圧巻! サイバートラック日本初上陸イベント〜自分の目で一度は見ておくべき存在感

2月某日、テスラからサイバートラックのメディア向けお披露目イベントの案内が届いた。2023年11月にようやくアメリカでの出荷が始まったサイバートラック。SNSでは納車動画や投稿を見かけるようになったが、アメリカ以外の国での発売など詳細は見えていない状況だ。にもかかわらず、日本で実物が見られるというのは異例&貴重な機会をレポートする。

圧巻! サイバートラック日本初上陸イベント〜自分の目で一度は見ておくべき存在感

無音で出現した巨大な物体

会場は「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」(東京都江東区豊洲)で開始時間が午後10時となっていた。これも異例の深夜(子供は寝なさいと言われる時間)開催。取材時の注意事項として「屋外イベントである」「ストロボ禁止」とあったので、チームラボの新しいデジタルアート、プロジェクションマッピングなどとともに発表されるのでは、と予想して取材に臨む。

いよいよサイバートラック入場の段となりカメラを構えるが、控えめな効果音とともに建物の影から登場。派手なパフォーマンスやデジタルアートの演出はなかった。

だが、登場インパクトとしてはこれが正解だったのかもしれない。

サイバートラックを間近にみたとき、おそらくだれもが抱いた感想は、

「でかい!」

だろう。サイバートラックは全長5メートルを超える、という予備知識があってもこの感情以外を許さない圧倒的なインパクトだ。ライトが見えたと思ったら、その巨大な物体が、ほぼ無音で迫ってくる。音楽やライティングさえ邪魔に思える絶対的な存在感を示すには最良の演出だったと思う。

フランク。

その後は、グループに分かれて内外装の撮影時間となった。メディア関係者、ジャーナリスト、ブロガー、YouTuberなどが押し寄せ、若干カオスな状態に。担当者による車両の説明や質疑応答などの時間は設けられなかったが、その分、撮影時間がふんだんにとられていた。質疑応答の時間はなかったが、スタッフやテスラジャパンの広報担当者は、ドアやウィンドウの操作、荷台やフランクの開閉など、個別のリクエストにも対応してくれた。

サイバートラックとはどんなEV?

Tesla Inc.

サイバートラックについてはEVsmartブログでも何度か取り上げている(関連記事)が、改めてポイントを紹介しておく。

今回お披露目された車両は米国仕様のため運転席は左側。18.5インチのディスプレイが中央にレイアウトされる。インパネがなくセンターコンソールの位置に大型ディスプレイが配置されるのは他のテスラ車と同じだ。バイワイヤーのステアリングシステムのため、大型車両だがステアリングはヨークハンドルタイプになっている。左右のスポーク部分にボタンが配置された新しいUIタイプだ。シンプルなコックピットデザインだが、テスラオーナーにはしっくりくるはずだ。

荷台の左側後方にはAC120~220Vのアウトレットが用意されている。3Pソケットのうち大きいほうは、専用ケーブルで他のEVの充電が可能になっている。

Tesla Inc.

バッテリー容量は120kWhとされ、航続距離はEPAで最大545kmだという。レンジエクステンダーとしてバッテリーを追加で搭載することができ、この場合航続距離は755kmまで延びる。

EVシステムは800Vのパワートレインを採用している。リア駆動、AWDが設定される。AWDは2モーターと3モーターの2種類がある。3モーターモデルは「サイバービースト」と呼ばれ、最高速度は200km/hを超え、0-100km/h加速は2.7秒だという。

サイバートラックは、ステンレスボディや3モーターシステム、エアサス、ステアバイワイヤーなど先進テクノロジーが投入されているが、注目すべきポイントは他にもある。電装系に48Vシステムを採用した点だ。SDVやコネクテッドカーが進化してくると、車載システムや電装品の容量が課題になる可能性がある。現状の車載電装品は12Vまたは24Vだが、ECUのHPC化、バイワイヤーなどドライ制御、セミドライ制御の範囲が広がると、電装品の消費電力が増えてくる。電力消費の増大は発熱や配線の問題につながるのは、駆動系のバッテリーと同じだ。その対策としてモーターの電圧を上げる方法がある。電装品の48V化は、もともとマイルドハイブリッドでの活用から始まっているが、現在はCASE車両向けのソリューションとして研究開発が進んでいる。

