チャデモの進化〜電気自動車次世代高出力充電規格は日中共同開発の『ChaoJi/チャオジ』へ

2020年4月24日、チャデモ(CHAdeMO)協議会が次世代超高出力充電規格である『チャデモ3.0』を発行したことを発表しました。国内ではなかなか高出力充電器の整備が広がらない中、はたしてどんな規格&構想なのか確かめてみました。

電気自動車次世代高出力充電規格は日中共同開発の『ChaoJi/チャオジ』へ

※冒頭写真はチャオジのプラグ形状。

不覚! チャデモについて知らないことだらけでした

日中共同で高出力充電規格を開発することは、2018年8月に発表されていました。私もこのニュースを受けて、Yahoo! のウェブメディアに「そんなに高出力充電が本当に必要なの?」という主旨の記事(当時の記事アーカイブにリンク)を書いたのですが、共同で開発するのが「チャデモ2.0」だと勘違いしていたことに、今さらながら、今回の発表で気が付きました。

はたして、チャデモに何が起ころうとしているのか。また、チャデモ規格について理解を深めておくために、チャデモ協議会事務局の丸田理さんにメールと電話できっちりと教えていただきました。すでに使われていない以前のメアドにメールしていてちょっと時間が掛かってしまったのはご愛敬。EVユーザーにもあまり詳しくは理解されていないであろう、チャデモの実像と未来をご紹介します。

チャデモ規格の段階って?

今回発行された高出力規格は『チャデモ3.0』とのこと。ちなみに、日産ディーラーや名神高速草津PAなどに設置されている新電元の90kW出力器は「チャデモ1.2」規格だと聞いています。いったい、チャデモ規格にはどんな段階があるのか。まずはそこから教えていただきました。

Ver.最大出力プラグ形状など備考
CHAdeMO 1.050kW
(125A×500V)
互換現状整備済みの急速充電器の中心
CHAdeMO 1.2200kW
(400A×500V)
互換新電元90kW器、ポルシェの150kW器など
CHAdeMO 2.0400kW
(400A×1000V)
互換日本国内での設置には電気事業法の制約あり
CHAdeMO 3.0900kW
(600A×1500V)
新規格将来的な超高出力規格

※2020.6.9追記/記事公開当初、ポルシェの150kW器はチャデモ2.0と推測して記入しておりましたが、その後の記事取材でチャデモ1.2であることがわかったので修正しました。

わかりやすいように表にしてみました。最大出力の欄にカッコ書きしているのが、最大出力時の電流と電圧値です。「1.2」までは電圧が最大500Vで、「2.0」で1000V、「3.0」では1500Vになっていることがわかります。

ポルシェ『タイカン』がシステム電圧800Vの電気自動車であることが話題になりました。欧州でも350kW出力の超急速充電網が整備されつつあって、高出力充電への対応に有利な800Vという高電圧を選択したということですね。とはいえ、現状市販されている電気自動車のシステム電圧はおおむね400V程度の範疇です。つまり「2.0」や「3.0」という高出力は、規格はあるけどまだ売られているクルマがない。だから、急速充電器も普及していません。

チャデモ協議会資料より引用

「3.0」ではプラグ形状もまったく変わる

もうひとつ、大きなポイントが「3.0」では、「2.0」まで共通だった充電プラグの形状やプロトコルなどが全く変わるということです。

「これまでのCHAdeMOは仕様を改訂しても完全互換を維持してきましたが、3.0(ChaoJi)はプラグ形状・制御信号とも異なる新しい規格です。なぜ,あえてこれまでの規格を変えてまで新しくしたかというと、将来的に電動車を普及していくためには(中国GBTや欧米CCSを統合した)統一規格を作っていくことが最終的にユーザの利益になると考えたからです。そのため3.0(ChaoJi)は、CHAdeMO、GBT、CCSとの親和性を考慮した設計となっています」(丸田さん)

ここでまた、聞き慣れない、重要なキーワードが登場しました。それは……。

チャデモ3.0は、日中共同規格の『ChaoJi』に

チャデモのプラグ(上)とチャオジのプラグ(下)。意外にもチャオジのほうがコンパクト。

新たに登場した重要なキーワード、それが『ChaoJi /チャオジ』です。丸田さんの説明に「3.0(ChaoJi)は〜」とあるように「チャデモ3.0」と呼ばれる超高出力の新規格は、すなわち『ChaoJi』のことなのです。

