電気自動車充電のビジネスモデルを模索する「EV Charging Station」が横浜にオープン

2020年8月8日(土)、横浜のガソリンスタンド跡地を利用した「Delta EV Charging Station」がオープンしました。グランドオープンを前に実施されたオープニングセレモニーとプレスツアーのレポートとともに、事前にEVsmartブログ単独で取材した注目点をお伝えします。

電気自動車充電のビジネスモデルを模索する「EV Charging Station」が横浜にオープン

中華街や横浜観光にも便利な「Park & Charge」スポット

「Delta EV Charging Station (Yokohama)」がオープンしたのは横浜市外の中心部(神奈川県横浜市中区山下町193-1)、中華街や横浜スタジアムにも近い便利な場所です。

出光興産のサービスステーション跡地を活用し、充電器などのメーカーであるデルタ電子が電気自動車充電ソリューションを設置して運営するコラボプロジェクトとして、電気自動車の充電における持続可能なビジネスモデルを創出するための実証実験として開設されました。

大桟橋通りに面したビル1階、旧SS(サービスステーション)のスペースに、時間貸し駐車場として6区画の駐車スペースがあり、そのうち3区画に出力25kWのDC充電器を設置。1区画に充電と放電が可能なV2B機器が設置されています。充電器が設置された区画には「EV優先」と表示されているものの、とくに電気自動車や充電可能なプラグインハイブリッド車専用ではなく、エンジン車が駐車場として利用することも可能になっているそうです。

施設の概要は以下の通り。アユダンテが提供している無料の充電スポット検索アプリ『EVsmart』にもすでに紹介されています。

Delta EV Charging Station (Yokohama) 概要

住所/神奈川県横浜市中区山下町193-1 山下町コミュニティビル1階

■電気自動車充放電スタンド
【営業時間】
24時間営業
【充電料金】
DC 25kW充電(3台) 700円/30分
DC 6kW充電(1台) 300円/60分
※DC 6kW充放電器での放電は無料
■駐車場(駐車台数6台)
【料金】
08:00~22:00 500円/30分
22:00~08:00 200円/60分
※充電器利用の場合、駐車場30分無料チケットを配布(カフェ営業時間のみ)
■Innergie CAFÉ
【営業時間】
月~金/07:00~20:00
土・日・祝祭日/09:00~19:00
【定休日】
不定休

【EVsmartの紹介ページ】
Delta EV Charging Station (Yokohama) EV充電スタンド
https://evsmart.net/spot/kanagawa/l141003/q141046/v21163/

DC 25kW充電の時間は30分に設定

この「EV Charging Station」のテーマは、「Park & Charge」のビジネスモデルを検証することです。プレスツアーでの説明によると、まずは3年間をメドとした実証実験を通じて、EVの充電待ち時間を有効利用するための具体的なノウハウを検証します。

前述のように、敷地内には6台分の駐車区画があり、うち4台分に電気自動車用の充電器が備わっています。4台の充電器のうちの3台は、25kWタイプのDC充電器。8月6日の記事で紹介したように、チャデモ対応で100kWタイプまでの急速充電器ラインナップを揃えているデルタ電子ですが、今回は充電待ち時間をどう楽しむかを実証したいということで、あえてこの壁掛けタイプの25kWモデルを選択したそうです。

また、チャデモとCCS(コンボ)の2種類の充電プラグを用意したモデル(3台の充電器のうち、CCS1用とCCS2用に分かれています)です。説明員によると「横浜という土地柄もあって、少なからずニーズがある」ということでした。実際には日本国内に存在するコンボ仕様の電気自動車はとてもレアだと思いますが、この施設にはデルタ電子の充電ソリューションショールーム的な役割があり、世界のモビリティ電動化を支える企業であることの象徴として設置されているのだと推察します。ただし、アプリからはコンボでの充電操作はできないので、コンボの充電プラグを利用したい場合には、事前にデルタ電子(TEL: 045-319-6807)まで連絡が必要とのことです。

さらにもう一台分の区画には、双方向EV充放電器「V2B充放電システム」が設置されています。充放電の出力は6kW。非常時にはここにEVをつないで車両のバッテリーからこのステーションへの給電を可能にしているほか、放電をする場合は駐車場30分無料チケット(機器使用料ももちろん無料)や、併設の「Innergie CAFE(イナジーカフェ)」で使えるドリンク無料クーポンがもらえます。

DC 25kW充電器の使用料金は30分700円、そしてDC 6kW充電器で充電する場合の使用料金は60分300円となります。

充電時の認証や課金は、NCS(日本充電サービス)には加盟しておらず、ともにデルタ電子のEV充電課金&クーポンアプリ「EZQC」で行います。この「EZQC」は、個人情報や車両番号等の事前の会員登録が不要。充電サービスを利用することで併設カフェで使えるドリンククーポンが発行(アプリ内で表示されます)されるので、待ち時間を快適なカフェで過ごすことが可能です。

アプリに表示されたクーポンをカフェで提示します。

ちなみに、駐車場と充電器は24時間利用可能ですが、カフェの営業時間は平日が7時〜20時、土・日・祝が9時〜19時(不定休)となっています。

スペシャリティーコーヒーやスイーツ類を提供するイナジーカフェでは、デルタ電子が製造・販売している超小型USB-C電源アダプター「Innergie」を使用して携帯やPCの充電も可能。他にもショールームとして利用できる展示室があり、現在はデルタ電子の紹介コーナーとなっています。