免許や車検はどうなるのか

日本に入ってきたのは、展示の1台だけ。2月16日から25日までは、会場となったチームラボプラネッツ(豊洲)の屋外に展示される。その後、関東、東海、関西、九州などでにおける展示ツアーが予定(詳細は未発表)されている。


(2/21 追記)

サイズは全長5,682.9mm、全幅2,413.3mm、全高1,790.8mm(米国仕様)。無塗装の外装は「ウルトラハードステンレススチールエクソスケルトン」という。平面的なボディだが、スレッジハンマーで叩いてもへこまないという。ちなみに取材案内には「銃弾、耐衝撃テストは行えません」と注意書きされていた。「行いません」ではなく「行えません」という表記に「自分たちはやりたかったが許可されなかった」というニュアンスを感じたのは筆者だけだろうか。

ガラスなど、量産モデルではさすがに「防弾」とは謳われていないが「アーマーガラスは、時速112 KMで飛ぶ野球ボールや、クラス4の雹(ひょう)の衝撃にも耐えます。 アコースティックガラスは、まるで宇宙にいるかのような静かさを実現」と紹介されている。

最大牽引能力が4,999kgという。計測の基準が同じでない可能性はあるが、SUVやジープタイプで大きな牽引能力を持つ車両で4~4.5トン(ジープワゴニアが10,000ポンド≒4,500kg)というので、乗用車としては最大級といっていいだろう。なお、国内では750kg以上の荷物をけん引する場合はけん引免許が必要になる。

荷室の最大積載量は1,134kgとこれも小型トラック並みの数値だ。サイバートラックの重量は3,000kg超えるとされている。この重量が車両総重量(GVW)なのか、車体だけの重さなのかが不明だ。車両総重量が3.5トン以下ならば普通免許で運転できるが、約1トンの最大積載量とは別の車体の重さなら、準中型以上の免許が必要になる。

車体サイズは普通自動車の上限を超えるので、1ナンバーの貨物自動車(トラック)の区分になる。貨物自動車は、自動車税の軽減措置によって乗用車より安く設定されるが、車検は1年車検となる。

貨物・商用車としての潜在能力

Tesla Inc.

テスラジャパンによれば、サイバートラックの日本導入はまったくの未定だという。ヘッドライトなど灯火類、フェンダーを突起物とみなすか、歩行者保護のためのバンパーやボンネットの角度といった点で、道路運送車両法・保安基準を満たせるのか、といった課題も指摘されている。

だが、牽引能力や積載量では大型商用バンや小型の2トン以下のトラックに匹敵する。4輪操舵システムや、高度な自動運転支援を期待できるテスラのHW4.0 E/Eプラットフォームを搭載している。貨物や使役車両としての潜在能力もある。

確かに、日本では車検が通らない、ナンバーがとれないという指摘もあるが、それをもって日本導入がなくなってしまうのはもったいない。グローバルな自動車市場として、そんな懐の狭さでいいのかという話もある。ハマーH3(市販用モデル)ができる何年も前に、日本で軍用ハマーを輸入してナンバーを取得していた人もいた。年間5000台以下という条件でナンバーを取得できるPHP(輸入自動車特別取扱制度)制度を活用するなど、型式指定にこだわらなければナンバー取得も不可能ではないと期待したい。

ともあれ、圧巻の存在感をもつ実車を目にして、サイバートラックは日本のマーケットや規制のことなど微塵も考慮せずに開発された、まったく新しいEVであることを痛感した。モビリティの可能性(極端な一例ではあるが)を知るために、一度は自身の目で見ることをオススメする。

取材・文/中尾 真二

【関連動画】
テスラ サイバートラックが遂に日本上陸!規格外の電気自動車!(YouTube)

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					中尾 真二

中尾 真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。「レスポンス」「ダイヤモンドオンライン」「エコノミスト」「ビジネス+IT」などWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアをカバーする。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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