迂闊にもほぼノーチェックだったのですが、ググってみると、日本EVクラブのイベントでご挨拶したこともある日本電動化研究所の和田憲一郎さんが『ChaoJi(チャオジ)は超急速充電の世界統一規格となるのか』という詳細な解説を『MONOist』というウェブメディアの連載記事で紹介されていました。今回、この記事ではここまで詳細な技術的解説はしないので、リンクを貼っておきます。

語感から推察できるように、『ChaoJi』は中国語で「超級」を意味するそうです。中国ではもともと「GB/T」という規格で急速充電インフラの整備を進めてきましたが、より高出力の次世代「GB/T」を開発していくに当たり「世界の自動車ユーザーの利益を考えれば規格は統一されるほうがいい」という理念のもと、日本(CHAdeMO)とドイツ(CCS=コンボ)に共同開発を呼びかけたのが前述の2018年のこと。ドイツはまだ拒否しているものの、日本のチャデモは中国との共同開発、つまり急速充電規格の世界統一に賛同し、2019年4月の理事会で「ChaoJiをCHAdeMOの次世代規格として採用」することを決定しました。

欧米などのCCS勢はまだ乗っかってきていませんが、そもそもチャデモの目標でもあった世界の規格統一に向けて、中国は味方となっていて、インドをはじめとするアジア各国には、日中共同規格が広がっていくであろうと予測できます。

チャオジは世界統一を目指した次世代超高出力規格(チャデモ協議会資料より引用)

現行チャデモ対応のEVへの互換性はない

さて、そうはいっても日本国内の急速充電インフラはまだ「1.0」か「1.2」で事足りています。また、規格が決定したからといっていきなりチャオジ対応の電気自動車や急速充電器が増えるわけでもないので、まだあまり気にすることもないのですが、チャオジのプラグは、現行のチャデモ対応のEVで使うことはできません。

テスラでチャデモを使う時のように、ポータブルなアダプタで接続? と丸田さんに確認すると「チャオジではプラグのロック機構が車両側にあるため、簡便なアダプタで使うのは難しい」とのこと。チャオジ規格の急速充電器が世の中に出回る頃、まだ現行チャデモ対応のEVが多いなら、今、欧米の急速充電スポットがコンボとチャデモの両方に対応するために、ケーブルのいわゆる「2本出し」をしているような「マルチアーム」を採用するなどの工夫が必要になってくるだろうということでした。

チャオジ対応車でチャデモ充電器を使う際のアダプタ想定図。

EVから電気を供給する「V2X」には対応予定

今、世界には複数の急速充電規格が存在していますが、電気自動車から電気を供給する「V2X(V2HやV2Lなど)」に対応しているのはチャデモ規格だけです。はたして、チャオジはV2Xに対応するのか確認してみると「対応予定で進めている」とのことでした。共同開発を呼びかけてきた中国側からも、V2Xには対応したいという希望があったとのこと。V2X対応が、チャデモ規格の強みにもなったと理解できます。

チャデモ協議会資料より引用

実際の設備導入の見通しは?

それにしても、最大900kWというのは豪快な出力です。仮に、私が乗ってる30kWhリーフがフルパワーで充電できたとすると、ほんの2分で空から満充電(15kWh@分)になってしまいます。本当に、チャオジのような超高出力充電が必要なのか、また、どのように導入されていくのか、見通しを伺ってみました。

「乗用車クラスでは,100kWで30分充電すればほぼ満充電に近くなります。これを15分または10分に短縮するプレミアムサービスのニーズが今後出てくることも考えられますが、●設備コストに見合うサービス対価がとれるか ●出力に見合う電池性能の向上が実現できるか という課題があります。ただし、バス・トラックなどの大型車には大出力化は必要で、一般向けではなく専用設備として導入される可能性はあるかと思います」(丸田さん)

電気自動車が搭載しているリチウムイオンバッテリーには、充電する電力の受け入れ性能の制約があります。テスラ『モデル3』が最大250kWの充電に対応していますが、メルセデスやジャガーなどの大容量電池を搭載した高級EVでも、受け入れ可能な電力は90〜100kW程度。ケミカルなどの種類によって異なるものの、電池へのダメージのことも考慮すると、おおむね総容量の2倍くらいまで(50kWhの電池搭載車であれば100kW出力程度)が実用的な限度の目安といえるでしょう。丸田さんが指摘しているように、乗用車クラスの電気自動車で900kWという途方もない高出力の充電が不可欠になるとは考えにくいのが現実であることは理解しておく必要がありそうです。

つまり、チャオジは「バス・トラックなどの大型車」に必要になるであろう大出力化にも対応し、電気自動車普及の可能性を拡げるための「先回り」的な規格であるともいえます。

ポルシェが計画している150kW器は大丈夫?