このステーションは、横浜スタジアムや横浜中華街に近い立地で、EVの「目的地充電」という考え方に沿ったものです。充電駐車の場合は最初の30分の駐車料金は無料となりますが、その後は駐車料金がかかるような設定で、充電が終了してもそのまま駐車場を利用することが可能です。

「Park&Charge」がビジネスとして成立すれば……

発表会では、デルタ電子、出光興産それぞれのキーパーソンから、このEV Charging Stationへの思いや意義が紹介されました。

まず、デルタ電子の柯進興(こう しんこう)代表取締役は「EV充電インフラの不足という問題がある中、残念ながら充電サービスだけでビジネスが成り立たない状況があります。今回その問題を解決できるかもしれない新しいビジネスモデルとしての実証店舗をオープンしました」とのこと。

今回のEV Charging Stationが「2018年に台湾での展示会に出展したコンセプトブースが元になっていること」や「EV充電ステーションに充電以外の機能を追加することで集客性を高め、省エネルギー機器の積極的な採用や電力需要の平準化、非常時の災害拠点としても活用するノウハウを模索」、デルタ電子のソリューションが「EV普及を後押しして、エネルギーの効率的な利用を進めていく核となる」思いが語られました。

プロジェクトのパートナーである出光興産、平野敦彦取締役常務執行役員は「排出ガスへの低減、環境負荷の低減、といった社会的な要請に加え、消費者ニーズの多様化、デジタル技術の展開ということで、モビリティに関する動向も大きく変わってきていますし、モビリティに対してのエネルギー供給の在り方も同時に変わってきています。その中心にあるのはEV車両の拡大」であるという見解を表明。

「サービスステーションを通じて長く石油製品を中心に内燃機関車両に対してのエネルギーを提供してきた経験と資産を最大限に活用して、EVが拡大するモビリティの世界の中で、どのような形でエネルギーを供給し、サービスを提供していくのかということに関して模索している中で、デルタ電子と一緒にパーク&チャージというサービスの形態を試行することになった」という経緯が紹介されました。

次世代エネルギーソリューションのショールームでもある

施設内の蓄電設備など。

施設内のLED照明や監視カメラ等にもデルタ電子の製品が使用されており、デルタ電子の次世代型ホームマネジメント「CONSCIOUS」が各所に設置されており、ステーション全体のエネルギーや各部屋の空気品質の可視化・それらのデータを基に制御を行っています。また、ステーションの中にはデルタ電子が開発製造を行っているリチウムイオンバッテリーがバックアップ電源とピークカット用の電源として設置。現在は49.7kWh容量のものを備えていますが、システム的には4倍まで増やすことが可能ということです。前述のようにV2B充放電器を備えていますから、停電発生時などの非常時には避難場所として活用できます。

実は、EVsmartブログでは8月7日の発表会に先駆けて、このEV Charging Stationを取材雄させていただきました。その際には、デルタ電子紹介スペースの2階に設置された、電気自動車への充放電はもとより、施設全体のエネルギー状況をモニターして管理するコントロールルームも案内いただき、ご担当者からは「電源機器の世界トップカンパニーとして、EV時代を支えるソリューションを開発、提供したい」という熱い思いを伺いました。

事前にお話しを伺ったデルタ電子ご担当者のみなさん。

また、平野氏の言葉にあるように、出光興産ではEV時代のSSやエネルギー供給企業のあり方を検証するチャレンジに意欲的です。8月4日にEVsmartブログで紹介した館山・南房総(千葉県)での『オートシェア』もそのひとつ。アプローチ方法が違う複数の実証を実践していることには、脱炭素時代のビジネスモデル構築に向けて、出光が本気で取り組んでいる覚悟を感じます。

肝心の自動車メーカーの動きがなかなか活発にならないのは気がかりですが、ユニークなEV Charging Station開設は、モビリティ脱炭素化へのチャレンジが日本でも着実に進んでいることを感じるニュースでした。

余談ですが、事前取材で案内いただいたデルタ電子ご担当者のマスクも自社製でした。

(取材・文/青山 義明、寄本 好則)

2 thoughts on “電気自動車充電のビジネスモデルを模索する「EV Charging Station」が横浜にオープン”

  1. DC 25kW充電の場合30分の充電が終わったら以後は駐車料金がかかるそうですが、一度の駐車では充電時間は30分しかできないのでしょうか?それとも満充電まで充電してその後は駐車料金がかかるコースとかあるのでしょうか?

    1. ペンタ様、コメントいただき誠に有難うございます。
      当EVステーションでは、「EZQC」アプリから1回のお支払いで最大30分の充電が可能です。
      30分経過しますと自動的に充電が停止しますが、「EZQC」アプリから再度お支払いいただく事で更に最大30分の充電ができます。
      再度充電を行うには、EVから充電コネクタを一旦抜いていただき、充電器のお近くにて「EZQC」アプリから充電操作を行っていただけますようお願い致します。
      現在、満充電まで充電してその後は駐車料金がかかるコースはございません。
      本実証事業を通してお客様よりお寄せいただく声や利用状況データを活用させて頂き、更なるサービス改善を模索して参ります。
      今後とも、宜しくお願い致します。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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