチは21ミリの六角レンチが必要だ。ホイールがインセット(タイヤとハブの取り付け位置が、リム幅の中心より外側にある)とはいえ、純正アルミホイールは少し深めの穴にナットを差し込む必要があるので、レンチの外径はスリムタイプ(肉薄)のほうがいいだろう。クロスレンチでも作業は難しくないが、バッテリー式のインパクトレンチがあると作業がかなり楽になる。

トルクレンチ。タイヤ交換用には長めのもがよい。
グリップがダイヤルになっており締め付けトルクを設定できるが、いまはデジタル表示のものが便利。

サクラのホイールの締め付けトルクは98Nmとなっている。インパクトレンチを選ぶ場合は150Nm以上のものがいいだろう。筆者はマキタの200Nmのインパクトレンチをもう10年くらい使っている。古い製品のためバッテリーがマンガン系だが、専用充電器がうまく充放電を制御してくれるようで、電池交換は2回で済んでいる。もっともここ5年以上はタイヤ交換以外で使うことはないが。

ハンドルの端にあるナットを緩めてグリップを回して目盛りを規定値にあわせる。目盛りの読み方はマイクロメーターと同じ。グリップを回しながら上端を10Nm単位で縦の目盛りに合わせ、横(回転方向)の目盛りを1Nm単位で合わせる。

ジャッキアップポイントの注意点

実際の作業に入ろう。まずジャッキアップポイントだ。パンタグラフジャッキを利用する場合は、取り扱い説明書にあるジャッキポイントを探し、そこにジャッキを当ててクランクを回す。ほかの場所に絶対ジャッキを当てないようにする。EVはフロアにバッテリーがある。保護カバーやステーなどで補強、保護されているとはいえバッテリーへの衝撃、荷重がかからないようにする。

車載のパンタグラフジャッキなどを当てるポイント。

これも自信がなければ、あるいは自宅(自分)では確実に作業できないと思ったら迷わずディーラーに依頼すること。

ガレージジャッキを当てる場合は、車種ごとにどこに当てていいかを考える。サクラの場合、前輪のロアアームと一体となったクロスメンバーのような構造材が横にわたっている。この中心付近にボルトがあり、そこからステーが伸びており、モーターなどアクスルマウントを固定している。

サクラのフロア下の様子。

前方下から覗くと手前のマウントステーのボルトにジャッキを当てたくなるが、その奥のクロスメンバー構造のボルト部分に当てるようにしよう。こちらのほうが車体の荷重をささえるのに適している。かなり奥なので、自分持っているホームセンターのガレージジャッキでは本体が完全に車体の下に入ってしまう。ポンプのレバーは車体の外にでるが、上下に動かすストロークがとれなかった。スパナや適当な長さの棒状のもので少しずつ持ち上げる。前が上がってくればレバーを差し込んで普通に作業ができる。

今回はここにガレージジャッキをあてて持ち上げた。アクスルを支えているステーのボルト(2つ)のほうがジャッキを当てやすいが、アクスルマウント他への負荷を考えてなるべくフロアやフレーム構造になっている部分を選ぶ。

後ろは簡単だ。サクラのリアサスペンションはコンパクトカーのスタンダードともいえるトーションビーム方式。このクロスビームの中心付近にうまい具合にブラケットのような部材が溶接されている。ガレージジャッキのお皿の部分を安定して当てることができる。

リアはトーションビームサスのクロスメンバーにちょうどよいブラケットがついているのでこれを利用。

なお、以上のガレージジャッキを当てるポイントはあくまでタイヤ交換程度の軽微かつ短時間の作業という前提で考えてほしい。馬をジャッキポイントに当てた状態ならまだよいが、ガレージジャッキは車を長時間持ち上げて保持するための工具ではない。

ホイールナットの緩め方・締め方

ホイールナットを緩めるとき、前輪を2輪とも上げた状態だとタイヤが回ってしまい、ナットを緩めることができない。ジャッキアップする前にクロスレンチかインパクトレンチでかるく緩めておくこと。また、交換作業は素早く行いたいので、交換するタイヤなどはタイヤハウスのそばに事前に用意しておく。ジャッキ転倒などトラブルの対策としてタイヤをボディの下には置いておくのもよい。

サクラのフロントサスペンションとハブ。タイヤが軽いのでハブボルトにホイールの穴を合わせるのが非常に楽だった。

ナットが堅くて緩まないとき、あるいは締めるとき(力が入るからと)足を使う人もいるが、これはやってはならない。ボルトをねじ切ることがある。L型のホイールレンチにエクステンション(延長棒)をつけて緩めるなどの工夫をする。

サクラのリアサスとハブ。ドラムブレーキに電動パーキングブレーキが装着されている。

外したタイヤ(ホイール)には養生テープなどにマジックで装着していた位置(前後左右)を書いてわかるようにしておくと、タイヤ交換時にローテーションを行う場合の目安になる。