久しぶりに丸田さんと話したので、気になっていた「ポルシェの150kW器」についても聞いてみました。タイカンの800Vに対応してチャデモ2.0で開発されていると想定できるABBのタイカン用150kW出力充電器ですが、ケーブルの液冷システムが大変で難航しているという噂も聞こえてきていたのですが……。

「CHAdeMO2.0規格、150kW出力充電器はすでに実用化されています。ただし、150kWで充電できる車両がほとんどないため、充電器メーカーやインフラ側の投資が進まないというのが現状です」とのこと。技術(規格)的には問題なし。タイカン用の150kW器を開発しているABBは欧州で350kW出力器も作っているメーカーですし、心配には及ばないのでしょう。

現在、日本で市販されているチャデモ対応の電気自動車で、チャデモ1.2以上、つまり出力50kWオーバーで充電できるのは日産リーフ『e+』だけです。テスラ車もアダプターを使うので、チャデモ充電時の受け入れ出力は50kWまで。アイペイスやEQCなどの大容量電池搭載車も、急速充電はチャデモ1.0、50kWまでしか対応していません。

日本国内にも100kW超級の高出力器が普及していくためには、まず、EVの車種がもっと増え、高出力対応のEVが増えることが先決といえそうです。

二輪車(小型車)用のDC充電規格なども進行中

今回、丸田さんが送ってくれた資料を拝見して、チャデモ協議会ではチャオジ規格以外にも「二輪車など小型車用のDC(直流)充電の国際規格」や、「大型車を想定したパンタグラフによる充電規格」などの策定を進めていることを知りました。

いわゆる『二輪チャデモ』というべき二輪・小型車用の規格が想定しているのは、電池容量10kWh以下程度の車両に、チャデモプロトコルを使って出力3〜20kWで充電するとのこと。その程度の出力なら、AC200Vの普通充電でいいのでは? と思いましたが「DC充電できることによって、車両側にコンバーターを搭載する必要がなくなって、小型化や車両の低価格化に役立つ」とのことでした。『二輪チャデモ』の充電スポットがあちこちにできれば、電気バイクや超小型EVなど新しいモビリティの可能性も広がります。

EVsmartブログでは欧州コンボ勢が「350KW超急速充電スポットが100カ所に!」といったニュースもお伝えしたように、高出力化を進めるコンボに対して、チャデモは、日本は何をもたもたしてるんだろうとも感じていましたがなんのその。チャデモの規格としては、チャデモ2.0で400kW、そしてチャオジ(チャデモ3.0)で900kWと、むしろコンボを凌駕する進展を続けていたんですね。

あとは、高出力対応の電気自動車の車種が増えるのを待つばかり。輸入車メーカーにあまり多くを望むのは酷なので、ここはやはり、日本の自動車メーカーに奮起してもらう、しかないでしょう。

それにしても、ここしばらくチャデモ規格の進展について確認を怠っていたことには反省しきり。勉強になりました。丸田さん、ありがとうございました!

(取材・文/寄本 好則)

5 thoughts on “チャデモの進化〜電気自動車次世代高出力充電規格は日中共同開発の『ChaoJi/チャオジ』へ”

  1. 取り上げていただけましたね(笑)
    ただあちらのブログでも反応が薄いのは残念です。
    非常に重要なことだと思うのですが。
    そして世界最大の自動車市場中国が採用するということはテスラやヨーロッパも採用せざるを得ないということです。
    規格のなかでは電圧を初めから1500Vで行くことが大切だと思います。
    このためにVer2とは互換性が失われますが、熱問題が解決されます。電流を上げていくと二乗に比例して発熱が起きてしまい、充電だけの為に車にラジエターが必要になります。
    現在のEVの普及率は多くて数パーセント程度ですから、ここは切り捨てるべきです。マルチアームで過去の車は充電できます。

