充電計画は「まあ立てなくても大丈夫」な距離感でした
7月某日、先日、御堀直嗣さんのレポート記事を掲載した「Volkswagen Tech Day(最新BEV試乗体験会)」を取材するため、栃木県栃木市のテストコースへ行ってきました。EVsmartブログ執筆陣の御堀さんと木野龍逸さん、合計3人で1台のクルマに同乗して行こうということになり、乗って行くのは御堀さんが久しぶりに新車で購入したマイカーである軽EVの日産サクラです。
試乗会のレポートは御堀さんと木野さんにお任せして、サクラを私が運転し、日帰りプチ長距離ドライブのレポートをしてみたいという計画です。「マイカーEVは初めて」という、サクラや三菱eKクロスのオーナーさんに参考にしていただければと思います。
朝7時ごろ、木野さんがうちに来て、私のリーフで御堀さんちへ行ってクルマを入れ替え。御堀さんは自宅ガレージにEV充電用の200Vコンセントを付けたので、100%満充電からのスタートです。航続可能距離の表示は175km。栃木市の試乗会場までは約120kmだったので、無充電でも到着可能です。
とはいえ、往復の240kmを無充電で走りきるのは無理なので「行きか帰りか、電池残量と急速充電器の空き状況を見ながら軽く1〜2回、休憩がてらの充電するかな」って程度のプランです。
サクラのバッテリー容量は20kWhと小さめです。本来、バッテリー容量が小さく航続距離が短いEVで長距離を走る場合には、あらかじめ急速充電器があるスポットを確認しておいて、おおまかにでも充電計画を立てておくのがオススメですが、宇都宮あたりまでの東北道はそれなりに走り慣れた道だし、走る距離もそれほどではないのでざっくりしたプランニングで問題はありません。
それよりも、ドライブコンピューターで表示された平均電費「10.3km/kWh」にちょっとビックリ。私のリーフはおおむね「7km/kWh」です。まあ、いつもそれほど省電費走行を心掛けているわけじゃないので「こんなもん」なんですけど。御堀さんに「電費いいですね!」と確認すると、「高速道路ではプロパイロット(ACC)を81km/hに設定して、走行車線をまったり走るようにしているくらいで、そんなに電費は気にしてないよ」とのこと。
最高速度120km/h区間もある東北道で80km/h巡航は個人的にやや修行だなぁとは感じますが、普通に走って10kmを超える電費を叩き出す日産サクラの電費性能は優秀ですね。
往路の佐野SAではPHEVの先客が……
連休明けで朝の混雑を警戒して時間に余裕をもって出発したし、私が朝ごはんを食べてなかったので、佐野SAで朝食がてら充電しようかと立ち寄りました。
SAの少し手前で助手席の木野さんに「高速充電なび」を見てもらい、空いてるのを確認していたのですが。なんと、SAに入る直前に「あ、残念なお知らせです。今、充電始めた人がいます」と木野さん。充電器の場所へ行ってみると、三菱アウトランダーPHEVが充電中でした。
まだSOCは50%以上残ってるし、まあいいか、と、ここでは私の朝食休憩だけとすることに。佐野ラーメンを注文したら、SAリニューアル一周年ということで、なんだかおめでたい海苔がのっかってました。
食べ終わって出発する頃にはPHEVは充電を終了していなくなっていましたが、私たちがクルマに戻っている途中でまた一台、同じ三菱のPHEVが充電器に乗り付けました。
東北自動車道には、まだ新型のニチコンマルチプラグ器が設置されている場所はありません。e-Mobility Powerが発表している整備計画によると、東北自動車道では安達太良SAの上下線(4口)と、蓮田SA上り線(6口)が複数口化されることになっています。とはいえ、NEXCO中日本管轄の新東名や中央道に比べると、やや手薄な印象は否めません。エリアが広くて大変なのかも知れないですが、NEXCO東日本でも主要SAPAの高出力複数口化をぐりぐり進めていただきたいと感じます。
時間調整がてら栃木市内の日産ディーラーで充電
試乗会場近くの日産ディーラー(日産プリンス栃木 栃木店)に到着したのは午前9時ちょっと前。試乗会の受付開始は10時で時間があるし、SOCも35%まで減っていたので、ここで30分充電していくことにしました。
結果は、30分で9.2kWh充電(ZESP3の充電終了メールより)、SOCは35%から84%まで回復しました。
【TIPS その1】 サクラの急速充電は30〜80%を目安にするのが吉。