自分でタイヤ交換をやってみて「サクラでよかった」と思ったことがもうひとつある。14インチ、15インチのタイヤはホイール込みでも軽い。ハブボルトにホイールの穴を合わせるのが非常に簡単だ。両手で持ち上げながら穴とボルトの位置を合わせるのに、苦労しない。

ナットをはめるとき、最初は手作業でボルトのネジ山とナットを確実に嵌合させてから工具を使う。ナットを締める(緩める)順序は対角に。5穴の場合は星形を一筆書きで描く順序で。

ナットの締め付けはタイヤが浮いた状態でぐらつかない状態まで締め付ける。ジャッキを下したらトルクレンチで規定の締め付けトルクで最後の締め付けを行う。トルクレンチにはラチェット機能がついており、回転方向を切り替えたり、どちらもトルクがかかるようにできる。ふつうのホイールレンチ、レンチとしてナットやボルトを緩めることもできるが、原則として最後のトルク調整だけに使うこと。

タイヤ交換とエアチェックは必ずセットで

交換がひととおり終わったら空気圧チェックも忘れないようにしたい。1シーズン物置などに放置した夏タイヤ(逆に1シーズン放置したスタッドレスタイヤ)の空気は減っていると思ったほうがいい。装着後の試運転の前に必ずエアチェックをする。

空気圧調整は自転車用の空気入れでも代用できる。

テスラや欧州車にはTPM(タイヤ空気圧モニター)が装着されたものが多いが、サクラには当然そんなものはついていない。カーショップで買ったエアゲージ(これも昔の車載工具にはついていた)で空気圧を測る。規定値はドアパネルやピラーなどにシールなどの記載がある。サクラは155サイズ、165サイズ、前後ともに240kPaだった。車種によっては前輪のほうが少し高めの規定値になっていることがあるので注意したい。

タイヤサイズと規定の空気圧の表示。

なお規定の空気圧は必ず守るようにする。昔は高速道路を走るなら少し高めに、などということもあったが、現在の車両で高速道路と一般道で空気圧を変える必要はない。ぬかるみ脱出などで空気を抜くことはあるが、クルマは規定の空気圧で設計、作り込みがされている。一般的にサーキット走行でも規定の空気圧を変える必要はない。

付属の空気入れを早速使ってみた。空気入れにもエアゲージがついているが、量販店で売っている安い製品の場合、この数値はあまりあてにならない。エアゲージで測ったほうがより正確だが、新しいこともありサクラ車載の空気入れのゲージは自分のエアゲージとほとんど誤差がなかった。10kPaくらいの目盛りの目視ではどちらを見ても同じだった。

ガソリン車の場合、シガーソケットからの電動ポンプを利用する場合、車載バッテリーの消耗を抑えるためエンジンをかけた状態で使うことになるが、EVは起動スイッチだけONにすれば騒音や振動なしに空気入れを動かせる。我が家では青空駐車だが、ガレージ内で作業する場合、エンジンをかけないで済むのはうれしい。

空気を入れる場合は、規定値より少し多め(240kPaなら250kPaか260kPaくらい)に入れておき、エアゲージで測りながら空気を抜いていく(エアゲージには空気抜きのボタンがついている)。

なお、電動の空気入れがなくても、自転車用の手動の空気入れでも自動車タイヤの空気圧調整くらいなら問題なくできる。

作業手順やポイントを理解しておくだけでもOK

作業がひととおり終わったら軽く試運転(家の周りを1周するくらいでOK)して、ホイールのがたつきやナットのゆるみなどがないかを確認する。異常がなければ作業終了となる。

なお、外したタイヤの保管方法はできればタイヤラックなどに縦置きしてカバーをかけておく。できれば物置の中などに保管して、雨風、直射日光を避ける。外気にさらした状態で半年以上放置するとゴムの劣化が進む。タイヤショップなどの保管サービスなどもあるのでそれを利用するのもよい。

ちなみに、自分の場合、今シーズンは結局スタッドレスタイヤが必要なシチュエーションでサクラを運転することはなかった。結果として夏タイヤのままでもOKだったことになるが、それはあくまで結果であって、不意の用事や急激な天候変化などへの備えとしては、シーズンに入ったら冬タイヤへの交換をお勧めする。

同様に、スタッドレスタイヤは思ったより雨などのウェット性能が出ない。夏タイヤへの交換も早めがよい。ここで示した工具をそろえれば交換作業はそれほど難しいものではない。知識としても交換作業の概要を知っているだけでもいざというときに違うだろう。

※筆者注/以上の作業はあくまで一例です。ここでのやり方を推奨するもの、結果を保証するものではありません。また、実際に作業する場合は自己責任でお願いいたします。

取材・文/中尾 真二

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					中尾 真二

中尾 真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。「レスポンス」「ダイヤモンドオンライン」「エコノミスト」「ビジネス+IT」などWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアをカバーする。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

執筆した記事