イーモビリティパワーがコスモ石油とEV充電インフラ拡充の連携協定締結〜スタンドで充電できると便利?

2020年6月17日、e-Mobility Powerとコスモ石油が、コスモ石油サービスステーションへの電気自動車(EV)用急速充電器の設置を軸とした次世代モビリティ社会に向けた取り組みに関する連携協定を締結したことを発表しました。電気自動車の本格的な普及に向けて、自動車ユーザーに馴染み深い既存施設を活用する新たなスキームとなりそうです。

イーモビリティパワーがコスモ石油とEV充電インフラ拡充の連携協定締結〜スタンドで充電できると便利?

※冒頭写真はコスモ石油「セルフステーション都筑インター第2」の既設充電器。

まずは首都圏の数カ所に急速充電器を設置

株式会社 e-Mobility Power(イーモビリティパワー)とコスモ石油マーケティング株式会社が、『次世代モビリティ社会に向けた連携協定締結について』と題したリリースを発表しました。

『協定締結により、両社は今後、当社SSにe-Mobility Powerの急速充電器を設置し、NCSネットワーク利用者へ充電サービスを提供するとともに、国内最大級の充電ネットワークと当社カーライフサービスを掛け合わせた新たなEV利用者向けサービスを提供することで、ユーザーの利便性・利用満足度向上を図り、より環境負荷の低い社会の実現を目指し、EVの普及促進に取り組んでまいります』(コスモ石油のニュースリリースより引用)ということです。

具体的には、「両社の事業基盤を活用したEVに関するカーライフ事業の充実と充電インフラの拡充」を目的として、e-Mobility Power が急速充電器の設置と、当面はNCS(合同会社日本充電サービス)の認証課金システムによる充電サービスを提供。コスモ石油が、自社のサービスステーション(ガソリンスタンド)を電気自動車の充電インフラ拠点として活用し、カーライフサービスを提供するという役割を果たしていくとしています。

もう少し詳しいことを電話で伺ってみました

発表の文面には、「現在、両社は、共同で数カ所のSSに急速充電器を設置し、モビリティサービスを展開することを検討しております。サービス提供開始時には、実施場所・具体的なサービス内容とともに改めてお知らせいたします」とありますが、どんな出力の充電器を、どこにエリアに何カ所くらい設置するのかといった詳しいことはまだ説明されていませんでした。おそらく、具体的な詳細はまさに検討中なのだろうとは了解しつつ、両社に電話して、ご担当者にいくつかポイントを確認しました。

コスモ石油ご担当者のコメント

●数カ所の設置場所について、エリアは想定されていますか?
首都圏を中心に、リリースにもありますように数カ所の設置に向けて現在調整中です。

●コスモ石油ではすでに数カ所のSSに充電設備があって独自の会員カードも発行していますが、新たに設置される充電器でも既存の会員カードは使えますか?
いいえ、今回の協定で設置される急速充電器はNCSの認証制度を採用する予定になっており、現時点では既存の会員制度とは別のものとして進めています。

●電気自動車ユーザー向けの「カーライフサービス」として、具体的に想定していることはありますか?
一般的に考えられることとしては、洗車やタイヤ交換などのカーケア系のサービスがあります。また、電気自動車ユーザーのみなさまから、たとえば洗車だけでサービスステーションを訪れにくいといった声をいただくことがありますので、より気軽に来店いただけるような新たなサービスを開発するよう検討を進めているところです。

コスモ石油「セルフステーション都筑インター第2」の急速充電器。出力は50kW。

e-Mobility Power ご担当者のコメント

●サービスステーションと連携した理由はなんでしょう?
自動車を使うユーザーにとって、既存のサービスステーションは利便性が高く貴重な場所であり、認知度も高いことです。今回はコスモ石油側と互いの理念に共感して協定締結が実現しました。e-Mobility Power としては、今後、ほかのサービスステーションを含め、大型商業施設や道の駅など利便性の高い場所への電気自動車充電インフラ設置を進めていきたいと考えています。

●設置される急速充電器の出力はどのようなものを想定していますか?
基本的には、50kW、もしくは2口の充電ケーブルを備えた100kW程度の高出力器を想定しています。具体的な機種名などはまだ検討中です。また、サービスステーションへの急速充電器の設置については、給油設備からの距離などに関する消防法の制約もあり、設置する場所を含めて検討を進めているところです。