日産サクラは、急速充電の最大受入出力が30kWに制限されています。また、50%を超えると徐々に出力が落ち始め、70%を超えると15kWほどになります。たとえば今回、佐野SA到着時のSOCはまだ55%くらいあったので、30分充電してもディーラーでの充電と同程度の80%台までしか回復しなかったであろうと思います。いい感じの場所に急速充電器があればという前提付きですが、不安だからと50%を切ってすぐに充電を急ぐより、30%〜80%を運用の基本目安にしておくのが効率的ということですね。
復路は無充電! と思ったけれど……
試乗会場のテストコースに到着した時のSOCは80%くらいでした。往路の日産ディーラーまでは30%以上残して到着できましたから「こりゃ、帰りは無充電で走ってしまおう!」と思っていたのですが。
この日は気温35度をゆうに超える猛暑となり、駐車してたのはコース脇の炎天下。試乗後の懇談中から御堀さんにお願いして「乗る前エアコン」を起動してもらっていたので、復路出発のためにサクラに乗り込んだ時のSOCは77%になっていました。走り方にもよりますが、無充電は微妙かなぁ、という感じです。
ともあれ、往路と同様、プロパイロットのACCを85km/hに設定して一路東京へ。朝よりも外気温が高く(表示は36度でした)、しかも木野さんが勝手にエアコンの設定温度を20度に下げていた(朝は23度に設定してました)影響か、往路よりも若干電費が下がっている印象(走りながらのSOCの減り方が早いような)でした。
案の定、途中からナビの残り距離とメーターの走行可能距離表示が同じな状況になってきて。ギリギリまで攻めてもしょうがないから、トイレ休憩がてら蓮田で充電するか、と思って木野さんに「高速充電なび」を確認してもらったら、なんと、故障なのか運休中との表示。
すでに羽生は通り過ぎていたので、首都高速に入ってすぐの川口PAで休憩&ちょこっと充電することにしました。
この川口PA。以前は急速充電器が罰ゲームみたいにわかりにくい場所にあったのですが、今回訪れてみるとピッカピカにリニューアルされていて、急速充電器も東光高岳の新型(最大50kW)に入れ替えられていました。せめてもの2口器ではないのが少々残念ですが、設置場所は格段にわかりやすくなっていました。ただし、PA入口はもとよりPA内にも急速充電器への案内表示が設置されていませんでした。あえてわかりづらくするのは、川口PAの伝統なのかも知れません。
川口PA到着時のSOCは17%で、航続可能距離表示は31km。御堀さんちまでの残り距離も31kmだったので、トイレ休憩がてら10分だけ充電しよう、と思ったら携帯に電話が入り。電話が終わって充電器を止めたら充電時間は15分でした。
SOCは17%から58%まで回復。航続可能距離表示も96kmになったので、夕暮れ迫る首都高を気持ちよく走って家路を急いだのでした。
御堀さんちにはSOC30%で帰着。御堀さんはすぐにコンセントに繋いでました。
【TIPS その2】 急速充電はなにも30分我慢して待つ必要はない。
EVビギナーの方と話すと「急速充電は30分」と思い込んでいることがしばしばあります。とくにサクラのようにバッテリー容量が小さめのEVで走る際には、30分と決めてかかるのではなく、目的地、または次の充電スポットに行くために必要なSOCになったら充電を止めて、時間をうまく活用しながら走るのがオススメです。
自宅で充電できるのであればなおさらのこと。少しだけ余裕を残りて帰り着き、コンセントで充電する方がコスト的にもお得なケースがほとんどです。
あ。とはいえ、今回、川口で15分で充電を止めたのは私のちょっと失策でした。
実は、私は日産の充電カード「ZESP」に加入していて、2023年の12月までは月額2000円で急速充電し放題の「ZESP2」の会員でした。でも『EV充電カード「日産ZESP3」サービス内容改定/3年定期割引はなくなります』という記事でお伝えしたように、ZESP3の3年定期割引で契約できるのが5月31日までだったことから、ZESP2を解約してZESP3の「プレミアム10」に加入し直したばかりなのでした。
この「プレミアム10」の課金は10分単位で「10回」までの無料充電が付いているのですが、15分で止めても「2回分」になって、5分間分を損しちゃったことになるのです。うーん、ちょっと面倒臭い……。
ちなみに、現行の「プレミアム10」は9月1日以降「プレミアム100」となり、10分で1回の仕組みがなくなって、100分までの分単位での計算になります。
今月はこの日の「5回」を合わせてもまだ7回分の急速充電しかしていないので、まあ、いいんですけど。
ともあれ、サクラやeKクロスEVオーナーのみなさん、軽EVでもプチ遠距離ドライブくらい恐るるに足らずです。夏休みのドライブ、存分にお楽しみください!
取材・文/寄本 好則