    今後はトヨタの全ディーラーに整備されていくと予想します。
    発熱と電圧を考えると、全個体電池との組み合わせが有効だと思います。
    今年6月には車載用全個体電池のプロトタイプが完成してテストを始めるようですから期待できます。

  2. CHAOJI、大容量充電は興味津々ですが…電気技術者として気になる点が複数あります。
    まずひとつは電池のケミストリー問題。一般的なリチウムイオン蓄電池は2Cが限度なので仮に400kW充電器で充電するとしても最低200kWhの容量がないと無駄になりますよ。尤も東芝SCiBなどチタン酸系電池なら5Cの80kWhでもイケますが。
    もうひとつは日本の電気事業法。50kW以上は高圧受電必須で電気主任技術者の選任が必要になりますが、昨今の若年層理工系離れ問題が解決できないと設置すら出来なく間なる危険が大きいです!!(爆)極めて深刻な問題…経済産業省の意識を変えてもらわないと電気自動車の普及すら危ぶまれます(爆)当然6000V高圧配電線の容量確保&変電所の増設も必須。電気のプロ(電験3種持ち)が危惧してますが一般人には全然判らない世界でしょうな…もっとも昨今のコロナ禍で電力需要が落ち込めば余裕も出てくるんでしょうが!?(不謹慎)

    個人的に電池への熱負荷を考えると普通充電10時間でイイです…昔から電動ラジコン(主にタミヤ製)に親しんだ人間として「蓄電式電動車両を遊ばせたら一晩充電する」習慣が身についてますんで。ガソリン車から電動車への移行は決して生易しくはなく、その使い勝手に似せようとするから無理が生じますよ。
    思えば子供の頃のラジコンやミニ四駆で遊んだ経験を積んだのが今の愛車アイミーブMに不満を抱かなかった最大の理由かもしれません。
    エンジン車にお乗りの皆さん、一度童心に帰ってラジコンミニ四駆などの電動ホビー活動を思い出されてはいかがでしょうか!?

    1. ヒラタツさん、コメントありがとうございます。
      記事中にも書きましたが、もろもろ、ご指摘の通りだと思います。

      チャデモとしても、そうした課題は先刻承知の上で、コンボが350kWとかやってくるし、じゃあ、こんなこともできますよっていう「先回り」規格なのだと、私は理解しています。

      適量のバッテリーを、賢明なインフラとともに適切に使う文化を育てるためにも、バラエティに富んだ、コストパフォーマンスと安全性に優れた、使い勝手の楽しいEVの車種が増えることが必要なのだと思います。

      今、どう発信するか思案中ですが、テスラが中国でLTFに舵を切ったのは、アイロニックで象徴的な「方向」だと感じています。EVって、構造的にはそんなにややこしい機械じゃないんですよねぇ。

      あと、従量課金実現に向けて、経産省やら電力会社にはなんとかドラスティックな方策を提言して欲しいな、と、妄想しています。

    2. 寄本さんコメントありがとうございましたm(__)m
      文末のコメントに10kWh程度の電動バイク記事があり、ACDCコンバータ省略の文面で若干安心しました…なるほど10kg程度でも軽量化できるならアリ。V2Hで充電可能なら今後のバイクツーリングも変わるかもしれませんよね…あまり使わない冬季は家庭の蓄電池代わりにできますし、その他の季節だとV2Lで景勝地でのIHクッキングの可能性も出てきますから(笑)
      そうなるとアイミーブなど電気軽自動車の軽量化もかねて3~6kW程度のCHAdeMO充電器が市販されたり、2台同時に充放電できるV2Hが開発されるんでしょうか!?そういうアイデアこそが電動化を推進すると思いますが。

      個人的見解ながら「電気自動車が売れない」理由のひとつに先人YouTuberの存在があったりします。長距離移動者の充電シーンが結構アップされているのをガソリン車ユーザーが見てガッカリする動画が少なくないので…僕はそれに嫌気が指し、最近の撮影動画は電気自動車でのキャンプ・クッキング方面へ移動しました。少なくともイメージ的に女性や家族に受けないと普及が難しいと考えられるもので。電気自動車のアーリーアダプターのあり方を真摯に考え極めていくことが大事じゃないでしょうか!?
      ※自身のアイミーブ動画チャンネルのアナリティクスを見ると東芝SCiBに関する動画の再生回数が大きく、それだけ関心が高いとも見て取れたり。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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