ガソリンスタンドの急速充電器を使ってみた実感は

ガソリンスタンド(SS)に設置された急速充電器は、私自身、「福知山中央セルフSS EV充電スタンド」(『EVsmart』情報ページにリンク)とか、「ENEOS 19号塩尻TS EV充電スタンド」など、各地で何度か利用したことがあります。といっても、ここ数年は充電インフラの数が増えたこともあり、わざわざSSに寄るまでもなく、高速道路のSAPAや道の駅、コンビニなどでの充電でこと足りていたので、2012年とか2013年とか、もう何年も前のことですが。

2014年、川崎市内のSSで充電した時の様子。今はもう充電設備は撤去されちゃったそうです。

率直な印象として、SSで急速充電する時には、ちょっとした肩身の狭さというか、少々申し訳ない気がしたことを覚えています。おそらく、消防法の制約とかあってのことでしょうが、SSの急速充電器は敷地の広いSSの端っこに設置されているケースが多いことが理由のひとつ。また、あまり頻繁に使われることがないせいか、ゲスト充電をSSのアルバイトさんに申し出ても「は?」と怪訝な表情を向けられることがあったりもして。まあ、まだリーフやi-MiEVが発売されて間もない頃の出来事なので、今はそんなことないとは思いますけど。

ともあれ、今後、日本でも電気自動車の車種が増え、急速充電器が設置されているSSが増えてくれば、今回の発表でも言及されている「サービス」が大事になってくる気がします。現在のSSは、ユーザーが「滞在」するためのサービスはあまり重視されていない印象があります。でも、電気自動車を充電する場合、クルマを降りて15〜30分ほど滞在する利用者が増えるでしょう。利用者に利便や快適さを提供しながら、SSにとっても新たなビジネスになるようなサービスが生まれてくるといいですね。

ところで、前述のコスモ石油ご担当者への質問にも記したように、コスモ石油はすでに独自の「EV充電サービス」を展開(横浜市に3カ所など全国で8カ所)しており、「COSMO EV CHARGE」という独自の会員カードシステムを運用しています。会員ではなくても、SSのスタッフに声を掛け、1回1000円(税込)で充電できます。会員制度としては、月額3000円で充電し放題の「ゴールド」プラン、月額1000円で充電1回400円(ともに税込)の「ホワイト」プランなどがあります。

コスモ石油独自の会員制度でビジター(ゲスト)充電は1回1000円。

今回の提携で設置される充電器には、NCSの認証課金が採用されるとのことなので、たとえばNCSが発行するチャージスルゾウの急速充電器用の場合、月額3800円で1分15円(30分450円)、ゲスト認証する場合は1分50円(30分1500円)になります。コスモ石油の独自プランが奮発してくれていたということでしょうが、1回1000円とかの方がお得な感じになのが少し気になりました。

これからEVユーザーが増えるほどに、月額料金が掛かる会員制度には入らず、必要に応じてゲスト充電を選択する人も増えるでしょう。はたして、1分50円というゲスト充電が適切なのかどうか。NCSの事業を継承する e-Mobility Power には、従量課金の実現などを含めて、EVユーザーがポンと膝を打って納得できる「仕組み」を提言してくれることを期待しています。

先日、『ドイツがコロナ被害への経済対策として電気自動車購入補助の倍増を発表』という記事でお伝えしたように、ドイツでは国内の全ガソリンスタンドに電気自動車用充電器の設置を義務付けることが発表されました。なにはともあれ、日本でも電気自動車充電インフラを拡充する、民間主導の新たなスキームが動き始めたのは喜ばしいニュースです。e-Mobility Power とコスモ石油の取り組みが、順調に広がっていくことを応援しています!

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)9件

  1. 一昨年アイミーブMに乗り始めてからガソリンスタンドへ通う頻度が極端に落ちた者です。セレナがファーストカーからセカンドカーへ格落ち、今や隔月で給油するのみ(冬季は灯油購入で毎月お世話になりますが)。
    ガソリンスタンドの給油以外のサービスといえば洗車/空気圧チェック/タイヤ交換/車検など。飲食サービスはファーストフード(ドライブスルー含む)あるいはコンビニ同居じゃないとあまり見かけませんよね…せめてドライブインのように自販機コーナーがあれば有難いですが。
    コンビニのEV充電器も中速20kW程度じゃ中途半端。イートインができるなら6kV普通充電1時間でも間に合うかもしれません。充電器の種類を変えているのも一案だと思いませんか!?

