テスラ『モデル3』が充実装備へアップデート/後席ディスプレイ搭載&航続距離が向上

テスラが電気自動車の主力車種である『モデル3』を2017年の発売以来初めて大幅にアップデートすることを発表。日本でも予約受注が始まりました。後席ディスプレイが追加されるなど装備がさらに充実。ウインカーやシフトのレバーもなくなりました。自動車の常識をぶち壊しながらの進撃です。

テスラ『モデル3』が充実装備へアップデート/後席ディスプレイ搭載&航続距離が向上

日本でも早速受注がスタート

2023年9月1日、テスラはミドルサイズセダンの電気自動車『Model 3(モデル3)』の大幅なアップデートを発表しました。同日、日本向けの公式サイトも一新されて、新型の受注が始まっています。

モデル3の大幅なアップデートはアメリカなどで2017年に発売されて以来初めてのこと。かねて「プロジェクト・ハイランド」というコードネームとともに、SNSなどでさまざまな噂や情報が飛び交っていました。

アップデートの情報は全世界ほぼ同時に発信されて、同日、日本でも新型モデル3の受注が開始されました。9月2日時点で、納車予定は「2023年12月〜2024年3月」となっています。

アップデートのポイントは?

具体的に何がアップデートされたのか。Tesla Japan が Tesla Asia のポストを引用してリポストしているので、その内容や公式サイトの情報を参考にしながら確認していきましょう。

エクステリアデザインが一新

まずはパッと見の外観から。ヘッドライトやリアランプの形状などのエクステリアデザインが一新されました。とはいえ、基本的な骨格は同じなので、テスラファン以外の方にはさほど大きな変化には感じないかも知れません。

左が従来モデル、右がアップデート版の新型、モデル3ハイランドです。全体的に引き締まった印象で、ヘッドライト形状がシャープになっていることがわかります。

リアビューでは、コの字型のブレーキランプデザインがより強調されたのと、今までロゴマークだったエンブレムが「TESLA」に変わっています。

空力性能アップで航続距離が向上

エクステリアデザインの刷新は空力性能の向上にも貢献。従来モデルで0.225だったCd値が0.219へとアップして、一充電航続可能距離が向上しました。日本独自のWLTCモード国交省審査値はまだ未発表ですが、欧州のWLTPモードで、RWDが491kmから513kmへ約4.5%、Long Rangeも602kmが629kmへ約4.5%伸びています。

また、最新のサスペンションチューニングなどによって乗り心地が向上したとのこと。リアウインドウにも合わせガラスを採用するなどの改善で、静粛性も向上しているようです。

前席ベンチレーテッドシート

インテリアを中心に「さらに装備が充実」したことが、今回のアップデートのポイントです。

フロントシートには空気を送って暑い時期でも快適に過ごせるベンチレーテッドシートを採用。エアコン同様、スマホの専用アプリからのコントロールも可能です。

リアディスプレイを搭載

フロントのディスプレイは15インチから15.4インチに少し拡大。さらに、後席からも空調を操作したりエンタテインメントが楽しめる8インチのタッチスクリーンディスプレイが追加されました。

USB-Cポートの出力が27Wから65Wにアップされたのも、地味だけど便利になったポイントです。

オーディオシステムもより上質に

ロングレンジには、17スピーカーのデュアルサブウーファー、デュアルアンプのオーディオシステムを搭載。RWDモデルでも、今までの8スピーカーが9スピーカーとなりました。

LEDのアンビエントライト搭載

さらに、ダッシュボードからドアパネルまで、後席も含めて室内を囲むLEDのアンビエントライトが搭載されました。光の色は、ディスプレイで自由に選べる、のだと思います。

ウインカーやシフトのレバーがない!

今までにもスタートボタンをなくするといった「自動車の常識」を打ち壊してきたテスラ。今回の新型モデル3では、ウインカーはステアリングのボタンで操作、DやRを選ぶ「シフト」も、今まではステアリングの裏にレバーのスイッチが付いていたのを廃止してしまいました。ステアリング周りには、ボタンやレバーが何もありません。

さらに、これは日本では認可の問題があって未確認ではありますが、ドライバーがシートに座ってブレーキを踏めば、自動的に「D」か「R」を選んでくれる「スマートシフト」も搭載しているのではないか、と思われます。

パフォーマンスグレードは「開発中」

今回発表された新型モデル3は、RWDのスタンダードモデルと、デュアルモーターAWDのロングレンジという2グレード。今まで用意されていた「パフォーマンス」は、まだ開発中ということで、公式の購入サイトからも姿を消しています。

新型モデル3旧モデル3
RWDロングレンジRWDロングレンジ
車両価格(税込)561万3,000円651万9,000円524万6,000円626万9,000円
航続距離(WLTP)513km629km491km602km
バッテリー容量(推定)60kWh78.4kWh60kWh78.4kWh
最大充電出力170kW250kW170kW250kW
0-100km/h加速6.1秒4.4秒6.1秒4.4秒
Cd値0.2190.2190.2250.225
メインディスプレイ15.4インチ15.4インチ15インチ15インチ
後席ディスプレイ8インチ8インチなしなし
USB-Cポート最大出力65W65W27W27W

車両価格は、RWD、ロングレンジともに値上がりしました。

エクステリアデザインの大幅な変更など、今回の「アップデート」は普通の自動車メーカーであれば「フルモデルチェンジ」と呼ぶところでしょう。でも、テスラではあくまでも「アップデート」と呼んでいます。また、OTAによる車両システムの改善や、ときには搭載する駆動用バッテリーの変更といった大きなアップデートを、突然、さらりと繰り返してきたのがテスラです。

今回、事前に噂されていたより高性能なバッテリーへの変更は見送られ、EVとしてのパワートレインなどに大きなアップデートはありませんでしたが、しばらくするといきなり「バッテリー変更」などのニュースが飛び込んでくるのかも知れません。

価格もしかり。今回は少し値上げしたものの、需要の動向や生産コストの改善などによって、いきなり大幅に値下げしたり、また少しずつ値上がりするなど、車両価格が「時価」みたいに流動的なのもテスラの特徴になっています。

細かな損得勘定はさておいて、好きか嫌いか、欲しいか否かに素直になって購入するかどうかを決断するのが、テスラオーナーになるための正しい流儀といえるでしょう。

それにしても今年の秋は、ボルボからコンパクトSUVのEX30が登場し、BYDはDOLPHINを導入。ヒョンデはKONA Electricを発売するはずだし、今度はモデル3がよりゴージャスにアップデートです。日本の庶民にとっても、購入を検討できるBEV車種の選択肢が広がってきましたね。今後がますます楽しみです。

文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)3件

  1. この内容(実物を見たませんが)でこの価格なら文句は言えませんね・・
    モデルSのアップデート直後に出して来るのもテスラの意気込みでしょうか?
    試乗してみたいクルマです。

  2. フルモデルチェンジというよりはビッグマイナーチェンジの方が相応しいかと。サイドビューはほとんど変わりませんし。

    1. たかし さま、コメントありがとうございます。

      そもそも、テスラのもろもろを従来の自動車の常識内にある言葉に当てはめるのが無理、なんでしょうね。と、感じつつ書いてました。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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