    今後のSSはコンビニ併設が増えると思います、実際地方都市によくあるパターン。逆に敷地が狭いSSは辞めていくかEV普通充電器をつけるかでしょうが…ここで消防法が問題、蓄電池設置も耐火壁がなければ17.76kWh(4800Ah)未満に限定された記憶があります。同じ理由で家庭用蓄電池に18kWh以上の製品がないですし。
    消防設備士だから思うのですが、消防法の規制緩和がない限り電気自動車の普及に何らかのネックがいくつも出るんじゃないでしょうか!?

    1. 認定キュービクルなら20kW以上の急速充電器も条件が緩和されたかと思います。
      (周辺空間の確保等。蓄電池も同様。)
      テスラのSCタイプなら制限が緩和されるのではないでしょうか。
      問題は配線で、GSは地面がかなりの強度で構成されているので
      地下埋設配線はコストかかりそう・・・。

    2. メカ屋さんへ:そうか認定キュービクル制度を使えば耐火壁から離隔1mで大電力機器を設置できますよね。給油所の高圧受電設備に実例ありますよ。
      てことは地下埋設配線でなければ50kW以上の急速充電器を設置できる可能性があります。実際元給油所に特別な加工をせず金属管配線で50kW充電器を設置している例あり。問題は施工費ですかね!?
      ※消防設備士/電気工事士/電気主任技術者など、ガテン系資格を複数駆使してる関係でインフラの奥の話しちゃってます、そこはお許しを。

  2. ガソリンスタンドも生き残りをかけてそろそろ考え始めないとならない時期になりそうですね。
    個人的にはこの流れ、嬉しいです。シーザー・ミランさんのお手洗いと自販機だけでもありがたいですし、タイヤの空気圧なんかも充電中に見ることができます。
    セルフサービスステーションの普及もあってICEVでもタイヤ空気圧のチェック頻度が減ってたりしますが、EVはそれ以上。空気圧でバーストにつながるリスクなんかもありますし、そこらへんのサービスも利用できるようであればありがたいですね。
    ついでに洗車される方なんかもいらっしゃればガソリンスタンドとしても利益になるでしょう。今後が楽しみです。

    1. JB様、コメントありがとうございます。実は私も空気圧、気になっています。毎朝当然チェックするわけなんですが、多分チェックしない人はいるでしょうし、定期的にチェックして空気を足したりするのは安全のためにも良いですよね。
      個人的には空気圧センサー付いている車種なので(恐らく国産も今後は義務化?)チェック自体は車内からできるわけなんですが、例えば今日なんかも私的には左前はもう少し入れておきたいな、という感じなんです。でもスタンドで頼むと給油の邪魔ですし、「空気圧なんかでお金はいいですよ!」とか言われちゃうので困って、いつも仕方なく車載のポンプで自分で入れています。
      今後、空気圧300円とかでやってもらえるなら手も汚れないし、速いし、個人的には絶対に利用します。

    2. YasukawaHiroshi 様

      お返事ありがとうございます。
      一応日常点検にタイヤも含まれてるんですが、なかなかみなさんされてないのが現状ですよね。

      安全性の面もありますし、空気圧を高めに設定しておくことで多少ですが電費についても改善が見込めます。結果として航続距離も稼げるので、こまめに見ておいて損はないと思っています。

      充電中に空気圧など見てくださるようであればこちらとしても気兼ねなくお願いできますし、自分でやるのでも全然構わないです。サービスでやってくださるなら尚更ありがたい話でもありますね。
      空気圧の調整だけの場合、自分で空気入れ等揃えるのも、という方も多いでしょうし、やりにくいのも事実としてあると思います。こういった簡易的なメンテをしつつ充電できる場、として広まってくれたら嬉しいですね。

  3. いい加減、時間で幾らとかじゃなくて、ガソリンと同じで充電容量に対して課金する方に移行して欲しい。

    そうでないと、能力が低くても高くても同じ料金になっちゃう。ガソリンなら考えられない料金体系です。

  4. コンビニの24時間営業が見直されそうですので、EVユーザーにとって(特に私)は、「夜間にトイレに行けなくなる」という心配がありました。
    SSにQCが設置されて、トイレが利用できるようになれば大変ありがたいです。(トイレが有料でも大歓迎しちゃいます)
    食べ物系の自動販売機も充実してくれると尚嬉しいです。

  5. EVに乗っているものです。
    ドイツのように全GSスタンドに設置すれば一気にEV車は加速すると思います。安心感がちがいますよ。後はカードの月会費を下げてほしいですね。その都度の費用は上げても良いので。
    ここネックですよ。

    今後の変化に期待します!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事